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まさか、強面イケメンがおっさんのお兄ちゃんなんて思わなかったわ。

あまり細かいことは教えてもらえなかったがおっさんの様子を見にきたらしい。
ついでに持って帰ってくれないかな。この翅ありおやじ。

「この翅ありおやじを買った覚えはないけど返品したいので持って帰ってもらえませんか?」

男は金髪の跳ねている髪をかきあげると手で無理だと返事する。

「コイツが言って聞くようなやつだと思うかよ。はっ!」

男は宙に浮いたままおっさんの頭の上に足を乗っけている。おっさんは不服そうだ。

「おっさんは絶対ここを離れないもんね。ふんだ!」
あっかんべー。

「そもそもあなたは何なんですか?」

「ん~一応、雷神。あんま仕事しねーけどな。」
「おにーちゃんの上にもう一人、風神のおにーちゃんいるんだよぉ!」

え゛っ!まだいるの?今度こそこのおやじとそっくりだったりして……。

「おにーちゃんとっても格好いいんだからぁ!おっさん憧れちゃう~!」

「あ゛、俺はどうなんだよ!」

「え~おにーちゃん仕事サボりまくってるのにどこに憧れればい……痛った!」

雷神に拳骨くらったおやじは涙目になっている。


男はふと何かを思い付いたのかこちらを向いた。

「そうだ!オメエコイツ説得してくれないか?」

…………ん?何かしら?



雷神曰くどうやらおっさんの翅が1枚しかなくなっているので治しに行ってこいと説得している最中だったらしい。

「あんたねぇ治しに行きなさいよ!」

「えっやだ(笑)」

ぶちん!……だめだめ腹をたてちゃいつもと同じことになるわ。
大きくため息をつくと翅について色々聞いてみることにした。

「そもそもその翅って1枚しかなくても宙に浮いてるわよね。」

「うん!だっておっさんのこの翅は飛ぶためのものではないからなぁ!」

おっさんは自分に興味を持ってくれたのが嬉しかったのか機嫌が直っていた。

「翅が少なくても存在感のゼロのただのおっさんなだけだしぃ。」

けらけら笑ってそう言った。雷神は額にてを当てている。

「……まあ、オメエは特殊だからな…」

「だいじょーぶなの。」

「だが、それとこれとは話が別問題だ!」

「………………嫌、そもそも存在感ゼロって何よ!存在感ありまくりじゃない!何処の世界に翅ありおやじがいるのよ!……ってここにいるわね。」

思わずため息が出たが、それは一先ず置いておいて雷神に一つ質問した。

「そもそもどうやって治すのよ。治せるものなの?」

「難しくはあるが一つだけ可能性があるんだ。俺はそれを試してみろって説得してんだよ。」

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