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七章 ガルドバルド大陸の王子
40 国王陛下に報告を
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口から生まれたようなスバルと会ったその日は、シャルスの朝食後には間に合って、政務の傍ら視察の話をした。
それから夕方までは政務に追われて、僕とグレゴリーが選別した書類にサインとバタバタしていた。警戒していたアーネストとは会わずにいて、僕はホッとした。
そして翌日の朝――金曜日なんだよね。
僕は覚悟を決めていた。朝から身体の準備はしたし、食事も消化のいい軽いものにしてもらった。
「行ってらっしゃいまし……」
馬車の見送りはレーン。すごく悔しくてたまらない顔をしているが、レーンは今日リアンと一緒に行動する。公爵夫人のお茶会に呼ばれた母様に付き添うのだ。もちろん、女子のみだから、ぱっと見女の子(淫魔だけど)のレーンが抜擢されるのは無理からぬことだ。
馬車には今日も計算機をたくさん持っているリュトと、難しい顔をしている兄様と僕とアズールだ。王宮までの早朝の馬車の中で誰も話すことはなく、リュトが計算機を売り出すための文言をぶつぶつ呟くだけだった。
アズールの横に座っている僕は、兄様の仕事に心配しつつも、自分の心配が先に立つ。昨日から無言が多くなっていた兄上がふと顔を上げて、
「ノリン、レーダー公爵の御子息を知っている?」
と聞いてきた。レーダー公爵の御子息?ああ、シャルスが来ても舞踏場で顔見せしなかった集団の中にいたな。確か同じ学年だ。
「顔程度は。何か気になるのですか?」
「いや、うん、いいんだ。ちゃんと勉学に励んでおいで」
「ノリン様、頑張ってください!」
僕は学舎方面から王宮に入るけれど、王の政務室に行くんだよな。嘘をつき続けていて兄様に居たたまれない気持ちになる。
「ーーはい」
そんな僕をアズールは見下ろしながら、やんわりと微笑んでいる。アーネストとのあれあこれを期待されても困るって。
早朝の馬車が王宮の貴族学舎がある北門に到着すると、アズールが先に降りて僕に手を添えて馬車から降ろしてくれる。
早朝の北門は交代でいる近衛兵がそれなりに礼を尽くしてくれ、僕は頭を下げてアズールと通り過ぎた。
朝の空気が清々しい。
さあ、シャルスの寝ぼけた顔と、寝癖のついた髪をちょっと撫でてみようっと。
「坊ちゃん」
僕は
「アズール、どうしたの?」
と答えてアズールに振り返って、その背後から出てきたアーネストに心底驚いた。
「ノリン、部屋に来い」
朝帰りかよ、お前!
貴族ジャケットを肩から羽織り、無精髭にボサボサの金髪は不揃いで薄汚れていた。なんでこんなに汚れているんだよ。
「話を聞きたい」
抑揚の少ない低い声で告げられ、
「えーーっと、はい……」
僕はアーネストの声色に渋々頷いた。
……アーネストは何を考えているんだ?
悩んでいるとアーネストにひょいと担がれてしまう。もう近衛兵の死角になる裏庭で、担がれた僕は見えはなしないし、アーネストに担がれた僕のその後ろに付き従ったアズールで全く見えなくなってしまう。
「降ろしてください、歩けます」
「降ろせばシャルスの所に行くだろう?」
い、行かねーよ!
っていうか行きたいけどさ。可愛いシャルスだぜ?アーネストとオーガスタはメリッサが死んだ後、二人で可愛がっていただろ?たしかに成人はしたが、めっちゃ可愛いまんまじゃないか。
ひと気のない王宮の最奥に連れていかれると、虜囚の厚い扉にアーネストが手を触れる。複数の陣と閂が開いて、部屋の扉が開かれた。
「バトラーも入れ」
部屋に入り意外にも小綺麗だった。シャルスがアーネストが出ていったのを見てから一度も帰っていないようだった。
「バトラー、灯りをつけろ」
担がれたままソファの背もたれに顔を押し付けるように降ろされてから、僕はアーネストの声を聞いた。
「知ったことを話せ」
低い響くような声だった。
「……不明死は……未知の毒殺っ……て、ぅんっ」
お腹の奥……くるし……音、やだな。
「そこまでたどり着いたか……他には?」
ソファの端に追い詰められてしがみついた手すりが熱い。その熱をもたらすのは背後にいるアーネストだ。まるで熱い杭だ。杭がお腹の奥にある。
「に、兄様がレーダー公爵のことを……はぁっ、き、気にかけてい……あぐっ!」
奥、奥っ!熱い……入れやがったな。結腸、開いてる……出てる、熱い……奥、出てる、苦しい、のに、イク。だめだ、おかしくなりそう。
「グレゴリーが雇ったアッシュ・ツェッペリンか、優秀だな。レーダーに目をつけたか」
ソファの手すりにしがみついていた僕はアーネストの熱がこもったまま膝立ちだ。アーネストは僕の上着を着ている首筋にきつく唇を合わせてきて、
「孕め」
と声をかけてきた。上半身は服を着たままで下半身は丸出しで、僕はへたばっている。お腹の奥の奥に出されて熱いのに奥過ぎて出てくるわけではなくて、アーネストに背後から抱きしめられた。
「出すなよ、孕め」
またかよ、おい。僕は孕まないよ。
「しかし、いい方向に進んでいる。シャルスが動けば粗が出そうだな。連中を掻き回してやればいい」
「でも、殿下の身に危険が……」
「お前が守るのだろう?レーダーは第二王子を祭り上げていた張本人で、親父と第一王子の死因はレーダーが関わっていたのではと俺は睨んでいる。毒の特定が出来ない毒の可能性があるとはな」
アーネストの声が身体に響く。早く出て行け!終わってもでかいんだよ、お前のは!
それからな、『お前が守るのだろう?』なんて、あっさりと当たり前みたいに言ってくれて。ああ、そうだよ。大事なシャルスを僕は必ず守る。アーネストとメリッサの大事な子供で、オーガスタ時代に懐いてくれていた優しく可愛い子だからな。
やっと身体を離してくれ、僕はお腹の奥に燠火を感じながらソファに座った。下半身は丸出しなんだけど、アーネストの言葉に少し笑ってしまった。
「……なぁんだ、お前も探していたんだ。第二王子は間違いなく戦死だけど、奴には誤算だったんだろうな」
アーネストも何度か暗殺されそうになっていたが、アーネストは毒耐性があり並大抵の毒では死なない。解毒陣を身体に付与しているのは、陣制作の才能を持つメリッサの生涯最後の陣だ。
思わず呟いた僕に、アーネストが表情のない顔で僕を見下ろしてくる。
「報告は終わりだ。早く戻れ」
そう言ってからニヤリと笑って無精髭を撫でながら、
「子種が漏れ出したらまた来い。ベッドで孕むまで種付けをしてやる。その後に湯くらい使わせてやろう」
とアーネストが僕にキュロットと下着を投げつけてくる。僕は僕だけが達していない身体を落ち着かせるようにため息をついた。
それから夕方までは政務に追われて、僕とグレゴリーが選別した書類にサインとバタバタしていた。警戒していたアーネストとは会わずにいて、僕はホッとした。
そして翌日の朝――金曜日なんだよね。
僕は覚悟を決めていた。朝から身体の準備はしたし、食事も消化のいい軽いものにしてもらった。
「行ってらっしゃいまし……」
馬車の見送りはレーン。すごく悔しくてたまらない顔をしているが、レーンは今日リアンと一緒に行動する。公爵夫人のお茶会に呼ばれた母様に付き添うのだ。もちろん、女子のみだから、ぱっと見女の子(淫魔だけど)のレーンが抜擢されるのは無理からぬことだ。
馬車には今日も計算機をたくさん持っているリュトと、難しい顔をしている兄様と僕とアズールだ。王宮までの早朝の馬車の中で誰も話すことはなく、リュトが計算機を売り出すための文言をぶつぶつ呟くだけだった。
アズールの横に座っている僕は、兄様の仕事に心配しつつも、自分の心配が先に立つ。昨日から無言が多くなっていた兄上がふと顔を上げて、
「ノリン、レーダー公爵の御子息を知っている?」
と聞いてきた。レーダー公爵の御子息?ああ、シャルスが来ても舞踏場で顔見せしなかった集団の中にいたな。確か同じ学年だ。
「顔程度は。何か気になるのですか?」
「いや、うん、いいんだ。ちゃんと勉学に励んでおいで」
「ノリン様、頑張ってください!」
僕は学舎方面から王宮に入るけれど、王の政務室に行くんだよな。嘘をつき続けていて兄様に居たたまれない気持ちになる。
「ーーはい」
そんな僕をアズールは見下ろしながら、やんわりと微笑んでいる。アーネストとのあれあこれを期待されても困るって。
早朝の馬車が王宮の貴族学舎がある北門に到着すると、アズールが先に降りて僕に手を添えて馬車から降ろしてくれる。
早朝の北門は交代でいる近衛兵がそれなりに礼を尽くしてくれ、僕は頭を下げてアズールと通り過ぎた。
朝の空気が清々しい。
さあ、シャルスの寝ぼけた顔と、寝癖のついた髪をちょっと撫でてみようっと。
「坊ちゃん」
僕は
「アズール、どうしたの?」
と答えてアズールに振り返って、その背後から出てきたアーネストに心底驚いた。
「ノリン、部屋に来い」
朝帰りかよ、お前!
貴族ジャケットを肩から羽織り、無精髭にボサボサの金髪は不揃いで薄汚れていた。なんでこんなに汚れているんだよ。
「話を聞きたい」
抑揚の少ない低い声で告げられ、
「えーーっと、はい……」
僕はアーネストの声色に渋々頷いた。
……アーネストは何を考えているんだ?
悩んでいるとアーネストにひょいと担がれてしまう。もう近衛兵の死角になる裏庭で、担がれた僕は見えはなしないし、アーネストに担がれた僕のその後ろに付き従ったアズールで全く見えなくなってしまう。
「降ろしてください、歩けます」
「降ろせばシャルスの所に行くだろう?」
い、行かねーよ!
っていうか行きたいけどさ。可愛いシャルスだぜ?アーネストとオーガスタはメリッサが死んだ後、二人で可愛がっていただろ?たしかに成人はしたが、めっちゃ可愛いまんまじゃないか。
ひと気のない王宮の最奥に連れていかれると、虜囚の厚い扉にアーネストが手を触れる。複数の陣と閂が開いて、部屋の扉が開かれた。
「バトラーも入れ」
部屋に入り意外にも小綺麗だった。シャルスがアーネストが出ていったのを見てから一度も帰っていないようだった。
「バトラー、灯りをつけろ」
担がれたままソファの背もたれに顔を押し付けるように降ろされてから、僕はアーネストの声を聞いた。
「知ったことを話せ」
低い響くような声だった。
「……不明死は……未知の毒殺っ……て、ぅんっ」
お腹の奥……くるし……音、やだな。
「そこまでたどり着いたか……他には?」
ソファの端に追い詰められてしがみついた手すりが熱い。その熱をもたらすのは背後にいるアーネストだ。まるで熱い杭だ。杭がお腹の奥にある。
「に、兄様がレーダー公爵のことを……はぁっ、き、気にかけてい……あぐっ!」
奥、奥っ!熱い……入れやがったな。結腸、開いてる……出てる、熱い……奥、出てる、苦しい、のに、イク。だめだ、おかしくなりそう。
「グレゴリーが雇ったアッシュ・ツェッペリンか、優秀だな。レーダーに目をつけたか」
ソファの手すりにしがみついていた僕はアーネストの熱がこもったまま膝立ちだ。アーネストは僕の上着を着ている首筋にきつく唇を合わせてきて、
「孕め」
と声をかけてきた。上半身は服を着たままで下半身は丸出しで、僕はへたばっている。お腹の奥の奥に出されて熱いのに奥過ぎて出てくるわけではなくて、アーネストに背後から抱きしめられた。
「出すなよ、孕め」
またかよ、おい。僕は孕まないよ。
「しかし、いい方向に進んでいる。シャルスが動けば粗が出そうだな。連中を掻き回してやればいい」
「でも、殿下の身に危険が……」
「お前が守るのだろう?レーダーは第二王子を祭り上げていた張本人で、親父と第一王子の死因はレーダーが関わっていたのではと俺は睨んでいる。毒の特定が出来ない毒の可能性があるとはな」
アーネストの声が身体に響く。早く出て行け!終わってもでかいんだよ、お前のは!
それからな、『お前が守るのだろう?』なんて、あっさりと当たり前みたいに言ってくれて。ああ、そうだよ。大事なシャルスを僕は必ず守る。アーネストとメリッサの大事な子供で、オーガスタ時代に懐いてくれていた優しく可愛い子だからな。
やっと身体を離してくれ、僕はお腹の奥に燠火を感じながらソファに座った。下半身は丸出しなんだけど、アーネストの言葉に少し笑ってしまった。
「……なぁんだ、お前も探していたんだ。第二王子は間違いなく戦死だけど、奴には誤算だったんだろうな」
アーネストも何度か暗殺されそうになっていたが、アーネストは毒耐性があり並大抵の毒では死なない。解毒陣を身体に付与しているのは、陣制作の才能を持つメリッサの生涯最後の陣だ。
思わず呟いた僕に、アーネストが表情のない顔で僕を見下ろしてくる。
「報告は終わりだ。早く戻れ」
そう言ってからニヤリと笑って無精髭を撫でながら、
「子種が漏れ出したらまた来い。ベッドで孕むまで種付けをしてやる。その後に湯くらい使わせてやろう」
とアーネストが僕にキュロットと下着を投げつけてくる。僕は僕だけが達していない身体を落ち着かせるようにため息をついた。
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