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四章 金曜日の貴族学舎
23 引き込まれて
しおりを挟む お互いにバスローブのままで別れて、控えの部屋に行くと、アズールとレーンが呆れた顔をしていた。隣の部屋にも人が入ったようで、互いに絹擦れの音がする。服を着せてもらいながら、レーンが深くため息をついた。
「なにか言いたそうだけど、レーン?」
「微笑ましゅうございました」
身支度をしてくれたレーンは綺麗にバスローブを畳むと、ため息をついてからひそりと話してきた。
「あんなに覇気がない王子って大丈夫なんですか?」
「確かにオドが極めて弱い感じがします。しかもマナは少なくございますが」
執事の礼を取りアズールが僕を立たせると、
「片付けて参ります」
そう告げてくる。
「じゃあ、僕は散策でもしているよ」
アズールとレーンは出立準備をしに部屋を出て行き、隣の部屋でも数名の気配を感じて僕は部屋を出ることにする。アズールとレーンはマナが繋がっているから、万が一の時は引き寄せられる。
扉のドアノブはまたレトロな作りで、下げると聞いて僕は外に出たーー途端、柔らかな体温に捕まる。
「嫌だな、シャルス様、出待ちとかーーひょっ!」
僕はシャルスじゃないアーネストに捕まって廊下を引き摺られていた。
「シャルスの匂いがする。控えの部屋から出て来たな」
今回はジャケットすら着ていないアーネストが奥へ奥へ引きずり、僕はそこが退位した王や剥奪された王位者の蟄居部屋だと気がついた。
何故知っているかというと、オーガスタ時代にアーネストに頼まれて、王城全てを内密に測量して地図を制作したことがあるからだ。
アーネストは揺るぎなく一番奥の部屋へ僕を引っぱっていく。王宮メイドが誰も控えていないのが気になったが、重厚な扉を開けるとガチンとドアに鍵が掛かる。
「どうせ時間になればマナが満たされて扉は開く。それまで相手をしてもらおうか。ノリン・ツェッペリン」
おい、また、剣かよと身構えた僕の目の前に来ると、無動作から左手で首を掴まれた。
「ーーひっ」
首を捻りあげるような仕草で僕は顔を上げられて、背伸びした状態でアーネストの唇を唇に受けた。
は?何やってんだ、こいつ。
動作がついていかない。
「俺のものは俺のものだが、息子のものは俺のものだ。ノリン・ツェッペリン。息子の上書きをしてやろう」
そのまま天蓋が裂け、シーツがぐちゃぐちゃになっている巨大なベッドにぶん投げられた。
「逃げるなよ、ノリン・ツェッペリン」
アーネストの瞳が暗いくせにぎらぎらしていて、僕は『断ることも逃げることも出来ない』ことを知っている。僕はツェッペリン男爵の次男坊だ。オーガスタとは違うんだ。
畜生、俺……僕は金髪碧眼の美少年、いや、年齢的には美青年になったんだぞ、アーネスト。
我ながら訳の分からないキレ方をしてから、
「ーー逃げません」
僕は一言そう言ってアーネストを見上げた。
閨指南ってなんだっけ……あんな、あんな、実況見分みたいにずっと話すもんだった?なんか違わなくね?
めっちゃ言わされた、どこで感じてるとかすごく言わされた。言わせて大満足した顔のアーネストが、僕を見下ろしている。
その首には全く似合わない豪華な赤い宝石の首飾りがあって、メリッサの遺品の一部にあったか?あんな派手派手しい色味。アーネストは裸にガウンを前開きのままだらしなく羽織って、僕の肩に触れる。その指先からぴりりと電流が走るような感じがして、
「触んなっ……っ!」
と言ってから身体が震えてしまう。
だめだ。僕は身体の奥に溜まる繰り返し出された精液に感じている。奥の奥まで開かれたのはアズールやレーンと同じだが、苦しさと快楽が伴うのは初めてで、僕はアーネストを受け入れ続ける間ずっと出していない。奥が開いて受け入れ感じ続け、出すことを拒否された身体はまるで煮凝った熱を持っていて、少し触れられると再熱してしまうような感じがした。
「ノリン・ツェッペリン。お前とは身体の相性がいい。ーーもう一度……」
ガチと音がして時間か何かで解錠されたドアをノックする音がして、アーネストが僕をベッドに寝かしたまま、
「ーー間の悪い。入れ」
と低い声を出す。
「失礼します。主人を迎えに参りました」
アズールが慇懃に礼を取り、その横にレーンが微笑みながら礼をした。
「ツェッペリン家の者か、入れ。主人は身体を拭いてやれ。メイド、部屋の片付けをしろ」
広い部屋は荒れ放題で、レーンは頷くと割れた食器や乱れた服などを片付け始め、アズールは用意していたのか、手桶にタオルを浸して身体を拭いてくれる。
淫魔である二人に喰われるよりしんどくて怠い。アズールとレーンは僕に支障が起きないように手加減してくれているのだろう。
アーネストの糞ドS野郎。
「王の子種はくれてやるから持って帰れ、ノリン・ツェッペリン。王の子を望むなら神に祈れ、俺が許してやろう」
誰が祈るかよ、畜生。
睨んで見上げたものの足腰立たなくて、服を整えてもらうのにもアズールの身体にもたれていた。
「その服はバトラーだな、お前は。何故ノリン・ツェッペリンは毎日学舎に来ない?」
「ツェッペリン男爵家には馬車がありませんので、商家の御用聞き見習いの馬車に乗り合わせております」
うわ、アズール、言いやがった。
「買えないほど貧乏か」
アーネストは机の引き出しを開けて、じゃらりと宝飾品をベッドに投げてよこす。
「売って仕立て、毎日、こいつを来させろ」
やめろ、まじ、やめてくれ!
「仕立てるのは簡単ですが維持できませんので、ご遠慮致します」
アズールのきっぱりとした口調にアーネストが唸るが、僕を抱き上げて頭を下げたアズールと睨み合い諦めたようだ。
「ノリン・ツェッペリン、金曜日は必ず来るんだな」
僕が渋々頷くとアーネストがにやりと笑った。
「待っているぞ、ノリン・ツェッペリン」
レーンがものすごい勢いで綺麗にした部屋の真ん中で全裸にガウンを羽織ったアーネストが、たった一人取り残されるかのように扉が閉まるのを待っていた。ガチンと鍵が閉まり封印陣が展開したのを見た。
ーーこれは……
アーネストに何があったんだ?
明らかに監禁用の部屋だった。
「なにか言いたそうだけど、レーン?」
「微笑ましゅうございました」
身支度をしてくれたレーンは綺麗にバスローブを畳むと、ため息をついてからひそりと話してきた。
「あんなに覇気がない王子って大丈夫なんですか?」
「確かにオドが極めて弱い感じがします。しかもマナは少なくございますが」
執事の礼を取りアズールが僕を立たせると、
「片付けて参ります」
そう告げてくる。
「じゃあ、僕は散策でもしているよ」
アズールとレーンは出立準備をしに部屋を出て行き、隣の部屋でも数名の気配を感じて僕は部屋を出ることにする。アズールとレーンはマナが繋がっているから、万が一の時は引き寄せられる。
扉のドアノブはまたレトロな作りで、下げると聞いて僕は外に出たーー途端、柔らかな体温に捕まる。
「嫌だな、シャルス様、出待ちとかーーひょっ!」
僕はシャルスじゃないアーネストに捕まって廊下を引き摺られていた。
「シャルスの匂いがする。控えの部屋から出て来たな」
今回はジャケットすら着ていないアーネストが奥へ奥へ引きずり、僕はそこが退位した王や剥奪された王位者の蟄居部屋だと気がついた。
何故知っているかというと、オーガスタ時代にアーネストに頼まれて、王城全てを内密に測量して地図を制作したことがあるからだ。
アーネストは揺るぎなく一番奥の部屋へ僕を引っぱっていく。王宮メイドが誰も控えていないのが気になったが、重厚な扉を開けるとガチンとドアに鍵が掛かる。
「どうせ時間になればマナが満たされて扉は開く。それまで相手をしてもらおうか。ノリン・ツェッペリン」
おい、また、剣かよと身構えた僕の目の前に来ると、無動作から左手で首を掴まれた。
「ーーひっ」
首を捻りあげるような仕草で僕は顔を上げられて、背伸びした状態でアーネストの唇を唇に受けた。
は?何やってんだ、こいつ。
動作がついていかない。
「俺のものは俺のものだが、息子のものは俺のものだ。ノリン・ツェッペリン。息子の上書きをしてやろう」
そのまま天蓋が裂け、シーツがぐちゃぐちゃになっている巨大なベッドにぶん投げられた。
「逃げるなよ、ノリン・ツェッペリン」
アーネストの瞳が暗いくせにぎらぎらしていて、僕は『断ることも逃げることも出来ない』ことを知っている。僕はツェッペリン男爵の次男坊だ。オーガスタとは違うんだ。
畜生、俺……僕は金髪碧眼の美少年、いや、年齢的には美青年になったんだぞ、アーネスト。
我ながら訳の分からないキレ方をしてから、
「ーー逃げません」
僕は一言そう言ってアーネストを見上げた。
閨指南ってなんだっけ……あんな、あんな、実況見分みたいにずっと話すもんだった?なんか違わなくね?
めっちゃ言わされた、どこで感じてるとかすごく言わされた。言わせて大満足した顔のアーネストが、僕を見下ろしている。
その首には全く似合わない豪華な赤い宝石の首飾りがあって、メリッサの遺品の一部にあったか?あんな派手派手しい色味。アーネストは裸にガウンを前開きのままだらしなく羽織って、僕の肩に触れる。その指先からぴりりと電流が走るような感じがして、
「触んなっ……っ!」
と言ってから身体が震えてしまう。
だめだ。僕は身体の奥に溜まる繰り返し出された精液に感じている。奥の奥まで開かれたのはアズールやレーンと同じだが、苦しさと快楽が伴うのは初めてで、僕はアーネストを受け入れ続ける間ずっと出していない。奥が開いて受け入れ感じ続け、出すことを拒否された身体はまるで煮凝った熱を持っていて、少し触れられると再熱してしまうような感じがした。
「ノリン・ツェッペリン。お前とは身体の相性がいい。ーーもう一度……」
ガチと音がして時間か何かで解錠されたドアをノックする音がして、アーネストが僕をベッドに寝かしたまま、
「ーー間の悪い。入れ」
と低い声を出す。
「失礼します。主人を迎えに参りました」
アズールが慇懃に礼を取り、その横にレーンが微笑みながら礼をした。
「ツェッペリン家の者か、入れ。主人は身体を拭いてやれ。メイド、部屋の片付けをしろ」
広い部屋は荒れ放題で、レーンは頷くと割れた食器や乱れた服などを片付け始め、アズールは用意していたのか、手桶にタオルを浸して身体を拭いてくれる。
淫魔である二人に喰われるよりしんどくて怠い。アズールとレーンは僕に支障が起きないように手加減してくれているのだろう。
アーネストの糞ドS野郎。
「王の子種はくれてやるから持って帰れ、ノリン・ツェッペリン。王の子を望むなら神に祈れ、俺が許してやろう」
誰が祈るかよ、畜生。
睨んで見上げたものの足腰立たなくて、服を整えてもらうのにもアズールの身体にもたれていた。
「その服はバトラーだな、お前は。何故ノリン・ツェッペリンは毎日学舎に来ない?」
「ツェッペリン男爵家には馬車がありませんので、商家の御用聞き見習いの馬車に乗り合わせております」
うわ、アズール、言いやがった。
「買えないほど貧乏か」
アーネストは机の引き出しを開けて、じゃらりと宝飾品をベッドに投げてよこす。
「売って仕立て、毎日、こいつを来させろ」
やめろ、まじ、やめてくれ!
「仕立てるのは簡単ですが維持できませんので、ご遠慮致します」
アズールのきっぱりとした口調にアーネストが唸るが、僕を抱き上げて頭を下げたアズールと睨み合い諦めたようだ。
「ノリン・ツェッペリン、金曜日は必ず来るんだな」
僕が渋々頷くとアーネストがにやりと笑った。
「待っているぞ、ノリン・ツェッペリン」
レーンがものすごい勢いで綺麗にした部屋の真ん中で全裸にガウンを羽織ったアーネストが、たった一人取り残されるかのように扉が閉まるのを待っていた。ガチンと鍵が閉まり封印陣が展開したのを見た。
ーーこれは……
アーネストに何があったんだ?
明らかに監禁用の部屋だった。
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