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十四章 侍従騎士ミカエル
92 パジャマパーティ
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スバルは実家に呼ばれているとかでいないからと、アズールとレーンは食材をキッチンに入れていく。僕はセネカに案内されて驚いた。
魔の森魔法学舎のシステムキッチンそのものだったからだ。
「魔石燃料による全魔具だよ。魔石加熱調理器や瞬間保温器も揃ってる。僕らがくる前からそうだったんだよ。調度品も落ち着いているし、住みやすい離宮だよね」
本当に居心地がいい。
エントランスホールは広めで、立ち話や少し座って話せるようなカウチもある。そこから居間へ。床にはソファセットの下だけに毛皮のラグがあり、そして飾り棚には酒類。バーカウンターみたいな止まり木と椅子が少し。
居間に食事ができるテーブルと椅子があり、飾らない一本木の楕円形のテーブルに、無骨だが温かみのある椅子だった。
まだ見せてもらっていないが、温泉に期待が募る。
夕食は少し早めで、僕は圧縮調理器具の凄さを思い知らされた。あのコッカトリスの硬い肉がホロホロになるんだ。ナイフとホークで簡単に崩れるトマト煮にシャルスとミカエルは驚いていて、調理法をアズールに聞いていた。
「離宮のキッチンにあるのは、ラメタル王国製のシステムキッチンユニットなんだよ。アーちゃんから随分前に頼まれていて、こないだ最新式を入れ直したんだ。離宮はもともとアーちゃんのママが住んでいたらしいんだけど、凄く庶民寄りの内装だよね」
旧ランカスターの姫君だろ?これは地味すぎるだろうが。
食事は腹八分にしてパジャマパーティーでお菓子を摘んだりするらしく、僕らはお茶のあとお腹を落ち着かせてから温泉に入るわけだ。
どんな温泉なんだろう。レーンがセネカから何やら指示を受けていて、繰り返し頷いている。
「ご準備が整いました」
アズールとレーンが僕とシャルスの服のボタンを外してくれていて脱がされると、温泉と脱衣所を隔てている引き戸を開けた。
「ふ、わわ!」
岩がある、岩風呂だ。岩から湯が流れてでも溢れてはいないからどこか底から流しているのかな?掛け流しの温泉だ。
「シャルス、入りますよ」
いつもの浴槽より広い風呂に驚いているが、まずは洗い場で身体を洗う。いつもの猫足浴槽に入り身体を緩めてから、シャボンと香油を垂らした湯で身体を洗い散湯で流す入り方とは違うのだ。
「お身体を洗いますね」
「はい」
お、シャルス大人しめ。
師匠は湯における裸の付き合いは大切だと話していた。柔らかなスポンジをシャボンで泡立てると背中から洗っていると、脱衣所でセネカとミカエルの声が聞こえる。
「あの、私、そのっ」
「ミカちゃん、お胸……」
「こんな大きくて恥ずかしい」
「ミカちゃん、僕もね、少しあるんだ」
「え、あ、本当に。私だけではないのですね」
「そうだよ、ミカちゃん。だからね、安心してね」
「セネカ様……好き」
「僕も好きだよ、ミカちゃん」
なんなんだと思っていたら、扉が開いて僕は驚いた。僕とシャルスも目を見開いた。ミカエルの胸がすごく大きい。母様の胸より大きいのにちゃんと男の人で、しかもセネカも胸が膨らんでいる。
あれ、お前胸なんで出てなかったじゃないかと、セネカとミカエルが温泉に入った時は、
「……しっ!」
って人差し指を口に当てたセネカに睨まれた。
「ミカちゃん、お胸がきつかったよね。頑張っていたんだよね」
とか言いながらセネカがミカエルの背中から胸を洗っている姿を、僕とシャルスは湯船の中で見ていた。多分、無言で正解だったと思う。セネカはオドコントロールで変化が出来るんだから、部分的変化を定着させたな。
番いってのはそこまでしちゃうものなのか。それが恋で愛?僕には無理だよ。それにしても、この温泉、ふとオーガスタ時代のことを思い出した。
『オーガスタ、魔の森から帰ったら、お前は俺の国民だ。家を用意してやる。どんな家がいい?』
『なんだよ、アーネスト藪から棒に。そうだなあ、小さな家がいいな、温泉付きで。魔の森では従獣してくるから、多分連れてくる。魔石水晶の影響を受けない空間がほしい』
『それくらいでいいのか?では作っておこう。家の中に国民プレートを置いておくからな、探せよ。我が愛しの王国民よ』
温泉、居心地のいい家、僕はどきりとした。でも、ここは王の愛妾を囲う離宮だし、アーネストの母君が住んでいた宮だ。きっと趣味が似ていただけだ。考えるな、うん、大丈夫。だってオーガスタの名前入りのプレートなんて、なかったからね。大丈夫、だいじょ……
だ、大丈夫じゃないよ、これ。
そのあとのパジャマパーティのほうが、正直堪えた。なにこれ、下着?
「違うよ、シルクベビードールだよ」
セネカが用意したパジャマはベビードールって名前のシフォンのヒラヒラしたパジャマで、とにかく僕は胸がスカスカで、ミカエルにはぱつんぱつんの胸元だ。王太子殿下であるシャルスのものまで下着からパジャマまで白いベビードールだからびっくりしたんだけど、
「似合わない気もしますが」
と言いつつシャルスは基本与えられた服を何とも思わず着ているから、やっぱり王子様だなあと思った。
でも、小さめの下着は恥ずかしいみたい。性器がはみ出しそうでギリギリだよ。
「セネカの希望ですからね」
と苦笑したのが可愛かった。
寝室にはシャルスの寝室のよりも巨大なベッドがあって、
「このベッド使うのは初めてなんだよ」
とセネカが話した。セネカもスバルも客室を使っているそうで、僕らは四人でベッドに入り、夜更かしをする算段になる。
「ミカちゃんの胸、可愛いね」
「私、可愛い服、実は好きなのです。これ凄く可愛い……」
ベビードールのキャミソールからはみ出てしまう大きな胸を恥ずかしがるミカエルに対して、胸に顔を埋める仕草をしてから、セネカは唇でハートの形のシュガーボンボンを受け渡ししていて、シャルスも真似して僕にキスをして来る。
う、甘い。シュガーボンボンって中身お酒?
「ーーって、なんだよ、夜のお茶会って!」
このままの流れでシャルスが止まらなくなるのは嫌だ。セネカにもミカエルにも一生懸命で可愛いシャルスを見せたくない。
「そうそう、ミカちゃんと僕の初体験は二人きりがいいに決まってるからねぇ。今日はちらリズムって感じで、シーちゃんも頑張って堪えてね。じゃあ、深夜のお茶会だよ~」
話題は自分の恋愛観ってやつなんだけど、僕にはさっぱり分からなくて聞くだけになってしまったのは、言うまでもない。
恋バナは苦手だよ、今も昔も。
魔の森魔法学舎のシステムキッチンそのものだったからだ。
「魔石燃料による全魔具だよ。魔石加熱調理器や瞬間保温器も揃ってる。僕らがくる前からそうだったんだよ。調度品も落ち着いているし、住みやすい離宮だよね」
本当に居心地がいい。
エントランスホールは広めで、立ち話や少し座って話せるようなカウチもある。そこから居間へ。床にはソファセットの下だけに毛皮のラグがあり、そして飾り棚には酒類。バーカウンターみたいな止まり木と椅子が少し。
居間に食事ができるテーブルと椅子があり、飾らない一本木の楕円形のテーブルに、無骨だが温かみのある椅子だった。
まだ見せてもらっていないが、温泉に期待が募る。
夕食は少し早めで、僕は圧縮調理器具の凄さを思い知らされた。あのコッカトリスの硬い肉がホロホロになるんだ。ナイフとホークで簡単に崩れるトマト煮にシャルスとミカエルは驚いていて、調理法をアズールに聞いていた。
「離宮のキッチンにあるのは、ラメタル王国製のシステムキッチンユニットなんだよ。アーちゃんから随分前に頼まれていて、こないだ最新式を入れ直したんだ。離宮はもともとアーちゃんのママが住んでいたらしいんだけど、凄く庶民寄りの内装だよね」
旧ランカスターの姫君だろ?これは地味すぎるだろうが。
食事は腹八分にしてパジャマパーティーでお菓子を摘んだりするらしく、僕らはお茶のあとお腹を落ち着かせてから温泉に入るわけだ。
どんな温泉なんだろう。レーンがセネカから何やら指示を受けていて、繰り返し頷いている。
「ご準備が整いました」
アズールとレーンが僕とシャルスの服のボタンを外してくれていて脱がされると、温泉と脱衣所を隔てている引き戸を開けた。
「ふ、わわ!」
岩がある、岩風呂だ。岩から湯が流れてでも溢れてはいないからどこか底から流しているのかな?掛け流しの温泉だ。
「シャルス、入りますよ」
いつもの浴槽より広い風呂に驚いているが、まずは洗い場で身体を洗う。いつもの猫足浴槽に入り身体を緩めてから、シャボンと香油を垂らした湯で身体を洗い散湯で流す入り方とは違うのだ。
「お身体を洗いますね」
「はい」
お、シャルス大人しめ。
師匠は湯における裸の付き合いは大切だと話していた。柔らかなスポンジをシャボンで泡立てると背中から洗っていると、脱衣所でセネカとミカエルの声が聞こえる。
「あの、私、そのっ」
「ミカちゃん、お胸……」
「こんな大きくて恥ずかしい」
「ミカちゃん、僕もね、少しあるんだ」
「え、あ、本当に。私だけではないのですね」
「そうだよ、ミカちゃん。だからね、安心してね」
「セネカ様……好き」
「僕も好きだよ、ミカちゃん」
なんなんだと思っていたら、扉が開いて僕は驚いた。僕とシャルスも目を見開いた。ミカエルの胸がすごく大きい。母様の胸より大きいのにちゃんと男の人で、しかもセネカも胸が膨らんでいる。
あれ、お前胸なんで出てなかったじゃないかと、セネカとミカエルが温泉に入った時は、
「……しっ!」
って人差し指を口に当てたセネカに睨まれた。
「ミカちゃん、お胸がきつかったよね。頑張っていたんだよね」
とか言いながらセネカがミカエルの背中から胸を洗っている姿を、僕とシャルスは湯船の中で見ていた。多分、無言で正解だったと思う。セネカはオドコントロールで変化が出来るんだから、部分的変化を定着させたな。
番いってのはそこまでしちゃうものなのか。それが恋で愛?僕には無理だよ。それにしても、この温泉、ふとオーガスタ時代のことを思い出した。
『オーガスタ、魔の森から帰ったら、お前は俺の国民だ。家を用意してやる。どんな家がいい?』
『なんだよ、アーネスト藪から棒に。そうだなあ、小さな家がいいな、温泉付きで。魔の森では従獣してくるから、多分連れてくる。魔石水晶の影響を受けない空間がほしい』
『それくらいでいいのか?では作っておこう。家の中に国民プレートを置いておくからな、探せよ。我が愛しの王国民よ』
温泉、居心地のいい家、僕はどきりとした。でも、ここは王の愛妾を囲う離宮だし、アーネストの母君が住んでいた宮だ。きっと趣味が似ていただけだ。考えるな、うん、大丈夫。だってオーガスタの名前入りのプレートなんて、なかったからね。大丈夫、だいじょ……
だ、大丈夫じゃないよ、これ。
そのあとのパジャマパーティのほうが、正直堪えた。なにこれ、下着?
「違うよ、シルクベビードールだよ」
セネカが用意したパジャマはベビードールって名前のシフォンのヒラヒラしたパジャマで、とにかく僕は胸がスカスカで、ミカエルにはぱつんぱつんの胸元だ。王太子殿下であるシャルスのものまで下着からパジャマまで白いベビードールだからびっくりしたんだけど、
「似合わない気もしますが」
と言いつつシャルスは基本与えられた服を何とも思わず着ているから、やっぱり王子様だなあと思った。
でも、小さめの下着は恥ずかしいみたい。性器がはみ出しそうでギリギリだよ。
「セネカの希望ですからね」
と苦笑したのが可愛かった。
寝室にはシャルスの寝室のよりも巨大なベッドがあって、
「このベッド使うのは初めてなんだよ」
とセネカが話した。セネカもスバルも客室を使っているそうで、僕らは四人でベッドに入り、夜更かしをする算段になる。
「ミカちゃんの胸、可愛いね」
「私、可愛い服、実は好きなのです。これ凄く可愛い……」
ベビードールのキャミソールからはみ出てしまう大きな胸を恥ずかしがるミカエルに対して、胸に顔を埋める仕草をしてから、セネカは唇でハートの形のシュガーボンボンを受け渡ししていて、シャルスも真似して僕にキスをして来る。
う、甘い。シュガーボンボンって中身お酒?
「ーーって、なんだよ、夜のお茶会って!」
このままの流れでシャルスが止まらなくなるのは嫌だ。セネカにもミカエルにも一生懸命で可愛いシャルスを見せたくない。
「そうそう、ミカちゃんと僕の初体験は二人きりがいいに決まってるからねぇ。今日はちらリズムって感じで、シーちゃんも頑張って堪えてね。じゃあ、深夜のお茶会だよ~」
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