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3章 『刻を越えて』
22 ジューゴ、老人に会う
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ズキッ……ズキッ……ズキッ……と心臓の鼓動に呼応するように、頭が痛み目を覚ました。
「あれ……?」
僕は混乱して回りを見渡す。
石を組み上げた石造りの壁に暖炉には赤々とした火が入り、僕はこちらの世界に来た瞬間を思い出してほっとした。と、同時に親友二人がくっついたんだと寂しくもなる。
「銘有りリムの刻印には核がある。その核は死と共に開かれ次元回廊となる。君は巻き込まれた犠牲者だ」
石の暖炉の前の椅子に、背を向けた老人が座っていた。
「ここは……いっ……つ……」
「君は頭を強く打っている。あまり動かない方がいい。ーー名前は?」
白い髪を撫で付けた老人は、ゆっくりと振り向いた。
『鈴木重吾』と言うべきか迷ったけど、どう見ても日本ではない世界に、
「鈴木重吾……ジューゴです」
そう答えてみた。うん、その方がしっくり来る。
「ジューゴ君か」
温かな体温が左の脇の下にありそろりと掛布を剥ぐと、すっぽんぽんの全裸な自分にぴたりと小さな女の子がくっついていて、僕は慌てて起き上がろうとしたが、
「まだ、起き上がらない方がいい」
と止められた。
女の子が傷ひとつない綺麗な丸みのある小さな裸体をぴたりと僕に貼り付けていて、僕は困った顔をした。おじいさん、孫が知らない男にくっついて寝てますよー。
「この子が君を見つけたのだ。家から滅多に出ない子なのに」
僕は動揺して眠る女の子を見つめた。目の前で眠る女の子は子どもらしくふっくらとして、骨ばったところを感じさせない柔らかさを持っている。
「ここは……一体……僕は」
「ふむ……混乱しているようだな、整理しよう」
「あの、おじいさんは……」
おじいさんがしわしわの顔を綻ばせた。
「クサカだ。君と同じようにこの世界に落ちて来た科学者だよ」
クサカ博士がスープを差し出してきて、僕はなにも着ていない身体の半身を起こすと、まだすやすやと寝息を立てる女の子の横に座る。
「君は東の川から流されてきていてね、多分城の近く川でリムが一人殺されて実験が行われたんだろう」
僕はクサカ博士の言葉に首を傾げた。
「東の国の王子は次元回廊にこだわっていて、リム狩りをしているらしい。今回は回廊が開いたらしいが、君は偶然にも巻き込まれて転移してしまったということだ。言葉が理解できるのはリムの核に君が包まれてこの世界に渡って来たからだよ。文字も読めるだろうが、書くのは練習した方がいいね」
クサカ博士は静かに語っていた。僕は
「日本には帰れませんか?」
と聞いてみた。
「銘有りリムを一人潰せば帰ることが出来るかもしれないが、元の世界に戻れるとは限らない。平行世界には二つあるのだよ。分岐型と、重層型。君は知っているかな?分岐型は自分の選択により世界が変化すると言うものだ。重層型は、世界には今自分のいるところとは違う世界が、薄いミルフィーユのような皮膜となり接点もなく平行に過ぎていく世界なのだ。しかしだね、爆発的なエネルギーのぶつかり合いで…噴火だとか、隕石だとか…だね、たまに部分的にくっついて干渉してしまう。それが、世界的には神隠しだの、神だの言われる由縁となる。妖精や妖怪なんていう生き物も、人間世界に吐き出された別世界の住人の一部なんだよ」
クサカ博士が、深いため息をついた。
「だがね、この世界の人間は人工的に高濃度エネルギー物質を核として作り出し、リムという『高次元人工生命体』を作り出してしまったんだよ。そしてその過程から有機生命金属を得た」
僕には全く理解が出来ずにいた。
「私はそれに魅了された。日本のクローン技術以上の技術だ。私も科学者の端くれとして沢山のリムを制作した。もっと能力の高いものをより素晴らしいものをと考え作り続けた。この子もそうだ人工生命体だ」
僕の横にいる金髪の女の子は人工生命体……。
クサカ博士は静かに、言い放った。
楽園と呼ばれるリム量産工場で研究していたクサカ博士によると、東の上流の城では何度も回廊が開かれたために時空の歪みが出来ていて、僕はそれ巻き込まれ川を流されていたらしい。
何日も部屋で寝ていた僕はめまいが治まるまでベッドに拘束され、女の子に甲斐甲斐しくお世話をされていた。
尿意までお世話をしようとする女の子に、せめて立ちトイレに行かせてくださいと森の隅に行ったものの、女の子が着いてくるしで放尿シーンをバッチリ見られる羞恥プレイ付きだった。
「ジューゴ様、ランクル洗ってもいいですか?」
「いいよ、優しくしてね」
女の子は全裸でランクルと川に入って遊んでいる。僕は昨日のことを思い出しながらぼんやりと川の辺りにいた。
「あれ……?」
僕は混乱して回りを見渡す。
石を組み上げた石造りの壁に暖炉には赤々とした火が入り、僕はこちらの世界に来た瞬間を思い出してほっとした。と、同時に親友二人がくっついたんだと寂しくもなる。
「銘有りリムの刻印には核がある。その核は死と共に開かれ次元回廊となる。君は巻き込まれた犠牲者だ」
石の暖炉の前の椅子に、背を向けた老人が座っていた。
「ここは……いっ……つ……」
「君は頭を強く打っている。あまり動かない方がいい。ーー名前は?」
白い髪を撫で付けた老人は、ゆっくりと振り向いた。
『鈴木重吾』と言うべきか迷ったけど、どう見ても日本ではない世界に、
「鈴木重吾……ジューゴです」
そう答えてみた。うん、その方がしっくり来る。
「ジューゴ君か」
温かな体温が左の脇の下にありそろりと掛布を剥ぐと、すっぽんぽんの全裸な自分にぴたりと小さな女の子がくっついていて、僕は慌てて起き上がろうとしたが、
「まだ、起き上がらない方がいい」
と止められた。
女の子が傷ひとつない綺麗な丸みのある小さな裸体をぴたりと僕に貼り付けていて、僕は困った顔をした。おじいさん、孫が知らない男にくっついて寝てますよー。
「この子が君を見つけたのだ。家から滅多に出ない子なのに」
僕は動揺して眠る女の子を見つめた。目の前で眠る女の子は子どもらしくふっくらとして、骨ばったところを感じさせない柔らかさを持っている。
「ここは……一体……僕は」
「ふむ……混乱しているようだな、整理しよう」
「あの、おじいさんは……」
おじいさんがしわしわの顔を綻ばせた。
「クサカだ。君と同じようにこの世界に落ちて来た科学者だよ」
クサカ博士がスープを差し出してきて、僕はなにも着ていない身体の半身を起こすと、まだすやすやと寝息を立てる女の子の横に座る。
「君は東の川から流されてきていてね、多分城の近く川でリムが一人殺されて実験が行われたんだろう」
僕はクサカ博士の言葉に首を傾げた。
「東の国の王子は次元回廊にこだわっていて、リム狩りをしているらしい。今回は回廊が開いたらしいが、君は偶然にも巻き込まれて転移してしまったということだ。言葉が理解できるのはリムの核に君が包まれてこの世界に渡って来たからだよ。文字も読めるだろうが、書くのは練習した方がいいね」
クサカ博士は静かに語っていた。僕は
「日本には帰れませんか?」
と聞いてみた。
「銘有りリムを一人潰せば帰ることが出来るかもしれないが、元の世界に戻れるとは限らない。平行世界には二つあるのだよ。分岐型と、重層型。君は知っているかな?分岐型は自分の選択により世界が変化すると言うものだ。重層型は、世界には今自分のいるところとは違う世界が、薄いミルフィーユのような皮膜となり接点もなく平行に過ぎていく世界なのだ。しかしだね、爆発的なエネルギーのぶつかり合いで…噴火だとか、隕石だとか…だね、たまに部分的にくっついて干渉してしまう。それが、世界的には神隠しだの、神だの言われる由縁となる。妖精や妖怪なんていう生き物も、人間世界に吐き出された別世界の住人の一部なんだよ」
クサカ博士が、深いため息をついた。
「だがね、この世界の人間は人工的に高濃度エネルギー物質を核として作り出し、リムという『高次元人工生命体』を作り出してしまったんだよ。そしてその過程から有機生命金属を得た」
僕には全く理解が出来ずにいた。
「私はそれに魅了された。日本のクローン技術以上の技術だ。私も科学者の端くれとして沢山のリムを制作した。もっと能力の高いものをより素晴らしいものをと考え作り続けた。この子もそうだ人工生命体だ」
僕の横にいる金髪の女の子は人工生命体……。
クサカ博士は静かに、言い放った。
楽園と呼ばれるリム量産工場で研究していたクサカ博士によると、東の上流の城では何度も回廊が開かれたために時空の歪みが出来ていて、僕はそれ巻き込まれ川を流されていたらしい。
何日も部屋で寝ていた僕はめまいが治まるまでベッドに拘束され、女の子に甲斐甲斐しくお世話をされていた。
尿意までお世話をしようとする女の子に、せめて立ちトイレに行かせてくださいと森の隅に行ったものの、女の子が着いてくるしで放尿シーンをバッチリ見られる羞恥プレイ付きだった。
「ジューゴ様、ランクル洗ってもいいですか?」
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