国王親子に迫られているんだが

クリム

文字の大きさ
上 下
75 / 165
十一章 密輸組織殲滅部隊

74 強襲・殲滅・撮影?

しおりを挟む
 ドォォーーンッ

 空気を震わせる大音量の爆発音がほぼ同時に響き、扉の周りにいた男が吹っ飛んだ。男たちの悲鳴が響き渡り、屋敷の中から

「何事だっ!」

と口々に騒ぐ声が聞こえてきた。

 屋敷の中で動揺と殺気が建物の内部で、多数の人間が出入りを始める。攻撃と防御と盗品警備の三パターンだろうが、それを全て殲滅するように僕らは動き出す。

「行くぞ、ノリン、遅れるな!」

 シャリン……と音がして魔剣ロータスが抜かれた。それから口元まで黒の布で覆ったアーネストが身を低くして疾走し、爆破された裏口から飛び込んで、そこにいた冒険者崩れの胴を真横に真っ二つに斬り落とす。口元を覆った変装の僕は正面玄関側に突き抜けると、フードと布で目だけを出したグレゴリーが斬った、男の背後から出てきた別の男の首筋を、短剣状態の魔剣ミスリルで突く。

「うーん、意外と多いな。わしの体力持つかのう」

「そんなこと年寄りめいたこと言ってる場合かよ、グレゴリー。アーネストは一階フロア側に行ったからな!玄関を押さえてくれ!」

「おうよ!」

 僕は走りながら素の口調のまま二階の階段を目指す。チラリと見ると、セネカは盗品を次々と転移させていた。

「オーちゃん、二階へ行って!フロア確認したら、二階に僕も行くから!」

 一階のフロアでは爆音のような音とガラスの砕ける音がする。セネカは死体を避けながら転移陣を繰り返すと、フロアの方に走っていく。

 二階への道は結構人がいるんだよなあ。

「伸びろ、ミスリル」

 僕はミスリルを長剣に戻すと低い姿勢から踏み込んで男の首を落とした。身体が傾いて階段を転がると、下で倒れた死体に重なり止まる。

「げえっ、なんてガキだ!」

 中身おっさんだからな、悪いね。僕は完全に動きを止めるために、首を狙って階段を上がり、いくつかの首をミスリルの力で落とした。そのまま階段を上がり切ると、二階にいた男を無言で斬り散らし、加速陣を自分に塗布して一気に奥に駆け抜ける。

 斬り通した頭がごとりと音を鳴らした時には、最奥の部屋まで来ていた。ドアノブはない手押し式で、陣でも展開されているのかとマナを込めるが無反応だ。

 ーーセネカを待つべきか?

 正直、『真っ最中』だったら、どんな対応していいか分からない。そもそもそういった経験値が足りなさすぎる。

 セネカはどこだ?

 シーカーを下げて窓の外の様子を見たら、フロアでアーネストが剣を構えて一気に動き出していた。剣や大斧を持ったさまざまな職業崩れの男たちが、突入してきた金髪の剣鬼に恐怖しつつ

「殺せ!」

と叫んでいた。

 アーネストは向かってくる男に

「汚ねえ顔向けるな」

と攻撃を避けて、横に剣を滑らせる。二つに分かれたのは胴と足。肋骨を避けて背骨だけを打撃で折り、腹を真っ二つにして転がす。恐怖で背中を向けた男にも同じように斬撃を繰り返していた。

「悪いな、殲滅だ」

 一撃一殺

 アーネストの魔剣ロータスが本来の力を取り戻していたら、掠るだけでマナやオドも吸い込み、人は倒れてしまう。だが眠っている今は、切れ味のよい血脂も残らない剣として力を発揮しているようだ。今まで宝剣として初代から抜かれる度に制御不能な剣として扱われ、随分と形骸化していた宝剣をうっかり抜くからだ、阿呆タレ!

「邪魔だよ、どいて」

 フロアに移動したセネカは、冷静な呟きを放つと、炸裂陣を男たち展開して散らした直後、薬で眠っている巨人を転移させる。これ、倉庫に送られたマギーたち、大丈夫かなあ。

 その後ろにいたアーネストが剣を弾き飛ばして、セネカの仕事がしやすいように場を作り、男の首に剣を引っかけ

「死ね」

と勢いのまま首を宙に飛ばす。

「僕、二階に行くね!」

 首は砕けた窓から外に飛び、外ではグレゴリーの痩身の巨躯が巨大な剣を奮っていた。男たちの中に突っ込み剣を大きく振り回して千切り倒し、腹部に剣を落とす。

「悪いが、殲滅だ」

と冷やかな目で告げて、地面に叩きつけられた男たちの腹部を次々に剣を押し入れて息の根を止める。

 散らばった手足や首が無惨で血生臭い。

「さあ、おじさんと遊んでくれよ」

とにやりと笑い口にして、冒険者崩れの命乞いを無視し冷酷に剣を向けた。

「アーちゃん、二階に行くね!」

「ああ」

 セネカが来る。よし、なんとかしてくれ。あとは頼む!

 僕は意を決して扉を開けて剣を構える。太めの男はこの屋敷にもこの部屋にも不釣り合いな、天蓋付き猫足の豪華なベッドに座り込み、はあはあと荒い息を吐いていた。その男の前には女の子の姿がある。

 カシャカシャカシャ

 ん?カシャカシャ?なんの音だよ?

「いいねえ、もう少し腰を捻って、ああーー素敵だ!君は小さな女神だ」

「あのー、うち、成人年齢とっくに越えた小人なんすけどー」

 僕が撮影で着たことのあるような白いベビードールキャミソールを着てポーズを取り、それに男がセネカが持つようなデバイスを向けている。その男が僕を確認してぐるんと身体を向けてきた。

「うわ、君、可愛いね。ブルーのベビードールが似合うそうだね」

 がさがさと袋から透け透けの下着を探してすぐにそれを手にして、

「ねえ、着てよ。撮影したいんだよ」

とねちっこく言われ、

「あ、あ、あ、あのっ」

僕はパニックになり後退る。

「あーー全く、写真しか取れない劣化版のデバイスのコピー商品なんて、ムカつくなあ」

 セネカが入って来るなり苦々しく呟いた。

「き、君も可愛いじゃないか!ほら、これを着てベッドに座るだけで、金貨一枚だ」

と袋から金貨を出してくる。

「ねー、うち、もう着替えてええの?」

 何がなんだか……僕は小さくした剣を腰の鞘にカチンとしまう。すると扉がバタンと激しく開き、

「おー、終わったか?一階は全部済ませたぞ」

と血飛沫を顔面に浴びたアーネストが入ってきて、男はやっと非常事態に気がついたようだった。

「な、な、なんだ!貴様は!僕がアズホーン男爵と知っての狼藉か!なんなんだ貴様らはーーっ!」

 あ、アズホーン男爵なんだ。確か急成長した成金男爵なんだよな。

「うるっせぇなあ……俺たちは、そうだなあ……ランカスターの亡霊だ」

 アーネストがそうにやりと笑うと、

「この屋敷の奴らは殲滅した。お前の飼い主に伝えろ。ランカスターの亡霊が狙っていると」

と告げ、それからデバイスに向けて

「破壊陣展開」

と勘を入れず話してデバイスを砕く。砕けたデバイス、それが一番堪えたようで、

「ぎゃいやああああ~~っ!お、おだがらがあああ」

と叫びながら階段の死体に躓いて転がり落ちていった。

「あ、人差し指、落ちてる」

 デバイスを拾ったセネカが眉を顰めて呟いた。
 





 


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

処理中です...