魔王様を拾ったのは

恵葉

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聖女診断の儀で現れたのは

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数日は、まだ聖女確定していないにも関わらず、連日のようにお勉強が待っておりました。
淑女教育から国の歴史、歴代聖女や王家について。
祈祷しろだの結界を張れだの言うのであれば、聖女の魔法についても学ばなくてはいけないのでは?と思ったのですが、それは聖女である事が確定してからなのだそうです。
聖女の魔法は神聖なもので、気軽に試してよいものではないのだとか。
…だったら私、聖女じゃなくて良いから、元の世界へ返して欲しい…。

ほぼ軟禁状態で、食べるものもそもそも元の世界の食事に比べて美味しくないというか、この世界の皆様って、料理のセンスに欠けるというか…。
食材は元の世界と似ているけど、何でこうなる?!的なものが少なくない。
せめて自分で自炊出来れば、少しは好みに合うものを食べられるかもしれないけれど。
でも実質軟禁状態なんですよね。
だから出来る事、やらせて貰える事は、非常に少ない。

「あぁ!もうやだぁ!帰りたい!」と叫ぶ日々、ようやく本当に聖女かどうか、調べて頂ける事になりました。
いつぞやの騎士さんがお迎えに参りまして、再び大神殿へ連れていかれました。
因みに軟禁されているのは、王宮の離宮です。
一般の人が立ち入れない場所なので、どうやら軟禁しやすいようで。
庭に出るとか、図書室へ行くとかは許されていますが、必ず侍女が2,3人付いてきます。
寝るときさえも、室内のどこかに居るんですよ…。
そりゃあ天蓋のカーテンを下ろしてくれるから、外から見えなくはなりますけどね、布一枚隔てただけで、見張りが居るって、息が詰まりますって。
あ、でも昔の日本の殿様って、そうだったんですよね?!確か。
いや、それどころか江戸時代とか、大奥のお姉さま方のお相手をする時も、御簾越しに立ち会うお姉さま方が居たのではありませんでしたっけ?
どんな性癖だって思いますよね。
それはともかく、最初に大神殿へ連れていかれた時のドレスを着せられ、再び騎士さんに連れられ、大神殿へ連行されました。
そんなのここでチャチャっとやってくれたら良いのに、わざわざ聖女診断の儀と銘打って、お偉いさんを集めてやるのだそうです。

流石に貴族の皆様が勢ぞろいはしていませんでしたが、国王陛下や大神殿の神官長ほか、特にお偉い方々はお揃いのようでした。

にこやかな神官長が、国王陛下の座る玉座の前、階段の下のテーブルの上に、何やら煙の充満した金魚鉢のようなものを置いて、待ち構えておりました。
「では聖女様、心を静かにして、こちらへ両手をかざしてください。
さすれば聖女様を示すものが現れます。」
「あの…普通はどのようなものが現れるのですか?」
「聖女様によって異なりますが、美しい金色の百合の花だったり、青い鳥だったり、輝く白銀の樹木だったり。
それはもう美しく神々しいものが現れます。
ノエル様の場合は何が現れるか、非常に楽しみでございますね。」
何かもう私が聖女で、素敵なものが現れるのが当然のように言っているけど。
これ、現れなかったら、どうなるのでしょう?
何て不敬な事を考えながら、心を落ち着かせました。
そして両手をかざし、瞳を閉じて、私の力が注ぎ込まれるようにイメージをしました。

パリン!

突然、何かが割れる音がして、目を開けると、金魚鉢…割れていました。
しかも目の前には、金魚鉢の中の煙に紛れて小さな白いにょろにょろしたものが…。
よく見れば、可愛い白龍でした。
それも私が日本人だからなのか、あの西洋のドラゴンではなく、東洋の龍…。

「ぎゃあぁあああ!」
「何だ!これは!」
「魔物だ!誰か何とかしろ!」

それはもう大騒ぎで右往左往。

「あなた…龍ですよね?魔物とか失礼な事を言われていますよ?」
「失礼しちゃうね…むしろ神様なのに…。」
「あなた、身を隠さないと退治されちゃいますよ…魔物とか言われちゃっているから。」
「はぁ…これだから人間は…一旦、俺は姿を消すね。」

そういって一瞬にして消えた白い竜…。
呆然と立っていると、何故か私に剣が突き付けられました。

「お前!さては魔族だな!この国を滅ぼすつもりだな!」

騎士の皆様が、大勢で私に刃を向けております。

「ちょっと待ってください!この国を滅ぼすつもりも何も、私はあなたたちに無理やりこの国へ連れてこられたのですが?
更に言うなら、元の国へ帰りたいって申し上げたじゃないですか!
私は一言もこの国へ来たいなんて、申しておりませんが?!」
「何を言う!お前は何様のつもりだ!」
「いやいや!だから私は元の国へ帰してもらえればそれで良いのに!何で私が悪いってなるんですか!
悪いのはそもそも勝手にそちらの都合で私をこの国へ呼び寄せた、あなた達でしょ!」
「何て不敬な!陛下に魔物を襲わせようとした不敬な奴だ!ひっとらえろ!」

そして私は聖女として診断されるどころか、寧ろ魔族として捕らえられてしまったのでした…。

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