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14 シャルルゥの寂しさ
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「そして、私が断れば、どうするつもりだ?」
「それは…」
アンジュリカは冷ややかに笑った。
「シャルルゥの秘密をバラすつもりか?」
腕を組み無言で控えていたメアリが、
「そうはしたくないけれど…彼にはその価値があるわ。なんと言ってもアレキサンドロス大王の瞳をお持ちですもの」
と言い笑う。
「私を恐喝か…さすがに毒蜘蛛と言われるだけあるな。……誰か!」
アンジュリカはシャルルゥを抱き上げ、テーブルに置かれた瓶を手にすると立ち上がり人を呼んだ。すぐに来たのは控えていた客室メイドで、大臣に取次、王宮御用達の証を持たせるように告げると歩き始めた。
メアリを置き去りにした形だが、彼女の目論見にまんまとはまった自分の不甲斐なさと、あの場で迂闊だった自分にアンジュリカはむかむかとしていた。
「あの、アンジュリカ様……どちらへ……」
シーツ越しにシャルルゥが熱っぽい吐息を吐くからか、アンジュリカはその苛立ちと胸の奥のもやもやとした気持ち悪さをどうすることも出来ずさらに苛立ってシャルルゥを抱き締める。
「ーー部屋に戻る」
会場はヒューチャーが適当にあしらう筈だ。ロワイヤルはシードルとは別に一件出ている。よい木材が手に入り、アンジュリカが座る玉座の横にシャルルゥの優雅な椅子をしつらえるつもりで心が沸き立ち、シャルルゥの安否に失念していたのはアンジュリカ自身だ。
私室に戻るとアンジュリカはシャルルゥを寝台に横倒し、シャルルゥの催淫剤の効果が続く身体に掛けたシーツを剥がすと、少年然とした滑らかな肩から腰に指を這わせ、尻の間に指でくすぐるよう揺らすといきなり緩んだアヌスに二本の指を埋め込んだ。
「ひっ、だめっ……」
息を噛み殺していたシャルルゥは深々と無骨な指で貫かれ、手足をつっぱらさせた。腸襞が快楽痙攣を繰り返し、前立腺が薄い肉越し擦り上げられる度に、全身に悦楽の火花が飛び散る。
達っすることを隔たれられた身体へのさらなる刺激に、意識が飛びそうだった。
「何故、私の横から離れた!王宮と言えど、安全ではない」
シャルルゥの感じてたまらない前立腺の縁を、指で揺さぶり繰り返し押し付けるとシャルルゥは泣き叫んだ。しかし許さない。
直腸を取り巻く括約筋から脳天まで快楽に支配され、シャルルゥは背を反らせる。
「ひぅ……申し訳あり、ま……っっ!」
寝台のなめらかな敷布にペニス先を擦りつけて自ら腰をくねらせるが、硬く戒める輪が肉に食い込み射精を阻んでいた。
アンジュリカはシャルルゥの肩をきつく抱き寄せるとシャルルゥを抱きしめながら、深いため息をつく。
「私は言ったはずだ、私から離れたところで飲食をしてはならぬと。なのに……っ!」
言いながら小刻みに震える自分を感じていた。
「すみません……アンジュリカ様っ」
シャルルゥは混濁する意識の中で、アンジュリカの朝の言葉を思い出した。
「わたしがあさはかでした……」
アンジュリカはシャルルゥのから体を離した。横向きに寝かされたシャルルゥは、両手足を投げ出して朦朧としている。それを見下ろした。
「渡された飲み物を何故飲んだ」
アンジュリカはアルカディアシードルの瓶を手にして蓋を開け匂いを嗅ぎ少しだけ指に取ると舌に乗せる。
大概の毒の味を知る舌が無害だと告げて来た。アンジュリカはシャルルゥに毒殺される危険もあると警戒していて、メアリに出鼻を挫かれたのだ。シャルルゥを一人にした自分の落ち度なのだが、どうにも胸がむかむかしていた。
「メアリが気に入ったか?」
威圧的にシャルルゥを見下ろして、
「答えろ、シャルルゥ。今すぐに」
低い声で命令をした。
「アンジュリカ様……」
シャルルゥがなんとか声を出して形のよい小さな唇を噛み、それから小さな声で呟く。
「あの方は……声をかけてくれ、寂しかった、のです」
「寂しい?私は近くにいたぞ」
シャルルゥは小刻みに震えながら首を横に振り、アンジュリカに向けて頭を下げた。
「あの広間には、王宮には、わたしの居場所がありません。アンジュリカ様の横にしか……。アンジュリカ様は、皆さまの王であり……分かっているのです」
シャルルゥの寂しさを理解しているつもりで、全く配慮していなかったと、アンジュリカはシャルルゥを見下ろした。
今はまだ王配として名乗ることは出来ぬからと、侍従のような地味な衣装を着せた。だからこそ誰もシャルルゥに見向きもせず、安心していたわけだが、シャルルゥには一人孤独を味わっていた。
アンジュリカは喉が乾き、手にしたアルカディアシードルの蓋を空けると、口をつける。
「甘いな、飲むか?」
身体を丸くしているシャルルゥは首を横に振り涙を溜めてアンジュリカを見上げた。
「今後は私から絶対に離しはしない。安心しろ」
「それは…」
アンジュリカは冷ややかに笑った。
「シャルルゥの秘密をバラすつもりか?」
腕を組み無言で控えていたメアリが、
「そうはしたくないけれど…彼にはその価値があるわ。なんと言ってもアレキサンドロス大王の瞳をお持ちですもの」
と言い笑う。
「私を恐喝か…さすがに毒蜘蛛と言われるだけあるな。……誰か!」
アンジュリカはシャルルゥを抱き上げ、テーブルに置かれた瓶を手にすると立ち上がり人を呼んだ。すぐに来たのは控えていた客室メイドで、大臣に取次、王宮御用達の証を持たせるように告げると歩き始めた。
メアリを置き去りにした形だが、彼女の目論見にまんまとはまった自分の不甲斐なさと、あの場で迂闊だった自分にアンジュリカはむかむかとしていた。
「あの、アンジュリカ様……どちらへ……」
シーツ越しにシャルルゥが熱っぽい吐息を吐くからか、アンジュリカはその苛立ちと胸の奥のもやもやとした気持ち悪さをどうすることも出来ずさらに苛立ってシャルルゥを抱き締める。
「ーー部屋に戻る」
会場はヒューチャーが適当にあしらう筈だ。ロワイヤルはシードルとは別に一件出ている。よい木材が手に入り、アンジュリカが座る玉座の横にシャルルゥの優雅な椅子をしつらえるつもりで心が沸き立ち、シャルルゥの安否に失念していたのはアンジュリカ自身だ。
私室に戻るとアンジュリカはシャルルゥを寝台に横倒し、シャルルゥの催淫剤の効果が続く身体に掛けたシーツを剥がすと、少年然とした滑らかな肩から腰に指を這わせ、尻の間に指でくすぐるよう揺らすといきなり緩んだアヌスに二本の指を埋め込んだ。
「ひっ、だめっ……」
息を噛み殺していたシャルルゥは深々と無骨な指で貫かれ、手足をつっぱらさせた。腸襞が快楽痙攣を繰り返し、前立腺が薄い肉越し擦り上げられる度に、全身に悦楽の火花が飛び散る。
達っすることを隔たれられた身体へのさらなる刺激に、意識が飛びそうだった。
「何故、私の横から離れた!王宮と言えど、安全ではない」
シャルルゥの感じてたまらない前立腺の縁を、指で揺さぶり繰り返し押し付けるとシャルルゥは泣き叫んだ。しかし許さない。
直腸を取り巻く括約筋から脳天まで快楽に支配され、シャルルゥは背を反らせる。
「ひぅ……申し訳あり、ま……っっ!」
寝台のなめらかな敷布にペニス先を擦りつけて自ら腰をくねらせるが、硬く戒める輪が肉に食い込み射精を阻んでいた。
アンジュリカはシャルルゥの肩をきつく抱き寄せるとシャルルゥを抱きしめながら、深いため息をつく。
「私は言ったはずだ、私から離れたところで飲食をしてはならぬと。なのに……っ!」
言いながら小刻みに震える自分を感じていた。
「すみません……アンジュリカ様っ」
シャルルゥは混濁する意識の中で、アンジュリカの朝の言葉を思い出した。
「わたしがあさはかでした……」
アンジュリカはシャルルゥのから体を離した。横向きに寝かされたシャルルゥは、両手足を投げ出して朦朧としている。それを見下ろした。
「渡された飲み物を何故飲んだ」
アンジュリカはアルカディアシードルの瓶を手にして蓋を開け匂いを嗅ぎ少しだけ指に取ると舌に乗せる。
大概の毒の味を知る舌が無害だと告げて来た。アンジュリカはシャルルゥに毒殺される危険もあると警戒していて、メアリに出鼻を挫かれたのだ。シャルルゥを一人にした自分の落ち度なのだが、どうにも胸がむかむかしていた。
「メアリが気に入ったか?」
威圧的にシャルルゥを見下ろして、
「答えろ、シャルルゥ。今すぐに」
低い声で命令をした。
「アンジュリカ様……」
シャルルゥがなんとか声を出して形のよい小さな唇を噛み、それから小さな声で呟く。
「あの方は……声をかけてくれ、寂しかった、のです」
「寂しい?私は近くにいたぞ」
シャルルゥは小刻みに震えながら首を横に振り、アンジュリカに向けて頭を下げた。
「あの広間には、王宮には、わたしの居場所がありません。アンジュリカ様の横にしか……。アンジュリカ様は、皆さまの王であり……分かっているのです」
シャルルゥの寂しさを理解しているつもりで、全く配慮していなかったと、アンジュリカはシャルルゥを見下ろした。
今はまだ王配として名乗ることは出来ぬからと、侍従のような地味な衣装を着せた。だからこそ誰もシャルルゥに見向きもせず、安心していたわけだが、シャルルゥには一人孤独を味わっていた。
アンジュリカは喉が乾き、手にしたアルカディアシードルの蓋を空けると、口をつける。
「甘いな、飲むか?」
身体を丸くしているシャルルゥは首を横に振り涙を溜めてアンジュリカを見上げた。
「今後は私から絶対に離しはしない。安心しろ」
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