国王親子に迫られているんだが

クリム

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四章 金曜日の貴族学舎

22 シャルスの部屋

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「さあ、坊っちゃん、ご入浴を」

 アズールとレーンに促されて仕方なく服を脱がされ湯に浸かる。散湯シャワーもないんだと思いながら、レーンに受け入れ箇所を丁寧に洗われ開かれ拭かれてバスローブを着せられると、心臓がばくばくいっているのに気づいた。

 いや、その、それは、あれだ。だってオーガスタ時代に最後に見た顔は小さかったんだよ。それが、なんだ。それが成人年齢過ぎになって、おむつまで変えた可愛らしい子供とだな、い、致すとか、おかしいだろう!いや、今はノリン・ツェッペリンで、成人して適齢期スタートだって!振れ幅おかしいよ、僕。

「うーん、葛藤が……」

「ーー坊っちゃん。そんな倒錯的な葛藤も快楽のスパイスですよ。ご存分に」

 おい、アズール。涼しい執事顔でしれっと言うんじゃない。うっかり、そうだよねとか言いそうになったじゃないか。レーンもアズールの言葉ににこにこ頷くのはやめてくれ。

「こちらの準備が終わりましたので、ベルを鳴らします」

 柔らかなバスローブにビジューサンダルっていう柔らかできらきらしたものだけってを靴として履いて、こんなに頼りないものなんだ。

 アズールがチリンとベルを鳴らすと、

「どうぞ」

とシャルスの言葉。え、えーと、閨指南!わ、忘れた!入り方ってどうすりゃいいんだよ!

「坊っちゃん、行ってらっしゃいまし」

 レーンが開けた扉からトンと背中を押されて、部屋の薄暗さと天蓋付きの巨大なベッドにビビる。なんだよ、これ、僕の部屋くらいあるんじゃないのか?

「メイドも全て下がらせてあるから、緊張しないでほしいです。近くに来てベッドに座ってください」

 いやいやいやいや、緊張するだろ!誰か助けてくれっ!うちのアズールとレーンは僕から漏れる淫オドわくわく待機中で役に立たない!

 シャルスも当然バスローブとサンダルって装いで、ベッドに腰掛けている。本当に痩せているなと、バスローブから見える鎖骨を見て思った。

「ごめんなさい。こんな風にしか君と二人で会えなくて仕方がなかったのです」

「ーーえ?」

 思わず顔を上げた。

「先日は、父が失礼しました。まさか、学生である君に剣を向けるなんて。お怪我はありませんか」

 シャルスの丁寧語って、お前、王子様だろーが!王太子だよな!僕は慌てたが、シャルスはあのまんまのシャルスで、困ったような顔をして僕を見下ろしてきたから、なあんだと肩から力を抜いた。

「あ、ああ、はい、大丈夫です。予測出来なくて。脇腹を突いてしまいました。肋骨は折れていないと思いますが……」

「肋骨!折れたのですか?」

 バスローブを開かれて、僕の胸の下を撫でる手は冷たくて驚いた。

「あ、あの、僕じゃなくて、国王陛下ですっ!」

 僕のバスローブから手を引いて、シャルスが目をまん丸にしてから、

「父……の?君……が?父の間合いに入ったのですか?」

と聞いてきた。

「あ、はい。身体が小さいのが幸いしたのだと思います。大太刀落としでしたから、脇が甘くなるんですよね。だから脇腹に肘打ちして空間を開けたんですよ」

 オーガスタ時代なら剣ごと薙ぎ払う位で出来たけど、この小さな身体と不意打ちではあれくらいしか出来ないだろうなあ。そんな風に考えていたら、シャルスに髪を撫でられた。

「あなたはすごいのですね、父が怖くないみたいに感じます。私は尊敬します」

「は?どうしてアーネストを怖……」

 唐突柔らかな声がしてシャルスの唇がおでこに振ってきた。

 尊敬、だって?降ってきたその声と感触、僕は固まってしまった。

 おでこに、キス、された。

「ふふ、面白い顔をしていますね。キスは初めてですか?」

「か、家族以外には……」

 淫魔には貪り喰われていますがなんて言うことは出来ずに、僕はおでこを指で触れる。

「あなたといると呼吸がしやすいです。あなたをノリンと呼んでもいいですか?私のことはシャルスと呼んでください」

 まるで疲れた感じのシャルスは深いため息をついた。僕はそんなシャルスの様子に

「シャルス様、大丈夫ですか?」

と言ってしまったのは素の自分だ。

「大丈夫……ですか。少し無理をしていると思います。だから、ノリンとこうして息抜きをしたいです」

 小さい頃と変わらないシャルスの寄せた眉に、僕は胸が痛んだ。この気持ちはなんだろう。この気持ちはなんだろうーー

「毎週ノリンを選んで、息抜きにお話をしたいのです」

「いいですよ、シャルス様。僕がお役にたてるなら」

 お互いに準備された身体ではあるけれど、バスローブだけれど、二人で見つめ合い声をあげて笑ってしまった。なんだ、やっぱりシャルスはシャルスじゃないか。

「ありがとうございます、ノリン。本当に困っていることは二つなのですが、一つはノリンのお陰で解決されます。ーー当分の間」

「え?ああ、僕が金曜日にシャルス様からお声が掛かるからですか?」

 僕の言葉にシャルスが頷いた。

 なるほど、なみいる子弟子女の阿鼻叫喚が聞こえそうだよ。世継ぎを跡継ぎをと親から言われているんだろうなあ。

「今度魔の森ベリーのミニタルトを持ってきますよ。ベリーお好きだったでしょう?」

 僕がそう言ってから立ち上がると、シャルスが目を輝かせて頷いた。

 食の細い小さなシャルスは魔の森のベリーだけは、よく食べた。特にベリータルトケーキはメリッサにも教えてよく作っていたしーーし、しまっ……

「さすが魔の森の管理人と噂されるツェッペリン男爵家ですね。魔の森が庭みたいです」

 よかった。シャルスは気づかずに笑って、決められた時間が終了した。

 

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