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3 見知らぬ部屋
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目が醒めると…そこは見知らぬ部屋だった。シャルルゥはそっと信じられないほど柔らかな寝台から降りた。
「ここは……」
さらりとしたシャツドレスの寝巻は、多分シルク。身体の痛みもなく、驚くほど高い天井とシャンデリアを呆然と眺める。
あの日ーー
ウィル領主の城に連れていかれる筈だったシャルルゥは、人買いに巻き込まれた。母が呼んだはずの辻馬車が人買いと手を組んでいたのか、辻馬車はあっという間に唐突に男爵に売られた。
逃げようとしたところを鞭打たれ、恐怖のあまり言いなりにされていたのをあの赤髪の女性が助けて、助けてくれたのだろうか…?
「起きられましたか?」
「え……?」
「お召しかえを」
黒檀の扉が開き、メイドが数名入ってくる。黒服に白のエプロンは、シャルルゥの母同様、爵位屋敷に仕えるメイドの出で立ちで、ここは母が仕えるウィル領主の屋敷であるのではと思った。
「あの、ここは」
年配のメイドは何も言わずにシャルルゥの服の召し替えを要求するが、そこに下着がないのに気づく。それに何も言えずシャルルゥは下着のないまま柔らかな生地のキュロットに脚を通して、チュニック丈ブラウスを着た。
首元をリボンで結ばれて、
「こちらにお越しください」
と部屋を出て廊下を案内される。
通りすがりの人々がシャルルゥに道を開け、頭を下げて礼を取る仕草に怯えながら、一段と大きな黒檀の扉へ案内が止まった。
扉を守る屈強な男二人組がメイドの目配せに頷き、重そうな扉を開く。
「ここからはお一人で」
入った瞬間、王の座に忘れもしない……豪華な赤髪に、赤い瞳のーー
思い出というには、余りにも強烈な出会いの追憶に、頬が恥辱に上気した。
「シャルルゥ、起きたか!」
立ち上がった女はふわりとした赤髪を一部高く上で結び、金の彫刻が施された胸当て甲冑を付け、男装をしている。
王座に座り考え込んでいた姿は気品に溢れ、まさに赤炎の神のようだ。
甲冑から垂らす緋色のマントが翻り、三段の階段を降りシャルルゥの前にやってきた。
「ようこそ、我が城へ。我が夫よ」
「我が城……?」
女がシャルルゥの手を取り、シャルルゥの手の甲に唇をつける。
「私はアンジュリカ。アルビオンの女王だ。我が夫よ」
「夫……わたしが?」
「……聞いてはいないのか?お前はウィルとアルビオンの恒久平和のために、アルビオンへ婿入りをするために連れて来られたのだ」
たしかにウィル領主はメイドである母に手をつけ、シャルルゥが生まれた。しかしシャルルゥは領主屋敷には入ることなく、田舎の全寮制の学校で学びそのまま学校事務員として働いていたのだ。
「だから……わたしをウィル領主屋敷へ……」
アルビオンの血潮と呼ばれる勇猛な女の夫。国を守るため、そのための駒。
「お前の役目は、私に子どもを産ませることだ。逆らうとウィルを私に焼き尽くされることになるぞ。いつでもお前には胤馬として働いてもらう」
抗えないーーウィルの平和のための道具であることを母は承知していたのだろう。
アンジュリカの掌に、怖ず怖ずと白い手を乗せた。
「いい子だ、シャルルゥ。お前に無礼を働いた男爵はもういない。昨晩のうちに首を刎ねさせた」
赤い瞳が極上の笑みを誘い、シャルルゥを謁見の間から奥へ強引に誘う。
「謁見の間の裏が私とお前の生活の場になる。執務室があり、続いて王の私室だ」
執務室は簡素で広く会議も執り行えるがどちらかといえば無骨。しかしその奥の王の私室はさらに広く華やかで明るい雰囲気で、流線型のなだらかで優美なテーブルと椅子、そして幾重にも色シルクの垂れが重なる広い寝台が見えた。
「お前のワードローブも作らねばならないな。王の配偶者の部屋はまたその隣だが、私から離れることは許さない」
シャルルゥは追い詰められるように、アンジュリカに接吻をされた。
「お前は接吻も知らないのか。下手くそめ」
アンジュリカの唇が、シャルルゥの唇の上で話す。
「意地悪をいわないでください」
もう一度、唇を割られてアンジュリカの舌がシャルルゥの舌に絡み、吸われて蹂躙する舌に、ぞくぞくと背に快楽の火花が散る。
舌を強く吸われながら噛まれる快楽に、シャルルゥは腰が浮きそうになった。
「こっちも、味見をさせてもらおう」
舌を離されて、荒い息のままアンジュリカを見ていると、アンジュリカが絨毯に膝をつきシャルルゥのキュロットを下げて、静まるペニスを外気に晒した。
「あっ」
立ったままなのにと抵抗する間もなく、パクリとペニスに先を喰わえられて、生暖かい感触に、シャルルゥは声を押し殺す。
「気持ちいいか?」
敏感な鈴口を舐めて舌を入れられる気持ちよさに、
「……いやっ」
と呟きながら、真っ赤になった。
「気持ちが良いなら、口で伝えることだ。シャルルゥ、命令だ。胤を出す時も口で告げよ」
指先で扱かれながら舌で味合われる悦楽に、膝を震わせながら達してしまいそうになり、
「アンジュリカ様……出てしまいそうで……」
そう告げるとアンジュリカに寝台へ突き飛ばされ、排出に向け反り返るペニスを掴まれ、アンジュリカがパンタロンを下ろして脱いだ熱いヴァギナの粘肉に包まれた。
「ここは……」
さらりとしたシャツドレスの寝巻は、多分シルク。身体の痛みもなく、驚くほど高い天井とシャンデリアを呆然と眺める。
あの日ーー
ウィル領主の城に連れていかれる筈だったシャルルゥは、人買いに巻き込まれた。母が呼んだはずの辻馬車が人買いと手を組んでいたのか、辻馬車はあっという間に唐突に男爵に売られた。
逃げようとしたところを鞭打たれ、恐怖のあまり言いなりにされていたのをあの赤髪の女性が助けて、助けてくれたのだろうか…?
「起きられましたか?」
「え……?」
「お召しかえを」
黒檀の扉が開き、メイドが数名入ってくる。黒服に白のエプロンは、シャルルゥの母同様、爵位屋敷に仕えるメイドの出で立ちで、ここは母が仕えるウィル領主の屋敷であるのではと思った。
「あの、ここは」
年配のメイドは何も言わずにシャルルゥの服の召し替えを要求するが、そこに下着がないのに気づく。それに何も言えずシャルルゥは下着のないまま柔らかな生地のキュロットに脚を通して、チュニック丈ブラウスを着た。
首元をリボンで結ばれて、
「こちらにお越しください」
と部屋を出て廊下を案内される。
通りすがりの人々がシャルルゥに道を開け、頭を下げて礼を取る仕草に怯えながら、一段と大きな黒檀の扉へ案内が止まった。
扉を守る屈強な男二人組がメイドの目配せに頷き、重そうな扉を開く。
「ここからはお一人で」
入った瞬間、王の座に忘れもしない……豪華な赤髪に、赤い瞳のーー
思い出というには、余りにも強烈な出会いの追憶に、頬が恥辱に上気した。
「シャルルゥ、起きたか!」
立ち上がった女はふわりとした赤髪を一部高く上で結び、金の彫刻が施された胸当て甲冑を付け、男装をしている。
王座に座り考え込んでいた姿は気品に溢れ、まさに赤炎の神のようだ。
甲冑から垂らす緋色のマントが翻り、三段の階段を降りシャルルゥの前にやってきた。
「ようこそ、我が城へ。我が夫よ」
「我が城……?」
女がシャルルゥの手を取り、シャルルゥの手の甲に唇をつける。
「私はアンジュリカ。アルビオンの女王だ。我が夫よ」
「夫……わたしが?」
「……聞いてはいないのか?お前はウィルとアルビオンの恒久平和のために、アルビオンへ婿入りをするために連れて来られたのだ」
たしかにウィル領主はメイドである母に手をつけ、シャルルゥが生まれた。しかしシャルルゥは領主屋敷には入ることなく、田舎の全寮制の学校で学びそのまま学校事務員として働いていたのだ。
「だから……わたしをウィル領主屋敷へ……」
アルビオンの血潮と呼ばれる勇猛な女の夫。国を守るため、そのための駒。
「お前の役目は、私に子どもを産ませることだ。逆らうとウィルを私に焼き尽くされることになるぞ。いつでもお前には胤馬として働いてもらう」
抗えないーーウィルの平和のための道具であることを母は承知していたのだろう。
アンジュリカの掌に、怖ず怖ずと白い手を乗せた。
「いい子だ、シャルルゥ。お前に無礼を働いた男爵はもういない。昨晩のうちに首を刎ねさせた」
赤い瞳が極上の笑みを誘い、シャルルゥを謁見の間から奥へ強引に誘う。
「謁見の間の裏が私とお前の生活の場になる。執務室があり、続いて王の私室だ」
執務室は簡素で広く会議も執り行えるがどちらかといえば無骨。しかしその奥の王の私室はさらに広く華やかで明るい雰囲気で、流線型のなだらかで優美なテーブルと椅子、そして幾重にも色シルクの垂れが重なる広い寝台が見えた。
「お前のワードローブも作らねばならないな。王の配偶者の部屋はまたその隣だが、私から離れることは許さない」
シャルルゥは追い詰められるように、アンジュリカに接吻をされた。
「お前は接吻も知らないのか。下手くそめ」
アンジュリカの唇が、シャルルゥの唇の上で話す。
「意地悪をいわないでください」
もう一度、唇を割られてアンジュリカの舌がシャルルゥの舌に絡み、吸われて蹂躙する舌に、ぞくぞくと背に快楽の火花が散る。
舌を強く吸われながら噛まれる快楽に、シャルルゥは腰が浮きそうになった。
「こっちも、味見をさせてもらおう」
舌を離されて、荒い息のままアンジュリカを見ていると、アンジュリカが絨毯に膝をつきシャルルゥのキュロットを下げて、静まるペニスを外気に晒した。
「あっ」
立ったままなのにと抵抗する間もなく、パクリとペニスに先を喰わえられて、生暖かい感触に、シャルルゥは声を押し殺す。
「気持ちいいか?」
敏感な鈴口を舐めて舌を入れられる気持ちよさに、
「……いやっ」
と呟きながら、真っ赤になった。
「気持ちが良いなら、口で伝えることだ。シャルルゥ、命令だ。胤を出す時も口で告げよ」
指先で扱かれながら舌で味合われる悦楽に、膝を震わせながら達してしまいそうになり、
「アンジュリカ様……出てしまいそうで……」
そう告げるとアンジュリカに寝台へ突き飛ばされ、排出に向け反り返るペニスを掴まれ、アンジュリカがパンタロンを下ろして脱いだ熱いヴァギナの粘肉に包まれた。
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