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11 地中海の毒蜘蛛
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アルビオンでは王家主催のロイヤルレセプションパーティーによる物品輸入の契約が取られる。
月初の新月に賓客を招待しているのは当然この王宮の主人アルビオンの女王で、ガリアどころかエウロパ大陸内外のの大富豪達に囲まれていた。
月に一度の無礼講は賑やかで、石工技師として飛び回っているヒューチャーもこの日ばかりは王族として立ち振る舞い、グランは通訳としてアルビオンの橋渡しとして働いている。
その中で凛々しく気高くしかし涼しい顔をしているのが、シャルルゥの配偶者である、アンジュリカ・アルビオン。だが、配偶者という言葉は、まだふさわしくない。アンジュリカが懐妊していない今は、内縁というか、そもそも公表さえされていない。
豊かに広がる赤の髪に二メートルを超える大柄で美しい肉体美を誇る獅子たる彼女こそが、アルビオン王国の頂点でアルビオンそのもの。
十歳で王国女王となり、見事な手腕で国土を広げていったという。
「珍しくドレスを着ているのね。何が彼女を変えたのかしら」
バルコニーにもたれかかり立っていたシャルルゥは、いつの間にか隣に来ていた、女の言葉に目を向けた。
「アンジュリカ様が、なにか?」
シャルルゥは少し首を傾げる。
「いやですわ。独り言だったのに、恥ずかしい」
ピタリとした黒のイブニングにシルクのショールという扇情的なドレスの女が横にいる。
「赤色女王陛下の周りには武人しかいないと思っていたから。貴方はこんな場所にふさわしく無いような気がするの」
と女に満天のテラスの椅子に誘われた。ちらりと見ると、アンジュリカはまだ沢山の人に囲まれて相当かかりそうだ。
パーティーで立っているのにも、居場所がなく場違いな自分への視線にもやや疲れ気味だったので、彼女の誘いに乗ることにした。
部屋は繋がっているのだから大丈夫のはず、シャルルゥはそう思って微笑む。
人少ないテラスのテーブルには、グラスが二本用意され、給仕が金の箱を持って来て、氷の中から瓶を出した。
細めのワイングラスに注がれるスパークリングワインを手に、
「どうぞ」
と促されシャルルゥは口を付け、
「おいしい」
と呟いた。
「我が国で初めて売り出す発泡林檎酒。お口に合って嬉しいわ。国の工房で作ったものですの」
甘すぎないフルーティなアロマに、緊張した空間に乾いていたシャルルゥは喉を鳴らした。
「貴女は……」
「あらまあ、私ったら。自己紹介もしていなくて。はじめまして、王配殿下。私はメアリ・ネオポリス。地中海の島の統括者の娘ですわ」
メアリの金の瞳はまるでフレアのようで、外側が暗い日輪があり中心に向かって色味が失せたものを不思議な感じだと見つめてしまった。
「王配殿下?」
「あ、いえ、こんな美味しい飲み物は初めてで……」
不躾に見つめてしまった照れ隠しのように、空になったグラスに目をやる。
「ええ、美味しいでしょう?おかわりはいかが?でもアンジュリカ女王陛下に頭を下げなければ、この『アルカディア・シードル』は日の目を見ないのですわ」
メアリのストレートの長い美しい髪はまるで零れ落ちる蜂蜜みたいに金色で美しく、注がれた二杯目の金色の発泡林檎酒は、彼女の化身のように感じながら、シャルルゥは話を聞きながら飲み干した。
「こんなに美味しいのに……日の目を……あび……?」
ぐらりと世の中が揺れる。
「大丈夫ですか?王配殿下」
王配殿下、そんな自己紹介を、そんな話をしただろうか、していないはずだ。
「どうして……」
知っているのかと問いたかったが、頭が回らない。
メアリが妖艶な微笑みを浮かべた顔をしていて、シャルルゥはテーブルに突っ伏した。
下肢に濡れた感触が伝わり、シャルルゥは意識を浮き上げる。
「だめ、アンジュリカ様……んっ……やぁ……」
ペニスの先を舐められる悦い感覚に、恥ずかしくてたまらない。
「あの女にこの声を聞かせているのね」
アンジュリカの低い声ではない声に、シャルルゥは一気に覚醒した。
「え、誰っ?ーーは、あ……」
しかしまたとろりと、意識が歪む。
一糸纏わぬ姿にされペニスを舐められて感じ入っていることだけが鮮明で、シャルルゥは悦楽に溺れていた。
「あ、んっ……」
ペニスの下の睾丸とまだ生えそろわない金の下生えまで奥深く飲み込んでは、シャルルゥのペニスを扱いているのは、コルセットにレースガーターストッキングのガリア式レディの妖艶な嗜みにスレンダーな肢体を惜しみなく晒しているメアリだった。
月初の新月に賓客を招待しているのは当然この王宮の主人アルビオンの女王で、ガリアどころかエウロパ大陸内外のの大富豪達に囲まれていた。
月に一度の無礼講は賑やかで、石工技師として飛び回っているヒューチャーもこの日ばかりは王族として立ち振る舞い、グランは通訳としてアルビオンの橋渡しとして働いている。
その中で凛々しく気高くしかし涼しい顔をしているのが、シャルルゥの配偶者である、アンジュリカ・アルビオン。だが、配偶者という言葉は、まだふさわしくない。アンジュリカが懐妊していない今は、内縁というか、そもそも公表さえされていない。
豊かに広がる赤の髪に二メートルを超える大柄で美しい肉体美を誇る獅子たる彼女こそが、アルビオン王国の頂点でアルビオンそのもの。
十歳で王国女王となり、見事な手腕で国土を広げていったという。
「珍しくドレスを着ているのね。何が彼女を変えたのかしら」
バルコニーにもたれかかり立っていたシャルルゥは、いつの間にか隣に来ていた、女の言葉に目を向けた。
「アンジュリカ様が、なにか?」
シャルルゥは少し首を傾げる。
「いやですわ。独り言だったのに、恥ずかしい」
ピタリとした黒のイブニングにシルクのショールという扇情的なドレスの女が横にいる。
「赤色女王陛下の周りには武人しかいないと思っていたから。貴方はこんな場所にふさわしく無いような気がするの」
と女に満天のテラスの椅子に誘われた。ちらりと見ると、アンジュリカはまだ沢山の人に囲まれて相当かかりそうだ。
パーティーで立っているのにも、居場所がなく場違いな自分への視線にもやや疲れ気味だったので、彼女の誘いに乗ることにした。
部屋は繋がっているのだから大丈夫のはず、シャルルゥはそう思って微笑む。
人少ないテラスのテーブルには、グラスが二本用意され、給仕が金の箱を持って来て、氷の中から瓶を出した。
細めのワイングラスに注がれるスパークリングワインを手に、
「どうぞ」
と促されシャルルゥは口を付け、
「おいしい」
と呟いた。
「我が国で初めて売り出す発泡林檎酒。お口に合って嬉しいわ。国の工房で作ったものですの」
甘すぎないフルーティなアロマに、緊張した空間に乾いていたシャルルゥは喉を鳴らした。
「貴女は……」
「あらまあ、私ったら。自己紹介もしていなくて。はじめまして、王配殿下。私はメアリ・ネオポリス。地中海の島の統括者の娘ですわ」
メアリの金の瞳はまるでフレアのようで、外側が暗い日輪があり中心に向かって色味が失せたものを不思議な感じだと見つめてしまった。
「王配殿下?」
「あ、いえ、こんな美味しい飲み物は初めてで……」
不躾に見つめてしまった照れ隠しのように、空になったグラスに目をやる。
「ええ、美味しいでしょう?おかわりはいかが?でもアンジュリカ女王陛下に頭を下げなければ、この『アルカディア・シードル』は日の目を見ないのですわ」
メアリのストレートの長い美しい髪はまるで零れ落ちる蜂蜜みたいに金色で美しく、注がれた二杯目の金色の発泡林檎酒は、彼女の化身のように感じながら、シャルルゥは話を聞きながら飲み干した。
「こんなに美味しいのに……日の目を……あび……?」
ぐらりと世の中が揺れる。
「大丈夫ですか?王配殿下」
王配殿下、そんな自己紹介を、そんな話をしただろうか、していないはずだ。
「どうして……」
知っているのかと問いたかったが、頭が回らない。
メアリが妖艶な微笑みを浮かべた顔をしていて、シャルルゥはテーブルに突っ伏した。
下肢に濡れた感触が伝わり、シャルルゥは意識を浮き上げる。
「だめ、アンジュリカ様……んっ……やぁ……」
ペニスの先を舐められる悦い感覚に、恥ずかしくてたまらない。
「あの女にこの声を聞かせているのね」
アンジュリカの低い声ではない声に、シャルルゥは一気に覚醒した。
「え、誰っ?ーーは、あ……」
しかしまたとろりと、意識が歪む。
一糸纏わぬ姿にされペニスを舐められて感じ入っていることだけが鮮明で、シャルルゥは悦楽に溺れていた。
「あ、んっ……」
ペニスの下の睾丸とまだ生えそろわない金の下生えまで奥深く飲み込んでは、シャルルゥのペニスを扱いているのは、コルセットにレースガーターストッキングのガリア式レディの妖艶な嗜みにスレンダーな肢体を惜しみなく晒しているメアリだった。
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