帝国皇子のお婿さんになりました

クリム

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第3話 いざ、寝室

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 夕食は部屋で取った。一階から運んで、しかもロータス側が毒味をし、クーちゃんが毒味をした後の冷え切った食事は、基本素材中心塩味。これは仕方がない。

 飯テロとかやっている転生者とかいるけど、居酒屋ごと移動しちゃう系や、チートでネットスーパーなんかあるならまだしも、調味料なんて作れない。そんな専業主婦には知識もありません。

 鉄板どころのマヨネーズを作るのは、高校の家庭科でやったけど、あまり美味しくなかったからやりたくはない。やっぱりマヨネーズはQPに限るし、そもそも、私はシーズニングを使うのが大好きな主婦だった。

 それに王族が料理室なんて、料理人に対する冒涜になるに違いないだろうから、飯テロはしないし、そもそもそんな能力はない。と言うか、小国アスター王国は既に前世レベルで豊かな食生活文化を有していた。

 それでも王家は違う。伝統の料理を毎週同じだけ。残せば医者が、足りねば料理長がやってくる。王族は暴飲暴食なんてできないし、毎日を着実に生きることで民を守るのだと話を繰り返し聞いた。ロータス帝国も同じだろう。冒険者ギルドは良かったよ、食べ歩きも出来たし。懐かしいと思ってしまう。

「温かい食事が食べたいなあ」

「許可が降りれば、アスター王国から生活魔動具をいくつか取り寄せます。想像以上の不便さですねー」

「うん、頼みたいよ」

 ちらりと部屋の奥を見る。隣の部屋が殿下の自室兼寝室だ。外に出ずに内扉で繋がっている。殿下側からは鍵がかけられる仕組みになっていて、内扉からカチリと鍵が開く音がする。

「ーーお呼びですね」

 つまりは来いって合図だ。私はバスローブのまま、クーちゃんを連れて部屋に入っていく。クーちゃんの入室は先に話しておいたから不敬には当たらないだろう。

「ようこそ、姫。その、お呼び立てして申し訳ありません」

 ふわふわの豊かな銀髪を腰まで揺らした殿下が、同じくバスローブ姿で寝台に座っていた。

「私たちの関係は『白い結婚』のはずですが?婚姻の儀を果たした今、私はもう用済みのはず。まさかこの身を捧げよと言われるおつもりか」

 丁寧な口調だが、かなり他人行儀になってしまった。こちらとしても我が身と国を守らねばならない。

「いいえ、その話ですが……」

 殿下は言いにくそうに口を開き、言葉を止める。

 帝国の皇太子って不遜なイメージがあったが、なんだろう物腰が柔らかな殿下だ。育ちがいいってこんな感じなのだろうか。私もそこそこ、一応、王族だし、威厳と規律とTPOとマナーを学んでいるが、こんな柔らかいたおやか口調とは。

「ああ、君、気が利きますね。ワインですか。姫、いただいても?お恥ずかしながら、緊張して昨晩も寝られず……」

 緊張しているのか、半分ほどワイングラスに満たしたワインを見て、明らかにホッとした顔をした。クーちゃんが静々と這い寄り、膝をついてワイングラスの乗るトレイを手元まで上げると、一つを手に取る。

 毒味をするのかと冷や汗が出たが、それをしないで口をつけると、喉仏を前後させて嚥下する。一気飲みだーー速攻睡眠薬入りを。

 殿下は酒豪か?

 クーちゃんと軽く目を合わせる。天蓋付きのダブルベットの上で、ふう……と息を吐いた殿下の手が空のグラスを揺らすから、側で立つ私が一言断りを入れてから受け取り、次の言葉を待った。

「あの、わたしはあなたに……ん……」

 豊かな髪を散らして横たわる。背が高いなー、さすが大陸高身長の帝国の最高峰。

「速攻すぎないか?クーちゃん、容量、用法を正しく守った?」

「当たり前です。そこら辺の素人ではありません。殿下は寝不足がたたったのでしょう。少し引き上げますよ」

 掛布を外して、寝息を立てる殿下を、小柄なクーちゃんがひょいと脇に手を入れて引き上げると、枕を頭にあてがった。

「シーツに血を数滴……」

 クーちゃんが秘伝?の血糊を数滴垂らした。はい、これで既成事実って、まさに、これもテンプラね。あ、ああ、また、若者言葉を。まあ、いいじゃないか、異世界転生した時点で、テンプラだ。さて、少しばかり、殿下のバスローブを乱さないと。

 殿下の腰紐に手をかける。

「……主様、楽しんでいませんか?」

 ベッドの横でクーちゃんがぼそっと言った。

「――――っ!な、な、何言って」

 前世を思い出した今も昔も、旦那だけだから、男の人の裸って。専業主婦だからね、あとは息子か。息子は小学生くらいまでしか、しげしげと見たことないし、旦那はちょいぽちゃアザラシ系だったから、外国人?の美形殿下の裸には、まあ、かなり興味がある。

 バスローブを紐解いて、真っ白な平らな胸と肌を晒す。筋肉質ってわけでもない、でもやっぱり骨ががっしりした成人男性で、下着はつけていないから、下腹のものが見えた。

 ピンク色っぽい性器はやっぱり、陰毛剃りにあっていて、脇毛もチン毛も貴族は剃られる。もう、なんかの罰ゲームかプレイみたいになっていて、当然王族の私もツルツルピカピカだ。

「ーーあれ?」

 男性器の下が赤いような気がして、怪我をしたかと少し首を傾けると、

「えっ」

と声を上げてしまう。

「あ、主様、どうしたのです?」

「どうしたのです?じゃない。これは……なんだ」

 前世の記憶が覚醒した今でも、この状態で は分からない。いや、知識としてはある。でも、現実的に見ると、なんともかんとも。

「ーー!これは」

 クーちゃんも息を呑んだ。

 項垂れたピンク色の男性器をずらすと、陰嚢があるはずの場所は2つに割れて赤い襞を覗かせていた。皇太子エリファスは、男性器の下に女性器を持っている男だった。

 皇太子に嫁したはずだが?

「とりあえず、乱してーー主様?」

「うん、クーちゃん」

 私は喉がひりついてクーちゃんの持つトレイから、ワイングラスを取る。

「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」

 一気に喉に流し込んだ。

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