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二十章 二人と一人の平和な日常
136 新しい第二近衛隊
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レーンにお風呂に入れてもらい、身体を洗われながら、レーンの嬉しそうな呟きを聞いた。
身体には力が入るようになっていたけれど、レーンの膝に座らせられて甘やかされている。
「マスター、僕は嬉しいのです。これでマスターから離れないで済むのです。感覚だけではなく、マスターの生命尽きるまでまで一緒です」
身体と髪を丁寧に洗われて岩風呂に抱っこされて浸けられる。アズールはベッドメイクと夕食の準備で、レーンは僕の世話を焼いているのだが、僕、もう平気なんだけれどなあ。
「レーンたちは僕より長生きだろ?いいの?僕の寿命に縛られて」
レーンに抱きしめられながら僕は呟く。だって魔物であるアズールとレーンの寿命はマナ次第だが無限でもある。
「マスターに捥いでもらい、名前を下さった時から僕もアズールもそのつもりでした。そうなのに、マスターは……っ」
そう、僕はオーガスタ時代にアズールとレーンを魔の森の宿り木から捥いでたった半年で死んだ。それから数年間アズールとレーンは、セネカに助けられながら『人』として生きていてくれた。
「ごめん、ごめんね。まさか僕のマナが枯渇するなんて思わなかった。だってオーガスタ時代も今もそんなことなかったから。腹実が出るまで大人しくしているよ」
と、お詫びのキスをした。こんなやりとりを部屋にきたシャルスともしたのは、僕の反省の上、僕の心の中で記憶しておこう。
ベッドメイクされた僕のベッドでシャルスと食事をするなんてと慌てたが、ベッドテーブルなるものが用意されて、半べそのシャルスをキスの繰り返しで宥めてから並んで食事を取る。
僕はドレスシャツでシャルスは私服だったけれど、シャルスは僕の元気そうな顔を見て明らかにホッとしていた。
「ノリン、今日は一緒に寝てもいいですか?」
お、お誘いか?
と思いきや、シャルスは食事後お風呂に入ると僕のベッドに入り、深い息を吐いた。僕にマナを贈りたいし、愛したいのだけれど、性器が勃たないつまり昔の完全欠乏に戻ったみたいだと、ため息をつく。
「私は自分自身が虚弱だから気にしていませんでしたが、ノリンが倒れた時、私も皆さんにひどく心配をかけていたのだと知りました。倒れないよう気を配る、無理をしない。それも大切なのですね」
あまり気にしてほしくないが、シャルスの場合そうだと思うから頷く。
「腹実の親としてノリンを抱きたいのに、情けないです」
僕がふわふわの掛布の中で、シャルスの手を握ると握り返された。
「シャルス、いてくれるだけでいいよ。こんな無茶は絶対にしない。腹実にも申し訳なかった。二人で大切に育てようね」
僕らはそうして眠りについた。
それから数日、僕はベッドの上から出してもらえず、食事から全てベッドの上で、もちろんアズールとレーンからは、奴らの空き時間にマナを体内に充填され、気持ち良くなるのおまけ付きだった。
結局のところーー
「第二近衛隊は三人?しかも、隊長がバルバロッサ・バッキンガムって、どーゆーことなんだ?」
僕がいるのは宰相室だ。シャルスのいる政務室ではない。シャルスはグレゴリーが集めた『意外と有能だったシャルスの友である宰相補佐たち』と、政務をしている。うん、よかった。ちょっと見ていたけれど、四人の同期
「急時にはわしも入るわい。だがな、あの雷撃で倒れなかったのはこの三人で、しかも、タフな精神に肉体だ。どうかのう、ノリンや」
と話す。バルバロッサとザクセンとルーザーの、ゴリゴリマッチョの脳筋三人……。
「確かに僕が言ったのは即戦力だけど、大隊長兼任でバロー……いや、バルバロッサ大隊長はいいんですか?」
「王配殿下、敬語はおやめください。私のことはバローでもバルバロッサでも。王配殿下の手足になる所存です」
バルバロッサは言い出したら聞かないタイプだし、ザクセンはグレゴリーの子供だしなあ、バラしておくか。三人は直立したままで、僕とグレゴリーはソファにいて、
「実は……僕はアーネストに頼まれて、『毒』を追っている」
と話すと、グレゴリーが一瞬固まって僕を見下ろした。
「アーネストが『毒』を……」
僕は首を傾けて悩んでから、
「アーネストはレーダー公の手駒に堕ちた振りをして、『ドラゴン・ブラッド』、つまり、先任第一近衛隊を襲った『毒』を探していた。どうやら人の身体に宿っているらしい。アーネストは『毒』の腕を処分してかなり疲弊してたよ。僕はアーネストの仕事を引き継ごうと思う。汚い仕事もあるだろうが、その手伝いを頼みたい」
と三人に伝えた。どう出るかなと思っていたが、存外冷静で頷くのみだ。
「それから『密輸』の件は、僕よりグレゴリーの方が詳しいし、あちらの動きがあれば第三近衛隊と連携して動くだろう?僕ら第二は急襲部隊って汚れ役になると思うから、聞いておいてくれ」
「了解しました。グレゴリー先輩っ!よろしくお願いいますっ!」
「――『先輩』は辞めろや」
「では、グレゴリー宰相閣下と?」
「ーーいや、『先輩』でいいわ、もう」
グレゴリー発『若造』改め、バルバロッサは脳筋だけに実直で素直なタイプだ。腹実の良き守り手になってくれるだろうし、僕と同等のマナを持つなら、剣術はともかく魔法陣か詠唱魔法はできるようになる。戦略が立てやすくなるな……なんて思い苦笑いをした。
子供を戦場に駆り出す親なんて、腹実が可哀想だな。
とはいえ、シャルスを守るのは僕と子の義務だ。まあ、その性格や性質にもよるけれどね。
身体には力が入るようになっていたけれど、レーンの膝に座らせられて甘やかされている。
「マスター、僕は嬉しいのです。これでマスターから離れないで済むのです。感覚だけではなく、マスターの生命尽きるまでまで一緒です」
身体と髪を丁寧に洗われて岩風呂に抱っこされて浸けられる。アズールはベッドメイクと夕食の準備で、レーンは僕の世話を焼いているのだが、僕、もう平気なんだけれどなあ。
「レーンたちは僕より長生きだろ?いいの?僕の寿命に縛られて」
レーンに抱きしめられながら僕は呟く。だって魔物であるアズールとレーンの寿命はマナ次第だが無限でもある。
「マスターに捥いでもらい、名前を下さった時から僕もアズールもそのつもりでした。そうなのに、マスターは……っ」
そう、僕はオーガスタ時代にアズールとレーンを魔の森の宿り木から捥いでたった半年で死んだ。それから数年間アズールとレーンは、セネカに助けられながら『人』として生きていてくれた。
「ごめん、ごめんね。まさか僕のマナが枯渇するなんて思わなかった。だってオーガスタ時代も今もそんなことなかったから。腹実が出るまで大人しくしているよ」
と、お詫びのキスをした。こんなやりとりを部屋にきたシャルスともしたのは、僕の反省の上、僕の心の中で記憶しておこう。
ベッドメイクされた僕のベッドでシャルスと食事をするなんてと慌てたが、ベッドテーブルなるものが用意されて、半べそのシャルスをキスの繰り返しで宥めてから並んで食事を取る。
僕はドレスシャツでシャルスは私服だったけれど、シャルスは僕の元気そうな顔を見て明らかにホッとしていた。
「ノリン、今日は一緒に寝てもいいですか?」
お、お誘いか?
と思いきや、シャルスは食事後お風呂に入ると僕のベッドに入り、深い息を吐いた。僕にマナを贈りたいし、愛したいのだけれど、性器が勃たないつまり昔の完全欠乏に戻ったみたいだと、ため息をつく。
「私は自分自身が虚弱だから気にしていませんでしたが、ノリンが倒れた時、私も皆さんにひどく心配をかけていたのだと知りました。倒れないよう気を配る、無理をしない。それも大切なのですね」
あまり気にしてほしくないが、シャルスの場合そうだと思うから頷く。
「腹実の親としてノリンを抱きたいのに、情けないです」
僕がふわふわの掛布の中で、シャルスの手を握ると握り返された。
「シャルス、いてくれるだけでいいよ。こんな無茶は絶対にしない。腹実にも申し訳なかった。二人で大切に育てようね」
僕らはそうして眠りについた。
それから数日、僕はベッドの上から出してもらえず、食事から全てベッドの上で、もちろんアズールとレーンからは、奴らの空き時間にマナを体内に充填され、気持ち良くなるのおまけ付きだった。
結局のところーー
「第二近衛隊は三人?しかも、隊長がバルバロッサ・バッキンガムって、どーゆーことなんだ?」
僕がいるのは宰相室だ。シャルスのいる政務室ではない。シャルスはグレゴリーが集めた『意外と有能だったシャルスの友である宰相補佐たち』と、政務をしている。うん、よかった。ちょっと見ていたけれど、四人の同期
「急時にはわしも入るわい。だがな、あの雷撃で倒れなかったのはこの三人で、しかも、タフな精神に肉体だ。どうかのう、ノリンや」
と話す。バルバロッサとザクセンとルーザーの、ゴリゴリマッチョの脳筋三人……。
「確かに僕が言ったのは即戦力だけど、大隊長兼任でバロー……いや、バルバロッサ大隊長はいいんですか?」
「王配殿下、敬語はおやめください。私のことはバローでもバルバロッサでも。王配殿下の手足になる所存です」
バルバロッサは言い出したら聞かないタイプだし、ザクセンはグレゴリーの子供だしなあ、バラしておくか。三人は直立したままで、僕とグレゴリーはソファにいて、
「実は……僕はアーネストに頼まれて、『毒』を追っている」
と話すと、グレゴリーが一瞬固まって僕を見下ろした。
「アーネストが『毒』を……」
僕は首を傾けて悩んでから、
「アーネストはレーダー公の手駒に堕ちた振りをして、『ドラゴン・ブラッド』、つまり、先任第一近衛隊を襲った『毒』を探していた。どうやら人の身体に宿っているらしい。アーネストは『毒』の腕を処分してかなり疲弊してたよ。僕はアーネストの仕事を引き継ごうと思う。汚い仕事もあるだろうが、その手伝いを頼みたい」
と三人に伝えた。どう出るかなと思っていたが、存外冷静で頷くのみだ。
「それから『密輸』の件は、僕よりグレゴリーの方が詳しいし、あちらの動きがあれば第三近衛隊と連携して動くだろう?僕ら第二は急襲部隊って汚れ役になると思うから、聞いておいてくれ」
「了解しました。グレゴリー先輩っ!よろしくお願いいますっ!」
「――『先輩』は辞めろや」
「では、グレゴリー宰相閣下と?」
「ーーいや、『先輩』でいいわ、もう」
グレゴリー発『若造』改め、バルバロッサは脳筋だけに実直で素直なタイプだ。腹実の良き守り手になってくれるだろうし、僕と同等のマナを持つなら、剣術はともかく魔法陣か詠唱魔法はできるようになる。戦略が立てやすくなるな……なんて思い苦笑いをした。
子供を戦場に駆り出す親なんて、腹実が可哀想だな。
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