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心当たり
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どのくらい、時間が経ったのだろうか。
物音も聞こえず、気配も感じられない部屋のドアの外には、誰も居ないと判断し、先ずは後ろ手に縛られていた手を、前に回した。
柔軟も鍛えていて良かった!とつくづく思いました。
そして暗くてよく見えないながらも、手探りで、硬く縛られていたレイの手首の縄を解いた。
先にレイの足首の縄を解いてもらい、次に私の手首の縄を解いてもらった。
先にレイだけでも動ければ、レイだけでも逃げ出せるかもしれないから。
一人でも逃げ出せれば、救援を呼べる…かもしれない。
そして自分で自分の足の縄を解いた。
それにしても随分、固く縛ってありました。
おまけに予測してましたけど、ポケットに入れていたものは、ほぼ取られていました…ナイフとかナイフとかナイフとか…あ、お金も…。
部屋の中には私たちだけのようだった。
静まり返っていて、他に人の気配は無い。
物音を立てないように、静かに二人で目をこらしながら、部屋中を探ってみました。
「どこかの邸の使われていない客間っぽいね…。」
「どうしてそう思うのですか?」
「この部屋の隣は寝室でベッドがあっただろ?
反対の隣には、風呂場らしき小部屋と、トイレらしき小部屋があった。
そしてベッドといい、この部屋の家具といい、傷まないように布を掛けてある。
おまけに少し、ほこりっぽい…。
邸自体がか、この部屋がかは分からないけど、普段、使われていない証拠だし、寝室と居間、トイレと風呂…客間か高級なホテルかな。」
「そう言われてみると確かに。」
「今は…恐らく夜だとして…今夜はこのままかな…。」
「そうですね…物音一つしないし、何の気配も感じられない。
逃げるなら今ですかね?」
「一か八かというのもありだけど…扉は鍵が掛かっていて開かないし、窓も外から塞がれている。
無理矢理扉を開けて、即捕まるのもね…。
今夜は取り敢えず寝て、様子を見ないか?」
「では念の為に外からも扉を開けられないようにしておきませんか?
椅子の脚を両扉のノブに突っ込んで、かんぬき代わりにして。
無理矢理開けられるにしても、その騒ぎで寝ていても起きられるし、時間は稼げるかと。」
「…そうだね…私は交代で寝ることを考えていたけど、その方が効率は良いね。」
「ベッドはリーナが使って。
私はソファで眠るから。」
「私がソファで眠りますよって言いたいところですけど。
でもソファでは疲れは取れませんし、それにベッドは大人4人でも寝られそうな広さですよ。
二人で使ったら良いのでは?
心配しなくても私はレイの寝込みを襲いませんよ?」
「襲ってくれても良いんだけどね…。
まあ…いざというときに、出来るだけ近くに居た方が、一緒に闘いやすいし、一緒に逃げやすいかもしれないからね。
君が嫌で無ければ、一緒のベッドを使わせてもらうよ。」
明け方、射し込む光で目が覚め、起き上がると、レイはもう起きていました。
起きて部屋をウロウロしているレイに声を掛けました。
「何か分かった?」
「昨夜、誰か開けようとしたっぽいよ、ドアノブに載せておいた糸が落ちていた…。」
「私たちが寝ている間に入ろうとしたということよね?
何のために…。」
「分からない…。もう少し明かりがあれば…。」
「カーテン…全部、開けてしまってみる?少しは光が入るかもしれないし。」
「そうだね…。」
前の日には殆ど分からなかった部屋の様子ですが、分厚いカーテンを開けると、窓の外に打ち付けた板には案外隙間があり、そこから差し込む光で、もう少し見えてきました。
何と!長い事使われていないような埃だらけの暖炉の上に、トレイに載せて、布巾を被せ、果物やパン、そして水が置かれておりました。
「私たちがロープを解くのは、想定されていたという事かな…。」
「それでこれを食べろという事でしょうか…。」
「でもこれで何日分なのだろう…。普通に食べたらせいぜい二日だよね…。
とすれば、明日には何か動きがあるのかも…。」
「これ…食べても大丈夫な物でしょうか?」
「とりあえずどちらか一人が食べて、数時間、様子を見よう。
私が食べるから、リーナは私が何ともなかったら、その後で食べて!
もしもの時には、君だけでも逃げて!」
「それだったら逆の方が良いのでは?
走るのもレイの方が早いでしょうし、力は確実に。
戦わなければいけなくなったら、それこそレイの方が生き残れる可能性は高いです。
逃げて誰か助けを呼ぶには、生き残れる可能性が高くないとです。」
でも結局、力と背の高さなどの体格以外は、私の方がサバイバルに強いかもという理由で、お互いに相手を優先させようとして、話は平行線に。
なので私が前世のじゃんけんというものを教え、それで勝敗を決めました。
レイが勝ったので、先にレイが食べる事に。
果物は残念ながら、ナイフを置いておいては貰えなかったし、私のポケットのナイフは全て取られてしまっていたので、皮もそのまま丸かじりするしかありませんでした。
レイが食べて、一時間ほど経ったでしょうか、何とも無かったので、私もリンゴを食べました。
リンゴを片手に、板で打ち付けられた窓の隙間から、外を眺めておりました。
物音はしないし、見えるのは、林?森?雑木林のような所だけでした。
誰も通らないし、他には何も見えない。
「何か…他に誰か全く居ないのですかね?全然、誰も通る様子もないんですが…。」
「昨夜、誰かが侵入しようとしたという事は、誰かは周辺に居てもおかしくないはずなんだけどね…。」
「何が目的なのでしょうね…私とレンを誘拐したというのは。」
「誰に何のメリットがあるのだろう…。」
それから私たちは考えました。
現状では脱出は困難だし、そもそも脱出できるかどうかも分からないけど、脱出出来た時に、犯人を捕まえられるように。
このままだと、先ず私とアルの婚約は難しくなる。
私が行方不明のままだったら論外だけど、私が見つかっても、何日間も行方不明になったとあっては難しくなる。
しかし公爵家の中に、私との婚約を望まない人物が居れば、アルと私が婚約出来なくなれば、それは利になる。
しかしレンを誘拐した理由は?
話を聞くと、レンは何と、公爵家別邸内で攫われていた。
「どういう事?何で邸内で攫われるの?」
「王宮からジョージ殿下が来るという先触れが来たんだよ。
それで君に知らせようと、使用人が向かったら、君が部屋に居ないという事になって、殿下が来るまでに君を探さなくてはということになったんだよ…。」
「…ごめんなさい…。」
「それで手分けして君を探していて、私は恐らく君は面倒で逃げたなと思って、逃げた先を追おうと考えて。
裏門を堂々と通るか、若しくは裏門から出た業者か何かの馬車に紛れ込んだか、若しくは塀を乗り越えたかって思って、何か目撃情報が無いかと思って、裏門の護衛へ聞きに行ったんだよ。
でもそれらしき目撃は無くて、裏の林に隠れているか、若しくは作業小屋とか物置小屋とか、人があまり来ないところに隠れていると思って、探していたんだ。
そしたら物置小屋で、何か甘い香りがすると思った後の事は記憶が無くて…この有様だよ…。」
「ん?!という事は、ここは公爵家別邸の中か、別邸の周囲って事でしょうか?
私、別邸についてはそこまで探索とかしていなかったのですが、別邸の敷地内に、邸以外に離れとかあったのでしょうか?
何かご存じですか?」
「いや…私はそこまで歩き回ったりしていなかったので、分からないな…。
仮にここが邸の中だったとして、場所次第では、見つかるリスクが高くなる。
そうすると私たち二人を拉致監禁するメリットへたどり着けるか、怪しくなると思うんだよね。」
「であれば邸の外…ん…分からないです…。」
「元へ戻って、私たち二人を拉致監禁してメリットのあるもの…。
私にはメリットがあると言えるよ。
未婚の男女が何日間も二人きりだった場合、世間体を考え、その二人を婚約させる可能性は高くなる。
まして私は君に婚約を申し入れている立場だから、なおさらメリットが高くなる…。」
「そうね…でもあなたを犯人にするには、共犯者が必要よ?
あなた一人では、誰があなたをあんなにキツく縛れると?」
「共犯者…いるかも知れないよ?」
「それは置いといて…私がキズモノになれば、王宮も私を囲いやすくなると思います。
あとは…私を気に入らないと思っている御令嬢かな…。
今までに悪意を向けてきた人達は…姉さま、あなたの妹さん、それにミシェリーナ嬢…探せば他にも居るでしょうね。」
「アンジェリカが?!何で?」
「彼女はアルフレッド様の事が好きなんだと思うわ。
だから私のことは気に入らない。」
「そんな…。
他の人達は何故?」
「姉さまは子供の頃から私とは相性が凄く悪かった。
私、物心着いた頃には、既に姉さまに嫌われていると自覚していたわ。
ミシェリーナ嬢は、私の遠縁のお姉様の事を慕っているみたいで。
その遠縁のお姉様が私のことを可愛がって下さっていて、気に入らないみたいで、私がそのお姉様と一緒に居たときは酷かったし、それ以来、顔を合わせれば嫌がらせをされるようになったわ。
そんなものよ。」
「女性の嫉妬って…怖いね…。」
「レイ…陰湿なのは、何も女性に限らないですよ。」
私は前世を思い出して言った。
あのブラック企業でも、先輩や他部署の部長から嫌がらせ、受けていたしね。
同じ部署の、入社当時、何もしていないのに、下らない理由で私を苛めていた先輩…彼には万引きの濡れ衣を着せられかけたこともあったなぁ。
今はもう無い、六本木のCDショップで、ワゴンのCDを見ていたら、突然背後から私の腕を掴んで上に上げ、大きな声で「この人万引きしてる!」と叫んで逃げられた事があった。
その場を立ち去りたかったけど、そんなことをしたら、余計に疑われると思って、グッと堪えてCDを物色し続け、疑われないために、何か買わなくちゃと、適当なCDを手に持ってレジへ行ったのです。
何か言われるなら、そこで言われるかと思って。
あの時は本当に「この男、何て陰湿なんだ!」と、その陰湿っぷりにドン引きしました。
女性も陰湿な人はいる。
でも陰湿って女性だけではなくて、男性もなのよね。
そこを勘違いしてしまうと、視野を狭めてしまう。
あ…私も私を快く思っていない人達で、女性ばかり挙げてしまった。
気を付けなくてはね。
もっと冷静に考えよう。
「レイは犯人に心当たりは?」
「私は…一人で攫われたのなら侯爵家に対するものと考えられるけど。
リーナと二人きりにして監禁というのが…それはむしろ、アルとリーナの婚約を邪魔しているように見えるんだよね…。」
「先ずはとにかくここから脱出ということですかね…。」
物音も聞こえず、気配も感じられない部屋のドアの外には、誰も居ないと判断し、先ずは後ろ手に縛られていた手を、前に回した。
柔軟も鍛えていて良かった!とつくづく思いました。
そして暗くてよく見えないながらも、手探りで、硬く縛られていたレイの手首の縄を解いた。
先にレイの足首の縄を解いてもらい、次に私の手首の縄を解いてもらった。
先にレイだけでも動ければ、レイだけでも逃げ出せるかもしれないから。
一人でも逃げ出せれば、救援を呼べる…かもしれない。
そして自分で自分の足の縄を解いた。
それにしても随分、固く縛ってありました。
おまけに予測してましたけど、ポケットに入れていたものは、ほぼ取られていました…ナイフとかナイフとかナイフとか…あ、お金も…。
部屋の中には私たちだけのようだった。
静まり返っていて、他に人の気配は無い。
物音を立てないように、静かに二人で目をこらしながら、部屋中を探ってみました。
「どこかの邸の使われていない客間っぽいね…。」
「どうしてそう思うのですか?」
「この部屋の隣は寝室でベッドがあっただろ?
反対の隣には、風呂場らしき小部屋と、トイレらしき小部屋があった。
そしてベッドといい、この部屋の家具といい、傷まないように布を掛けてある。
おまけに少し、ほこりっぽい…。
邸自体がか、この部屋がかは分からないけど、普段、使われていない証拠だし、寝室と居間、トイレと風呂…客間か高級なホテルかな。」
「そう言われてみると確かに。」
「今は…恐らく夜だとして…今夜はこのままかな…。」
「そうですね…物音一つしないし、何の気配も感じられない。
逃げるなら今ですかね?」
「一か八かというのもありだけど…扉は鍵が掛かっていて開かないし、窓も外から塞がれている。
無理矢理扉を開けて、即捕まるのもね…。
今夜は取り敢えず寝て、様子を見ないか?」
「では念の為に外からも扉を開けられないようにしておきませんか?
椅子の脚を両扉のノブに突っ込んで、かんぬき代わりにして。
無理矢理開けられるにしても、その騒ぎで寝ていても起きられるし、時間は稼げるかと。」
「…そうだね…私は交代で寝ることを考えていたけど、その方が効率は良いね。」
「ベッドはリーナが使って。
私はソファで眠るから。」
「私がソファで眠りますよって言いたいところですけど。
でもソファでは疲れは取れませんし、それにベッドは大人4人でも寝られそうな広さですよ。
二人で使ったら良いのでは?
心配しなくても私はレイの寝込みを襲いませんよ?」
「襲ってくれても良いんだけどね…。
まあ…いざというときに、出来るだけ近くに居た方が、一緒に闘いやすいし、一緒に逃げやすいかもしれないからね。
君が嫌で無ければ、一緒のベッドを使わせてもらうよ。」
明け方、射し込む光で目が覚め、起き上がると、レイはもう起きていました。
起きて部屋をウロウロしているレイに声を掛けました。
「何か分かった?」
「昨夜、誰か開けようとしたっぽいよ、ドアノブに載せておいた糸が落ちていた…。」
「私たちが寝ている間に入ろうとしたということよね?
何のために…。」
「分からない…。もう少し明かりがあれば…。」
「カーテン…全部、開けてしまってみる?少しは光が入るかもしれないし。」
「そうだね…。」
前の日には殆ど分からなかった部屋の様子ですが、分厚いカーテンを開けると、窓の外に打ち付けた板には案外隙間があり、そこから差し込む光で、もう少し見えてきました。
何と!長い事使われていないような埃だらけの暖炉の上に、トレイに載せて、布巾を被せ、果物やパン、そして水が置かれておりました。
「私たちがロープを解くのは、想定されていたという事かな…。」
「それでこれを食べろという事でしょうか…。」
「でもこれで何日分なのだろう…。普通に食べたらせいぜい二日だよね…。
とすれば、明日には何か動きがあるのかも…。」
「これ…食べても大丈夫な物でしょうか?」
「とりあえずどちらか一人が食べて、数時間、様子を見よう。
私が食べるから、リーナは私が何ともなかったら、その後で食べて!
もしもの時には、君だけでも逃げて!」
「それだったら逆の方が良いのでは?
走るのもレイの方が早いでしょうし、力は確実に。
戦わなければいけなくなったら、それこそレイの方が生き残れる可能性は高いです。
逃げて誰か助けを呼ぶには、生き残れる可能性が高くないとです。」
でも結局、力と背の高さなどの体格以外は、私の方がサバイバルに強いかもという理由で、お互いに相手を優先させようとして、話は平行線に。
なので私が前世のじゃんけんというものを教え、それで勝敗を決めました。
レイが勝ったので、先にレイが食べる事に。
果物は残念ながら、ナイフを置いておいては貰えなかったし、私のポケットのナイフは全て取られてしまっていたので、皮もそのまま丸かじりするしかありませんでした。
レイが食べて、一時間ほど経ったでしょうか、何とも無かったので、私もリンゴを食べました。
リンゴを片手に、板で打ち付けられた窓の隙間から、外を眺めておりました。
物音はしないし、見えるのは、林?森?雑木林のような所だけでした。
誰も通らないし、他には何も見えない。
「何か…他に誰か全く居ないのですかね?全然、誰も通る様子もないんですが…。」
「昨夜、誰かが侵入しようとしたという事は、誰かは周辺に居てもおかしくないはずなんだけどね…。」
「何が目的なのでしょうね…私とレンを誘拐したというのは。」
「誰に何のメリットがあるのだろう…。」
それから私たちは考えました。
現状では脱出は困難だし、そもそも脱出できるかどうかも分からないけど、脱出出来た時に、犯人を捕まえられるように。
このままだと、先ず私とアルの婚約は難しくなる。
私が行方不明のままだったら論外だけど、私が見つかっても、何日間も行方不明になったとあっては難しくなる。
しかし公爵家の中に、私との婚約を望まない人物が居れば、アルと私が婚約出来なくなれば、それは利になる。
しかしレンを誘拐した理由は?
話を聞くと、レンは何と、公爵家別邸内で攫われていた。
「どういう事?何で邸内で攫われるの?」
「王宮からジョージ殿下が来るという先触れが来たんだよ。
それで君に知らせようと、使用人が向かったら、君が部屋に居ないという事になって、殿下が来るまでに君を探さなくてはということになったんだよ…。」
「…ごめんなさい…。」
「それで手分けして君を探していて、私は恐らく君は面倒で逃げたなと思って、逃げた先を追おうと考えて。
裏門を堂々と通るか、若しくは裏門から出た業者か何かの馬車に紛れ込んだか、若しくは塀を乗り越えたかって思って、何か目撃情報が無いかと思って、裏門の護衛へ聞きに行ったんだよ。
でもそれらしき目撃は無くて、裏の林に隠れているか、若しくは作業小屋とか物置小屋とか、人があまり来ないところに隠れていると思って、探していたんだ。
そしたら物置小屋で、何か甘い香りがすると思った後の事は記憶が無くて…この有様だよ…。」
「ん?!という事は、ここは公爵家別邸の中か、別邸の周囲って事でしょうか?
私、別邸についてはそこまで探索とかしていなかったのですが、別邸の敷地内に、邸以外に離れとかあったのでしょうか?
何かご存じですか?」
「いや…私はそこまで歩き回ったりしていなかったので、分からないな…。
仮にここが邸の中だったとして、場所次第では、見つかるリスクが高くなる。
そうすると私たち二人を拉致監禁するメリットへたどり着けるか、怪しくなると思うんだよね。」
「であれば邸の外…ん…分からないです…。」
「元へ戻って、私たち二人を拉致監禁してメリットのあるもの…。
私にはメリットがあると言えるよ。
未婚の男女が何日間も二人きりだった場合、世間体を考え、その二人を婚約させる可能性は高くなる。
まして私は君に婚約を申し入れている立場だから、なおさらメリットが高くなる…。」
「そうね…でもあなたを犯人にするには、共犯者が必要よ?
あなた一人では、誰があなたをあんなにキツく縛れると?」
「共犯者…いるかも知れないよ?」
「それは置いといて…私がキズモノになれば、王宮も私を囲いやすくなると思います。
あとは…私を気に入らないと思っている御令嬢かな…。
今までに悪意を向けてきた人達は…姉さま、あなたの妹さん、それにミシェリーナ嬢…探せば他にも居るでしょうね。」
「アンジェリカが?!何で?」
「彼女はアルフレッド様の事が好きなんだと思うわ。
だから私のことは気に入らない。」
「そんな…。
他の人達は何故?」
「姉さまは子供の頃から私とは相性が凄く悪かった。
私、物心着いた頃には、既に姉さまに嫌われていると自覚していたわ。
ミシェリーナ嬢は、私の遠縁のお姉様の事を慕っているみたいで。
その遠縁のお姉様が私のことを可愛がって下さっていて、気に入らないみたいで、私がそのお姉様と一緒に居たときは酷かったし、それ以来、顔を合わせれば嫌がらせをされるようになったわ。
そんなものよ。」
「女性の嫉妬って…怖いね…。」
「レイ…陰湿なのは、何も女性に限らないですよ。」
私は前世を思い出して言った。
あのブラック企業でも、先輩や他部署の部長から嫌がらせ、受けていたしね。
同じ部署の、入社当時、何もしていないのに、下らない理由で私を苛めていた先輩…彼には万引きの濡れ衣を着せられかけたこともあったなぁ。
今はもう無い、六本木のCDショップで、ワゴンのCDを見ていたら、突然背後から私の腕を掴んで上に上げ、大きな声で「この人万引きしてる!」と叫んで逃げられた事があった。
その場を立ち去りたかったけど、そんなことをしたら、余計に疑われると思って、グッと堪えてCDを物色し続け、疑われないために、何か買わなくちゃと、適当なCDを手に持ってレジへ行ったのです。
何か言われるなら、そこで言われるかと思って。
あの時は本当に「この男、何て陰湿なんだ!」と、その陰湿っぷりにドン引きしました。
女性も陰湿な人はいる。
でも陰湿って女性だけではなくて、男性もなのよね。
そこを勘違いしてしまうと、視野を狭めてしまう。
あ…私も私を快く思っていない人達で、女性ばかり挙げてしまった。
気を付けなくてはね。
もっと冷静に考えよう。
「レイは犯人に心当たりは?」
「私は…一人で攫われたのなら侯爵家に対するものと考えられるけど。
リーナと二人きりにして監禁というのが…それはむしろ、アルとリーナの婚約を邪魔しているように見えるんだよね…。」
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