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大人たちの思惑
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ある夜、若者が色々と疲れ切って寝込んでいる頃、大人たちは大人たちで、酒の場が持たれておりました。
公爵家本邸では、アルフレッドの父親であるマスターソン公爵と、レイモンドの父親であるスチュアート侯爵が話し合っておりました。
公爵家と侯爵家は、別の派閥である。
本来であれば、このように親しげに二人だけで酒を酌み交わしながら話す間柄ではない。
それでもこの両家は、話題や問題を共有するようになったのでした。
事の発端は、両家の子息が、ともに同じ少女との婚約を望んだ事でした。
「レイモンド殿は、本当にマリーナ嬢の事を諦められるのだろうか?」
マスターソン公爵が訊ねた。
「父親としては、応援してやりたいところですが…しかし今回の娘のやった事を考えると…爵位を下げられても不思議は無かったくらいなので…。」
「まあ…何と言って良いのか…。」
「私は娘の考えていることもまるで理解できないですが、息子たちの考えていることも、結局、良く分からないのです。
元々はアンドリュー…下の息子がマリーナ嬢を気に入っていたのですよ。
レイモンドは見ていて単に興味を引き、“家として”マリーナ嬢へ婚約を申し入れるように言ってきたのです。
しかし気が付けばレイモンドの方がマリーナ嬢にすっかり魅了されていたというか…。
私はレイモンドがマリーナ嬢の事を諦めなくてはいけなくなった時に、あそこまで心神喪失状態になるとは…思ってもみませんでした。
元々は跡取りとして非常に優秀で、そもそもマリーナ嬢についても、家のために役に立つくらいに考えていたと思うのですよ。
それが…。
本当に私はどうして良いかもわからず、今回、レイモンドを療養にと公爵家別邸へ滞在させてくださっている事には、本当に感謝してもしきれません。」
スチュアート侯爵は、疲れた様子で言った。
「息子に頭を悩ませるのは我が家も同じですよ。
アルフレッドもマリーナ嬢との婚約を言い出したのは、恋愛とかでは無かったらしいのですよ…。」
「え!?でもレイモンドがマリーナ嬢への婚約の申し入れを急がせたのは、アルフレッド殿の存在があったからなのですが?」
「私も最初は二人は思いやっていると思っていたのですよ。
ただ、それにしてはレイモンド殿との関係も良く分からなくて。
そして少し前ですが、実は婚約を言い出した理由は、そんな事ではなかった事を本人から聞いたのです。
アルフレッドは、次から次へと持ち込まれる見合い話にウンザリしていたらしいのです。
そしてマリーナ嬢は、彼女の実家、ご両親やご姉妹から、手駒のように扱われ、自分の望まない結婚を強いられるのを危惧していた…いや、危惧していたというよりも、恐らくそうなる可能性が高く、それを拒否したかったようです。
それで公爵家である我が家からの申し入れであれば、あちらは拒否は出来ないと踏んで、二人で戦略的な婚約を企んでいたようです。」
それを聞いて、スチュアート侯爵は、混乱した表情で考え込んでしまいました。
「しかし…アルフレッド殿とマリーナ嬢が、そのような理由で婚約した場合、その先はどうするつもりだったのでしょう?」
「…そこまでは聞かなかったのですが、どうもいずれは破談にするつもりだったのかと。」
「ではアルフレッド殿とマリーナ嬢の間には、恋愛とかそういった情は無いと?」
「無いと言っていたが…それも良く分からないのですよ。
無いと言いつつも、アルフレッドは、マリーナ嬢の事になると、かなり必死になるのでね…。
本当はあるのかもしれないし、あっても本人が気付いていないのかもしれない…。
アルフレッドも最初から言ってくれていたら、婚約者を作るのは、猶予を与えて、もっと早くに留学にでも送り出してやったものを…。」
「まあマリーナ嬢にとっては、そうなっていたら、彼女は実家の手駒という立場から逃げられなかったでしょうね…。」
「今となっては彼女も、我が別邸に置いて見ていて、娘が居たらこうだったのかなと…情は湧いてしまっていてね。
結果的に彼女を助けられることになって、それはそれで、まあ良かったかなとは思っているけどね。」
父親たち二人は、子供たちが案外色々と考えていることに驚くとともに、それで引き起こされる事態に悩ましくも思っていた。
スチュアート侯爵は、更に疑問に思っていたことを聞いた。
「よく彼女の実家が、彼女を手放しましたね?」
「…金だよ…。今回の件で、貴家から多額の賠償金が支払われただろう?
本来だったら、少なくともその一部はマリーナ嬢のために使われなけれなならない。
少なくとも社交界では、彼女は傷物となってしまったのだから、この先、彼女が生きていくために使われるべき金である。
更に助けたのは、貴家の子息二人とともに、我が家のアルフレッドと、我が家の騎士たちなので、本来はマリーナ嬢の実家は、我が家に謝礼を払うべきところだろう?
しかし我が家は謝礼を払わなくて良い代わりに、彼女の後見として、彼女を我が家で引き取る事を交換条件にしたのだよ。
彼女の実家としては、傷物となって、一見、お荷物にもなってしまったマリーナ嬢を我が家に押し付け、それによって貴家からの賠償金を丸まる自分たちの懐へ入れられることになったわけで、嬉々としてその提案に飛びついたよ。
マリーナ嬢としては、実家から離れられて、更には他国へ留学までさせてくれるなら、それに異論は無いとの事だしね。
まあ彼女の中では、更にアルフレッドへの信頼はあるようだから…私が彼女を手駒に使おうとしたら、アルフレッドが阻止すると信じているのだろうね。
私も彼女との信頼関係を壊すような使い方をする気は、そもそも無いのだけれどね。」
「彼女は…そこまで実家から離れたいのであれば、何故レイモンドではダメだったのでしょうね…。」
「それは貴殿の存在ではないかな?…いや、貴殿というよりも、アンジェリカ嬢の居る貴家といったところか…。」
「確かに今回の事があるまでは、娘の事は信頼もしていたし、甘やかしてもおりました…。
娘に何か言われたら、私はマリーナ嬢を平気で蔑ろにしたかもしれないですね…。
そう考えると、やはりマリーナ嬢は、歳にそぐわない聡明さを持ち合わせているようですね…。
レイモンドが最初、家のために彼女をと考えた判断は、間違ってはいないようだが…マリーナ嬢の方がレイモンドよりも上という事か…。」
スチュアート侯爵は、苦笑いを浮かべた。
「それで…余計なお世話ではあるが、貴殿は今後、レイモンド殿をどうなさるつもりかな?」
「…私は今まで娘の事は勿論、息子たちについても、良く見ていなかった様で…もう少し向き合うように努力したいと思っております。
いずれにしても、先ずはレイモンドが立ち直ってくれることが先決ですが…。
レイモンドとアンドリューと話し合って見て、場合によってはレイモンドを跡取りから外すことも考えています。
それが負担なのであれば、自由にしてやろうと…。」
「…我が家で力になれることがあれば、いつでも言ってくれ。」
「…派閥違いの我が家の息子のために、何故そこまで親切に?
いや、とても感謝してはいるのですが…。」
「…フッ…私はうちの嫡男に、裏で狸オヤジと呼ばれているんですよ…。
マリーナ嬢の事もですが、私も慈愛の精神でそんな事をしているわけではないよ。
彼女については、彼女はとても聡明で、この先が非常に楽しみなんですよ。
どれだけ大きな人物になるか。
そしてその時に、彼女は恩を仇で返すような人物ではないから、彼女との関係性を築いておくことは、我が家の利に繋がると思っている。
そしてレイモンド殿だが…彼もまた非常に有能だと思っている。
今の壁を乗り越えれば、彼もまた大きく成長するだろうね。
派閥が違うからこそ、彼との関係性を築いておくことは、私…いや、アルフレッドのためになると思っている。
まあ伊達に息子から狸と呼ばれるわけではないのだよ。」
マスターソン公爵は、ニヤリと笑って言った。
「…自分で自分の事を狸と言い、しかも手の内をこんなに明かしてしまう公爵殿は、マリーナ嬢が信頼するだけの事はありますよ…。
レイモンドの事は、今しばらく宜しくお願い致します。
我が家は、表向きは貴家とは派閥違いでも、私に生ある限りは、貴家に忠誠を誓いますよ…。」
マスターソン公爵は、そう言ったスチュアート侯爵に向かって、静かにワインの入ったグラスを掲げた。
公爵家本邸では、アルフレッドの父親であるマスターソン公爵と、レイモンドの父親であるスチュアート侯爵が話し合っておりました。
公爵家と侯爵家は、別の派閥である。
本来であれば、このように親しげに二人だけで酒を酌み交わしながら話す間柄ではない。
それでもこの両家は、話題や問題を共有するようになったのでした。
事の発端は、両家の子息が、ともに同じ少女との婚約を望んだ事でした。
「レイモンド殿は、本当にマリーナ嬢の事を諦められるのだろうか?」
マスターソン公爵が訊ねた。
「父親としては、応援してやりたいところですが…しかし今回の娘のやった事を考えると…爵位を下げられても不思議は無かったくらいなので…。」
「まあ…何と言って良いのか…。」
「私は娘の考えていることもまるで理解できないですが、息子たちの考えていることも、結局、良く分からないのです。
元々はアンドリュー…下の息子がマリーナ嬢を気に入っていたのですよ。
レイモンドは見ていて単に興味を引き、“家として”マリーナ嬢へ婚約を申し入れるように言ってきたのです。
しかし気が付けばレイモンドの方がマリーナ嬢にすっかり魅了されていたというか…。
私はレイモンドがマリーナ嬢の事を諦めなくてはいけなくなった時に、あそこまで心神喪失状態になるとは…思ってもみませんでした。
元々は跡取りとして非常に優秀で、そもそもマリーナ嬢についても、家のために役に立つくらいに考えていたと思うのですよ。
それが…。
本当に私はどうして良いかもわからず、今回、レイモンドを療養にと公爵家別邸へ滞在させてくださっている事には、本当に感謝してもしきれません。」
スチュアート侯爵は、疲れた様子で言った。
「息子に頭を悩ませるのは我が家も同じですよ。
アルフレッドもマリーナ嬢との婚約を言い出したのは、恋愛とかでは無かったらしいのですよ…。」
「え!?でもレイモンドがマリーナ嬢への婚約の申し入れを急がせたのは、アルフレッド殿の存在があったからなのですが?」
「私も最初は二人は思いやっていると思っていたのですよ。
ただ、それにしてはレイモンド殿との関係も良く分からなくて。
そして少し前ですが、実は婚約を言い出した理由は、そんな事ではなかった事を本人から聞いたのです。
アルフレッドは、次から次へと持ち込まれる見合い話にウンザリしていたらしいのです。
そしてマリーナ嬢は、彼女の実家、ご両親やご姉妹から、手駒のように扱われ、自分の望まない結婚を強いられるのを危惧していた…いや、危惧していたというよりも、恐らくそうなる可能性が高く、それを拒否したかったようです。
それで公爵家である我が家からの申し入れであれば、あちらは拒否は出来ないと踏んで、二人で戦略的な婚約を企んでいたようです。」
それを聞いて、スチュアート侯爵は、混乱した表情で考え込んでしまいました。
「しかし…アルフレッド殿とマリーナ嬢が、そのような理由で婚約した場合、その先はどうするつもりだったのでしょう?」
「…そこまでは聞かなかったのですが、どうもいずれは破談にするつもりだったのかと。」
「ではアルフレッド殿とマリーナ嬢の間には、恋愛とかそういった情は無いと?」
「無いと言っていたが…それも良く分からないのですよ。
無いと言いつつも、アルフレッドは、マリーナ嬢の事になると、かなり必死になるのでね…。
本当はあるのかもしれないし、あっても本人が気付いていないのかもしれない…。
アルフレッドも最初から言ってくれていたら、婚約者を作るのは、猶予を与えて、もっと早くに留学にでも送り出してやったものを…。」
「まあマリーナ嬢にとっては、そうなっていたら、彼女は実家の手駒という立場から逃げられなかったでしょうね…。」
「今となっては彼女も、我が別邸に置いて見ていて、娘が居たらこうだったのかなと…情は湧いてしまっていてね。
結果的に彼女を助けられることになって、それはそれで、まあ良かったかなとは思っているけどね。」
父親たち二人は、子供たちが案外色々と考えていることに驚くとともに、それで引き起こされる事態に悩ましくも思っていた。
スチュアート侯爵は、更に疑問に思っていたことを聞いた。
「よく彼女の実家が、彼女を手放しましたね?」
「…金だよ…。今回の件で、貴家から多額の賠償金が支払われただろう?
本来だったら、少なくともその一部はマリーナ嬢のために使われなけれなならない。
少なくとも社交界では、彼女は傷物となってしまったのだから、この先、彼女が生きていくために使われるべき金である。
更に助けたのは、貴家の子息二人とともに、我が家のアルフレッドと、我が家の騎士たちなので、本来はマリーナ嬢の実家は、我が家に謝礼を払うべきところだろう?
しかし我が家は謝礼を払わなくて良い代わりに、彼女の後見として、彼女を我が家で引き取る事を交換条件にしたのだよ。
彼女の実家としては、傷物となって、一見、お荷物にもなってしまったマリーナ嬢を我が家に押し付け、それによって貴家からの賠償金を丸まる自分たちの懐へ入れられることになったわけで、嬉々としてその提案に飛びついたよ。
マリーナ嬢としては、実家から離れられて、更には他国へ留学までさせてくれるなら、それに異論は無いとの事だしね。
まあ彼女の中では、更にアルフレッドへの信頼はあるようだから…私が彼女を手駒に使おうとしたら、アルフレッドが阻止すると信じているのだろうね。
私も彼女との信頼関係を壊すような使い方をする気は、そもそも無いのだけれどね。」
「彼女は…そこまで実家から離れたいのであれば、何故レイモンドではダメだったのでしょうね…。」
「それは貴殿の存在ではないかな?…いや、貴殿というよりも、アンジェリカ嬢の居る貴家といったところか…。」
「確かに今回の事があるまでは、娘の事は信頼もしていたし、甘やかしてもおりました…。
娘に何か言われたら、私はマリーナ嬢を平気で蔑ろにしたかもしれないですね…。
そう考えると、やはりマリーナ嬢は、歳にそぐわない聡明さを持ち合わせているようですね…。
レイモンドが最初、家のために彼女をと考えた判断は、間違ってはいないようだが…マリーナ嬢の方がレイモンドよりも上という事か…。」
スチュアート侯爵は、苦笑いを浮かべた。
「それで…余計なお世話ではあるが、貴殿は今後、レイモンド殿をどうなさるつもりかな?」
「…私は今まで娘の事は勿論、息子たちについても、良く見ていなかった様で…もう少し向き合うように努力したいと思っております。
いずれにしても、先ずはレイモンドが立ち直ってくれることが先決ですが…。
レイモンドとアンドリューと話し合って見て、場合によってはレイモンドを跡取りから外すことも考えています。
それが負担なのであれば、自由にしてやろうと…。」
「…我が家で力になれることがあれば、いつでも言ってくれ。」
「…派閥違いの我が家の息子のために、何故そこまで親切に?
いや、とても感謝してはいるのですが…。」
「…フッ…私はうちの嫡男に、裏で狸オヤジと呼ばれているんですよ…。
マリーナ嬢の事もですが、私も慈愛の精神でそんな事をしているわけではないよ。
彼女については、彼女はとても聡明で、この先が非常に楽しみなんですよ。
どれだけ大きな人物になるか。
そしてその時に、彼女は恩を仇で返すような人物ではないから、彼女との関係性を築いておくことは、我が家の利に繋がると思っている。
そしてレイモンド殿だが…彼もまた非常に有能だと思っている。
今の壁を乗り越えれば、彼もまた大きく成長するだろうね。
派閥が違うからこそ、彼との関係性を築いておくことは、私…いや、アルフレッドのためになると思っている。
まあ伊達に息子から狸と呼ばれるわけではないのだよ。」
マスターソン公爵は、ニヤリと笑って言った。
「…自分で自分の事を狸と言い、しかも手の内をこんなに明かしてしまう公爵殿は、マリーナ嬢が信頼するだけの事はありますよ…。
レイモンドの事は、今しばらく宜しくお願い致します。
我が家は、表向きは貴家とは派閥違いでも、私に生ある限りは、貴家に忠誠を誓いますよ…。」
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