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思わずじと目してしまった私だったが、黒ちゃんの思惑通りに誤魔化されることにした。

…………たく、しょうがない黒ちゃんだぜ。

「にゃにゃ(それで何書いてあったんだ)?」

“…………………(ほっ。誤魔化されてくれたみたいだ、よかった)。”

「にゃにゃ(どうしたまた考え事か)?」

“あぁ、すまないな(汗)。あれはこう書かれていたんだ。”


表は真の扉に非ず。ただ生け贄を欲する者なり。
裏は真の扉なり。逃げ出せぬ檻でありながらも闇なる者を守る盾でもある。
汝の望み叶えるなら裏を表に、表を裏にせよ。

“これは古の一族の言語で書かれてるんだ。おそらく最後の表を裏にっていうのはこの先の扉のことだろう。だが、一つ前の裏を表にっていうのはわからないな。”

「にゃにゃ(あのキラキラした扉からここに戻ってきたときの変化ってこの台と螺旋状の階段がなくなったことだけだから、この台に何かあるのか)?」

……………でも、正直あるように見えないしな………(汗)。

「にゃあ(読んでくれてありがとな、あとはいろいろ自力で何とかしてみるぜ)!」

“……………大丈夫か?”

「にゃあ(どうにもならなかったらまた知恵を借りるかもしれない)。」

“あまり無理はするな。いつでも呼べ。”

「にゃあ(わかってるぜ)!」

右前足をピシッと上げて返事をすると、何かが頭を撫でた気がした。黒ちゃんは視覚的には見えない声だけの存在だが、実際には見えなくてもこの場にいるのかもしれない。

“俺はいつでも見守っている。じゃあな。”

「にゃあ(じゃあもう一度隅々まで調べてみるぜ)!」

この円柱の穴の壁には特に何もなく、地面にもこれといった変化はなく、ただ土があるだけだ。強いて言うならこの80センチほどの高さの黒ちゃんに読んでもらった文字の書いてある台があるだけだ。

「にゃあ(本当に何もないな)。」

………もしかしたら廊下に何かあるのか?

「にゃあ(もう一度あの扉に近付かないように廊下を調べてみるか)。」

ひょい!

台から下りると廊下に向かって歩き始めた。

ととととと。

入り口辺りは何もなし!

とととととととと。

入り口から入ると振り向いて廊下側から入り口を確認してみた。

扉がある側の廊下を背にしたまま、なんとなく後ろに下がっていく。

とととととととと。

じいぃぃぃぃぃぃィィィィィィィィィィ。

入り口、壁、床を確認……………こてん。

首をかしげてみる。

「にゃあ(なんとなく気になるんだよな、この入り口)。」

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