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王妃の思惑
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誕生日に、突然、王妃様の茶会という名の王妃様とジョージ殿下への面談に呼ばれました。
その際に、殿下の手伝いをと言われたのですが、11歳の私が勝手に引き受ける事は出来ません。
それに今回、単発で一定期間のお手伝いだったら別に良いのです。
怖いのはその先…。
なので年齢を盾に、親は勿論、今現在お世話になっている公爵家や侯爵家への相談なしに引き受ける事は出来ませんと答えてきました。
つまり!相談しなければならないわけです。
でも誕生日の夜にそんな話をアルフレッド様にもレイモンド様にもする気になならず。
それにその場にはどうやって潜り込んだのか?当事者のジョージ殿下もいらっしゃいましたし。
それでも早々に相談しなくてはと思いまして、翌朝、公爵家からいらしている侍女頭のマリーさんと、侯爵家からいらしている執事のアレンさんに時間を頂きました。
朝食の後、食器類を片付けた後のダイニングで話しました。
「お時間を頂きましてありがとうございます、マリーさん、アレンさん。
昨日、私が急遽、また王妃様の茶会へ招かれたことはご記憶かと思います。
その時の事で公爵様と侯爵様、うちの父にご相談があります。
急ぎご連絡を取りたいのですが…。」
「何があったのかをお伺いしても?」
アレンさんから聞かれた。
「そうですよね…。
わかりました、話せる範囲内でお話ししますので、それをお伝えいただければ。
昨日、王妃様から仕事の依頼がありました…私への。
私は王妃様からの依頼を拒否する立場にはないのですが、年齢を考えると、勝手に即答は出来ない旨をお伝えしてきました。
父および今、お世話になっている公爵様と侯爵様に相談が必要と。
単発の仕事であれば、問題無いようにも思うのですが、私にはそこまでは分かりません。
それで早急にご相談させていただければと思うのですが。」
「分かりました。すぐに連絡致します。」
二人ともそのまますぐに其々に連絡をしてくださり、早々に話し合いの場を設けられるはず…でした。
その日の午後、再び王妃様から連絡が参りました。
早急に、全員で登城するようにと。
…時間が足りない…相談する時間なんて無いじゃない!
せめてもの足掻きで、一旦、この別邸に全員集まり、揃って登城することになった。
私は、濃紺のデイ・ドレスに着替え、直ぐに出発出来る状態で待つことにしました。
濃紺に白のケミカルレースの大きめの襟とカフス。
スカート部分の裾にも途中、2段の同じレースが縫い付けてあり、その部分は紺地の生地は無く、透けるようにしてありました。
ストレートの髪は、いつものポニーテールではなくて、低い位置でひっつめてもらい、髪にも同じレースの髪飾りを挿してもらいました。
先ず公爵様とアルフレッド様がいらした。
「マリーナ、どういう事?!昨日の登城の際に、何があったの?」
「まだ時間があると思ったから、昨日は話さなかったんだけど…。
ジョージ殿下の仕事の手伝いをするようにと言われたの。
単発の仕事で、大したことのない、文官レベルの仕事だったら受けても良いとは思ったんだけど。
でもその先が私には読めなくて。
父さまや公爵様、侯爵様に相談しないと返事できないって答えてあったの。」
「マリーナ嬢、それはどんな仕事なんだ?!」
「王領の一部について、ジョージ殿下が何かを調べているとかで、その資料作成の補佐をと。」
「それ…10歳児にさせる事ではないのでは?」
「アルフレッド様、一応私、昨日、11歳になりました…まあ大差ないですけど。」
「何を企んでいるんだ?殿下たちは?」
そんな話をしている時に、侯爵様と一緒に何故かレイモンド様、そして父さまが到着しました。
それほど時間稼ぎは出来ないので、大型の馬車に6人乗り込み、馬車の中で相談することになりました。
といっても情報量が足りないので、余程の内容でないかぎりは引き受け、ただしアルフレッド様かレイモンド様、もしくは両方を補佐に付けること、それを条件に出すことになりました。
それとこれが単発の話であることも。
王宮に到着し、王妃宮へ案内されました。
テーブルと椅子の配置的には会議室のような場所へ通されました。
でもある程度、高位の者を呼ぶとき用なのか?妙に豪華な調度品があちらこちらにありました。
内心、「ここにあの子供が隠れられそうな大きな壺?花瓶?必要なのかしら?」とか、「あの肖像画は何のために?会議用の部屋なら、地図でも貼っておいた方が役に立つのに。」等と、少々罰当たりなことを考えておりました。
案内された私たちは、公爵と侯爵の間に私は座らされ、侯爵の隣にアルフレッド様とレイモンド様、そして父さまでした。
何か…それぞれの立ち位置が分かる気がします…。
父さまは完全におまけね。
発言権は無さそうね。
父さま、汗が凄いのですが、ハンカチ、足りるのかしら?
はっ!まさか更年期障害?!男性もあるって言うし!
だからあんなに滝のような汗が?!大丈夫なのかしら?
私は現実逃避にそんなことばかり考えておりました。
やがて王妃様と二人の殿下が入ってきました。
王妃様の隣、右手ににジョージ殿下、左手にエドワード殿下が着席なさいました。
何故エドワード殿下もいらっしゃるのだろう?
胡散臭さを感じて、怪訝に思って考えていると、王妃様の声が耳に入ってきました。
「どうぞ座って…。」
全員、着席しました。
「さて…、マリーナさんから聞いているかしら?」
「マリーナ嬢から伺っては居りますが、詳細まではまだこれからでしたので、
どういったお話なのか、改めて殿下から伺っても宜しいでしょうか?」
公爵様が答えて下さいました。
「ではジョージ…説明して。」
今回の件について、ジョージ殿下から説明がありました。
王領の一部について、産業やその他諸々、経済等の情報を収集し、整理している事。
それらをまとめて国王陛下と宰相様に提出しなくてはならない事。
そしてその資料の作成の手伝いを私にという事を言われました。
「しかしまだマリーナ嬢は11歳で、殿下の補佐をするようなことは難しいのではないでしょうか?」
「あら?おかしいわね?マリーナ嬢が、どこかで落書き代わりに、何らかの資料を斬新な手法で整理していたと聞きましたけど?」
あぁもうダメよ、バレてる。
今回は引き受けるより他に無いと思うのですが…。
心の中で叫ぶも、余計な口は挟まないようにと、馬車の中で言われていたので、黙って目の前の紅茶に手を付ける私。
これは…前世でイギリスの女流推理小説家の作品にも何回か出てきた、ラプサンスーチョンに似ているわね。
随分と癖の強いお茶を入れてきたようですが、どんな意図なのでしょう?
ラプサンは好き嫌いが分かれるお茶ですから、嫌がらせの意味もあるのかしら?
でも誰に???
そんなことを考えているうちに、話は進んでいたようです。
こちらとしては、私がまだ11歳であること、只今、アルフレッド様かレイモンド様と、婚約を考えて相性などを見ている最中であることを踏まえ、私一人でというわけにはいかない事。
拘束期間が長くないように、そして今回限りという事を希望として提示しました。
散々、王妃様と公爵様と侯爵様が話し合った結果、次に用になりました。
仕事内容を親兄弟にも口外はしない事。
登城の際は、必ずアルフレッド様かレイモンド様、若しくはその両方が一緒に登城し、資料作成についてもその二人が私の補佐をする事。
あくまでも今回限りの単発の依頼であって、継続するものではない事。
そして期間は概ね一ヶ月という事になりました。
マリーナたちが取り敢えず全員、別邸へ帰る頃、王宮では、王妃と二人の王子が相談しておりました。
「今後、どう出ますかね?」
「…今回の申し出については断らないと思っていたわ…。
期間が限定だし、それほど無茶なお願いのつもりはないから。
そしてこちらは今回は、見極めるのが目的だから、しっかり観察しなさいね。」
「見極めるとは?」
「王家に対して、どの程度に役に立つのかどうか、どう使うのかどうか…。」
「いっその事、ジョージの婚約者候補に本当にしてしまっては如何ですか?母上?」
「それも一つの手だとは思うんだけどね。
そうするとマスターソン公爵家とスチュアート侯爵家を敵に回す可能性が出てくるでしょ。
それにあの子、大した力もない伯爵家でしょ?
ジョージのお嫁さんは、もっと役に立つ子にしたいのよね…。」
「母上…私に選択肢ってあるのですかね?」
「…まあ選択肢がある時はある、無い時は無い。
自分の立場を常に理解しなさい。」
「母上は…何をお考えなのですか?」
「ジョージにはまだ分からないかしら?
まあ良いわ…。
簡単に言うと、あの伯爵家の娘、そしてマスターソン公爵家とスチュアート侯爵家が、王家にどのくらいに役に立つのか、そして使えるのであれば、どう取り込むのが一番良いのか、それを見極めたいのよ。
あなたの嫁候補にするつもりは現時点では無いけど、こちらにとって不都合な相手に渡すくらいなら、強引にでもこちらに取り込むわ。」
「それはそうと母上、見ましたか?本日のマリーナ嬢を。
まるで他人事の様に終始無言でお茶を飲んでいましたね。」
「私も驚いたわ!あの癖の強いお茶を、黙って飲んでいたわね?!
あの子、本当に11歳なのかしら?
背ももうそれなりの高さはあるし、おの落ち着き払った態度!本当はジョージと同じくらいなのでは?
13歳とか14歳って言われたら、何の疑いもなく信じてしまうわよ!」
「本当にフォーサイス伯爵家の実子なのでしょうか?
他の兄弟に比べて、あまり可愛がられていないとも聞きますし、実は幼いときに養子にもらわれてきたとか?」
「今後、何かの時に利用するためにも、改めてあの子の出自をちゃんと調べておいた方が良いわね…エドワード、頼めるかしら?」
「はい、王家の影に調べさせます。」
そして公爵家別邸では、今後について話し合われました。
「取り敢えずマリーナ嬢がジョージ殿下の補佐のために、必ず二人の内どちらかが一緒に行くようにした方が良いのではないかな?」
先に口を開いたのは、侯爵様でした。
「であれば、常にどちらかはこちらの邸に滞在するようにした方が良いのでは?」
「公爵家にご迷惑でなければ、マリーナ嬢が滞在している間、レイモンドも滞在させて貰えると有難いのだが。」
「…マリーナ嬢の婚約者を決めるということを考えると、あまり嬉しくは無いのだが、王家が何を考えているのか分からない今、致し方ないな…代わりにアルフレッドも当分、こちらに住まわせて貰うよ。」
うん、お互いに争っていても、より大きな敵が現れると、あっさり手を組むんだね。
それにしてもうちの父さまの存在感、無いなぁ。
娘が男性と暮らすって事態なのに、娘の貞操は心配しないのか?
まあその前に私、まだ11歳ですけどね。
前世では、国によってはもう嫁がされる歳ですけど…まあでもあと一年は猶予がありそうだし。
マイペースに一人で暮らせる事を目標に頑張ろう…。
「ん?お二人はそれで良いのですか?」
「私はマリーナ嬢の近くに居られるなら、寧ろ有難いことだよ。」
「俺も全く問題は無いよ。」
「お二人が問題が無いのでしたら、私も有難いですが。
何せ何時、呼び出されるのか、分からないので。」
こうして奇妙な共同生活が始まる事になりました。
その際に、殿下の手伝いをと言われたのですが、11歳の私が勝手に引き受ける事は出来ません。
それに今回、単発で一定期間のお手伝いだったら別に良いのです。
怖いのはその先…。
なので年齢を盾に、親は勿論、今現在お世話になっている公爵家や侯爵家への相談なしに引き受ける事は出来ませんと答えてきました。
つまり!相談しなければならないわけです。
でも誕生日の夜にそんな話をアルフレッド様にもレイモンド様にもする気になならず。
それにその場にはどうやって潜り込んだのか?当事者のジョージ殿下もいらっしゃいましたし。
それでも早々に相談しなくてはと思いまして、翌朝、公爵家からいらしている侍女頭のマリーさんと、侯爵家からいらしている執事のアレンさんに時間を頂きました。
朝食の後、食器類を片付けた後のダイニングで話しました。
「お時間を頂きましてありがとうございます、マリーさん、アレンさん。
昨日、私が急遽、また王妃様の茶会へ招かれたことはご記憶かと思います。
その時の事で公爵様と侯爵様、うちの父にご相談があります。
急ぎご連絡を取りたいのですが…。」
「何があったのかをお伺いしても?」
アレンさんから聞かれた。
「そうですよね…。
わかりました、話せる範囲内でお話ししますので、それをお伝えいただければ。
昨日、王妃様から仕事の依頼がありました…私への。
私は王妃様からの依頼を拒否する立場にはないのですが、年齢を考えると、勝手に即答は出来ない旨をお伝えしてきました。
父および今、お世話になっている公爵様と侯爵様に相談が必要と。
単発の仕事であれば、問題無いようにも思うのですが、私にはそこまでは分かりません。
それで早急にご相談させていただければと思うのですが。」
「分かりました。すぐに連絡致します。」
二人ともそのまますぐに其々に連絡をしてくださり、早々に話し合いの場を設けられるはず…でした。
その日の午後、再び王妃様から連絡が参りました。
早急に、全員で登城するようにと。
…時間が足りない…相談する時間なんて無いじゃない!
せめてもの足掻きで、一旦、この別邸に全員集まり、揃って登城することになった。
私は、濃紺のデイ・ドレスに着替え、直ぐに出発出来る状態で待つことにしました。
濃紺に白のケミカルレースの大きめの襟とカフス。
スカート部分の裾にも途中、2段の同じレースが縫い付けてあり、その部分は紺地の生地は無く、透けるようにしてありました。
ストレートの髪は、いつものポニーテールではなくて、低い位置でひっつめてもらい、髪にも同じレースの髪飾りを挿してもらいました。
先ず公爵様とアルフレッド様がいらした。
「マリーナ、どういう事?!昨日の登城の際に、何があったの?」
「まだ時間があると思ったから、昨日は話さなかったんだけど…。
ジョージ殿下の仕事の手伝いをするようにと言われたの。
単発の仕事で、大したことのない、文官レベルの仕事だったら受けても良いとは思ったんだけど。
でもその先が私には読めなくて。
父さまや公爵様、侯爵様に相談しないと返事できないって答えてあったの。」
「マリーナ嬢、それはどんな仕事なんだ?!」
「王領の一部について、ジョージ殿下が何かを調べているとかで、その資料作成の補佐をと。」
「それ…10歳児にさせる事ではないのでは?」
「アルフレッド様、一応私、昨日、11歳になりました…まあ大差ないですけど。」
「何を企んでいるんだ?殿下たちは?」
そんな話をしている時に、侯爵様と一緒に何故かレイモンド様、そして父さまが到着しました。
それほど時間稼ぎは出来ないので、大型の馬車に6人乗り込み、馬車の中で相談することになりました。
といっても情報量が足りないので、余程の内容でないかぎりは引き受け、ただしアルフレッド様かレイモンド様、もしくは両方を補佐に付けること、それを条件に出すことになりました。
それとこれが単発の話であることも。
王宮に到着し、王妃宮へ案内されました。
テーブルと椅子の配置的には会議室のような場所へ通されました。
でもある程度、高位の者を呼ぶとき用なのか?妙に豪華な調度品があちらこちらにありました。
内心、「ここにあの子供が隠れられそうな大きな壺?花瓶?必要なのかしら?」とか、「あの肖像画は何のために?会議用の部屋なら、地図でも貼っておいた方が役に立つのに。」等と、少々罰当たりなことを考えておりました。
案内された私たちは、公爵と侯爵の間に私は座らされ、侯爵の隣にアルフレッド様とレイモンド様、そして父さまでした。
何か…それぞれの立ち位置が分かる気がします…。
父さまは完全におまけね。
発言権は無さそうね。
父さま、汗が凄いのですが、ハンカチ、足りるのかしら?
はっ!まさか更年期障害?!男性もあるって言うし!
だからあんなに滝のような汗が?!大丈夫なのかしら?
私は現実逃避にそんなことばかり考えておりました。
やがて王妃様と二人の殿下が入ってきました。
王妃様の隣、右手ににジョージ殿下、左手にエドワード殿下が着席なさいました。
何故エドワード殿下もいらっしゃるのだろう?
胡散臭さを感じて、怪訝に思って考えていると、王妃様の声が耳に入ってきました。
「どうぞ座って…。」
全員、着席しました。
「さて…、マリーナさんから聞いているかしら?」
「マリーナ嬢から伺っては居りますが、詳細まではまだこれからでしたので、
どういったお話なのか、改めて殿下から伺っても宜しいでしょうか?」
公爵様が答えて下さいました。
「ではジョージ…説明して。」
今回の件について、ジョージ殿下から説明がありました。
王領の一部について、産業やその他諸々、経済等の情報を収集し、整理している事。
それらをまとめて国王陛下と宰相様に提出しなくてはならない事。
そしてその資料の作成の手伝いを私にという事を言われました。
「しかしまだマリーナ嬢は11歳で、殿下の補佐をするようなことは難しいのではないでしょうか?」
「あら?おかしいわね?マリーナ嬢が、どこかで落書き代わりに、何らかの資料を斬新な手法で整理していたと聞きましたけど?」
あぁもうダメよ、バレてる。
今回は引き受けるより他に無いと思うのですが…。
心の中で叫ぶも、余計な口は挟まないようにと、馬車の中で言われていたので、黙って目の前の紅茶に手を付ける私。
これは…前世でイギリスの女流推理小説家の作品にも何回か出てきた、ラプサンスーチョンに似ているわね。
随分と癖の強いお茶を入れてきたようですが、どんな意図なのでしょう?
ラプサンは好き嫌いが分かれるお茶ですから、嫌がらせの意味もあるのかしら?
でも誰に???
そんなことを考えているうちに、話は進んでいたようです。
こちらとしては、私がまだ11歳であること、只今、アルフレッド様かレイモンド様と、婚約を考えて相性などを見ている最中であることを踏まえ、私一人でというわけにはいかない事。
拘束期間が長くないように、そして今回限りという事を希望として提示しました。
散々、王妃様と公爵様と侯爵様が話し合った結果、次に用になりました。
仕事内容を親兄弟にも口外はしない事。
登城の際は、必ずアルフレッド様かレイモンド様、若しくはその両方が一緒に登城し、資料作成についてもその二人が私の補佐をする事。
あくまでも今回限りの単発の依頼であって、継続するものではない事。
そして期間は概ね一ヶ月という事になりました。
マリーナたちが取り敢えず全員、別邸へ帰る頃、王宮では、王妃と二人の王子が相談しておりました。
「今後、どう出ますかね?」
「…今回の申し出については断らないと思っていたわ…。
期間が限定だし、それほど無茶なお願いのつもりはないから。
そしてこちらは今回は、見極めるのが目的だから、しっかり観察しなさいね。」
「見極めるとは?」
「王家に対して、どの程度に役に立つのかどうか、どう使うのかどうか…。」
「いっその事、ジョージの婚約者候補に本当にしてしまっては如何ですか?母上?」
「それも一つの手だとは思うんだけどね。
そうするとマスターソン公爵家とスチュアート侯爵家を敵に回す可能性が出てくるでしょ。
それにあの子、大した力もない伯爵家でしょ?
ジョージのお嫁さんは、もっと役に立つ子にしたいのよね…。」
「母上…私に選択肢ってあるのですかね?」
「…まあ選択肢がある時はある、無い時は無い。
自分の立場を常に理解しなさい。」
「母上は…何をお考えなのですか?」
「ジョージにはまだ分からないかしら?
まあ良いわ…。
簡単に言うと、あの伯爵家の娘、そしてマスターソン公爵家とスチュアート侯爵家が、王家にどのくらいに役に立つのか、そして使えるのであれば、どう取り込むのが一番良いのか、それを見極めたいのよ。
あなたの嫁候補にするつもりは現時点では無いけど、こちらにとって不都合な相手に渡すくらいなら、強引にでもこちらに取り込むわ。」
「それはそうと母上、見ましたか?本日のマリーナ嬢を。
まるで他人事の様に終始無言でお茶を飲んでいましたね。」
「私も驚いたわ!あの癖の強いお茶を、黙って飲んでいたわね?!
あの子、本当に11歳なのかしら?
背ももうそれなりの高さはあるし、おの落ち着き払った態度!本当はジョージと同じくらいなのでは?
13歳とか14歳って言われたら、何の疑いもなく信じてしまうわよ!」
「本当にフォーサイス伯爵家の実子なのでしょうか?
他の兄弟に比べて、あまり可愛がられていないとも聞きますし、実は幼いときに養子にもらわれてきたとか?」
「今後、何かの時に利用するためにも、改めてあの子の出自をちゃんと調べておいた方が良いわね…エドワード、頼めるかしら?」
「はい、王家の影に調べさせます。」
そして公爵家別邸では、今後について話し合われました。
「取り敢えずマリーナ嬢がジョージ殿下の補佐のために、必ず二人の内どちらかが一緒に行くようにした方が良いのではないかな?」
先に口を開いたのは、侯爵様でした。
「であれば、常にどちらかはこちらの邸に滞在するようにした方が良いのでは?」
「公爵家にご迷惑でなければ、マリーナ嬢が滞在している間、レイモンドも滞在させて貰えると有難いのだが。」
「…マリーナ嬢の婚約者を決めるということを考えると、あまり嬉しくは無いのだが、王家が何を考えているのか分からない今、致し方ないな…代わりにアルフレッドも当分、こちらに住まわせて貰うよ。」
うん、お互いに争っていても、より大きな敵が現れると、あっさり手を組むんだね。
それにしてもうちの父さまの存在感、無いなぁ。
娘が男性と暮らすって事態なのに、娘の貞操は心配しないのか?
まあその前に私、まだ11歳ですけどね。
前世では、国によってはもう嫁がされる歳ですけど…まあでもあと一年は猶予がありそうだし。
マイペースに一人で暮らせる事を目標に頑張ろう…。
「ん?お二人はそれで良いのですか?」
「私はマリーナ嬢の近くに居られるなら、寧ろ有難いことだよ。」
「俺も全く問題は無いよ。」
「お二人が問題が無いのでしたら、私も有難いですが。
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