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7章『デバイスのアイ』
54 ファナ、ご飯を作る
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ファナは朝日の薄明かりに目を開き、ジューゴの脇の下から這い出した。
「ん……」
伸びをすると、両の胸の下が痛い。少し大きくなった気がする……のは気のせい?
痩せて背の高いファナは、成長している。普通のリムは成長なんてしないのに。
ファナは冬には十一歳になる。あと四年、ジューゴと一緒にいられる。
「朝ごはん……」
ジューゴはまだ眠っていて、寝台から降りると、
「無理しないで」
とジューゴがそのままの格好で、声をかけてきた。
「大丈夫です、心配しないでください。ジューゴ様はまだ寝ていてくださいね」
「うん」
ぼさぼさになった髪を手櫛で整え、借り物のを着ず、リビングダイニングへ向かう。
ティムは誰よりも早く起きて、兎を捕りに行っていていないから、裸でも大丈夫だと思う。借り物の服はやはり辛い。
「パンに肉をはさんで……新しい葉っぱを……」
ファナが食べられる葉を森から聞いていて、少し苦味があるがジューゴが教えてくれたタンポポの葉を入れたパンを四つ作った。
「出来ました」
「あれ、ファナ?……うわっ!」
ティムが兎を捕まえて戻って来て、ファナの裸体を見て後ろを向く。
「きゃあ」
仕方なくコートが何を持ってこなければと部屋へ戻ろうとした時、ティムがふわりとタオルをファナにかけてきた。
「俺のでごめん。でも……さあ」
リムに憧れているティムは、ファナにもシャルルにも優しい。
「ファナ、大将が異世界人本当か?その大将にリムの刻印が反応したのか?」
カップに水を入れてティムが椅子に座ったのを見て、ファナも反対側にちょこんと腰かけた。
タオルを肩からふわりとかけただけのファナは、自分の胸の赤い花びらの痣を指で触れる。
「リムは作られたらにお披露目に出されます。ティムも楽園の箱庭でリムに会ったでしょう?私はジューゴ様に会うまで一度もありません」
ファナはジューゴに会いジューゴと別れ、その後はひたすら逃げた。リム狩りから逃れ、ティムたちに出会った。そしてフーパの屋敷近くでランクルを見つけたのだ。
ジューゴの自然の温かさが、ファナの掴みたかった世界。
「もし、俺がリムを娶っても、ここにいてもいいか?ファナや大将やシャルルと暮らしたい。今だってファナのマスターにはなれないが、いい友達になることは出来る」
ファナの胸のリムを指差して、ティムが男臭い笑いを見せた。
「ジューゴ様がいいと言えば……あ、私もお友達は欲しいです!」
「そ、そうか!では大将を起こしてーー」
起き抜けのジューゴが頭を掻きむしり、声を張るハイムの頭をぽんぽんと撫でる。
「……た、大将っ」
「朝から元気だね。シャルルはまだ寝ているから少し静かにね。ファナはコートを着てね」
「ティム、ありがとうございました」
タオルをティムに渡したファナが寝室に消えると、ジューゴが少し驚いたような顔をして、それから笑った。
「ティム、ファナに優しくしてくれてありがとう。ファナの友達になってくれる?君たち年が近いから。僕は十八歳だしね。ティムは十二歳でしょ」
今度はティムが驚いたような顔をして、それから頭を抱えたのだ。
「十八?その姿でか?髭も生えてないじゃないか!」
「生えてるよ!ほんの少しだけど!」
「生えてない!」
「ーーうるさい、黙れ、下僕!」
全裸でのしのしと歩くシャルルがティムの胸ぐらを掴むと椅子から叩き落とす。
「うわっ、寝起き悪い」
ティムが床に伏して叫ぶが、シャルルは欠伸をしながら置いてある水を飲むと、ファナが慌ててシャツを持って来るのを見て袖を通す。
「今日はイア川に行くのだろう?だったら俺は必要ないな、俺はまだ寝る」
とシャルルが寝室に戻っていってしまう。
「あ、シャルル様、朝ごはんを」
「部屋で食べるから持ってきてくれないか」
リムはよく寝るそうだが、シャルルはやはりよく寝る。ファナも眠るが、シャルルほどではない。
不思議だった。
「食べようか、ファナ」
「はい!」
ティムと三人でテーブルを囲む。一口目のタンポポの葉が苦くて、ファナは目を白黒させた。
「ん……」
伸びをすると、両の胸の下が痛い。少し大きくなった気がする……のは気のせい?
痩せて背の高いファナは、成長している。普通のリムは成長なんてしないのに。
ファナは冬には十一歳になる。あと四年、ジューゴと一緒にいられる。
「朝ごはん……」
ジューゴはまだ眠っていて、寝台から降りると、
「無理しないで」
とジューゴがそのままの格好で、声をかけてきた。
「大丈夫です、心配しないでください。ジューゴ様はまだ寝ていてくださいね」
「うん」
ぼさぼさになった髪を手櫛で整え、借り物のを着ず、リビングダイニングへ向かう。
ティムは誰よりも早く起きて、兎を捕りに行っていていないから、裸でも大丈夫だと思う。借り物の服はやはり辛い。
「パンに肉をはさんで……新しい葉っぱを……」
ファナが食べられる葉を森から聞いていて、少し苦味があるがジューゴが教えてくれたタンポポの葉を入れたパンを四つ作った。
「出来ました」
「あれ、ファナ?……うわっ!」
ティムが兎を捕まえて戻って来て、ファナの裸体を見て後ろを向く。
「きゃあ」
仕方なくコートが何を持ってこなければと部屋へ戻ろうとした時、ティムがふわりとタオルをファナにかけてきた。
「俺のでごめん。でも……さあ」
リムに憧れているティムは、ファナにもシャルルにも優しい。
「ファナ、大将が異世界人本当か?その大将にリムの刻印が反応したのか?」
カップに水を入れてティムが椅子に座ったのを見て、ファナも反対側にちょこんと腰かけた。
タオルを肩からふわりとかけただけのファナは、自分の胸の赤い花びらの痣を指で触れる。
「リムは作られたらにお披露目に出されます。ティムも楽園の箱庭でリムに会ったでしょう?私はジューゴ様に会うまで一度もありません」
ファナはジューゴに会いジューゴと別れ、その後はひたすら逃げた。リム狩りから逃れ、ティムたちに出会った。そしてフーパの屋敷近くでランクルを見つけたのだ。
ジューゴの自然の温かさが、ファナの掴みたかった世界。
「もし、俺がリムを娶っても、ここにいてもいいか?ファナや大将やシャルルと暮らしたい。今だってファナのマスターにはなれないが、いい友達になることは出来る」
ファナの胸のリムを指差して、ティムが男臭い笑いを見せた。
「ジューゴ様がいいと言えば……あ、私もお友達は欲しいです!」
「そ、そうか!では大将を起こしてーー」
起き抜けのジューゴが頭を掻きむしり、声を張るハイムの頭をぽんぽんと撫でる。
「……た、大将っ」
「朝から元気だね。シャルルはまだ寝ているから少し静かにね。ファナはコートを着てね」
「ティム、ありがとうございました」
タオルをティムに渡したファナが寝室に消えると、ジューゴが少し驚いたような顔をして、それから笑った。
「ティム、ファナに優しくしてくれてありがとう。ファナの友達になってくれる?君たち年が近いから。僕は十八歳だしね。ティムは十二歳でしょ」
今度はティムが驚いたような顔をして、それから頭を抱えたのだ。
「十八?その姿でか?髭も生えてないじゃないか!」
「生えてるよ!ほんの少しだけど!」
「生えてない!」
「ーーうるさい、黙れ、下僕!」
全裸でのしのしと歩くシャルルがティムの胸ぐらを掴むと椅子から叩き落とす。
「うわっ、寝起き悪い」
ティムが床に伏して叫ぶが、シャルルは欠伸をしながら置いてある水を飲むと、ファナが慌ててシャツを持って来るのを見て袖を通す。
「今日はイア川に行くのだろう?だったら俺は必要ないな、俺はまだ寝る」
とシャルルが寝室に戻っていってしまう。
「あ、シャルル様、朝ごはんを」
「部屋で食べるから持ってきてくれないか」
リムはよく寝るそうだが、シャルルはやはりよく寝る。ファナも眠るが、シャルルほどではない。
不思議だった。
「食べようか、ファナ」
「はい!」
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