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二十一章 こんにちは、赤ちゃん?
139 腹実の点滅
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成人年齢の『大人』が母親に抱きしめられている姿を見られるのは、非常に恥ずかしい。そんな姿をシャルスとミカエルにばっちりと見られた。
他意のない笑顔のシャルスのそのやや後ろ隣には、平常心の侍従騎士ミカエルがいる。
つまりは健診が終わったのだろう。
「ーー御母堂とお呼びしてもよろしいですか?初めまして、シャルスと申します」
母様の腕から解き放たれた僕が見たシャルスは、なんだかひどく疲れた顔をしている。マナの検査はなかっただろうが、多分触診はねっちりやられたんだろうなあ。
そう想像してかなり同情し、メイザースに怒りも沸いた。うん、あいつを懲らしめたい。
「国王陛下、わたくしはノリンの母、エルサ・ツェッペリンでございます」
母様が椅子から立ち上がり、深く腰を屈めてドレスの裾を広げて挨拶をする。
「御母堂、お掛けください。ノリン、どうかしたのですか?」
母様が座った後、シャルスが僕の様子に気づいて横に座る。アーネストのことを思い出してなんて言えない。可愛いシャルスも悲しくなるだろう。
「久しぶりに母様に会えて、嬉しくて」
と誤魔化して小さく呟くと、シャルスはちょっと寂しさを感じさせる苦笑をしてから、
「すみません、私が気づかずに。でも御母堂、私はノリンのいない王宮には居たくないと思うくらいなのです。ノリンをツェッペリン公爵領には……」
と矢継ぎ早に話し始める。あ、わあ!恥ずかしい!母様もにこにこしていないで、反論してよ!
精神年齢おじさんが母恋しで泣いたとか思われていて、僕は二人から視線をそらしながら素の口調で思わず
「辞めてくれよ……まじで」
と呟いていた。
「発言をお許しください、陛下」
「御母堂は私にとっても母、ご自由にどうぞ」
とシャルスは僕の横で促す。
「では、腹実が出て落ち着いてからツェッペリン領へ視察にいらしてください。魔動車をお出ししますわ。本日はわたくしが運転してまいりました」
ツェッペリン公爵家に魔動車があるの?
「えっ、母様、運転したの?いいなあ。僕も運転したことないのに」
「ふふふ、すごく便利よ」
それから母様はツェッペリン公爵領地は、今、セネカが滞在していて、次々に建物を構築しているそうだと話してくれた。それを知っているからか、ミカエルも頷いていた。
「一度訪れてみたいです。あ、ええと、ノリンと腹実と三人で」
王族三人か、転移陣で行った方がいいかも。護衛としてミカエルとザクセンとルーザーのマッチョ二人を連れてだな。今日は第一に混ざって警護をしているはずだ。
「うん、シャルス。そうしようね」
僕が笑いかけ、シャルスが微笑んで見下ろす中で、母様が不思議そうにじっと僕を見ていた。
「母様。一体どこを見ているのです?僕は元気ですよ?」
「腹実が点滅しているわ、ノリン」
だからーーえ?マジか!
話しながらやっぱり頭の隅で考えていた黒いマントのことも頭の中から一瞬で吹っ飛びび、僕は下腹を見た。
「うわ、自分のだと違和感があるなあ」
僕が点滅する金の光を見ていると、アズールが
「失礼します」
とベッドに連れていき、
「わ、私、メイザース医師を連れてまいります」
とミカエルが一礼して出ていく。もちろん、扉番の近衛も何らかの緊急事態に気づいたようだが、入室はレーンが断った。
「ノリン、ノリン、ノリンッ」
僕の名前を繰り返すシャルスを見つめ返してみると、ガタガタ震えて落ち着かないである。
「あの、シャルス?僕は痛くもないし、腹実はマナの道を降りてくるだけで、大丈夫だよ?」
「で、でもっ」
「では、陛下。お手伝いください。ノリンがちゃんと腹実を出せるように。リアン」
心配して動揺した表情のシャルスに、母様が声を掛けて、リアンからふっかふかのクッションを手にした。
「これをノリンの背当てにしてください。そう、背とベッドの間に入れて少し前傾姿勢を取ります」
けれどシャルスは手を伸ばせないでいた。母様は困った顔をしていたし、僕はああ……と思った。メリッサは苦しみながらシャルスを産んで、疲弊してマナ枯渇のため産褥で死んだ。それをシャルスは聞いて覚えているんだ。
だから僕はシャルスの手を握り、母様から背当てを貰って背にかい、片膝を立てて足を開いた。レーンが下着の紐を外してくれ、その上からふかふかのタオルを掛ける。性器が丸見えにならない配慮は、いつも通りだ。そして腹実のための王家のおくるみが敷かれた。え、金の縫い取りかよ、すごいな。
「ねえ、シャルス。ツェッペリン領では腹実の人もまあまあいる。だから僕らは腹実を出す方法に長けているよ。女は性器に腹実がつくからそこにマナの道ができる。男は性器とお尻の孔の間にマナの道ができて出てくる。宿り木だって実を捥ぐのに痛みはないだろう?だからマナが強い僕は少し温かいな、くらいなんだよ」
うん、まあ、ミカエルは大変だろうな。セネカはマナが多いし。最悪、摘出手術かな?まあ、傷は治癒できるけどさ。
それに僕はメイザースのことを思い出した。そうだ、あいつへの罰にぴったりじゃないか。
「だからね、心配しないで。ほら、もう降りてきているよ。タオルの中からお腹を撫でて」
シャルスの左手が下腹に触れ、金の光がゆっくりと性器の下までやってくる。シャルスの右手を握ったまま、温かな腹実はお包みにゆっくりと落ちた。
「これが……腹実?」
宿り木の実と同じ拳大だが、柔らかな白い皮膜で覆われているのが違うところだ。金色に光っているのは王族やかなりマナが高い証拠。
他意のない笑顔のシャルスのそのやや後ろ隣には、平常心の侍従騎士ミカエルがいる。
つまりは健診が終わったのだろう。
「ーー御母堂とお呼びしてもよろしいですか?初めまして、シャルスと申します」
母様の腕から解き放たれた僕が見たシャルスは、なんだかひどく疲れた顔をしている。マナの検査はなかっただろうが、多分触診はねっちりやられたんだろうなあ。
そう想像してかなり同情し、メイザースに怒りも沸いた。うん、あいつを懲らしめたい。
「国王陛下、わたくしはノリンの母、エルサ・ツェッペリンでございます」
母様が椅子から立ち上がり、深く腰を屈めてドレスの裾を広げて挨拶をする。
「御母堂、お掛けください。ノリン、どうかしたのですか?」
母様が座った後、シャルスが僕の様子に気づいて横に座る。アーネストのことを思い出してなんて言えない。可愛いシャルスも悲しくなるだろう。
「久しぶりに母様に会えて、嬉しくて」
と誤魔化して小さく呟くと、シャルスはちょっと寂しさを感じさせる苦笑をしてから、
「すみません、私が気づかずに。でも御母堂、私はノリンのいない王宮には居たくないと思うくらいなのです。ノリンをツェッペリン公爵領には……」
と矢継ぎ早に話し始める。あ、わあ!恥ずかしい!母様もにこにこしていないで、反論してよ!
精神年齢おじさんが母恋しで泣いたとか思われていて、僕は二人から視線をそらしながら素の口調で思わず
「辞めてくれよ……まじで」
と呟いていた。
「発言をお許しください、陛下」
「御母堂は私にとっても母、ご自由にどうぞ」
とシャルスは僕の横で促す。
「では、腹実が出て落ち着いてからツェッペリン領へ視察にいらしてください。魔動車をお出ししますわ。本日はわたくしが運転してまいりました」
ツェッペリン公爵家に魔動車があるの?
「えっ、母様、運転したの?いいなあ。僕も運転したことないのに」
「ふふふ、すごく便利よ」
それから母様はツェッペリン公爵領地は、今、セネカが滞在していて、次々に建物を構築しているそうだと話してくれた。それを知っているからか、ミカエルも頷いていた。
「一度訪れてみたいです。あ、ええと、ノリンと腹実と三人で」
王族三人か、転移陣で行った方がいいかも。護衛としてミカエルとザクセンとルーザーのマッチョ二人を連れてだな。今日は第一に混ざって警護をしているはずだ。
「うん、シャルス。そうしようね」
僕が笑いかけ、シャルスが微笑んで見下ろす中で、母様が不思議そうにじっと僕を見ていた。
「母様。一体どこを見ているのです?僕は元気ですよ?」
「腹実が点滅しているわ、ノリン」
だからーーえ?マジか!
話しながらやっぱり頭の隅で考えていた黒いマントのことも頭の中から一瞬で吹っ飛びび、僕は下腹を見た。
「うわ、自分のだと違和感があるなあ」
僕が点滅する金の光を見ていると、アズールが
「失礼します」
とベッドに連れていき、
「わ、私、メイザース医師を連れてまいります」
とミカエルが一礼して出ていく。もちろん、扉番の近衛も何らかの緊急事態に気づいたようだが、入室はレーンが断った。
「ノリン、ノリン、ノリンッ」
僕の名前を繰り返すシャルスを見つめ返してみると、ガタガタ震えて落ち着かないである。
「あの、シャルス?僕は痛くもないし、腹実はマナの道を降りてくるだけで、大丈夫だよ?」
「で、でもっ」
「では、陛下。お手伝いください。ノリンがちゃんと腹実を出せるように。リアン」
心配して動揺した表情のシャルスに、母様が声を掛けて、リアンからふっかふかのクッションを手にした。
「これをノリンの背当てにしてください。そう、背とベッドの間に入れて少し前傾姿勢を取ります」
けれどシャルスは手を伸ばせないでいた。母様は困った顔をしていたし、僕はああ……と思った。メリッサは苦しみながらシャルスを産んで、疲弊してマナ枯渇のため産褥で死んだ。それをシャルスは聞いて覚えているんだ。
だから僕はシャルスの手を握り、母様から背当てを貰って背にかい、片膝を立てて足を開いた。レーンが下着の紐を外してくれ、その上からふかふかのタオルを掛ける。性器が丸見えにならない配慮は、いつも通りだ。そして腹実のための王家のおくるみが敷かれた。え、金の縫い取りかよ、すごいな。
「ねえ、シャルス。ツェッペリン領では腹実の人もまあまあいる。だから僕らは腹実を出す方法に長けているよ。女は性器に腹実がつくからそこにマナの道ができる。男は性器とお尻の孔の間にマナの道ができて出てくる。宿り木だって実を捥ぐのに痛みはないだろう?だからマナが強い僕は少し温かいな、くらいなんだよ」
うん、まあ、ミカエルは大変だろうな。セネカはマナが多いし。最悪、摘出手術かな?まあ、傷は治癒できるけどさ。
それに僕はメイザースのことを思い出した。そうだ、あいつへの罰にぴったりじゃないか。
「だからね、心配しないで。ほら、もう降りてきているよ。タオルの中からお腹を撫でて」
シャルスの左手が下腹に触れ、金の光がゆっくりと性器の下までやってくる。シャルスの右手を握ったまま、温かな腹実はお包みにゆっくりと落ちた。
「これが……腹実?」
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