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結局、おっさんはそのまま出掛けていってしまったのでひとまず干してあった洗濯物を片付けてしまいましょうか。終わったら次は晩御飯作って仕舞わないとね。
乾いた洗濯物をベランダへ取りに行き床に一先ず置くとチャイムの音が聞こえた。
ピンポーン!
あれ?今日、誰か訪ねてくる予定だったかしら?
「はーい!ちょっと待って!」
不思議に思いつつも玄関の方へ向かい、慌てて玄関チェーンと鍵を開け玄関扉を開くとまさかの人物がいた。その人は革製の鞄を一つだけ持っており、片手を挙げて挨拶した。
「家庭訪問しに来た。」
「え゛っ!」
「…………ってのは冗談で、さっき言ってた翅の生えたおっさんの姿をした妖精のことを調べてみたら一冊だけあったから持ってきたぞ。」
しろちゃん先生はそう言って古そうな赤い紐で括られた高価そうな木箱を渡してきた。木箱を廊下に置くと赤い紐をゆっくりと外したら、その中には一冊の古い紐で綴じられた書物が一つ入っていた。
「え、わざわざ届けてくれたの?しろちゃん先生……ってこれ、絶対希少価値高いやつてしょ?こんなの私に渡して大丈夫なの?千切っちゃわないか心配だわ。」
「お前なら大丈夫だろう。几帳面だしな。……まあ、貴重なのは確かだから、この場で読んでもらうことにはなるがな。」
そう言って手袋を手渡してきたのですぐに受け取り手にはめた。
「お前が言っていた奴の事が書いてあるのは確か183ページだった筈だぞ。」
しろちゃん先生はそう言うといつの間にか先生も手袋をはめていたらしく、そのページを開いて指差した。指差した先には本物と似て非なる絵……正直、妖精というよりは妖怪にしか見えない絵とその解説が書いてあるようだが何が書いてあるのかさっぱり分からない……が書いてあった。
「…………しろちゃん先生。」
「ん?どうした?」
「ごめんなさいね、折角持ってきてくれたのに申し訳ないんだけどこれ、何が書いてあるのか読めないわ。」
昔の書物だからか筆で続け字で書かれたそれは私には難易度が高すぎた。絵もあるとはいえ、何が書いたあるのかさっぱり分からなかったのでしろちゃん先生にすぐに返却した。
「…………あ……そうだよな。確かに読みにくいわな。読んでやるよ。」
しろちゃん先生は眼鏡ケースを鞄から取り出し眼鏡をかけた。元ヤンと言わんばかりの先生はインテリ風に早変わりしたのがちょっとばかし面白かった。
「お願いするわ……先生眼鏡をかけるのね元ヤンからインテリに化けた!」
「……元ヤンは否定できねーけどこれでも学生時代成績優秀だったんだぞ。」
「え"っ!」
衝撃を受けたような顔をしていた私にデコピンを食らわせたしろちゃん先生は、書物を開いた。大人の色気すげぇと更に衝撃を受け硬直していたもののすぐに立ち直りルーズリーフを一枚棚から取り出した。しろちゃん先生に読んでもらいつつ内容を紙に書き出していきもう一度よく見てみる。
翅生えし者
老人の様な見た目に翅が生えているのが特徴。自らの事が見える者にのみ願い事を叶える存在。どんな願いでも叶えることが出来ると言われている。大きさは人間と同じ大きさで願い事を叶える事を強要すると臭い屁を出して逃げるという。翅生えし者は一生に叶えられる願いの数が決まっており、願いを叶えてもらえる側には代償は基本的にはないものの、ただ叶えてもらった後は翅生えし者の事を忘れるらしい。願いを叶える側は翅が少しずつ失われ、自分の叶えられる願いの数を全て叶えると消えてしまうのだという。その願いの重さによっては願いの叶えた数も1つ叶えても複数願いを叶えたのと同じ扱いになることもある。人間の願い事は重い願い事が多い為会っても叶える事は稀である。
「……そういうことだったのね。」
あの翅ありオッサンめ、一番重要なことを言ってないじゃない!後で問い詰めなくちゃね。
「ただいまぁ~オッサン帰ったぞぉ~!」
……あ、しまった(汗)。
「ん??」
しろちゃん先生は眉間に皺を寄せ私の方へ視線を向けた。その顔にはあの声の主は誰だと言わんばかりの表情が浮かんでいた。
あちゃ~、不味いわね。
玄関からふよふよ浮いたまま此方に風呂敷を抱えて戻ってきたおっさんを視界に入れて額に手を当てた。
乾いた洗濯物をベランダへ取りに行き床に一先ず置くとチャイムの音が聞こえた。
ピンポーン!
あれ?今日、誰か訪ねてくる予定だったかしら?
「はーい!ちょっと待って!」
不思議に思いつつも玄関の方へ向かい、慌てて玄関チェーンと鍵を開け玄関扉を開くとまさかの人物がいた。その人は革製の鞄を一つだけ持っており、片手を挙げて挨拶した。
「家庭訪問しに来た。」
「え゛っ!」
「…………ってのは冗談で、さっき言ってた翅の生えたおっさんの姿をした妖精のことを調べてみたら一冊だけあったから持ってきたぞ。」
しろちゃん先生はそう言って古そうな赤い紐で括られた高価そうな木箱を渡してきた。木箱を廊下に置くと赤い紐をゆっくりと外したら、その中には一冊の古い紐で綴じられた書物が一つ入っていた。
「え、わざわざ届けてくれたの?しろちゃん先生……ってこれ、絶対希少価値高いやつてしょ?こんなの私に渡して大丈夫なの?千切っちゃわないか心配だわ。」
「お前なら大丈夫だろう。几帳面だしな。……まあ、貴重なのは確かだから、この場で読んでもらうことにはなるがな。」
そう言って手袋を手渡してきたのですぐに受け取り手にはめた。
「お前が言っていた奴の事が書いてあるのは確か183ページだった筈だぞ。」
しろちゃん先生はそう言うといつの間にか先生も手袋をはめていたらしく、そのページを開いて指差した。指差した先には本物と似て非なる絵……正直、妖精というよりは妖怪にしか見えない絵とその解説が書いてあるようだが何が書いてあるのかさっぱり分からない……が書いてあった。
「…………しろちゃん先生。」
「ん?どうした?」
「ごめんなさいね、折角持ってきてくれたのに申し訳ないんだけどこれ、何が書いてあるのか読めないわ。」
昔の書物だからか筆で続け字で書かれたそれは私には難易度が高すぎた。絵もあるとはいえ、何が書いたあるのかさっぱり分からなかったのでしろちゃん先生にすぐに返却した。
「…………あ……そうだよな。確かに読みにくいわな。読んでやるよ。」
しろちゃん先生は眼鏡ケースを鞄から取り出し眼鏡をかけた。元ヤンと言わんばかりの先生はインテリ風に早変わりしたのがちょっとばかし面白かった。
「お願いするわ……先生眼鏡をかけるのね元ヤンからインテリに化けた!」
「……元ヤンは否定できねーけどこれでも学生時代成績優秀だったんだぞ。」
「え"っ!」
衝撃を受けたような顔をしていた私にデコピンを食らわせたしろちゃん先生は、書物を開いた。大人の色気すげぇと更に衝撃を受け硬直していたもののすぐに立ち直りルーズリーフを一枚棚から取り出した。しろちゃん先生に読んでもらいつつ内容を紙に書き出していきもう一度よく見てみる。
翅生えし者
老人の様な見た目に翅が生えているのが特徴。自らの事が見える者にのみ願い事を叶える存在。どんな願いでも叶えることが出来ると言われている。大きさは人間と同じ大きさで願い事を叶える事を強要すると臭い屁を出して逃げるという。翅生えし者は一生に叶えられる願いの数が決まっており、願いを叶えてもらえる側には代償は基本的にはないものの、ただ叶えてもらった後は翅生えし者の事を忘れるらしい。願いを叶える側は翅が少しずつ失われ、自分の叶えられる願いの数を全て叶えると消えてしまうのだという。その願いの重さによっては願いの叶えた数も1つ叶えても複数願いを叶えたのと同じ扱いになることもある。人間の願い事は重い願い事が多い為会っても叶える事は稀である。
「……そういうことだったのね。」
あの翅ありオッサンめ、一番重要なことを言ってないじゃない!後で問い詰めなくちゃね。
「ただいまぁ~オッサン帰ったぞぉ~!」
……あ、しまった(汗)。
「ん??」
しろちゃん先生は眉間に皺を寄せ私の方へ視線を向けた。その顔にはあの声の主は誰だと言わんばかりの表情が浮かんでいた。
あちゃ~、不味いわね。
玄関からふよふよ浮いたまま此方に風呂敷を抱えて戻ってきたおっさんを視界に入れて額に手を当てた。
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