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……………………どうしようか?

……………少し近付いてみるか??

しばらく悩んでいたが、ヴァンパイアもどきの方に変化はない。

………よし、近付いてみるぞ!

そして、できれは横を通りすぎて扉の確認をすることができればいいのだがな……………。

そう思いつつ、背を低くしながらヴァンパイアもどきのいる方へ移動していく。

………抜き足、差し足、忍び足………。

………抜き足、差し足、忍び足。

足音を立てないように近付いていったからか、それとも私の今の姿が人間ではないからか、なんとか通りすぎることができた。しかも赤黒いもやの中にいても、今のところなんの問題も出ていない。

………クライドさんが言っていた私のスキルの説明欄の状態異常の無効化が呪具の呪いにも通用しているみたいだ。

あの、ヴァンパイアもどきの近くを通ってわかったことがある。

………あの、ヴァンパイアもどきはおそらく目が見えていない。

私にもよくわからないが、何らかの動物?がいるということはちゃんと認識してはいたみたいだ。しかし、それに対して敵意のようなものはないみたいだ。

………本当に、どういった方法で認識しているのだろうか?

不思議に思いつつも、今は呪具の封印されている部屋の扉の確認が最重要事項なのである。

通りすぎてしまえばなんの問題もないわけなのだから、と安心して呪具の封印されている部屋の扉の前に向かってなるべく足音はたてないように、急ぎつつも歩き始めた。

トコトコトコトコトコトコトコトコトコ。

冒険は大好きだが、今回はいつもの冒険とは訳が違う。人の、いりここの人とオリガの命がかかっているのである。

なるべく急がなくちゃな!

急ぎ足で進んでいく………。

トコトコトコトコトコトコトコトコトコ!

………目指すは呪具の封印されている部屋の前!

………………っと、あれ??

扉の前にあと少しというところで、何かの声が聞こえてきたので立ち止まった。

その声は扉に近付くにつれより大きく聞こえてきた。


“だ……………な……………………………だ……。”


………………………………?なんだなんだ???


“ど……………て…………………わ………………………だっ!”


………これ、扉の中から聞こえてくるのか??

それはとても悲哀に満ちた声だった。その声には怒りという感情は感じられず、ただただ嘆くばかりだった。

この人何でこんなに悲しそうなんだろう。

話しかけてみたい気がしたが、今現在、私は猫の姿になっているから話しかけてもにゃあとしか聞こえないだろう。もちろん、こんなに赤黒いもやに包まれた場所で人間の姿に戻るわけにもいかなかった。
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