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家に帰ると、やはりあのおっさんが今度は部屋の隅でのの字かいて拗ねていた。

…くそめんどくせー。
思わず男の方が出ても悪くないはずだ。

「そこの珍種のおっさん、いつまでも拗ねてる気よ。」

「…………(つーん)」

ぶちっ。

取り敢えず塩投げてみる。

痛っ!

…あ、効いちゃった(汗)

「なにするんだよお~。おっさん繊細なんだぞお。」

…繊細に見えない。ただの珍種に見えるわよ。

「珍種って酷くないかそれえっ!おっさんただの翅の生えたおっさんだからああっ!」

…それ種族名?

「そうそう。“ただの翅の生えたおっさん”までが種族名。」

…まじすか。

「ちなみに何でお母さんには見えないの?」

「わからん」

がくっ。

「他の人に見える見えないの基準も不明!」

そうなのね。なんか今日は疲れたわ。

お母さんに買ってきたケーキを冷蔵庫に入れておかないとね。そしたら部屋に戻って少し休みたいわ、………はぁ。

ため息をつくと冷蔵庫にケーキを入れてお母さん宛てにメッセージを書く。


お母さんへ
冷蔵庫の中のケーキ食べてね。

書き終えるとセロハンテープで冷蔵庫に貼りつけるとおっさんにビシッと指先を向ける。

「そこの珍種なおっさん………。」

「だからぁ~せめて珍種はやめてくれよぉ~!」

「だまらっしゃい!………冷蔵庫のケーキ、絶対食べるんじゃないわよ。食べたら容赦しないわ。」


ドスの効いた声でそう言いつつ右手塩を投げる準備をしているとおっさんは慌ててわかった、わかったと頭をブンブン振って頷いていた。その顔は少しだけ残念そうに見えた。何て言えばいいのか。………あ、そうだ!好物を没収された飼い犬!

………しょうがないわね。

私はおっさんに向けてカバンの中からあのカフェで買っておいたクッキーを取り出し投げつけた。

「!おっとっと!」

私が投げたお菓子をなんとか受け止めたおっさんは中身がクッキーだと分かると目をキラキラさせてこちらを見た。何度もクッキーとこちらを交互に見ているおっさんの考えていることなんてすぐにわかったわ。

…………これ、おっさん食べていいの?本当に?

って顔してヨダレ垂らしているのだもの。私はため息をつくと手で食べろと合図してそのまま自分の部屋に入ることにした。

「久しぶりのクッキーだぁ~!」

クッキーごときで大喜びしているおっさんが視界に入り少しだけ、ほんの少しだけよ?嬉しくなっちゃった。男なんてみんな屑だと思っているのによ?

………なんとも複雑な気分ね。
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