私は逃げます

恵葉

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休眠

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レイは、公爵家マスターソン家別邸へ戻し、私が時間の許す限り側に付き添っていて、うっかり寝るのに寝室へ戻らずに、レイのベッドに上がって、レイを抱き枕の様にして眠っていしまった、その翌朝に意識を取り戻した。
一晩中レイのベッドのところに居たのは、正直言って宜しくはない。
でも邸の皆様にもバレていないし…うん!多分、バレてない!…。
それにもしも誰かが気付いていても、どうせ私は既に醜聞まみれだし!
っていうか何せ11歳児だからね…。
前世で言うなら小学生よ、小学生。
年上のお兄ちゃんと寝ていてもまだ不思議は無いでしょ?
そういえば私が前世で大学生の従兄弟のお兄ちゃんに遊んでもらっていたのは、まだ小学生の時だったな…。
一回りも歳の離れたお兄ちゃんを慕っていたなぁ…前世の私。
それにもっと言っちゃえば、もうすぐ私はこの国から一時的とはいえ、脱出出来るし!

レイはアルよりしっかりしていて、知性的とか思っていたのですが、実は思っていたよりもメンタルは強くは無かった?
いやいや!そもそも前世だったらアルもレイも、中3か高1なんですよ…。
その年齢で、レイも誘拐もされたし監禁もされたし、何なら妹に媚薬、盛られたし、そりゃあメンタルやられますよね…。
可哀そうにね…。
中身23歳でも、11歳の私に出来る事は限られているんですよね…。
せめて私がいるうちに、少しでもレイが立ち直れるように励ましたい所です。

レイが目覚めた日は、勉強はかなりそっちのけで、レイに付き添いました。
起きた時は、これってほぼお湯じゃないの?!という具無し味無しスープを少しずつ飲ませました。
昼は相変わらず具は無いけど、でも裏ごしした野菜が多少、加わりました。
あ、これ、ほぼ離乳食かな?!という感じ。
夜はそれに、すりおろしリンゴ。
寝る時も、レイが眠るまで付き添い、眠った後、私は自分の部屋へ戻りました。
流石に私も少し、疲れてきました…。
疲れてきたけど…もう少し…もう少しレイが元気になるまでは。
何て事を考えておりました…ベッドに入るまでは…。
でも…その後は記憶が無いほど秒で眠ってしまいました…まさしく泥のように…。
泥のように寝たのですが、疲れが取れない…。
いやいや!私、受験も控えているのです。
体調管理はちゃんとしなくては!
…って思っていたんですよ。思っていたんですけどね、流石に11歳の体力には限界が来た。
寝込んだ…私…身体が怠い…。
レイの看病は、アンドリュー様に頼みました。
何とか少しずつまともな物を食べられるようにと…明日にはパンがゆを目指して。
私はパンがゆ…やだな…。
前世、日本人な私は、本音はコメのお粥が食べたい…。
けど、それは無理なので、フレンチトーストを、怠い身体を引き摺って、自分で作るために厨房へ行った。

「あの…私の食事を作りたいのですが…。」
この世界にマスクは無いので、大きめハンカチを三角形にして口に当て、頭の後ろで縛っていました。
万が一にも風邪だった場合に、皆様にうつしてはいけないので。
「マリーナ様…仰ってくだされば作りますよ?」
「いえ…あの…作り方をご存じのものかどうかわからないので…フレンチトーストというものなのですが…。」
「あ、前にマリーナ様がアルフレッド様とレオナルド様に作っていたものですか?」
「そうです!パンを卵液と牛乳と砂糖を混ぜた液に浸したものです。」
「もしご迷惑でなければ、今回もマリーナ様に作っていただけますか?
前回はあまりしっかり見ていなかったので、宜しければメモなど取らせていただいて、作り方を教えていただきたいのですが…。」
「お邪魔でなければ是非!」

こうして自分で作る事になりました…フレンチトーストを。
その名の通り、フレンチなのですから、そもそもこの世界に無くても当然と言えば当然で。
ただし衛生上の問題で、この世界の卵は、少ししっかりと火を通したい。
いや、それは他の卵でも同じなのですが、衛生管理がね…。
あぁ…生で食べられる卵を作りたいなぁ。
ニワトリを自分で飼育できれば良いのですけどね。
この世界の卵も牛乳も、しっかり火を通したいので、パンは薄めに切りました。
パンの耳は、贅沢ですけど切り落としました。
切り落としたけど、後で他の料理に使います。
少し見た目は悪くなるけど、パン粉にするつもりです。
先ずは卵を、白身が綺麗に混ざるように、かなりしっかり混ぜました。
前に菜箸を自分で作ったので、それを三膳掴んで、かき混ぜました。
この世界に自動でかき混ぜるものなんて無いし、菜箸も無いし、本当は竹があれば、茶せんを作りたいところですが、無いので、木で箸を作るのが一番手っ取り早かった。
しっかり混ざったところで牛乳と砂糖を混ぜ、深めのお皿に入替え、その中にパンを投入しました。
本当は時間を置きたいけど、そこまでの余裕も無いので、適当に…。
フライパンにバターを溶かし、卵液に漬けたパンを焼き。
焼き色も付いたらひっくり返して、火を弱めにして、しっかり火を通し。
焼きあがったものをお皿に載せ、ハチミツを掛けました。
更に少し多めに作っていたので、それを一口サイズに切り、パン2枚分を一枚の皿に載せて、ハチミツを掛け、残りはまとめて大きめのお皿に載せて、ハチミツを掛け。
自分の分と、パン2枚分のはトレーに載せ、もう一つの大きめのお皿のは、そのままそこに置き。
「皆さんでお味見にどうぞ。」
と声を掛けました。
先に使った物を洗おうとすると、女性の料理人さんが、「私がやっておきますから」と声を掛けてくださいました。
「お願いしちゃって良いですか?」とお願いし、私はトレーを持って階段を上がっていきました。

レイのいる部屋の前でノックをし、出てきたアンドリュー様にトレーを手渡しました。
私の分のお皿だけトレーから取り。
「これ、もし良かったらレイに食べさせてあげてください。
良かったらアンドリュー様も食べてください。」
「兄上に会われないのですか?」
「ごめんなさい。私、今日は体調が微妙なので、体力の落ちているレイに会うのは…。
なのでこのまま部屋へ戻ります。
あ、安心してください。
料理はしっかり手洗いをして、ずっと口元を覆ったままやりましたので、大丈夫なはずです。」
「あ、兄上の看病疲れでしょうか…申し訳ございません。お大事に…。」
「アンドリュー様も無理はしないように、適度に休んでくださいね。」
そう言って自分の部屋へ戻りました。
部屋に戻って、ハチミツを掛けたフレンチトーストを食べたあと、ベッドに入り、寝ようと思ったが、念のためにと再び厨房へ。
使ったお皿を洗い、生賀とハチミツ、そしてレモンを貰いました。
おろし金は無いので、細かく刻んで刻んで刻みまくり、カップにハチミツと熱湯を入れて、良く混ぜ、刻んだ生姜を投入し、レモンを絞りました。
「それは美味いのですか?」
「…ごめんなさい、これはかなり不味いです…。風邪とか引きそうな時の、一種の薬です。」
そう…薄めの生姜湯は美味しいけど、これは濃く作ってあって、かなり不味い。
前世で会社の先輩に教わったのでした。
風邪っぽい!ヤバい!という時の対処法。
本当は生姜を絞れるほどすりおろし、そして絞る…使うのは生姜の汁です。
そしてハチミツ多めをお湯に溶き、レモン半分くらいを絞って果汁を入れ、生姜汁を混ぜる。
これを不味いくらいに濃い目に作るのがポイントです。
が!濃すぎると、お腹が弱い人などは、お腹に来るので、体質などを見ながら濃さを調整してください。
これ、風邪の引きはじめだったら、結構効きます…というか、私は効きました。
別のこれまた前世の知り合いから言われたのは、オレンジジュース一リットルくらいを一気飲みとは言わないけど、ゴクゴク飲みまくって、更に白湯とか水分を取りまくって、身体を暖かくして、汗をかきまくって寝る!
勿論、身体を冷やさないようにこまめに着替える!
これも前世で試しましたが、これも効くけど、生姜湯が一番かなと。
これを読んでお試しになる方は、くれぐれも!生姜湯が濃すぎてお腹に来ないようにお気を付けください。

そして私は、ミノムシのように布団に丸まって、寝て寝て、寝まくりました。
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