322 / 329
272
しおりを挟む
このあと、彼は安心した顔ですうっと消えていった。
安心した顔で消えた彼の冥福を祈ると同時に、ほっと息をついた私はふと何かを忘れていることに気付いた。
だが、何だったか……………………あ。
四角い石!どこにいった!
『足元に…………。』
「にゃ(あった)!」
ありがとう!
私は声の主である古の一族に感謝の言葉を告げると古の一族の者達の声はどこか嬉しそうに、こちらこそありがとう、と言ったので首をこてんと傾げた。
「にゃ?」
落とし物を見つけてもらったのは私だぞ??
『…………早く待っている者のところに行くといい。』
『こちらはあとでも平気だから早く行ったほうがいいよ。』
『早く行け。』
「にゃあ(そうさせてもらうぜ)!」
私は最初入った穴から出ようとして、本の存在を思い出した。口には四角い石がある。
……………どうやって運ぼうか。
そのときふと、とんでもない思いつきが頭に浮かんでしまった。
……………この本、鍵付きでしかも表紙がかなり頑丈そうなのである。
そして穴の向こう側は呪具があるが穴のある壁の下はとくに壊れて困るものはなかったはずだ。
ニヤリ。
前足で本を持つと穴の付近まで歩いて近付くと、程よい距離のところで本をぶん投げた。
『あ!』
『ん?』
『!』
バサッ!
……………何かに当たる音はしなかったなのでほっと息をついた。
そして、そ知らぬふりをして穴をくぐって呪具の部屋を出るといりこの人のところに走っていった。
……………後ろから古の一族の笑い声が聞こえてきたが気にしないことにしよう。
だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!
廊下を走りながら赤黒いもやもあの人の形をしたもやもなくなっていたのが確認できた。だがその代わりもやではない半透明の人影を遠くから確認したので足を止めた。
ぴたっ。
その人影はこちらに背を向けるように立っていたが、ゆっくりこちらを向いて近付いてきた。
周りはとても静かだったので足音だけ響いていた。
カツッ、カツッ、カツッ………ぴたっ。
1メートル離れているところでその人影は足を止め、その人影がどんな姿をしているのかよく見えるようになった。
不健康そうな肌色、耳先だけ尖った耳、尖った牙……………。そのどれもが書物に書いてあったヴァンパイアの容姿と酷似していた。
……………もしかしてこの人ってあの赤黒いもやが変化したんじゃあ……………。
『ーーーーーーーー。』
その人は一言だけ静かに言うと跡形なく消えていった。
そのとき私は何故か、これで私のするべきことは終わったのだと思った。なぜそう思ったのかは私にもわからない。まだ、遺跡はたくさんあるというのに、なぜそんなことを……………。
ただ、ひとつだけわかっていることがある。
これから私がするべきことは、この四角い石をしかるべきときに渡すべき人に渡すことなのだと……………。
安心した顔で消えた彼の冥福を祈ると同時に、ほっと息をついた私はふと何かを忘れていることに気付いた。
だが、何だったか……………………あ。
四角い石!どこにいった!
『足元に…………。』
「にゃ(あった)!」
ありがとう!
私は声の主である古の一族に感謝の言葉を告げると古の一族の者達の声はどこか嬉しそうに、こちらこそありがとう、と言ったので首をこてんと傾げた。
「にゃ?」
落とし物を見つけてもらったのは私だぞ??
『…………早く待っている者のところに行くといい。』
『こちらはあとでも平気だから早く行ったほうがいいよ。』
『早く行け。』
「にゃあ(そうさせてもらうぜ)!」
私は最初入った穴から出ようとして、本の存在を思い出した。口には四角い石がある。
……………どうやって運ぼうか。
そのときふと、とんでもない思いつきが頭に浮かんでしまった。
……………この本、鍵付きでしかも表紙がかなり頑丈そうなのである。
そして穴の向こう側は呪具があるが穴のある壁の下はとくに壊れて困るものはなかったはずだ。
ニヤリ。
前足で本を持つと穴の付近まで歩いて近付くと、程よい距離のところで本をぶん投げた。
『あ!』
『ん?』
『!』
バサッ!
……………何かに当たる音はしなかったなのでほっと息をついた。
そして、そ知らぬふりをして穴をくぐって呪具の部屋を出るといりこの人のところに走っていった。
……………後ろから古の一族の笑い声が聞こえてきたが気にしないことにしよう。
だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!
廊下を走りながら赤黒いもやもあの人の形をしたもやもなくなっていたのが確認できた。だがその代わりもやではない半透明の人影を遠くから確認したので足を止めた。
ぴたっ。
その人影はこちらに背を向けるように立っていたが、ゆっくりこちらを向いて近付いてきた。
周りはとても静かだったので足音だけ響いていた。
カツッ、カツッ、カツッ………ぴたっ。
1メートル離れているところでその人影は足を止め、その人影がどんな姿をしているのかよく見えるようになった。
不健康そうな肌色、耳先だけ尖った耳、尖った牙……………。そのどれもが書物に書いてあったヴァンパイアの容姿と酷似していた。
……………もしかしてこの人ってあの赤黒いもやが変化したんじゃあ……………。
『ーーーーーーーー。』
その人は一言だけ静かに言うと跡形なく消えていった。
そのとき私は何故か、これで私のするべきことは終わったのだと思った。なぜそう思ったのかは私にもわからない。まだ、遺跡はたくさんあるというのに、なぜそんなことを……………。
ただ、ひとつだけわかっていることがある。
これから私がするべきことは、この四角い石をしかるべきときに渡すべき人に渡すことなのだと……………。
0
お気に入りに追加
1,756
あなたにおすすめの小説
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
マカイ学校の妖達と私。
三月べに
恋愛
小紅芽(こぐめ)は幼い頃から、妖が視えていたが誰にも言わずに隠していた。だが入学した摩訶井高等学校には妖の生徒や教師がいて、小鬼の男の娘が友だちになったり、狼と妖狐と親しくなっていき、妖ライフに突入!?
【なろうにも載せてます】
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?
【完結】悪役令嬢のカウンセラー
みねバイヤーン
恋愛
わたくしエリザベート、ええ、悪役令嬢ですわ。悪役令嬢を極めましたので、愛するご同業のお嬢さまがたのお力になりたいと思っていてよ。ほほほ、悩める悪役令嬢の訪れをお待ちしておりますわ。
(一話完結の続き物です)
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
妻の私は旦那様の愛人の一人だった
アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。
そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。
貴方は酷い人よ。
羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。
私は生きる屍。
貴方は悪魔よ!
一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定ゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる