8 / 73
婚約の申し込みは
しおりを挟む
アルフレッド様と観劇およびカフェデートをした翌日、昼前から大姉さまがやってきました。
母さまと兄さまがいるところで、いきなり聞かれました。
「マリーナ!アルフレッド様とはどういう関係なの?!
昨日、二人でデートをしていたって本当なの?!」
「シンシア…確かにマリーナはアルフレッド様と出掛けたけど、でもレイモンド様とも出掛けているし…なのに何でそんな慌てて来ているの?」
「凄い噂になっているのよ!
マリーナがレイモンド様と仲睦まじくデートをしていたって噂が先に流れて、でも弟さんとマリーナは同じ歳だから、弟さんのお相手候補に上がっているのかしら?くらいだったのよ。
そしたら!昨日は今度はアルフレッド様と観劇に行って、しかも凄い仲良さそうにずっとベッタリとしながら劇を見ていて、更にカフェでは凄いイチャイチャして、挙句の果てに公衆の面前でキスまでしていたっていうじゃない!
そりゃもう落ち着いて何て居られないでしょ?!」
「え?!イチャイチャ!?キス???」
「どういう事になっているの?!」
いきなり暴露された私は、言葉も出ずに、遠い目になってしまいました。
「えっとですねぇ…アルフレッド様とは出会ってから、何というか、妙に馬が合うというか…。
それでたまたま劇のチケットが手に入ったからとお誘いがありまして。
劇場でイチャイチャはしていないですよ…。
ボックス席で、ソファが微妙に狭かったので、私がアルフレッド様の膝の上に座っていたんです。
何せお子ちゃまですから…。
それを見ていた方々は勘違いなさったのかと。
だって考えてもみてください!私、10歳ですよ!
大姉さまだって兄さまが10歳の時に、例えば何かを見に行って、兄さまに見えないって言われたら、抱き上げて見せてあげていませんでしたか?
そういう事ですよ。
カフェの件は…ふざけて食べさせあいっこをしていたら、アルフレッド様が更にふざけて私の頬についたクリームを舐めただけです。」
本当は違うけど、そう言ってごまかした。
それでも仲がかなり良いとは思ってもらえるだろうから、ほどほどが良いのよ、こういうのは。
しかし!どうやらほどほどでは済まなかったらしい…。
我が家へというか、私への婚約の申し込み兼見合い話が舞い込んできた。
父さまと母さまに呼ばれ、父さまの書斎へ行った。
私がソファに座ると、開口一番、いきなり言われた。
「お前に婚約話と見合い話が来ている…。」
「え!?私にですか?!私、まだ10歳ですが?」
とか言いながらも、内心はアルフレッド様、仕事が早いなぁとか思っておりました。
「10歳と言えば、婚約者が決まり始める人も珍しくないので、別に早くはない。」
「それでお相手はどなたなのですか?」
これまた内心では、アルフレッド様だと思い込みながら聞きました。
「スチュアート家からだ…。」
「え?!何故?!
それにスチュアート家の…どなたから???」
「スチュアート家の令息としか分からん…。」
「“分からん!”じゃなくて父さま?」
「ご当主にも直接確認したが…スチュアート家へ嫁に来て欲しいという意向でな。
レイモンド殿でもアンドリュー殿でも良いらしい…何なら甥御殿たちも用意すると言われた…。
家格で言ったら我が家は簡単に断れる立場に無い。
何でこうなったんだ???」
「…分かりません…何ででしょう…。」
「とにかく…現状ではお前の嫁ぎ先はスチュアート家にほぼ決まりだ。
後は相手が誰になるかだけの問題だ。
日程を決めて、スチュアート家へ行って、相手を選んで来い。」
「でも…あの…。」
「何だ?何か都合が悪いのか?」
それまでずっと黙って父さまの隣に座っていた母が、ためらいながら口を開いた。
「あの…旦那様…この子、昨日、マスターソン公爵家のアルフレッド様とお出掛けしておりまして。
何でもかなり親密な様子をあちこちにばら撒いてきたようなのです…。」
「それで…あの…アルフレッド様とは…その…カフェで口づけも…。」
言いかけた瞬間、父が目を剥き、次の瞬間、私の身体が吹っ飛んだ。
「何ぃ!公衆の面前でそのような事を!」
いきなり平手打ちをされた…。
前世のどこぞのアニメキャラクターじゃないけど、心の中ではそのキャラの「ぶったなぁ!オヤジになってぶたれたことは無いのに!」というセリフが脳内を駆け巡った。
…いや、今、私を殴ったのは、その“オヤジ”だった…うん…。
「何を破廉恥な事をしておるのだ!!!」
「あなた!やめてくださいまし!女の子の顔をぶつなんて!!!」
母さまが珍しく私を庇ってくれたが…父さまは怒りが収まらないようで。
「マリーナは暫く部屋にて謹慎しておれ!マリーナを部屋から出すなよ!」
そう叫んでどこかへ出て行ってしまった。
私は母さまが呼んだ侍女たちに、部屋へ戻され、しかも外からカギを掛けられたようだ…。
この結果、少なくとも私の腫れあがった顔が元に戻るまでは、スチュアート家との見合いについては猶予が得られた。
まさかこの顔のまま、スチュアート家へ行ってこいとは父さまも言うまい。
しかしまさかの自宅に監禁で、アルフレッド様に連絡を取る事も出来ない…さてどうしたものか?
そんな事になっているとは知らないアルフレッドは、屋敷の居間にて、ブレックファストティーを飲みながら、ついに父親にマリーナとの婚約の希望を求めていた。
「父上、俺の婚約について、お願いがあるのですが…。」
「お前もようやく婚約者を見つけようという気になったか!
より取り見取りであちこちから申し入れが来ておるぞ?」
「えっと…父上、その中にフォーサイス伯爵家からのものは有ったりしますかね?」
「何を言って居る?あるわけないだろう?
我が家は公爵家だぞ?釣り合いの取れる家格というと、侯爵家以上、伯爵家でも辺境伯とか、それなりの家からしかそんなものは出せぬわ!
他国の王族からも来ておるぞ?
選び放題だな!」
「申し訳ございませんが、それらは全てお断りください…。
私が婚約を申し込みたいのは、フォーサイス伯爵家にございます。」
「は?!お前は何を言って居る?あんな田舎の弱小伯爵家では、我が家とは釣り合いが取れないだろう?
それにあの家にはお前と釣り合いの取れる年齢の娘は居なかったと思うが?」
「…10歳のマリーナ嬢と婚約を進めて頂きたく…。」
「…いやお前、政略結婚だったら、今、15歳のお前が10歳児との婚約もあるけど、これは政略結婚とは違うだろう?
それに相手が15歳でお前が20歳ならまだしも、相手は今、10歳の子供だぞ?
お前まさか幼女趣味ではあるまいな?!」
予想通りというか、ロリコンを疑われた…。
「父上…俺が10歳児に惹かれているのは否定しません、いや、出来ません。
ですが実は一度彼女を父上に会わせたいと思っているのです。
あの子は普通の10歳児とは違います。
かなり頭が良く、言動を見ていても、10歳児とは思えないのです。
あの子は他家に取られる前に、我が家へ取り込んだ方が、我が家の繁栄につながると思いますよ。」
「お前…既にその子と二人きりで出掛けたりなどしておるのか?」
「マリーナ嬢の姉の嫁ぎ先が、我が家の遠縁の家でして、その家で偶然出会ったのですが、その後、彼女にパートナーを頼んでスチュアート家の茶会へ出席しました。
その時は単に物珍しいからエスコートしただけでしたが、そこで一緒に過ごすに従いまして、彼女の頭の良さに気付きました。
それで彼女の家に訪問したり、先日は彼女を誘って観劇に出かけ、カフェで歓談してまいりました…。
その時に確信したのです!彼女は手に入れなければと!」
「それか!!!昨日、王宮でお前の噂が耳に入ってな…。
お前がどこかの幼女に夢中になって、カフェで破廉恥な真似までしていたと聞かされた。
その時は相手が誰かも分からず、私の耳に入れてきた者も、相手が誰なのかの探りを入れてきてだったのだが、私は何かの間違いだろうと思って取り合わなかった…。」
当主は難しい顔をして言った。
「いや待て、お前、今、スチュアート家の茶会と言ったか?」
「何か?!」
まさか既に敵が動き始めているとかと、危惧しながらアルフレッドは父親に聞いた。
「昨日の帰り際、スチュアート家の当主とマスターソン家の当主が何やら立ち話をしているところに通りかかってな。
その際に『レイモンドとアンドリュー、どちらでも良い。我が家へ嫁に入ってもらいたいのだ』と言っているのが聞こえてしまってな。
どこぞの令嬢の話かと気にしていなかったのだが…まさかと思うが、スチュアート家がその娘を狙っておるのか?」
「…それを危惧しておりましたが、恐らくは…。
という事は既に先を越されたという事ですか…。
それでフォーサイス伯は、何と答えていたか、分かりますか?」
「とにかく先ずは娘の意向を確認してみると言っておったようだが…。
しかしフォーサイス伯爵家は、田舎の弱小伯爵家、スチュアート家は侯爵家、申し込まれたら、断るのは難しいだろうな…。」
「すぐにこちらからも申し入れをすれば、公爵家と侯爵家では、我が家の方が有利になりませんか?」
「スチュアート家がアンドリュー殿を出してくるなら、我が家の方が有利だが、あちらがレイモンド殿の場合は、あちらは侯爵家嫡男となる…公爵家次男と侯爵家嫡男…微妙だな…。
その前に私はまだ認めてはおらぬぞ?」
「父上…分かりませんか?!スチュアート家が、嫡男でも次男でも望む方を出すから嫁にと申し出ているんですよ!
それだけの価値のある娘だという事ですよ!」
「そこは確かに気になるところではあるが…。」
「では父上!先ずは早急に何らかの断れないような理由を付けて、マリーナ嬢を我が家へ呼び出しましょう!
実際に会っていただければ、あの子の価値は分かっていただけると思います!」
こうして先ずは早急にマリーナをマスターソン家へ呼びだすことになった。
なったのだが、失敗に終わった…。
マリーナ嬢、急病との事で、面会謝絶という返事が来たのだ。
アルフレッドは、不審に思い、探りを入れた。
マリーナの下の姉の嫁ぎ先は、アルフレッドの母方の遠縁であるパルマ侯爵家である。
そのマリーナの義兄にあたるジャンニに接触を図り、聞き出したところ、何やら伯爵の不興を買って、謹慎させられているという。
救いは、スチュアート家との話も、病状が回復するまではと止まったままであるらしい。
しかし接触出来なければ、どうしようもなく。
アルフレッドは、ジャンニに事情を話し、仲介を頼めないか尋ねた。
「う~ん…アルフレッドの為には、何とかしてあげたいとは思うんだが、義父上の不興はあまり買いたくないし、何よりもうちの妻とマリーナ嬢は、あまり仲が良くないんだよ…。
どうしたものかなぁ…。」
あれこれ悩んだ末、マリーナ嬢の兄、ジャンニから見たら義弟になるわけだが、彼にジャンニがアルフレッドを連れて会いに行くことになった。
要件としては、前から彼が欲しがっていた、最近隣国が開発したガラスペンというものを手に入れたので、可愛い義弟にプレゼントしようという話にした。
ガラスペンは、ジャンニの友人…実はアルフレッドだが…の付き合いのある商会経由で入手したもので、種類があるので選んで欲しいので、商会と懇意の友人を連れて行くという話にしてもらった。
マリーナとアルフレッドの事をフォーサイス家に知られていた場合、アルフレッドへの対応がどのようになるか、分からないので、アルフレッドは変装して行くことになった。
母さまと兄さまがいるところで、いきなり聞かれました。
「マリーナ!アルフレッド様とはどういう関係なの?!
昨日、二人でデートをしていたって本当なの?!」
「シンシア…確かにマリーナはアルフレッド様と出掛けたけど、でもレイモンド様とも出掛けているし…なのに何でそんな慌てて来ているの?」
「凄い噂になっているのよ!
マリーナがレイモンド様と仲睦まじくデートをしていたって噂が先に流れて、でも弟さんとマリーナは同じ歳だから、弟さんのお相手候補に上がっているのかしら?くらいだったのよ。
そしたら!昨日は今度はアルフレッド様と観劇に行って、しかも凄い仲良さそうにずっとベッタリとしながら劇を見ていて、更にカフェでは凄いイチャイチャして、挙句の果てに公衆の面前でキスまでしていたっていうじゃない!
そりゃもう落ち着いて何て居られないでしょ?!」
「え?!イチャイチャ!?キス???」
「どういう事になっているの?!」
いきなり暴露された私は、言葉も出ずに、遠い目になってしまいました。
「えっとですねぇ…アルフレッド様とは出会ってから、何というか、妙に馬が合うというか…。
それでたまたま劇のチケットが手に入ったからとお誘いがありまして。
劇場でイチャイチャはしていないですよ…。
ボックス席で、ソファが微妙に狭かったので、私がアルフレッド様の膝の上に座っていたんです。
何せお子ちゃまですから…。
それを見ていた方々は勘違いなさったのかと。
だって考えてもみてください!私、10歳ですよ!
大姉さまだって兄さまが10歳の時に、例えば何かを見に行って、兄さまに見えないって言われたら、抱き上げて見せてあげていませんでしたか?
そういう事ですよ。
カフェの件は…ふざけて食べさせあいっこをしていたら、アルフレッド様が更にふざけて私の頬についたクリームを舐めただけです。」
本当は違うけど、そう言ってごまかした。
それでも仲がかなり良いとは思ってもらえるだろうから、ほどほどが良いのよ、こういうのは。
しかし!どうやらほどほどでは済まなかったらしい…。
我が家へというか、私への婚約の申し込み兼見合い話が舞い込んできた。
父さまと母さまに呼ばれ、父さまの書斎へ行った。
私がソファに座ると、開口一番、いきなり言われた。
「お前に婚約話と見合い話が来ている…。」
「え!?私にですか?!私、まだ10歳ですが?」
とか言いながらも、内心はアルフレッド様、仕事が早いなぁとか思っておりました。
「10歳と言えば、婚約者が決まり始める人も珍しくないので、別に早くはない。」
「それでお相手はどなたなのですか?」
これまた内心では、アルフレッド様だと思い込みながら聞きました。
「スチュアート家からだ…。」
「え?!何故?!
それにスチュアート家の…どなたから???」
「スチュアート家の令息としか分からん…。」
「“分からん!”じゃなくて父さま?」
「ご当主にも直接確認したが…スチュアート家へ嫁に来て欲しいという意向でな。
レイモンド殿でもアンドリュー殿でも良いらしい…何なら甥御殿たちも用意すると言われた…。
家格で言ったら我が家は簡単に断れる立場に無い。
何でこうなったんだ???」
「…分かりません…何ででしょう…。」
「とにかく…現状ではお前の嫁ぎ先はスチュアート家にほぼ決まりだ。
後は相手が誰になるかだけの問題だ。
日程を決めて、スチュアート家へ行って、相手を選んで来い。」
「でも…あの…。」
「何だ?何か都合が悪いのか?」
それまでずっと黙って父さまの隣に座っていた母が、ためらいながら口を開いた。
「あの…旦那様…この子、昨日、マスターソン公爵家のアルフレッド様とお出掛けしておりまして。
何でもかなり親密な様子をあちこちにばら撒いてきたようなのです…。」
「それで…あの…アルフレッド様とは…その…カフェで口づけも…。」
言いかけた瞬間、父が目を剥き、次の瞬間、私の身体が吹っ飛んだ。
「何ぃ!公衆の面前でそのような事を!」
いきなり平手打ちをされた…。
前世のどこぞのアニメキャラクターじゃないけど、心の中ではそのキャラの「ぶったなぁ!オヤジになってぶたれたことは無いのに!」というセリフが脳内を駆け巡った。
…いや、今、私を殴ったのは、その“オヤジ”だった…うん…。
「何を破廉恥な事をしておるのだ!!!」
「あなた!やめてくださいまし!女の子の顔をぶつなんて!!!」
母さまが珍しく私を庇ってくれたが…父さまは怒りが収まらないようで。
「マリーナは暫く部屋にて謹慎しておれ!マリーナを部屋から出すなよ!」
そう叫んでどこかへ出て行ってしまった。
私は母さまが呼んだ侍女たちに、部屋へ戻され、しかも外からカギを掛けられたようだ…。
この結果、少なくとも私の腫れあがった顔が元に戻るまでは、スチュアート家との見合いについては猶予が得られた。
まさかこの顔のまま、スチュアート家へ行ってこいとは父さまも言うまい。
しかしまさかの自宅に監禁で、アルフレッド様に連絡を取る事も出来ない…さてどうしたものか?
そんな事になっているとは知らないアルフレッドは、屋敷の居間にて、ブレックファストティーを飲みながら、ついに父親にマリーナとの婚約の希望を求めていた。
「父上、俺の婚約について、お願いがあるのですが…。」
「お前もようやく婚約者を見つけようという気になったか!
より取り見取りであちこちから申し入れが来ておるぞ?」
「えっと…父上、その中にフォーサイス伯爵家からのものは有ったりしますかね?」
「何を言って居る?あるわけないだろう?
我が家は公爵家だぞ?釣り合いの取れる家格というと、侯爵家以上、伯爵家でも辺境伯とか、それなりの家からしかそんなものは出せぬわ!
他国の王族からも来ておるぞ?
選び放題だな!」
「申し訳ございませんが、それらは全てお断りください…。
私が婚約を申し込みたいのは、フォーサイス伯爵家にございます。」
「は?!お前は何を言って居る?あんな田舎の弱小伯爵家では、我が家とは釣り合いが取れないだろう?
それにあの家にはお前と釣り合いの取れる年齢の娘は居なかったと思うが?」
「…10歳のマリーナ嬢と婚約を進めて頂きたく…。」
「…いやお前、政略結婚だったら、今、15歳のお前が10歳児との婚約もあるけど、これは政略結婚とは違うだろう?
それに相手が15歳でお前が20歳ならまだしも、相手は今、10歳の子供だぞ?
お前まさか幼女趣味ではあるまいな?!」
予想通りというか、ロリコンを疑われた…。
「父上…俺が10歳児に惹かれているのは否定しません、いや、出来ません。
ですが実は一度彼女を父上に会わせたいと思っているのです。
あの子は普通の10歳児とは違います。
かなり頭が良く、言動を見ていても、10歳児とは思えないのです。
あの子は他家に取られる前に、我が家へ取り込んだ方が、我が家の繁栄につながると思いますよ。」
「お前…既にその子と二人きりで出掛けたりなどしておるのか?」
「マリーナ嬢の姉の嫁ぎ先が、我が家の遠縁の家でして、その家で偶然出会ったのですが、その後、彼女にパートナーを頼んでスチュアート家の茶会へ出席しました。
その時は単に物珍しいからエスコートしただけでしたが、そこで一緒に過ごすに従いまして、彼女の頭の良さに気付きました。
それで彼女の家に訪問したり、先日は彼女を誘って観劇に出かけ、カフェで歓談してまいりました…。
その時に確信したのです!彼女は手に入れなければと!」
「それか!!!昨日、王宮でお前の噂が耳に入ってな…。
お前がどこかの幼女に夢中になって、カフェで破廉恥な真似までしていたと聞かされた。
その時は相手が誰かも分からず、私の耳に入れてきた者も、相手が誰なのかの探りを入れてきてだったのだが、私は何かの間違いだろうと思って取り合わなかった…。」
当主は難しい顔をして言った。
「いや待て、お前、今、スチュアート家の茶会と言ったか?」
「何か?!」
まさか既に敵が動き始めているとかと、危惧しながらアルフレッドは父親に聞いた。
「昨日の帰り際、スチュアート家の当主とマスターソン家の当主が何やら立ち話をしているところに通りかかってな。
その際に『レイモンドとアンドリュー、どちらでも良い。我が家へ嫁に入ってもらいたいのだ』と言っているのが聞こえてしまってな。
どこぞの令嬢の話かと気にしていなかったのだが…まさかと思うが、スチュアート家がその娘を狙っておるのか?」
「…それを危惧しておりましたが、恐らくは…。
という事は既に先を越されたという事ですか…。
それでフォーサイス伯は、何と答えていたか、分かりますか?」
「とにかく先ずは娘の意向を確認してみると言っておったようだが…。
しかしフォーサイス伯爵家は、田舎の弱小伯爵家、スチュアート家は侯爵家、申し込まれたら、断るのは難しいだろうな…。」
「すぐにこちらからも申し入れをすれば、公爵家と侯爵家では、我が家の方が有利になりませんか?」
「スチュアート家がアンドリュー殿を出してくるなら、我が家の方が有利だが、あちらがレイモンド殿の場合は、あちらは侯爵家嫡男となる…公爵家次男と侯爵家嫡男…微妙だな…。
その前に私はまだ認めてはおらぬぞ?」
「父上…分かりませんか?!スチュアート家が、嫡男でも次男でも望む方を出すから嫁にと申し出ているんですよ!
それだけの価値のある娘だという事ですよ!」
「そこは確かに気になるところではあるが…。」
「では父上!先ずは早急に何らかの断れないような理由を付けて、マリーナ嬢を我が家へ呼び出しましょう!
実際に会っていただければ、あの子の価値は分かっていただけると思います!」
こうして先ずは早急にマリーナをマスターソン家へ呼びだすことになった。
なったのだが、失敗に終わった…。
マリーナ嬢、急病との事で、面会謝絶という返事が来たのだ。
アルフレッドは、不審に思い、探りを入れた。
マリーナの下の姉の嫁ぎ先は、アルフレッドの母方の遠縁であるパルマ侯爵家である。
そのマリーナの義兄にあたるジャンニに接触を図り、聞き出したところ、何やら伯爵の不興を買って、謹慎させられているという。
救いは、スチュアート家との話も、病状が回復するまではと止まったままであるらしい。
しかし接触出来なければ、どうしようもなく。
アルフレッドは、ジャンニに事情を話し、仲介を頼めないか尋ねた。
「う~ん…アルフレッドの為には、何とかしてあげたいとは思うんだが、義父上の不興はあまり買いたくないし、何よりもうちの妻とマリーナ嬢は、あまり仲が良くないんだよ…。
どうしたものかなぁ…。」
あれこれ悩んだ末、マリーナ嬢の兄、ジャンニから見たら義弟になるわけだが、彼にジャンニがアルフレッドを連れて会いに行くことになった。
要件としては、前から彼が欲しがっていた、最近隣国が開発したガラスペンというものを手に入れたので、可愛い義弟にプレゼントしようという話にした。
ガラスペンは、ジャンニの友人…実はアルフレッドだが…の付き合いのある商会経由で入手したもので、種類があるので選んで欲しいので、商会と懇意の友人を連れて行くという話にしてもらった。
マリーナとアルフレッドの事をフォーサイス家に知られていた場合、アルフレッドへの対応がどのようになるか、分からないので、アルフレッドは変装して行くことになった。
837
お気に入りに追加
2,186
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
邪魔者は消えようと思たのですが……どういう訳か離してくれません
りまり
恋愛
私には婚約者がいるのですが、彼は私が嫌いのようでやたらと他の令嬢と一緒にいるところを目撃しています。
そんな時、あまりの婚約者殿の態度に両家の両親がそんなに嫌なら婚約解消しようと話が持ち上がってきた時、あれだけ私を無視していたのが嘘のような態度ですり寄ってくるんです。
本当に何を考えているのやら?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
龍王の番
ちゃこ
恋愛
遥か昔から人と龍は共生してきた。
龍種は神として人々の信仰を集め、龍は人間に対し加護を与え栄えてきた。
人間達の国はいくつかあれど、その全ての頂点にいるのは龍王が纏める龍王国。
そして龍とは神ではあるが、一つの種でもある為、龍特有の習性があった。
ーーーそれは番。
龍自身にも抗えぬ番を求める渇望に翻弄され身を滅ぼす龍種もいた程。それは大切な珠玉の玉。
龍に見染められれば一生を安泰に生活出来る為、人間にとっては最高の誉れであった。
しかし、龍にとってそれほど特別な存在である番もすぐに見つかるわけではなく、長寿である龍が時には狂ってしまうほど出会える確率は低かった。
同じ時、同じ時代に生まれ落ちる事がどれほど難しいか。如何に最強の種族である龍でも天に任せるしかなかったのである。
それでも番を求める龍種の嘆きは強く、出逢えたらその番を一時も離さず寵愛する為、人間達は我が娘をと龍に差し出すのだ。大陸全土から若い娘に願いを託し、番いであれと。
そして、中でも力の強い龍種に見染められれば一族の誉れであったので、人間の権力者たちは挙って差し出すのだ。
龍王もまた番は未だ見つかっていないーーーー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ひとりぼっち令嬢は正しく生きたい~婚約者様、その罪悪感は不要です~
参谷しのぶ
恋愛
十七歳の伯爵令嬢アイシアと、公爵令息で王女の護衛官でもある十九歳のランダルが婚約したのは三年前。月に一度のお茶会は婚約時に交わされた約束事だが、ランダルはエイドリアナ王女の護衛という仕事が忙しいらしく、ドタキャンや遅刻や途中退席は数知れず。先代国王の娘であるエイドリアナ王女は、現国王夫妻から虐げられているらしい。
二人が久しぶりにまともに顔を合わせたお茶会で、ランダルの口から出た言葉は「誰よりも大切なエイドリアナ王女の、十七歳のデビュタントのために君の宝石を貸してほしい」で──。
アイシアはじっとランダル様を見つめる。
「忘れていらっしゃるようなので申し上げますけれど」
「何だ?」
「私も、エイドリアナ王女殿下と同じ十七歳なんです」
「は?」
「ですから、私もデビュタントなんです。フォレット伯爵家のジュエリーセットをお貸しすることは構わないにしても、大舞踏会でランダル様がエスコートしてくださらないと私、ひとりぼっちなんですけど」
婚約者にデビュタントのエスコートをしてもらえないという辛すぎる現実。
傷ついたアイシアは『ランダルと婚約した理由』を思い出した。三年前に両親と弟がいっぺんに亡くなり唯一の相続人となった自分が、国中の『ろくでなし』からロックオンされたことを。領民のことを思えばランダルが一番マシだったことを。
「婚約者として正しく扱ってほしいなんて、欲張りになっていた自分が恥ずかしい!」
初心に返ったアイシアは、立派にひとりぼっちのデビュタントを乗り切ろうと心に誓う。それどころか、エイドリアナ王女のデビュタントを成功させるため、全力でランダルを支援し始めて──。
(あれ? ランダル様が罪悪感に駆られているように見えるのは、私の気のせいよね?)
★小説家になろう様にも投稿しました★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王妃はわたくしですよ
朝山みどり
恋愛
王太子のやらかしで、正妃を人質に出すことになった。正妃に選ばれたジュディは、迎えの馬車に乗って王城に行き、書類にサインした。それが結婚。
隣国からの迎えの馬車に乗って隣国に向かった。迎えに来た宰相は、ジュディに言った。
「王妃殿下、力をつけて仕返ししたらどうですか?我が帝国は寛大ですから機会をたくさんあげますよ」
『わたしを退屈から救ってくれ!楽しませてくれ』宰相の思惑通りに、ジュディは力をつけて行った。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【第二部連載中】あなたの愛なんて信じない
風見ゆうみ
恋愛
シトロフ伯爵家の次女として生まれた私は、三つ年上の姉とはとても仲が良かった。
「ごめんなさい。彼のこと、昔から好きだったの」
大きくなったお腹を撫でながら、私の夫との子供を身ごもったと聞かされるまでは――
魔物との戦いで負傷した夫が、お姉様と戦地を去った時、別チームの後方支援のリーダーだった私は戦地に残った。
命懸けで戦っている間、夫は姉に誘惑され不倫していた。
しかも子供までできていた。
「別れてほしいの」
「アイミー、聞いてくれ。俺はエイミーに嘘をつかれていたんだ。大好きな弟にも軽蔑されて、愛する妻にまで捨てられるなんて可哀想なのは俺だろう? 考え直してくれ」
「絶対に嫌よ。考え直すことなんてできるわけない。お願いです。別れてください。そして、お姉様と生まれてくる子供を大事にしてあげてよ!」
「嫌だ。俺は君を愛してるんだ! エイミーのお腹にいる子は俺の子じゃない! たとえ、俺の子であっても認めない!」
別れを切り出した私に、夫はふざけたことを言い放った。
どんなに愛していると言われても、私はあなたの愛なんて信じない。
※他サイト様でも公開しています。
※第二部を開始しています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる