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第二章
再会 後編
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そして私はこの国の第三王子にイラッとしたまま、会場へ戻った。
まあ社交に勤しむつもりもなかったので、他のやはり社交の苦手な従兄弟たちのところへ行った。
「あの倒れた女性は?」
「親族が見てるから大丈夫だろう…。」
「知り合いか?」
「ああ…。」
「そうか…。」
この従兄弟は母の末の弟の子で、名はヒューというが、いつももの静かであまり話さない。
空気を読んでいるのか、こういうときも、あまり深く追求せずにいてくれるのがありがたい。
出来ればもう部屋へ戻りたいなと思いながら、ただボーっと過ごした。
時々、社交に勤しむ従兄弟たちが、知り合ったご令嬢たちを紹介しようと連れてきたが、ヒューも私も他の従兄弟たちに押し付け、ご令嬢たちと交流を持とうとはしなかった。
夜会も終盤に入り、ダンスを楽しむ人たちも居なくなり、話に盛り上がる人たちが所々に居るだけとなった。
私たちももうすぐ部屋へ戻れるかなと話していた時だった。
一人の令嬢が、青ざめた顔をして、入口に姿を現した。
誰かを探すように広間を見回し、私と目があった瞬間、こちらへ足を進めようとしているように見えた。
リーナだった。
しかしその瞬間、彼女は腕を掴まれ、止められた。
先ほどの第三王子だった。
彼女は首を振りながら、何かを言っていた。
ヒューも気が付き、そちらを見ながら私に話しかけてきた。
「あれ、さっき倒れた女性と、この国の第三王子じゃないか?もう大丈夫そうだな?でも誰か探しているのかな?」
「まだ青い顔をしているけど…。」
「何か誰かのところへ行こうとしているのを、第三王子が止めているっぽくない?」
そう言ってヒューはいきなりリーナの方へ歩いて行った。
俺は狼狽えてヒューの背中を見つめていると、彼女の所へ行き、いきなり彼女に話し掛けた。
彼女の腕を掴む第三王子は、露骨に不愉快だという顔をしたが、ヒューは気にも留めずに彼女に何か言い、リーナはヒューの顔を見てそれからこちらを見た。
そして第三王子の方を振り返り、何か言って、そのままヒューと一緒にこちらへ歩いてきた。
え?!ヒュー、そんなヤツではなかったよね?
誰かと誰かの交友とか介入する奴ではないし、積極的に誰かに話し掛ける奴でもないよね?
まして女性に自ら話し掛けるのは初めて見たのだが?
ヒューの行動にも驚きつつ、リーナがこちらへ向かってくることにも狼狽えて、どうして良いか分からず、固まっていた。
二人が近くまでやってくると、リーナは目を潤ませながら、私の名を呼んだ。
「レイ…あの…。」
彼女は何かを言おうとして、口籠もった。
私も言葉を無くしてしまい、ただ見つめるだけで、言葉が出てこない。
何かを言わなければと思うのだが、何を言って良いかも分からない。
「あの…随分前だけど、アンドリュー様に何回か、あなた宛の手紙を託したの。
でも、どこに居るか分からないから、渡せるか分からないってずっと言われて…。
アンドリュー様にもご迷惑だろうからと、お願いするのも半年位で止めてしまったんだけど…。」
「ごめん…どこに居るか、家族には知らせなかったし、アンドリューとも連絡は絶っていたから…。」
「そう…でも元気そうで良かった。
まさかここで会えるなんて思わなかった‘。
アルとは?あの…もし迷惑でなければ、アルと私に会いに来て頂けないかしら?」
「…。」
「あの…私の方から会いに行きたいけど…あの…レイは花嫁さんの親族かなって思って…。
だとするとこちらのお邸にご滞在かなって。
私、こちらのお邸の方を存じ上げて居ないの…。
今夜も成り行きで…あの…この国の第三王子殿下のパートナーとして来ていて…。
あ、でもお義父様に頼めば何とかなるのかな…えっと…ごめんなさい!
何か支離滅裂なんだけど…あなたに会いたいの…。」
「…。」
私はすっかり言葉を失っていた。
何て答えるのが正解なのか、分からなかった。
彼女の姿を見たかったけど、実際にこうして会ってしまうと、苦しくて、どうして良いのか分からない。
「話に割り込んですまないが、僕の従兄弟のレイモンドが、君を紹介してくれそうに無いから、自己紹介して貰って良いかな?」
「君たち!失礼だぞ!」
ヒューが話に割り込んで来た途端に、第三王子殿下が再び邪魔に入ってきた。
しかしヒューも負けない…チラリと第三王子殿下に目をやったと思ったら、冷たい笑顔で言い返した。
「そう言えば自己紹介が遅れました。
僕はイヴォンヌの従姉弟のヒュー・フランシス・パルマと申します。
殿下には我が国にいらした際に、イヴォンヌとは別の従姉弟が随分とお世話になったそうで。」
「イヴォンヌ嬢以外の君の従姉弟?誰のことかな?」
「我が国の第一王女殿下です。母親同士が姉妹なんですよ。
殿下がお帰りになった後、従姉弟は随分と大変だったそうで、もしまたお会いする機会があればと怖そうな笑顔で申しておりました。
機会があれば是非!こちらの国の皆様にも殿下の武勇伝をお伝えしたいものですね。」
ヒューが殿下にそう伝えると、殿下は無言でヒューを睨み付け、きびすを返して去っていきました。
「さて!マリーナ嬢、レイモンドがお世話になったアルフレッド殿には是非!僕もお会いしてみたいので、僕も一緒にお伺いして宜しいでしょうか?」
「「え?!」」
リーナも私も、何を言っているんだという目でヒューを見るも、ヒューは平然と微笑みをリーナに向けていた。
その笑顔にリーナも何か気が付いたのか、「是非!」と答え。
気が付けば私の意思、関係なく、後日、ヒューと私とで、リーナとアルに、会いに行くことが決まっていた。
まあ社交に勤しむつもりもなかったので、他のやはり社交の苦手な従兄弟たちのところへ行った。
「あの倒れた女性は?」
「親族が見てるから大丈夫だろう…。」
「知り合いか?」
「ああ…。」
「そうか…。」
この従兄弟は母の末の弟の子で、名はヒューというが、いつももの静かであまり話さない。
空気を読んでいるのか、こういうときも、あまり深く追求せずにいてくれるのがありがたい。
出来ればもう部屋へ戻りたいなと思いながら、ただボーっと過ごした。
時々、社交に勤しむ従兄弟たちが、知り合ったご令嬢たちを紹介しようと連れてきたが、ヒューも私も他の従兄弟たちに押し付け、ご令嬢たちと交流を持とうとはしなかった。
夜会も終盤に入り、ダンスを楽しむ人たちも居なくなり、話に盛り上がる人たちが所々に居るだけとなった。
私たちももうすぐ部屋へ戻れるかなと話していた時だった。
一人の令嬢が、青ざめた顔をして、入口に姿を現した。
誰かを探すように広間を見回し、私と目があった瞬間、こちらへ足を進めようとしているように見えた。
リーナだった。
しかしその瞬間、彼女は腕を掴まれ、止められた。
先ほどの第三王子だった。
彼女は首を振りながら、何かを言っていた。
ヒューも気が付き、そちらを見ながら私に話しかけてきた。
「あれ、さっき倒れた女性と、この国の第三王子じゃないか?もう大丈夫そうだな?でも誰か探しているのかな?」
「まだ青い顔をしているけど…。」
「何か誰かのところへ行こうとしているのを、第三王子が止めているっぽくない?」
そう言ってヒューはいきなりリーナの方へ歩いて行った。
俺は狼狽えてヒューの背中を見つめていると、彼女の所へ行き、いきなり彼女に話し掛けた。
彼女の腕を掴む第三王子は、露骨に不愉快だという顔をしたが、ヒューは気にも留めずに彼女に何か言い、リーナはヒューの顔を見てそれからこちらを見た。
そして第三王子の方を振り返り、何か言って、そのままヒューと一緒にこちらへ歩いてきた。
え?!ヒュー、そんなヤツではなかったよね?
誰かと誰かの交友とか介入する奴ではないし、積極的に誰かに話し掛ける奴でもないよね?
まして女性に自ら話し掛けるのは初めて見たのだが?
ヒューの行動にも驚きつつ、リーナがこちらへ向かってくることにも狼狽えて、どうして良いか分からず、固まっていた。
二人が近くまでやってくると、リーナは目を潤ませながら、私の名を呼んだ。
「レイ…あの…。」
彼女は何かを言おうとして、口籠もった。
私も言葉を無くしてしまい、ただ見つめるだけで、言葉が出てこない。
何かを言わなければと思うのだが、何を言って良いかも分からない。
「あの…随分前だけど、アンドリュー様に何回か、あなた宛の手紙を託したの。
でも、どこに居るか分からないから、渡せるか分からないってずっと言われて…。
アンドリュー様にもご迷惑だろうからと、お願いするのも半年位で止めてしまったんだけど…。」
「ごめん…どこに居るか、家族には知らせなかったし、アンドリューとも連絡は絶っていたから…。」
「そう…でも元気そうで良かった。
まさかここで会えるなんて思わなかった‘。
アルとは?あの…もし迷惑でなければ、アルと私に会いに来て頂けないかしら?」
「…。」
「あの…私の方から会いに行きたいけど…あの…レイは花嫁さんの親族かなって思って…。
だとするとこちらのお邸にご滞在かなって。
私、こちらのお邸の方を存じ上げて居ないの…。
今夜も成り行きで…あの…この国の第三王子殿下のパートナーとして来ていて…。
あ、でもお義父様に頼めば何とかなるのかな…えっと…ごめんなさい!
何か支離滅裂なんだけど…あなたに会いたいの…。」
「…。」
私はすっかり言葉を失っていた。
何て答えるのが正解なのか、分からなかった。
彼女の姿を見たかったけど、実際にこうして会ってしまうと、苦しくて、どうして良いのか分からない。
「話に割り込んですまないが、僕の従兄弟のレイモンドが、君を紹介してくれそうに無いから、自己紹介して貰って良いかな?」
「君たち!失礼だぞ!」
ヒューが話に割り込んで来た途端に、第三王子殿下が再び邪魔に入ってきた。
しかしヒューも負けない…チラリと第三王子殿下に目をやったと思ったら、冷たい笑顔で言い返した。
「そう言えば自己紹介が遅れました。
僕はイヴォンヌの従姉弟のヒュー・フランシス・パルマと申します。
殿下には我が国にいらした際に、イヴォンヌとは別の従姉弟が随分とお世話になったそうで。」
「イヴォンヌ嬢以外の君の従姉弟?誰のことかな?」
「我が国の第一王女殿下です。母親同士が姉妹なんですよ。
殿下がお帰りになった後、従姉弟は随分と大変だったそうで、もしまたお会いする機会があればと怖そうな笑顔で申しておりました。
機会があれば是非!こちらの国の皆様にも殿下の武勇伝をお伝えしたいものですね。」
ヒューが殿下にそう伝えると、殿下は無言でヒューを睨み付け、きびすを返して去っていきました。
「さて!マリーナ嬢、レイモンドがお世話になったアルフレッド殿には是非!僕もお会いしてみたいので、僕も一緒にお伺いして宜しいでしょうか?」
「「え?!」」
リーナも私も、何を言っているんだという目でヒューを見るも、ヒューは平然と微笑みをリーナに向けていた。
その笑顔にリーナも何か気が付いたのか、「是非!」と答え。
気が付けば私の意思、関係なく、後日、ヒューと私とで、リーナとアルに、会いに行くことが決まっていた。
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