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このあと、彼は安心した顔ですうっと消えていった。

安心した顔で消えた彼の冥福を祈ると同時に、ほっと息をついた私はふと何かを忘れていることに気付いた。

だが、何だったか……………………あ。

四角い石!どこにいった!

『足元に…………。』

「にゃ(あった)!」

ありがとう!

私は声の主である古の一族に感謝の言葉を告げると古の一族の者達の声はどこか嬉しそうに、こちらこそありがとう、と言ったので首をこてんと傾げた。

「にゃ?」

落とし物を見つけてもらったのは私だぞ??

『…………早く待っている者のところに行くといい。』

『こちらはあとでも平気だから早く行ったほうがいいよ。』

『早く行け。』

「にゃあ(そうさせてもらうぜ)!」

私は最初入った穴から出ようとして、本の存在を思い出した。口には四角い石がある。

……………どうやって運ぼうか。

そのときふと、とんでもない思いつきが頭に浮かんでしまった。

……………この本、鍵付きでしかも表紙がかなり頑丈そうなのである。

そして穴の向こう側は呪具があるが穴のある壁の下はとくに壊れて困るものはなかったはずだ。

ニヤリ。

前足で本を持つと穴の付近まで歩いて近付くと、程よい距離のところで本をぶん投げた。

『あ!』

『ん?』

『!』

バサッ!

……………何かに当たる音はしなかったなのでほっと息をついた。

そして、そ知らぬふりをして穴をくぐって呪具の部屋を出るといりこの人のところに走っていった。


……………後ろから古の一族の笑い声が聞こえてきたが気にしないことにしよう。



だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!

廊下を走りながら赤黒いもやもあの人の形をしたもやもなくなっていたのが確認できた。だがその代わりもやではない半透明の人影を遠くから確認したので足を止めた。

ぴたっ。

その人影はこちらに背を向けるように立っていたが、ゆっくりこちらを向いて近付いてきた。

周りはとても静かだったので足音だけ響いていた。

カツッ、カツッ、カツッ………ぴたっ。

1メートル離れているところでその人影は足を止め、その人影がどんな姿をしているのかよく見えるようになった。

不健康そうな肌色、耳先だけ尖った耳、尖った牙……………。そのどれもが書物に書いてあったヴァンパイアの容姿と酷似していた。

……………もしかしてこの人ってあの赤黒いもやが変化したんじゃあ……………。

『ーーーーーーーー。』

その人は一言だけ静かに言うと跡形なく消えていった。

そのとき私は何故か、これで私のするべきことは終わったのだと思った。なぜそう思ったのかは私にもわからない。まだ、遺跡はたくさんあるというのに、なぜそんなことを……………。

ただ、ひとつだけわかっていることがある。

これから私がするべきことは、この四角い石をしかるべきときに渡すべき人に渡すことなのだと……………。



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