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番外編 バレンタインデー 後編

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「思ったよりうまくいったみたいでよかったぜ。」

とりあえず、味見してみるぜ!

ぱくり。

…………………………………………………………………………。

「………………(悶絶)」

に、に、にがぁーーー!

「………これ、いりこの人に渡してもいいものか…。」

目の前には綺麗に一応包んだチョコレートが置いてあった。苦かったがせっかく苦労して作ったのだし…と綺麗にラッピングしてみたものの渡してもいいものか悩んでいた。

「う~ん。」

しばらく悩んでいるとクライドさんが顔を出した。

「ここでしたか。」

「…クライドさん。」

「どうかなさったのですか?」

「それが………。」

クライドさんに説明するとしばらく考えていたが何か思い付いたらしい。

「それなら、ランド様に事情を説明してからチョコレートを手渡してみては?婚約者様からのせっかくの手作りを食べれない方ががっかりされるはずですしね。」

「そ、そうか?それなら………。」

結局、渡すことにしたが人の姿だと照れくさかったので、いつも通り猫の姿で手渡すことにした。まあ、チョコの味については説明文をそえて渡すことにしたのでそれでいいだろう。

手紙を書き終えるとラッピングされたチョコレートと一緒に咥える。

さて、持っていくか………ってあれ?

クライドさんに持ち上げられた私は必死にラッピングされたチョコレートと手紙を咥えたまま足をばたつかせた。

「………せっかくのバレンタインデーですし、猫の姿ならちょうどいいものがあります。」

ばたつかせた足を止めるとクライドさんを見上げた。

クライドさんの片手に持っていたものは大きなリボン。
クライドさんはそれを私の尻尾に結んで可愛くリボンをつくった。

「これでいいですよ。」

クライドさんに下ろしてもらうと早速いりこの人の執務室に向かっていった。

ととととととととととと!

扉の前まで来ると一旦荷物を置いて扉を器用に開けた。すぐに口に咥えなおすと扉の開いた隙間から顔を覗かせた。

ひょこ!

「……あぁ、俺の可愛い婚約者。………おいで。」

トコトコトコトコ!

いりこの人の足元にたどり着くと、彼が優しく持ち上げてくれた。膝の上にのせてもらうとそこに手紙とラッピングされたチョコレートを置いた。今度は手紙だけを咥えるといりこの人に手渡した。

「ん?手紙を書いたのか。」

いりこの人は手紙を読み終えると優しく抱き上げ私の頭を撫でた。

「わざわざ俺のために手作りしてくれたのか?ありがとな。」

「にゃあ(苦いから気を付けろよ)!」

目を細めて笑うとラッピングをほどき、チョコレートを一つ口に入れた。

………大丈夫か?いりこの人。かなり苦いんだがな。

「………手作りっていいな。初めて手作りのものをプレゼントしてもらった。」

いりこの人は嬉しそうにもう一口口に入れた。

「とても美味しい。」

そう言うといりこの人は満面の笑みをこちらにむけた。

「にゃ、にゃにゃっ………!」

ぽん!

いりこの人はチョコレートをもう一つ口に咥えると、ビックリして人間の姿に戻ってしまった私の顔を両手で包み込んだ。次の瞬間チョコレートを口移ししつつ、私の唇に濃厚なキスをする。

「……………これなら甘いだろう?」

「…うん。とても甘かったぜ。」

たまにはこういう日もあっていいよな。
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