国王親子に迫られているんだが

クリム

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二十一章 こんにちは、赤ちゃん?

137 カモンの横で

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「坊ちゃん、お時間です」

と扉の前にアズールが僕の背後にきて告げた。

「え、あ、もう?」

「はい。どうされますか?」

「行くよ。出ないと単位が貰えないから」

 午後からの特別講義は、レーダー公の講義だ。何を話すのか全く見当もつかないけれど、魔法省のトップだからそれの話をするのかなと思う。もちろん、内政省、外政省のトップの講義も控えていて、一年時には必須なのだ。

 まずは、彼が早々に腰を上げてくれるよう動かすのが目的だ。そうでなければ、この限られた時間で全ての事を運ぶのは難しいだろう。

「では我々がお供します。王配殿下」

 ザクセンとルーザーがアズールの横についた。

 え、いらな……いや、いいです。

 ザクセンとルーザーのキラッキラした瞳に圧倒されてお願いすることにした。

「ザクセン、ルーザーよ。ノリンを守れよ」

 グレゴリーの言葉に、ザクセンとルーザーがビシッと直立をする。

「はっ!王配殿下に頭を撫でてもらうため、頑張ります!」

 いや、それ、どうなんだ?

 グレゴリーもバルバロッサも珍妙な顔をしているの、僕も分かるから。二人とも、何故か頭を撫でてほしがるので、頭を下げた二人のツーブロックのてっぺんを撫でてから、アズールに抱き上げられた。

 うーむ、この移動方式はいかがなものかと思うが、少し下腹が出てきた僕を心配したアズールとレーンが、マナとオドを蓄えるために歩かせないらしい。これは腹実出るまで続くだろうなあ。

 貴族学舎の二階の大講堂には侍従騎士やお付きのメイドやバトラーは立ち並ぶ中、緋色の軍服ゴリゴリマッチョは目立つ。

 アズールはバトラーやメイドの立ち位置に紛れていてさすがなんだが、ザクセン・グレゴリウスは公爵子息だから一番いい場所に、僕も案内された場所はなんと大講堂の真ん中で横には、レーダー公の孫のカモンが座ってきた。いやだなあ、その顔、しばらく見たくないのに。

「ノリン君、神殿振りだ。元気か?」

「まあまあです」

 静かに目立たないようにしたいのに、カモンの行動はウザい。

 カモンは掴みどころのないが、明らかにアーネストに近い感性を持つ奴で、以前のアーネストのようにカリスマ性がある。でも、それはあくまで『模倣』のように感じるから、僕はカモンがアーネストの子供かどうか分からないでいた。アーネストは僕にも教えてくれなかった。

 ただ、レーダー公の娘であり、アーネストの父親である王に嫁した、アーネストにとって義理母が母親だ。王が亡くなり王家の宿り木から放たれた公女の子であることは、間違いない事実だ。

「あ、お祖父様だ。話、短いといいね」

 僕としてはカモンとの接触は出来るだけ避けたいのだが、カモンの方がやたら寄ってくるのだから正直参ってしまう。

 大講堂はカモンが僕の横にいるからか、他の人の視線が気になるところだ。しかも、緋色の軍服が背後に二人。赤は基本的に国王の直属の第一近衛隊の軍服の色だ。

 これってまるで、ここではカモンが王で僕が王配みたいに見えないか?だって赤は国王の色で、レーダー公とカモンは赤い貴族ジャケットを着ているし、僕はいつもの水色のショートジャケットだ。僕らが横同士なんてまるでカモンのための近衛兵みたいではないか。

「ノリン君、お祖父様はレガリア連邦王国をアリシア王国を中心にして統一したいのらしいだよ」

 ええっと、僕に言っていいのか、カモン。

「それが北に領地を移動した経緯ですか?」

 実際のところレーダー公は昔からイチイ市がある南から、北へ領地を移した話を聞けるのかなと思っている。

 レーダー公がルバンド先生に紹介され、レーダー公が話し始めた。どうやら王族の変遷と貴族の心得えみたいだ。

「……うーん、ノリン君面白い?俺はいまいちなんだよなあ。まあ、南から北へ領地を移動した経緯を知りたいならいいのではない?」

 段々とレーダー公は熱弁になり、北の穀倉地帯を王家から賜った話になる。北にはガーランド王国、リーリアム王国がある。メルツ公爵はリーリアム王国側の国境を、レーダー公爵はガーランド王国側を、ランカスター王家からレーダー王家に変わった時に賜ったらしい。

 登壇して朗々と語る長い貴族ジャケットに丸つぼみキュロットと白タイツのハイム・レーダーは、亡き王アーネストの父親の弟でレーダー王家の直系分家にあたり、話を聞いているとどうやら長子より出来がよかったらしい。

 アーネストの父親の前の世代はまだ戦いが小競り合い程度で、マナが多く魔法が得意なレーダー公はあちらこちらで前線に立ち、杖を振るった魔法師だったようだ。つまり王子様が前線に立ち、軍を鼓舞する、だな。現在もレーダー公は魔法省の重鎮だ。もしかすると魔法省長官よりも、レーダー公の言葉の方が上かもしれない。

 ガーランド王国はこちらで言えば公爵領地程度の王国だ。その王家を飛び越え大国レグルス王国に嫁した姉がいるレーダー公。レーダー公爵家はもう随分前から、レガリア連邦王国を一つの国として統一したいと考えていたのではないか。

 そう考えたところで、レーダー公の話は終わった。はい、拍手、拍手。アンコールはいらん。

 何の話をしていたって?うん、まあ、マナを持たない平民を守り従わせるのが貴族の役割ってことらしい。魔の森魔法学舎にはマナを持つ平民がそこそこいたし、平民ってマナを少しも持っていないわけではない。ほんの少しの微力のマナでも補助具を使えば、魔道具は使えるのにな。

 恐らくアリシア王国含む北の貴族がラメタル王国やパールバルト王国など南の国を見たら、口をぽかんと開けてしまうだろう。誰もが便利な魔道具を使えるのだから。

「ノリン君、もう戻るのか?」

「はい、戻ります。陛下がお待ちですから」

 カモンよ、お前の後ろに取り巻きがいっぱいだから、僕に構うな。

 カモンはちらっと後ろを向いて、

「ーーいいなあ、彼らは。うん、俺、貴族学舎卒業したら、第二近衛隊に入ろう」

などとほざきやがった。もちろん、却下だが。

 レーダー公が帰り際、黒いローブの魔法師に囲まれていて、ふと、レーダー公の屋敷へ行き『寿ぎならぬ呪言』を貰った時のことを思い出した。あの時は国の魔法師かなと思っていたが、ローブに魔法師団の紋章の縫い取りがあったかな?ただの黒のローブだったようや気もするけど……。

「坊ちゃん、お連れします」

 僕はアズールに抱っこされて、思考を止めた。バイバイってするな、カモン。

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