私は逃げます

恵葉

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争奪戦の続き

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人と人の間を抜けて、さりげなく皆様から少しずつ離れていきました。
そして生垣の陰に隠れ、周囲を観察しました。
そっと後ろへ下がっていき、目指すは池の周りを囲む林!

何とか林までたどり付きました。
林からも茶会の様子は見えます。

様子を見ながら私は、肩を覆っていたショールは外して折り畳み、まだあまり育っていない胸の谷間に差し込みました。
レースアップにしていたオーバースカートは、全てそのレースアップを上まで縮めました。
靴は脱いで、飾りについていたリボンを、左右の指に通しました。
そして…そこにあったモミジの木に登り始めました。
良い感じに枝葉が張っていたので、最初の太い枝に座り、木の幹に背中を付け、ようやく一息付けました。

「はぁ~真面目に疲れた~!もう~何でこんなことになるのかなぁ…。」

ぼーっと呟きました。
どの位、経ったでしょうか…あとどのくらい経ったら帰れるかななんて考えておりました。


「ねぇ…君、終わりまでそこに隠れているつもり?」

下から声が聞こえてきました。
誰か木の陰とか生垣に隠れているのかな?と思いながら、そっと下の方を見下ろしました。

(ん?どこだろう?)そう思いながら、視線を私が登っている木の下まで動かしていくと…下から私を見つめる二組の瞳と合ってしまいました…。

「え!?…」

絶句していると、笑顔で声を掛けてくる二人の殿下…。

「ねえ?いつまでそこに居るの?」

「私たちもそこまで登った方が良い?」

思わず、私以外に誰か居ないか、周囲を見回すも、居るわけもなく…。


「君だよ!マリーナ嬢!君に聞いているんだけどな?」

ジョージ殿下が言っている側から、エドワード殿下は木に手をかけ、登り始めました。

あっという間に私が座る枝まで登ってきまして、私は逃げ場を失くしました。

「あ…あの…え~と…。」

「もう少しそっちへ行ってくれる?」

私を少しだけ枝の先の方へ促し、狼狽えている私をよそにエドワード王子は、私の隣へ座ってしまい、完全に!!!逃げ場を失くしました。
いや…下に飛び降りれば逃げられるけど…。

「下も諦めた方が良いと思うよ…下にはジョージが居るよ…。」

「え~と…何か御用でしょうか?」

顔を引き攣らせながらも、必死で笑顔を作り、聞いてみました。

「君、スチュアート家からの縁談話から逃げるために、マスターソン公爵に頼んで、今回の茶会へ招いてもらったんでしょ?
この茶会への参加は、僕たちの妃候補の可能性を意味するから。
それで時間稼ぎして、アルと婚約したいんだって?」

「…。」

ここはどう答えるのが正解なんだろう?
引き攣った笑顔で無言で見返しました。

「でも君、アルとも別に恋仲じゃないよね?」

バレてる!バレているよぉ~!!!

「なのに何でアルと婚約したいの?
それに不思議なんだよね…スチュアート家とマスターソン家、どうして両家とも君を取り込みたいんだろう?
あ、レイモンドも君と恋仲じゃないよね?
君たち、どっちかというと、まさしく君の言う通り、兄と妹みたいだし。」

「…。え~とですね…アルフレッド様と私は、気が合うのです…それこそ婚約したいくらいに。
スチュアート家は…何故私に縁談を持ってきたのか、よくわかりません。
それこそレイモンド様と私の間に恋愛感情は無いし、アンドリュー様とも絶対に無いのに…。」

「でもさ…。」

「ねぇ!二人とも!いい加減で降りて来てよ!俺一人でここで見張り番とか酷くない?」

「下であぁ言っているから、取り敢えず下りない?
嫌なら警備の者たちを呼ぶよ?」

あぁ~これだから王族だの貴族だの、嫌なんだ…前世のパワハラと一緒じゃん…。
嫌悪感が顔に出たのか、殿下は一瞬、眉を顰めました。

とはいえ、簡単に諦める私でも無いのです。
諦めた顔をして木から下り始めました。

「あの!下からスカートの中を覗くのは止めて下さい!」

「え?!あ!すまない!」

そう言って下で見張っていたジョージ殿下が目を閉じてそっぽを向いた瞬間、私はそのまま飛び降りて走り出しました。

慣れたもので、かなりの勢いで生け垣の影に隠れ…た、ように見せ掛けて、更に走って走って別の生け垣の影に隠れながら、林の少し離れた場所に飛び込みました。
すばしっこいんですよ、普段から鍛えている10歳児は。
舐めないで頂きたい!
そして私…思考は23歳なんですよ…。

再びその辺の木に飛びつき、一気にかなり上まで登りました。
前世、子供の頃は、猿と言われていましたしね、私。

上から見ていると、殿下達二人が私を探しているのが見えました。

「どこへ行った?!」

「お前、何で目を離したんだ?!」

「女性のスカートの中を覗くわけに行かないでしょう!」

「女性って…10歳児だぞ?!」

「それにしても兄上…どうします?」

「どうするも何も…10歳児を捕まえようとして逃げられたなんて、言えないだろ!
それにしても何なんだ?あの10歳児は?」

「まあ…今日の所は諦めて、改めて母上に頼んで、また呼び出して貰いましょう。
今度は逃げられないように、我等だけで…。」

「…そうだな…。」

そしてやっと二人は茶会の会場の方へ歩いて行った。


「ジョージ…私は少し、池の畔で休んでから行くから、お前は先に戻って何とか取り繕っておいてくれ。
流石に追いかけっこに木登りに、疲れた…。」

「分かりました。では母上も誤魔化しておきますね。」

エドワードは、ジョージが立ち去るのを確認し、静かに元来た道へ引き返し始めた。



木からそっと下りてきたマリーナは、あと少しというときに、背後から誰かに抱きしめられた。

「お嬢さん!捕まえた!」

「え?!えっ?!え~!!!」

「惜しかったねぇ。私ももう少しで君に出し抜かれるところだったよ!」

「あの…何で…。」

「君…王子二人から逃げるなんて、不敬だよ?分かってる???」

「…。」

「罰として…どうしようかな?今夜はこのまま王宮に泊まってもらおうか?
そしたら君の望み通り、スチュアート家は婚約の打診を取り止めるしかなくなると思うよ。
まあ、アルも君に婚約の申し入れが出来なくなるけどね。
私に命じられて王宮に泊まると言うことは、かなりの確率で王子妃候補に入ったと見なされるから。」

「…それは無いと思いますよ。
先ず私は10歳児です。もちろん政略結婚としては、10歳児と17歳の殿下の結婚は普通にあることでしょう。
政略結婚なら!ですが。
では私と政略結婚が成り立つのか?全く!成り立たないですよね?
田舎の何の変哲も無い貧乏伯爵の末っ子…国にも殿下にも何の利益ももたらしません。
つまり!私が王子妃候補になる可能性は、全く!無いというわけです。」

「君…本当に10歳児?よくそれだけ考えが及ぶねぇ?
ねぇ…真面目に何でスチュアート家もマスターソン家も、君を嫁にと望んでいるの???」

「それを話したら、助けて下さいますか?」

「…事と次第によっては…。」

「事と次第に…ですか…。」

私はため息をつきながら考えました。
でもこんながっしりと背後から抱きしめられていたら逃げられないし、そろそろ不敬にも程があるかなと思い始めていたので、仕方ないから一部だけ話すことにしました。

「分かりました。大人しく話しますので、離してもらえますか?それと身繕いをするまで待っていただけますか?」

「ではまた逃げられても大変なので、このまま先ずはそこの離宮の客間へ連れて行くよ。
そこで身繕いをすれば良い。」

「信用無いですね…。」

「君がそれを言う?」

そう言って私をぬいぐるみか子犬みたいに抱き上げたまま、歩き始めました。
途中で、殿下を探しに来た従者の方へ、客間へお茶の用意と、それからアルフレッド様へ伝言を伝えていらっしゃいました。

「マリーナ嬢は、体調が悪いので、今夜は王宮に泊めるから、アルフレッドは先に帰るようにと伝えて!」

「え?!私、結局、泊まるんですか?!」

問いかけるも無視して客間まで運ばれてしまいました。


私は客間の奥の、窓の無い、侍女が待機するための小部屋へ入れられ、そこで身繕いをするようにと言われました。
しかもドアの所には、殿下が立っているし。

諦めてため息をつきながら、先ずはレースアップを縮めて上げていたオーバースカートを元に戻しました。
スカーフも広げて肩へかけ、飾りリボンを指に引っかけていた靴を履き、出来上がりました。

「うん!ちゃんと令嬢らしくなったね?」

殿下は笑いながら言いました。

「ではこちらへ」

客間の方の応接セットへ促され、広いソファへ座らされました。
が!何故か隣には殿下が。

「君、こうしないと、隙あらば逃げるでしょう?」

「…逃げたくてもどこへ行けば帰れるのか、分かりませんので逃げませんよ…命でも掛かってない限りは。」

「それもそうか…。
…それで?何でスチュアート家とマスターソン家は君に?」

「スチュアート家はよく分かりません。
考えられるのは私の10歳児らしからぬ行動にご興味を持ったのかと。
アルフレッド様は利害の一致から…偽装婚約をしようという話になりまして。
公爵はそれを知りません。
私とアルフレッド様の間の話です。」

「偽装婚約って?」

「婚約して、目的に達したら破棄しようと…。」

殿下は呆れた顔をした。

「そんなことしたら、君にまともな縁談が来なくなるでしょ?破棄したあと?」

「私は恋愛結婚以外はする気がないので、問題ありません。
何なら一生独身でも良いと思っています!」

「でもそうしたら君は一生実家に居座るの?」

「いえ!頃合いを見て、自分で働くつもりです!」

「え!?何で?貴族女性なんて、家と社交をこなしていれば、そんな働かなくても衣食住には困らないよね?
その家のことだって、高位貴族へ嫁入りすれば、使用人がやってくれるから、それこそ適当に社交をやって暮らせるよね?
なのに何で?」

「(大きくため息をつきながら…)政略結婚で、夫は結婚前から愛人が居て、愛も無いのに性欲処理と辛い出産だけ強要されて、外では愛人に夫を取られた女として陰で笑われて、楽しいですか?そんな生活???
あ、殿下は夫の側でしたね…愛人どころか側室を持てるんですよね?
それでも良いという女性も世の中には大勢いるとは思います。
でも私は嫌なんですよね、そういうの…。
かといって修道院とかいうガラでも無いので、働こうかなと。
それには自由が必要なのです!」

「それで?アルのメリットは何?」

「それはアルフレッド様にお聞きになってください。
私はそれは知りません。」

殿下は、私が逃げないように、私の肩に腕を回したまま、あきれた様子で溜息をついた。

「君…随分…何というか…大人びているというか、スレているけど…10歳児だよね???」

「…10歳です…。」

「ねぇ君…暫く私の話し相手になる?そうすれば偽装婚約なんてしなくても、政略結婚からは、暫くは逃げられると思うけど?」

「でも先ほども言いました通り、私では殿下の妃候補とは思われないですよ…考える能力のある人には、すぐにこれは妃候補とは関係ないってバレます。
そしてスチュアート家の方々…レイモンド様と侯爵様にはバレると思います…。
アルフレッド様のお父様にもバレるでしょうね。
それで騙せるのはうちの父や家族くらいかと。」

「そうだねぇ…。それでも1年や2年だったら、少なくともスチュアート家を抑えておくくらいは出来ると思うよ。
最悪マスターソン家は抑えられなくても、アルとは偽装婚約の予定なんでしょ?
スチュアート家から逃げられれば、問題は無いでしょ?」

「…ちょっとこの所、色々な事が多過ぎまして、一度持ち帰らせていただいても宜しいでしょうか?」

「普通は即決するけどね…まあ仕方がない、君はどうも頭の回転が速いようだから、許すよ。」

「でも良かったら暫くお試しとしてでも私の話し相手になってみない?」

この後、何回もお断りしたのです、私は…。
王族に関わって良い事なんて、全く無いと思いましたので。
寧ろ面倒ごとしか思いつかない。
しかしついに押し切られました。

というよりも、この後、今回、茶会に使われた庭のある離宮から、王子二人が住まう別名王子宮へ連行され、王子宮の客間へ軟禁されてしまったのでした。
そんな事が世間にバレたら、それこそ大変です。
命の危険さえも感じます。
今までも王妃様が王子妃候補だった時代も、毒を盛られたり、嫌がらせもあったと聞きますし。
なのでそれを盾に、半ば強引に王子たち…何故か両方の王子のに変わっているし!…の話し相手として、不定期的に王宮へ通うことになってしまったのでした。
承諾しなければ、帰らせてもらえなかった…。

翌日、王家の馬車で、実家でも公爵家へでも送り届けるというのを、必死で説得し、アルフレッド様を呼び出していただきまして、アルフレッド様とともに、公爵家へ連れ帰っていただきました。
そこに暗雲が立ち込めているなんて、思いもしなかったものですから…。
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