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…………………………………(呆れ)。

ため息を一つこぼした私はこうなったらテコでも動かないことを知っているので諦めて大人しく運ばれることにした。
私より歩幅が広いので人間の姿で歩くより早く目的地に着きそうだと思いつつ、猫のときとはまた違った景色の見え方の楽しさがあって鼻歌を歌いながら大人しくしていた。
猫のとき、いつも運ばれていたせいか、このとき、羞恥心が全くといってなかったことは幸いだったのかもしれない。

……後で恥ずかしくなって翌日ベッドから出てこなくなるわけだがな。ははは(汗)。

ちなみにクライドさん達は屋敷の人達の様子を見に行ったからいないぜ。

あの呪具のある部屋にたどり着き、中に入るとすぐに古の一族の声が聞こえてきた。

『いりこの人とやらは大丈夫だったようだな。』

「うん!………本当は早く解放すべきだったのに悪かったな。」

『気にしないで。』

『これくらい待ったとは言わない。』

『………それに同胞を助けてもらっただけでなく、闇の一族の支配からはすでに解放されているからな。あとはこの封印からの解放だけだ。いりこの人とやらやオリガとやらの解呪の時間位待てる。』

その言葉を聞いて私は嬉しくなった。彼らが人間の私を信じてくれたことで今回の苦労が報われる気がしたのだ。私はいりこの人に視線を向けると彼も頷いた。私は人間の姿に戻ったときに口から手に握り直したあの四角いものをこの部屋にかざした。

「皆を解放してくれ。」

パアァァァァァァァァァァァァーーーーーー!

その四角いものは強く光り始め、部屋中の呪具にひびが入り始めた。私といりこの人は手を強く握りあいながらその光景をただじっと見ていた。

そして次の瞬間、この部屋にあるもの全ての装飾品や美術品から大きな音で砕けるような音が響いた。砕け散った装飾品や美術品は部屋の床に落ちていき、砕けた装飾品や美術品の代わりに丸い石が宙に浮かんでいた。その宙に浮かんでいる石のうちの3つほどは他の石よりは一回り大きくとても美しかった。私はすぐにこの一回り大きい3つの石は、この部屋のあたりで聞いたあの声の主なのだとわかった。

「………これで解放できてるはずだ、たぶんな。」

渡はほっと息をつくといりこの人の方を見た。


「……………これが命の石なのか。どうやって浮いているんだ?」

いりこの人は宙に浮かんでいるのが興味深いのかじっと観察していた。それを見ていて正直安心した。命の石を見る目が何かに利用してやろうとかそういった類いのものではなったことが嬉しくてさすが私の婚約者だと思った。








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