国王親子に迫られているんだが

クリム

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十七章 シャルスの誕生日と婚約式

110 婚約式の服

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 シャルスの誕生日と婚約式は、セネカが大忙しの舞踏会室の大工事が終わり、あとは当日を待つだけになった。

 王宮でのダンスの練習、そしてお仕事。あっという間に日が過ぎていき、レーンがやっと馬車で帰ってきた。

 見れば見るほど大荷物である。

「さすがの僕も疲れました~」

 僕のベッドに転がったレーンだが、僕を喰おうとはしない。アズールも横で添い寝だけだ。

「二人とも空腹じゃないの?」

「空腹ですよ」

「マスター、お腹すいてます。でも、僕、我慢します~」

 そのままレーンはぐうぐうと僕の横で寝て!しまい、山のような荷物は置かれたままだった。

「淫魔は寝ないものじゃないの?」

とアズールに聞くと、

「意識を解き放つことはあります。活動停止はたまにしますよ、私も。レーンのこの状態は死力を尽くしたためマナが足りないのでしょう。マスターのマナを貰うために意識的に『眠り』につき活動を停止させます」

と目を閉じた。なるほど、活動停止か……って分からないぞ!マナが足りないなら喰えばいいじゃないか!

「マスターもお眠りください。明日は早いです」

 そう、明日はシャルスの誕生日で婚約式だ。

 開催時刻は午後過ぎの予定で、食事は伴わない時間から夕刻まで。遠くても王都に屋敷を構えられない貴族のために時間を早めている。

 普通なら舞踏会などは夕方から夜にかけてらしいが、シャルスの体調も含めて早い時間から行うようにグレゴリーがメイザース医師と共に決めたのだ。

 だから朝はゆっくり眠り食事をシャルスと別々で取った後、いきなり慌ただしくなる。

 アズールは起き抜けから荷物を持ってシャルスの部屋に行って、今日はシャルスと会っていないなあって思う。僕がいなくて不安じゃないか?シャルス。

 だけど、そんなことは言っていられなかった。

 お腹が落ち着いたらローゼルが散るお風呂に入り、出た後にレーンによるローゼル香油による全身マッサージ。

「マスター、おみ足をガーターストッキングです」

 そう言って、真っ白の透け感のある柔らかなストッキングを穿かされ腰で留めて、その上からティーバックの下着をつけた。

「反対じゃないの?」

「ガーターベルトの上から下着をつけるのが正解です。下着を脱ぐだけで用を出せますし、簡単に実作りも出来ます」

 な、生々しいな。

 それから

「ペチコートショートパンツです」

と下着の上からフリルたっぷりの白のショートパンツをはかされた。

「肌の露出の隙間は十センチ。テレサ様の絶対領域の教えです」
 
 レーンはラメタル王国のテレサの元に向かっていたらしいのだ。服だな、と覚悟した。しかし、覚悟の上をいく服が出てきて、僕は口を開けたまま何も言えなかった。

 ーー真っ白の白である。純白である。

「マスター、お着せします」

 レーンはベッドに座っている僕の足元からまごうことなき白いドレスを着せて行く。胸元はぴたりとしていて、ずれないように細い透明な肩紐で支え、肩はむき出し、ビスチェみたいであるが、普通のドレスと違うのは、前の真ん中が二つに割れていて、ショートパンツが見えるデザインなんだ。

 しかも中はふわふわフリルとシフォンで膨らみ、サイドから腰にかけてはふんわりと丸いドレスラインだ。その裾とビスチェにはよく見ると全て銀糸で王家の旗にあるオオカミと剣と薔薇の模様が縫い込まれていた。

「公爵令嬢でした曽祖母様の婚姻の時に召しました絹ドレスを奥様にお願いし魔改造いたしました」

 婆様のドレスの魔改造って、原型は多分背後しかないだろ、おい。

 刺繍はどうやら手で入れたらしいが、これ不眠不休でやったのか?

「レーン、あの……」

「殿下の服も、奥様、旦那様、大坊ちゃんの服も完璧です。僕、頑張ってきました!」

 婚約式本日を迎えるため、レーンは本当に頑張ったのが分かる。

「レーン……」

 労いの言葉を言う前に、シルクの白手袋を僕につけたレーンが

「白を纏う儀式の夜は『初夜』と言い『白の染め』があるのです。マスター、素晴らしい淫オドを期待しています」

と言い放った。

 ーーそこかよ!

 僕はシャルスともう何度もそれなりに肌を重ねてる。今更『初夜』とかないだろう?

「僕はこの日がくるのを誰よりも一番楽しみにもしていました。マスターが世界一可愛い姿で過ごされる淫。夕食後、殿下に解かれる服と触れられる淫。僕はずっとずっと楽しみにしていました」

「そ、そうなんだ……」

 レーンの声が耳元で呻くよう声だった。淫魔は欲望に忠実なんだけど、レーンはさらに強い。

 ドレスを着た後、レーンは何を思ったか僕にメイクをし始めた。

「白は紅が映えますよ、マスター。僕、今日のことを絶対忘れません。マスター、すごくすごく綺麗です」

 鏡の中の僕は華奢で可愛らしい背丈に白いドレス、ふんわりした金髪にパウダーをはたかれ紅を差して、頬に少し赤みが映えた美麗な顔をしている。

 綺麗だな……僕はそう思った。オーガスタ時代では想像も付かなかった姿で、僕は存在していた。

「うん、レーンのおかげだよ。ありがとう、で、正解かな?」

「大正解ですよ、マスター」

 レーンはすごく嬉しそうに微笑んだ。そして手を取られ、シャルスの部屋へ向かった。
 

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