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追跡 前編
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レイと私が監禁されていた邸の場所はすぐにわかりました。
山の中で、周辺には同程度の大きさの建物が何も無かったので。
私とレイが二人で監禁されていたとなると、実際は何も無くても、やはり既成事実を疑われる可能性はあり。
私の評判等を守るために、攫われたことも監禁も、公にはされず、秘密裏に公爵家が中心になって調べられました。
レイもまた、周囲に知られないように、調べていました。
レイの場合は、妹であるアンジェリカ様の関与も可能性としてはあるため、それこそ侯爵家の中でも、余程信頼できる人間でないと、話すわけにいかないし動けないというのもあり、苦戦が予想されました。
しかし調べ始めて早々に、驚くことが分かりました。
レイが、侯爵様に一応、報告したのです。
アンジェリカ様に知られないようにするために、侯爵様に公爵家別邸へ来ていただきました。
その場には私とアルも立ち会いました。
「父上、本日はご足労いただき、ありがとうございます。」
「暫く家に連絡が無かったようだが、忙しかったのか?元気そうではあるようだが?」
「その事で来ていただきました。
実は…誘拐されて、監禁されていたのです。」
侯爵様は、一瞬、意味が分からなかったのか、お顔から表情が抜け落ち、固まってしまいました。
直後、真っ赤な顔になり、激怒されました。
「何?!侯爵家の嫡男を誘拐とは、良い度胸をしているな!
お前がここに居るという事は、犯人は捕まったのか?!」
「…残念ながら、隙を見て脱出したのであって、犯人はまだ捕まっておりません。
事情があって、現時点で事件を公には出来ないのです。」
「どういうことだ!」
「身内の関係者に犯人に繋がるものがいるかもしれないのです…。」
「それは…我が家の関係者に犯人がいるかもしれないという事か?!」
「…可能性としてはあります。
なので秘密裏に調べている所で、家族にも話さずに頂きたいのです。
その上で、ですが、出来れば父上のご協力もお願いしたいと思いまして。」
「勿論だ!寧ろ先頭を切って犯人を捜したいところだ!」
侯爵様は、かなり興奮気味だった。
そりゃそうだよね…息子が攫われたんだもん。
しかも場合によっては身内に犯人がとか、身内に犯人につながるものがいるかもしれないとか、耐えがたいですよね。
それからレイが私たちが監禁されていた場所等を侯爵様に説明し、その邸が誰のものかを調べるのを協力して欲しいとお願いしました。
私たちが監禁されていた場所の地図を、侯爵様に見せると、困惑した表情で仰いました。
「ここに監禁されていたのか?!
ここは…私の祖父母…お前の曾祖父母の別荘だったところだが…。」
「え!?ではここはスチュアート家の別荘という事ですか?!」
レイも驚き、狼狽えました。
私が誰かに恨まれていると考えた場合、その候補には、レイの妹であるアンジェリカ様が入っている。
しかし私たちは攫われた上に監禁され、しまいには媚薬まで盛られて、レイが耐え切れなければ、若しくは更に強い媚薬を知らずに二人で口にしていたら…。
私は身体もだけど、心は二人とも傷付いただろうなぁ…。
出来ればそれにアンジェリカ様が関わっている何て思いたくない。
思いたくないけど…。
「いや、あの別荘はとうに処分していて、我が家のものではないぞ?」
「というと、いつ頃手放したのですか?それとどちらに処分したのか、分かりますか?」
何でも、曾祖父母が亡くなり、祖父母が受け継いだものの、祖母は虫嫌いで山が苦手だったので、あまり行くことも無く。
父が受け継いで割とすぐに手放したらしい。
父は同じ派閥の伯爵家に譲ったものの、父の話では恐らく今の所有者はその伯爵家ではないと言われた。
「あの別荘、父上や母上、私たちは行ったことがあるのでしょうか?
私は捉えられていた部屋しか分からなくて、夜に脱出したので、邸の周辺の景色もそれほど見ていなくて、見覚えも無いのですが…。」
「何回かは連れて行ったよ…まだお前たちがそれほど大きく無かった頃だけど。
アンドリューは小さかったから、覚えていないだろうけどね。」
という事は、アンジェリカ嬢は覚えている可能性があるということか。
それから侯爵様には、もしも今の所有者が分かるようなことがあれば、教えて欲しいとお願いしました。
侯爵様がお帰りになった後、やはりレイは落ち込んでいました。
妹であるアンジェリカ様の関与の可能性が消えるどころか強まってきてしまったわけで、そりゃあ可愛い妹を疑いたくはないですからね。
アルは従者を連れて、再びあの別荘のある街を訪れ、街の人たちにそれとなく聞いて回っていた。
そんなある日、アルが帰ってきて、現時点で分かった事を報告してくれました。
「街に古くから居る人…居酒屋のおじさんとかと仲良くなって、さり気なく色々聞いてみたんだけどさ…。
どうやらスチュアート家が手放した後、侯爵殿が仰っていたように、同派閥の伯爵家が買い取ったらしいんだよ。
でも買い取った当主が病に倒れて、別荘とか処分したらしいよ。
それでその伯爵の知り合いの学者が、研究とかする場所に買い取ったらしいんだ。
でもその研究者、研究に資産をつぎ込み過ぎて、ついに破産してしまって、怪しい商会が買い取ろうとしていたところまでは分かっているんだけど…。
その後がまだ分からないんだよね…。」
「その研究者さんって、どんな方で、今、どこでどうなさっているのでしょう?」
「そこまではまだ分からないんだよね…。
取り敢えずまた暫くはあの街に滞在してみて、探ってみるよ。」
アルと私が話している間、レイは何か考えているようで、ずっと黙っていました。
そして意を決したようにこちらに視線を向け、言いました。
「私は暫く実家へ帰ってみるよ…。
それでアンジェリカを探ってみる…。
妹を疑いたくは無いけど…でも可能性がある限りは調べないわけにはいかない。
寧ろ妹が関与しているのであれば、許せないんだ…。」
それからレイは、暫く実家へ帰る事になりました。
アルも例の邸の所有者を調べに行ったきりで、レイも実家へ。
使用人の皆様はいらっしゃるけど、広い邸に私一人になってしまいました。
バーバラ先生が居る時もありますが、先生は四六時中、邸にいるわけではないので。
私は私に出来ること、もしまた襲われても捕まらないように、捕まっても早々に逃げられるように…頭も身体も鍛えよう…。
それに…バーバラ先生にお願いして、もう少し人の表情とか顔色とか読めるようになりたいな…。
そういえば前世で、学生時代の同級生が、実のお兄さんに下剤を盛られたことがあったと言っておりました。
確かお兄さんは高校生で、彼女は中学生の時。
自宅で二人きりで、お腹すいたなぁ、何か食べようかなと考えていたら、お兄さんが既にお湯を注いで、時間を待つだけのカップラーメンをくれたのだとか。
それに下剤が入っていたらしいのですが、同級生は、食べずに回避できたのだと。
それで食べなかった理由を聞いたら、お兄さんの様子に違和感を感じ、絶対に何か怪しいと思い、「やっぱり要らないから自分で食べなよ」と返し、お兄さんが食べようとしないので、問い詰めて発覚したのだとか。
その話を聞いた時は、妹に下剤を盛る兄ってちょっと有り得ない!って思いましたが。
でも今考えると、お兄さんの悪だくみに気付いた同級生も凄く無いかなと。
お兄さんの表情と行動で見破ったらしいのです。
行動は、元々三人兄弟で、上のお兄さんはいつも優しいらしいのですが、真ん中のお兄さんは、いつも意地悪ばかりだったらしいです。
それがカップラーメンをくれた事にも多少の違和感を感じたらしいのですが、そういう事もあるかなと。
決定打はお兄さんが彼女が食べる様子を伺った事らしいです。
「もう5分経ったんじゃねぇ?」とか、やたらと彼女が食べるのを気にしたのだとか。
上のお兄さんだったら何とも思わずに食べたのかもしれないですが、真ん中のお兄さんは、普段、彼女の事を全く気遣わないお兄さんだったそうで、それがラーメンの時間を気にしたりとか、何か怪しいと。
それで「やっぱり要らないから、お兄ちゃん食べなよ。」と返したところ「いや、俺は要らないから、お前半分でも食べろよ。」としつこかったそうです。
何でそんなに食べさせたいんだと一層怪しく思い、断固拒否。
お兄さんの些細な表情や行動から見抜いた彼女のような能力、私も身に着けたら、今回のように媚薬とか避けられたかなと。
まあ何かを盛られたら、味で気が付くような訓練はしていたのですけどね。
でも今回のように、先に一緒に居る誰かが食べてしまっては、無意味なので。
そんな事を考えていたら、久しぶりにレイが戻ってきました。
何か凄く疲れたような顔をしていて、何か可哀そうになってしまいました。
そうだよね…レイも攫われて監禁されていたわけだし、媚薬は私は口にしていないけど、レイは口にしちゃっていたし、しかも妹さんが関わっているかもしれないとか…精神的な負担も大きくなりますよね。
「レイ、久しぶり…疲れて見えるけど、大丈夫?
先ずは部屋でゆっくり休んだ方が良いんじゃない?」
「分かった事を話したいけど、アルは帰ってきていないんだよね?
今夜、アルが帰って来るかどうかは分からないけど、それでも話すのは夜、晩御飯の後で良いかな…。
取り敢えず少しでもと、妹の事を探ってきたんだ。」
「うん、もちろん、それで良いよ。
レイが倒れても困るし、先ずは部屋でひと眠りしてきて!」
そう言ってレイを彼の部屋へ追いやった。
疲労困憊のまま、話し合っても、頭が働かない。
今は少しの休息をとるくらいの時間的余裕はあるはず…いずれにしてもアルが居ない状況だし。
私はそう考えました。
私も夜、すっきりした頭で話を聞けるように、少し休もうと、服をもう少し楽なものに着替え、ソファに横になりました。
私はベッドでガッツリ眠るほどではないと思ったので。
出来ればアルも一緒に話を聞けたら良いけど、
そう都合よく帰ってきてももらえないので、晩御飯の後、居間で少しだけ話した。
誰が味方で誰が敵か分からない今、下手な人に話を聞かれるわけにもいかず、二人だけで話したいけど、冷静に考えると、侍女とかにも出てもらって二人だけで話すとか、扉を開けたまま話すわけにもいかず、まずはそれをどうするかを話すところから始まった。
結局、侍女長のアンナさんは、公爵家の人であり、現時点では信頼度は高いのではないかと思い、その場にはアンナさんに居てもらいました。
その上でアンナさんに、疑われる事無く、そして誰にも聞かれないように、二人だけで話せる場所は無いだろうかと相談しました。
本当はアルが居れば、三人で話したいところなのですがと説明し、一日待ってくれるように言われました。
そんな都合の良い場所があるのかとも思ったのですが、どうやら実はあるらしく。
しかしその部屋を使う許可を公爵ご当主に確認しなくてはならないとの事で。
話し合うのは翌日に持ち越しました。
翌日の昼、アンナさんからこっそり話があり、夜、アルが帰ってくることと、そして公爵ご当主も今夜はこちらへ来るので、それまで待つようにと言われました。
アルも何か、掴めたのだろうか…気になるところです。
山の中で、周辺には同程度の大きさの建物が何も無かったので。
私とレイが二人で監禁されていたとなると、実際は何も無くても、やはり既成事実を疑われる可能性はあり。
私の評判等を守るために、攫われたことも監禁も、公にはされず、秘密裏に公爵家が中心になって調べられました。
レイもまた、周囲に知られないように、調べていました。
レイの場合は、妹であるアンジェリカ様の関与も可能性としてはあるため、それこそ侯爵家の中でも、余程信頼できる人間でないと、話すわけにいかないし動けないというのもあり、苦戦が予想されました。
しかし調べ始めて早々に、驚くことが分かりました。
レイが、侯爵様に一応、報告したのです。
アンジェリカ様に知られないようにするために、侯爵様に公爵家別邸へ来ていただきました。
その場には私とアルも立ち会いました。
「父上、本日はご足労いただき、ありがとうございます。」
「暫く家に連絡が無かったようだが、忙しかったのか?元気そうではあるようだが?」
「その事で来ていただきました。
実は…誘拐されて、監禁されていたのです。」
侯爵様は、一瞬、意味が分からなかったのか、お顔から表情が抜け落ち、固まってしまいました。
直後、真っ赤な顔になり、激怒されました。
「何?!侯爵家の嫡男を誘拐とは、良い度胸をしているな!
お前がここに居るという事は、犯人は捕まったのか?!」
「…残念ながら、隙を見て脱出したのであって、犯人はまだ捕まっておりません。
事情があって、現時点で事件を公には出来ないのです。」
「どういうことだ!」
「身内の関係者に犯人に繋がるものがいるかもしれないのです…。」
「それは…我が家の関係者に犯人がいるかもしれないという事か?!」
「…可能性としてはあります。
なので秘密裏に調べている所で、家族にも話さずに頂きたいのです。
その上で、ですが、出来れば父上のご協力もお願いしたいと思いまして。」
「勿論だ!寧ろ先頭を切って犯人を捜したいところだ!」
侯爵様は、かなり興奮気味だった。
そりゃそうだよね…息子が攫われたんだもん。
しかも場合によっては身内に犯人がとか、身内に犯人につながるものがいるかもしれないとか、耐えがたいですよね。
それからレイが私たちが監禁されていた場所等を侯爵様に説明し、その邸が誰のものかを調べるのを協力して欲しいとお願いしました。
私たちが監禁されていた場所の地図を、侯爵様に見せると、困惑した表情で仰いました。
「ここに監禁されていたのか?!
ここは…私の祖父母…お前の曾祖父母の別荘だったところだが…。」
「え!?ではここはスチュアート家の別荘という事ですか?!」
レイも驚き、狼狽えました。
私が誰かに恨まれていると考えた場合、その候補には、レイの妹であるアンジェリカ様が入っている。
しかし私たちは攫われた上に監禁され、しまいには媚薬まで盛られて、レイが耐え切れなければ、若しくは更に強い媚薬を知らずに二人で口にしていたら…。
私は身体もだけど、心は二人とも傷付いただろうなぁ…。
出来ればそれにアンジェリカ様が関わっている何て思いたくない。
思いたくないけど…。
「いや、あの別荘はとうに処分していて、我が家のものではないぞ?」
「というと、いつ頃手放したのですか?それとどちらに処分したのか、分かりますか?」
何でも、曾祖父母が亡くなり、祖父母が受け継いだものの、祖母は虫嫌いで山が苦手だったので、あまり行くことも無く。
父が受け継いで割とすぐに手放したらしい。
父は同じ派閥の伯爵家に譲ったものの、父の話では恐らく今の所有者はその伯爵家ではないと言われた。
「あの別荘、父上や母上、私たちは行ったことがあるのでしょうか?
私は捉えられていた部屋しか分からなくて、夜に脱出したので、邸の周辺の景色もそれほど見ていなくて、見覚えも無いのですが…。」
「何回かは連れて行ったよ…まだお前たちがそれほど大きく無かった頃だけど。
アンドリューは小さかったから、覚えていないだろうけどね。」
という事は、アンジェリカ嬢は覚えている可能性があるということか。
それから侯爵様には、もしも今の所有者が分かるようなことがあれば、教えて欲しいとお願いしました。
侯爵様がお帰りになった後、やはりレイは落ち込んでいました。
妹であるアンジェリカ様の関与の可能性が消えるどころか強まってきてしまったわけで、そりゃあ可愛い妹を疑いたくはないですからね。
アルは従者を連れて、再びあの別荘のある街を訪れ、街の人たちにそれとなく聞いて回っていた。
そんなある日、アルが帰ってきて、現時点で分かった事を報告してくれました。
「街に古くから居る人…居酒屋のおじさんとかと仲良くなって、さり気なく色々聞いてみたんだけどさ…。
どうやらスチュアート家が手放した後、侯爵殿が仰っていたように、同派閥の伯爵家が買い取ったらしいんだよ。
でも買い取った当主が病に倒れて、別荘とか処分したらしいよ。
それでその伯爵の知り合いの学者が、研究とかする場所に買い取ったらしいんだ。
でもその研究者、研究に資産をつぎ込み過ぎて、ついに破産してしまって、怪しい商会が買い取ろうとしていたところまでは分かっているんだけど…。
その後がまだ分からないんだよね…。」
「その研究者さんって、どんな方で、今、どこでどうなさっているのでしょう?」
「そこまではまだ分からないんだよね…。
取り敢えずまた暫くはあの街に滞在してみて、探ってみるよ。」
アルと私が話している間、レイは何か考えているようで、ずっと黙っていました。
そして意を決したようにこちらに視線を向け、言いました。
「私は暫く実家へ帰ってみるよ…。
それでアンジェリカを探ってみる…。
妹を疑いたくは無いけど…でも可能性がある限りは調べないわけにはいかない。
寧ろ妹が関与しているのであれば、許せないんだ…。」
それからレイは、暫く実家へ帰る事になりました。
アルも例の邸の所有者を調べに行ったきりで、レイも実家へ。
使用人の皆様はいらっしゃるけど、広い邸に私一人になってしまいました。
バーバラ先生が居る時もありますが、先生は四六時中、邸にいるわけではないので。
私は私に出来ること、もしまた襲われても捕まらないように、捕まっても早々に逃げられるように…頭も身体も鍛えよう…。
それに…バーバラ先生にお願いして、もう少し人の表情とか顔色とか読めるようになりたいな…。
そういえば前世で、学生時代の同級生が、実のお兄さんに下剤を盛られたことがあったと言っておりました。
確かお兄さんは高校生で、彼女は中学生の時。
自宅で二人きりで、お腹すいたなぁ、何か食べようかなと考えていたら、お兄さんが既にお湯を注いで、時間を待つだけのカップラーメンをくれたのだとか。
それに下剤が入っていたらしいのですが、同級生は、食べずに回避できたのだと。
それで食べなかった理由を聞いたら、お兄さんの様子に違和感を感じ、絶対に何か怪しいと思い、「やっぱり要らないから自分で食べなよ」と返し、お兄さんが食べようとしないので、問い詰めて発覚したのだとか。
その話を聞いた時は、妹に下剤を盛る兄ってちょっと有り得ない!って思いましたが。
でも今考えると、お兄さんの悪だくみに気付いた同級生も凄く無いかなと。
お兄さんの表情と行動で見破ったらしいのです。
行動は、元々三人兄弟で、上のお兄さんはいつも優しいらしいのですが、真ん中のお兄さんは、いつも意地悪ばかりだったらしいです。
それがカップラーメンをくれた事にも多少の違和感を感じたらしいのですが、そういう事もあるかなと。
決定打はお兄さんが彼女が食べる様子を伺った事らしいです。
「もう5分経ったんじゃねぇ?」とか、やたらと彼女が食べるのを気にしたのだとか。
上のお兄さんだったら何とも思わずに食べたのかもしれないですが、真ん中のお兄さんは、普段、彼女の事を全く気遣わないお兄さんだったそうで、それがラーメンの時間を気にしたりとか、何か怪しいと。
それで「やっぱり要らないから、お兄ちゃん食べなよ。」と返したところ「いや、俺は要らないから、お前半分でも食べろよ。」としつこかったそうです。
何でそんなに食べさせたいんだと一層怪しく思い、断固拒否。
お兄さんの些細な表情や行動から見抜いた彼女のような能力、私も身に着けたら、今回のように媚薬とか避けられたかなと。
まあ何かを盛られたら、味で気が付くような訓練はしていたのですけどね。
でも今回のように、先に一緒に居る誰かが食べてしまっては、無意味なので。
そんな事を考えていたら、久しぶりにレイが戻ってきました。
何か凄く疲れたような顔をしていて、何か可哀そうになってしまいました。
そうだよね…レイも攫われて監禁されていたわけだし、媚薬は私は口にしていないけど、レイは口にしちゃっていたし、しかも妹さんが関わっているかもしれないとか…精神的な負担も大きくなりますよね。
「レイ、久しぶり…疲れて見えるけど、大丈夫?
先ずは部屋でゆっくり休んだ方が良いんじゃない?」
「分かった事を話したいけど、アルは帰ってきていないんだよね?
今夜、アルが帰って来るかどうかは分からないけど、それでも話すのは夜、晩御飯の後で良いかな…。
取り敢えず少しでもと、妹の事を探ってきたんだ。」
「うん、もちろん、それで良いよ。
レイが倒れても困るし、先ずは部屋でひと眠りしてきて!」
そう言ってレイを彼の部屋へ追いやった。
疲労困憊のまま、話し合っても、頭が働かない。
今は少しの休息をとるくらいの時間的余裕はあるはず…いずれにしてもアルが居ない状況だし。
私はそう考えました。
私も夜、すっきりした頭で話を聞けるように、少し休もうと、服をもう少し楽なものに着替え、ソファに横になりました。
私はベッドでガッツリ眠るほどではないと思ったので。
出来ればアルも一緒に話を聞けたら良いけど、
そう都合よく帰ってきてももらえないので、晩御飯の後、居間で少しだけ話した。
誰が味方で誰が敵か分からない今、下手な人に話を聞かれるわけにもいかず、二人だけで話したいけど、冷静に考えると、侍女とかにも出てもらって二人だけで話すとか、扉を開けたまま話すわけにもいかず、まずはそれをどうするかを話すところから始まった。
結局、侍女長のアンナさんは、公爵家の人であり、現時点では信頼度は高いのではないかと思い、その場にはアンナさんに居てもらいました。
その上でアンナさんに、疑われる事無く、そして誰にも聞かれないように、二人だけで話せる場所は無いだろうかと相談しました。
本当はアルが居れば、三人で話したいところなのですがと説明し、一日待ってくれるように言われました。
そんな都合の良い場所があるのかとも思ったのですが、どうやら実はあるらしく。
しかしその部屋を使う許可を公爵ご当主に確認しなくてはならないとの事で。
話し合うのは翌日に持ち越しました。
翌日の昼、アンナさんからこっそり話があり、夜、アルが帰ってくることと、そして公爵ご当主も今夜はこちらへ来るので、それまで待つようにと言われました。
アルも何か、掴めたのだろうか…気になるところです。
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