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九章 毒を狩る者、求める者
59 シャルスと医師団と宰相と
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食後のお酒からキスをされて、そのままシャルスに抱かれた。丁寧に開かれ受け入れた身体はやはり気持ちよくて、僕は僕が思うより乱れた。
意外にも何度も何度も求められても奥までは開かれず、僕は汚してしまったベッドをどうにかしたくて動こうとする。
「だめですよ、ノリン。私を一人にするつもりですか。しばらくこうしていましょう」
シャルスは動こうとする僕を引き止めて、ふわりと笑った。部屋は灯りが落ちており、レーンは隣の控えの部屋にいるようだった
「私の初めてをノリンに贈れてよかったです。王太子として勤めを果たせるか、実は心配していたのです」
「えっ、昼前にーー」
「ふふ、夢を見たのです、ノリンと肌を重ねる夢を」
あ、あれ!夢になっちゃうの?マジかよ、結構ワイルドな抱き方だったんだけど……気持ちよかったです、はい。
「ちゃんと告白もしていないのにと思いました。でも、私を私は止められませんでした。ノリンの魅惑的な下着にも煽られましたし」
あ、あの下着!は、恥ずかしいっ!
「ノリンと肌を重ねてやはり感じました。私はノリンが好きです、大好きです」
座って小首を傾げたシャルスは、まるで僕の返事を待つかのようで……可愛いなあ、もう。
「僕も好きです、シャルス様」
起きあがろうとするとそれを良しとはされず、シャルスに肩口を引き止められた。つまり寝ていろとのことだ。なんでなんだろう。
「考えるに、私の『好き』とノリンの『好き』は温度が違うと思います。ノリンは閨係として『アリシア国民として与えられた仕事』をしたのでしょうが、私は本気です」
いやいや、違うって、僕はシャルスが可愛くて。なんといっても、アーネストとメリッサの一粒種だぞ、可愛くないわけないだろーが!
僕が目線で訴えていると
「それにですね、ノリンは私を通り越した私を見ているような気もするのですよ。だから今の私自身を見てもらえるように、私は全力で頑張りますね。その前にーーああ、入ってください」
とシャルスが声を上げた。すると
「失礼します」
レーンの言葉の後、白い医局の制服がなだれ込むように入ってきて、その後からグレゴリーとレーンが入ってくる。
天蓋付きベッドの周りを固めた医局の医師団の中で、アーネストより少し若いくらいの丸眼鏡の痩せぎすの白金髪男が眼鏡の鼻当てを押さえて、
「医局長が更迭されたので、吾輩メイザース・ユングが診察及び確認を致します」
と告げ、シャルスが頷くのを見てから、僕の方にかかっている掛布を剥がされた。
「わ、あああ!」
「じっとなさい」
眼鏡野郎、何か怖いんだけど。ユングって侯爵だよな。
「う、わ」
僕の尻の間に指を突っ込まれ体液を拭われるとそれを魔石装置に乗せて、魔力を掛ける。するとシャルスの金のマナが光り同様のマナが僕から採取された体液からも確認できた。その瞬間、メイザース・ユングを含む医局医師がざあっと平伏した。
「間違いなく殿下の初精でございます!王太子殿下、万歳!」
「「万歳!万歳!」」
は、はあ?
「グレゴリー叔父上、閨係の快挙です!殿下には精にマナが宿り、子が成せます!」
グレゴリー叔父上?
僕が掛布を直してシャルスを見上げると、
「メイザースはグレゴリーの姉の子で、なかなか優秀な医師です」
と話し、あの老医師は父方の祖父であり百五十歳を優に超えると教えてくれた。
「私の精を引き出してくれたノリン・ツェッペリンに対し私は感謝をしています。そこで平民と婚姻し男爵に落ちたツェッペリンを伯爵に戻して禄を上げます」
え、えーっ!
シャルスがにっこりと笑う。もちろんシャルスと僕には、診察の後ガウンがかけられていてすっ裸ってわけでないんだが、頼りない軽装の僕らのベッドの下で平伏している医局医師と、片膝を付いて忠誠の臣下の姿を見せるグレゴリーと集まってきていた第一近衛隊で、シャルスの部屋はなんだか密々しい。
「はい、もちろんでございます。既に書類は支度してございます。あとはこちらにマナ文字のサインと印を」
おい、なんだよ早いな、グレゴリー。
そんなグレゴリーは羊皮紙を載せた黒に金の縁取りのある書類トレーと印を持ってくる。それにシャルスはマナペンでアーネスト・アシリアと名前を書き光印を押した。
医師団とメイザース・ユングが出て行き僕がため息をついていると、
「グレゴリー、私の誕生日の日に婚約式を行いたいと思います。内務省から全貴族に通達をしてください。諸国にも婚約式をすることを告げて下さい」
なんてシャルスが言った。
「もちろんでございます」
そう告げると立ち上がったグレゴリーは再び涙ぐむ。
「殿下がお役目を果たされ、グレゴリーは感無量でございます。これからは選りすぐった……」
「それはいりません、グレゴリー。僕は伴侶ノリン一人と決めています」
グレゴリーは僕がアーネストに執着されているのを知っている。たまから神妙な顔をして頭を下げてから、
「ーー分かりました。このグレゴリー、只今からツェッペリン家に走り殿下のお言葉を伝えます。殿下におきましてはごゆるりとお休みください」
そう言い残して出て行く。
「はい、そうします。ね、ノリン」
シャルスがにっこりと笑いかけたが、なんなんだ、一体。
「湯を浴びたいですね。ノリン、一緒に浸かりましょう」
「あ、え、いや、あの」
「嫌ですか?」
後始末的なものを見られたくないし、僕は首を縦に振った。それよりも心配なのは、お茶会に出ていればシャルスも危なかったのだ。
「婚約式なんて、不審死がある中で危ないです」
「だからです。私は私を囮にします。王宮茶会が襲われたのならば、どこにいても狙われます。それにノリンが守ってくれるのでしょう?そんなノリンに感謝して綺麗にしませんと」
シャルスはレーンに目配せをして、
「失礼します、坊ちゃん」
と告げてレーンが僕をひょいと抱き上げると、内扉を開けて隣の小部屋の浴槽に連れていく。シャルスもその後に続いた。
「え、あ、ちょっと、シャルス様?レーン、なに微笑んでるの?や、うそ……っ」
レーン指導の元、シャルスに中を掻き出された。
恥ずかしくて恥ずかしくて、もう、たまらなかった。
意外にも何度も何度も求められても奥までは開かれず、僕は汚してしまったベッドをどうにかしたくて動こうとする。
「だめですよ、ノリン。私を一人にするつもりですか。しばらくこうしていましょう」
シャルスは動こうとする僕を引き止めて、ふわりと笑った。部屋は灯りが落ちており、レーンは隣の控えの部屋にいるようだった
「私の初めてをノリンに贈れてよかったです。王太子として勤めを果たせるか、実は心配していたのです」
「えっ、昼前にーー」
「ふふ、夢を見たのです、ノリンと肌を重ねる夢を」
あ、あれ!夢になっちゃうの?マジかよ、結構ワイルドな抱き方だったんだけど……気持ちよかったです、はい。
「ちゃんと告白もしていないのにと思いました。でも、私を私は止められませんでした。ノリンの魅惑的な下着にも煽られましたし」
あ、あの下着!は、恥ずかしいっ!
「ノリンと肌を重ねてやはり感じました。私はノリンが好きです、大好きです」
座って小首を傾げたシャルスは、まるで僕の返事を待つかのようで……可愛いなあ、もう。
「僕も好きです、シャルス様」
起きあがろうとするとそれを良しとはされず、シャルスに肩口を引き止められた。つまり寝ていろとのことだ。なんでなんだろう。
「考えるに、私の『好き』とノリンの『好き』は温度が違うと思います。ノリンは閨係として『アリシア国民として与えられた仕事』をしたのでしょうが、私は本気です」
いやいや、違うって、僕はシャルスが可愛くて。なんといっても、アーネストとメリッサの一粒種だぞ、可愛くないわけないだろーが!
僕が目線で訴えていると
「それにですね、ノリンは私を通り越した私を見ているような気もするのですよ。だから今の私自身を見てもらえるように、私は全力で頑張りますね。その前にーーああ、入ってください」
とシャルスが声を上げた。すると
「失礼します」
レーンの言葉の後、白い医局の制服がなだれ込むように入ってきて、その後からグレゴリーとレーンが入ってくる。
天蓋付きベッドの周りを固めた医局の医師団の中で、アーネストより少し若いくらいの丸眼鏡の痩せぎすの白金髪男が眼鏡の鼻当てを押さえて、
「医局長が更迭されたので、吾輩メイザース・ユングが診察及び確認を致します」
と告げ、シャルスが頷くのを見てから、僕の方にかかっている掛布を剥がされた。
「わ、あああ!」
「じっとなさい」
眼鏡野郎、何か怖いんだけど。ユングって侯爵だよな。
「う、わ」
僕の尻の間に指を突っ込まれ体液を拭われるとそれを魔石装置に乗せて、魔力を掛ける。するとシャルスの金のマナが光り同様のマナが僕から採取された体液からも確認できた。その瞬間、メイザース・ユングを含む医局医師がざあっと平伏した。
「間違いなく殿下の初精でございます!王太子殿下、万歳!」
「「万歳!万歳!」」
は、はあ?
「グレゴリー叔父上、閨係の快挙です!殿下には精にマナが宿り、子が成せます!」
グレゴリー叔父上?
僕が掛布を直してシャルスを見上げると、
「メイザースはグレゴリーの姉の子で、なかなか優秀な医師です」
と話し、あの老医師は父方の祖父であり百五十歳を優に超えると教えてくれた。
「私の精を引き出してくれたノリン・ツェッペリンに対し私は感謝をしています。そこで平民と婚姻し男爵に落ちたツェッペリンを伯爵に戻して禄を上げます」
え、えーっ!
シャルスがにっこりと笑う。もちろんシャルスと僕には、診察の後ガウンがかけられていてすっ裸ってわけでないんだが、頼りない軽装の僕らのベッドの下で平伏している医局医師と、片膝を付いて忠誠の臣下の姿を見せるグレゴリーと集まってきていた第一近衛隊で、シャルスの部屋はなんだか密々しい。
「はい、もちろんでございます。既に書類は支度してございます。あとはこちらにマナ文字のサインと印を」
おい、なんだよ早いな、グレゴリー。
そんなグレゴリーは羊皮紙を載せた黒に金の縁取りのある書類トレーと印を持ってくる。それにシャルスはマナペンでアーネスト・アシリアと名前を書き光印を押した。
医師団とメイザース・ユングが出て行き僕がため息をついていると、
「グレゴリー、私の誕生日の日に婚約式を行いたいと思います。内務省から全貴族に通達をしてください。諸国にも婚約式をすることを告げて下さい」
なんてシャルスが言った。
「もちろんでございます」
そう告げると立ち上がったグレゴリーは再び涙ぐむ。
「殿下がお役目を果たされ、グレゴリーは感無量でございます。これからは選りすぐった……」
「それはいりません、グレゴリー。僕は伴侶ノリン一人と決めています」
グレゴリーは僕がアーネストに執着されているのを知っている。たまから神妙な顔をして頭を下げてから、
「ーー分かりました。このグレゴリー、只今からツェッペリン家に走り殿下のお言葉を伝えます。殿下におきましてはごゆるりとお休みください」
そう言い残して出て行く。
「はい、そうします。ね、ノリン」
シャルスがにっこりと笑いかけたが、なんなんだ、一体。
「湯を浴びたいですね。ノリン、一緒に浸かりましょう」
「あ、え、いや、あの」
「嫌ですか?」
後始末的なものを見られたくないし、僕は首を縦に振った。それよりも心配なのは、お茶会に出ていればシャルスも危なかったのだ。
「婚約式なんて、不審死がある中で危ないです」
「だからです。私は私を囮にします。王宮茶会が襲われたのならば、どこにいても狙われます。それにノリンが守ってくれるのでしょう?そんなノリンに感謝して綺麗にしませんと」
シャルスはレーンに目配せをして、
「失礼します、坊ちゃん」
と告げてレーンが僕をひょいと抱き上げると、内扉を開けて隣の小部屋の浴槽に連れていく。シャルスもその後に続いた。
「え、あ、ちょっと、シャルス様?レーン、なに微笑んでるの?や、うそ……っ」
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