魔王様を拾ったのは

恵葉

文字の大きさ
上 下
19 / 23

目覚めたベネディット

しおりを挟む
ずっと私が抱っこして運んできたベネ…目を覚ますのかな?
もうすぐ森を抜けられる、国境が見えてくるという時でした。
ベネが光り始めました。

「え?!何?!ベネ、死んじゃうの?ねえ目を覚ましてよ!ベネ!ベネ!ベーネ!」
ベネを抱いたまま揺さぶっていると、目を開けていられないくらいにベネが光った。
咄嗟にベネを強く抱きしめたまま、目を開けていられずに閉じました。
瞼を閉じても感じる光が弱くなってきたので、そっと開けると腕の中のベネが目を覚まし、こちらをじっと見つめていました。

「…。」
『…。』
「…ベネ!どうしたの?!!!」
驚愕する私に、ロンとファルコも目を見開いた。
『『なんじゃこりゃあぁぁあぁぁああ!!!!』』
黒ヒョウだったはずのベネが、雪ヒョウつまりは白いヒョウに姿を変えてしまいました。
「ロン…雪ヒョウって神の使いとも言われていなかったっけ???」
『だな…。』
「でもベネは魔王の子だったよね…。」
『だな…。』

「ベネ?分かる?私の事、分かる???」
『…。』
「ロン…ベネの様子が変だよ?」
『小僧…自分のこと、そして我らのことが分かるか?』
『…。』
ベネは首をコテンと傾け、目をパチクリした。
「ベネ?喋れなくなっちゃったの?」
『ウギャッ?』
「ロン!ベネが喋れなくなっちゃった!」
『お前…自分が誰かは分かっているのか?』
『ギャ!ウギャオ!ギャウギャウ!』
『…一応、自分が魔王の子でベネディットという事は分かっているようだ…。』
「じゃあ何が合って、今、どんな状況かは分かっているのかな?」
『ギャウギャギャン!ギャウギャウ…ギャアウ!ギャウギャウギャ!
ギャアアアアウギャウギャウアアァァアア!』
『一応、兄の一人の企みで、両親と兄たちが死闘を繰り広げて相打ちし、それを仕組んだのをベネの仕業として、ベネの事も殺そうと追手を差し向けていることまでは覚えているらしい。
でも何で我らが驚いて焦っているのかが分からないと。』
「ベネ…自分の足を見てみて?」

ベネは自分の前足を見た瞬間、首を傾げて前足を振ったり横に揺らしたり動かしてみた。
『ウギャアアアアアアア!ギャウギャウギャアアアア!』
『何で脚が白くなっているんだって叫んでいる…。』
「うん、それは何となく分かる…。」
本当は鏡とかで全身を見せたいけど、今、ここには何も無いので、仕方ないので口頭で伝えた。
「ベネ…全身、真っ白にヒョウ柄だけ黒い、ユキヒョウになっちゃっているんだよ…。
魔王の子供の筈が、何故かまるで神獣みたいになっちゃっているんだよ…。」

それを聞くと、ベネは固まったまま意識を失くしてしまいました。
あれだね!さっきまで天使だった人に「お前、今から悪魔な!」とか言ったり、悪魔だった人に「お前、今から聖者な!」とか言われたら、ショックすぎるのと一緒ね。
あ、でもあれだよ、元の世界で青春を謳歌?いや、友達と飲んだくれて頂けとも言えるけど、楽しんでいた私が、次の瞬間、この世界へ勝手に無理やり召喚されて、「お前、今から聖女ね!」って言われたはずなのに、突然今度は「お前は魔族だな!」って幽閉されて、魔王の森へ捨てられた私と一緒だね!

「ベネ…これからどうする?あなたきっと外見変わってもビレトに追われると思うけど…。
っていうか、ユキヒョウになっちゃったら、猶更あなたに罪を着せやすくなったと思うんだけど、より危なくなったと思うんだけど…私たちと一緒に隣国へ行かない?」
『ギャウゥゥゥ…。』
『行くって…。
まあ他に選択肢無くなっちゃったしね…。
しかし魔王の子が神獣…何だろね???』

私たちは、国境まで辿り着きました。
「ヒース…しつこいようだけど、再度確認させてもらうけど、貴方はこの先、どうする?
貴方はお兄様の存在もあるし、別にあなたが何か罪を犯したわけでもないし、今からでも帰れると思うよ。
でも国境を越えてしまったら…もう帰るのは簡単ではなくなると思うんだけど…。
しかも連れがこれよ?聖女のはずが魔族って言われた異世界人の私と、魔獣扱いされた神獣のロン、ロンに使えるファルコ、そして魔王の息子のベネよ?
この先、色々トラブルに巻き込まれる未来だらけな気がするんだけど?」
ヒースは黙ったまま考えているようだった。
「確かに俺は戻れるかもしれない…。でも…お前は?
今の時点では、お前は元の世界へ帰れないだろ?俺たちの国が無理やり召喚したから…。
だからお前が帰る方法が無いか探したいし、もうしばらくは一緒にいてやる…。」
「分かった…じゃあとりあえずは一緒に隣国へ行こう…。」

といっても国境を超えるのは、簡単ではない。
検問を通ればどうという事も無いのだが、それでは国に私たちの足取りが知られてしまう。
まあ追い出したのは国なので、別に良いと言えば良いのだが。
検問を超えずにとなると、目の前のこれは元の世界のエベレストですか?!ってくらいに険しい雪山がそびえ立っていていて、それを越えなければいけない。
どいうする?!私?!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。 嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。 イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。 娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

処理中です...