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第3章 緑の色
第145話 先行く色
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月が綺麗な夜。
フードを被った二人組が何かから追われるように街を駆けてゆく。
しかし、街の酔っ払いから見たらそれは一瞬だ通り過ぎた、そよ風程度にしか思えないだろう。
そこには何も映っていないからである。
そこには何もないからである。
空だったその色に、よく似合う姿だと思った。
「確かこっちですよね」
「そうだ」
進んでいるのは街の中央、徐々に背の高い建物が多くなってゆくなかで、なかなかその姿を現さない。
探しているのは木だ。
魔力測定を行うための木、それを探している。
「そもそも何で木が魔力測定を行えるんですかね....」
「聖典にもあるが、この世界に色を与えた巫女の一人が流した涙から生えたのがその木なんだと書いてあるが」
「メルヘンな話ですね」
なんだか日本にもありそうな話と言われればありそうな話だ。確かに日本でも色々とその類の神話の内容はメルヘンを通り越して若干奇妙な物語になっている。まだこう言った話の方が可愛げがある。
中心に向かうにつれて火を灯した街灯が増えてくる。若干の不安を抱えながら疾走をする。
「見えてきましたね」
「あぁ、あれだ」
徐々に見えてきた大きな木の姿に、若干懐かしさを感じる。そういえば、リーフェさんと一緒に森に入って魔力検査を行ったのは懐かしい記憶だ。
ともあれ、今回あの木に向かうのは魔力検査を行うためではない。
話は数時間前に遡る。
『明日、ロザリーたちの通う学校で魔力検査が行われます。その時にロザリーが無色だとバレたまずい』
『だろうな、だがどうする気だ』
『極端ではありますが....あの魔力検査の木を破壊しようと思うんです』
『....もう一度言ってくれるか?』
そのあと数十分の説得が行われた。
まず、大前提として無色のロザリーをずっと『啓示を受けし者の会』から守ることはできないということがある。それは自分たちの今後というこよもあるが、かといって同じ状況にある彼女を見捨てるようなことはできない。
ならばどうするべきか。
それは、魔力検査を行わなければいい。
だが、学校行事を中止に追い込むような権力は自分たちにない上に、あまりにも時間が足りない。
そして思いついたのが、魔力検査を行う木を破壊すればいいということである。あれ自体は木だ、燃やせばどうとでもなる。
そうすれば、魔力検査を行うための木はなくなり、検査自体は中止。そして、このような木は国の中でも数本程度しか生えておらず、この街以外だとかなり遠くのところにあるそうだ。そうなると、検査を行うためには長距離を行かなくてはならない。しかし、貴族ならまだしも庶民であるロザリーが到底出せるような旅費ではない。結果、魔力検査をかなり大幅に遅らせることが可能になるわけだ。
問題は彼女がそれを認めるかどうかだ。
『ダメ....ですよね?』
『....いや、いい案ではある』
『....え? 認めてくれるんですか?』
意外だった。一瞬考えたような顔をしていたが、まさかこんな破壊行為を二度にわたってまで受け入れてくれるとは思わなかった。
『いいだろう。これで、あの子が私のような目に遭わなければ。たかだか木のひとつ燃やすくらい安いものだろう』
『では、決まりですね』
こうして決まった今回の破壊行為。
以前は次は城でも壊すのかと思っていたが、こんなにも早く次の目標が決まるとは思ってもいなかった。しかもそれが木とは。
魔力検査の木は建物のようなそれほど高くない壁に囲まれている。それもそうだ、街中に無防備に置いておけば、勝手にいろんな人が魔力検査を受けるようになるだろう。そうならないために、収入も兼ねてこのように観光名所の一部として取り扱っているのだろう。
「ショウ....」
壁のそばでレギナが待機しており、手のひらをこっちに見せてかがんでいる。それを見て軽く頷き、レギナの方に向かって走る。そして、手を踏み台に一気に壁を駆けあがり、壁の上の方へとたどり着く。先に上へと登った自分は宮殿でデモの抗議の板をくくりつけていた紐でつなげたロープを下へと垂らす。物によっては使いようだ。
それを使ってレギナがよじのぼり、上へとたどり着いた後、木の生えている中庭へと侵入する。
静かに地面へと着地するが、着地した地面は芝生で覆われていて若干濡れて月に照らされキラキラ光っていた。
「あれですね」
「そうだ」
目の前には、自分があの時初めてリーフェさんと一緒に魔力検査を受けた時と寸分違わない姿をした大きな木が目の前にあった。
「よし....」
今から、こいつを燃やす。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人々に色を与えた巫女は、地上を去り人々の姿を天から眺めていました。
しかし、人々は自分に与えられた色がわからず、間違った魔法の使い方をして多くの人を傷つけてしまいました。
そのことを知った一人の巫女は、悲しみに大粒の涙を天から落としました。
すると、その涙から七色に光るそれはそれは大きな立派な木が生えてきました。
そして、その木は人々を正しい色へと導き、正しい魔法の扱い方を教えるために各地へとその芽を伸ばしたそうな。
そして、人々はその木に『エゴ』と名前をつけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「く....っ」
「はぁ.....はぁ.....」
現在、大苦戦である。
まず燃やすためにはどうするかと考えた時、燃料が一番効率がいいと思った。しかし、燃料なんてないしどうしようかと考えた時、木に穴を開けてそこに落ち葉だのを詰めて燃やせば、中身から燃えて効率よく燃やすことが可能なのではと思った。
しかし、この木は異常だ。
斬ったところからまるでビデオの逆再生のように異常な修復力で穴がふさがってしまうのである。当初、刃こぼれするからという理由で落ち葉拾いを行っていたレギナだったが、その異常な事態に参加して木に穴をあける作業を行った。
でも結局穴は開くことなく、傷一つつかない綺麗な状態の木を前にして、今肩で息をしているところである。
「レギナさん....なんですかこれ....エイリアンの木かなんかなんですか....?」
「えいりあん? なんだそれは....」
肩で息をして、目の前の木を睨みつけるが、もし木が襲ってきたらどうしようなんて考えてしまう。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
なんとしてでもこいつをなんとか消さないと、ロザリーが危険な目にあう。
そんなことになる前に、自分たちができることを。生きていてほしいと願って死んだ彼女の父親のためにも、これから困難な道を歩く彼女の母親のためにも、
自分は今ここでしなくてはならないことがある。
「サリー、久しぶりの出番だぞ」
パレットソードの柄を回し、鞘にはまった赤い精霊石と接続する。
(なんだ、本当に久しぶりじゃねぇか? 寂しかったか?)
「別に、お前とは一生関わりたくないと思っていたさ」
「ならなんで呼んだんだ?」
いつの間にか目の前で胡座をかくサリー。彼の髪の毛は夜であるにもかかわらずよく映える赤色だった。まっすぐこちらを見ている二つの瞳は相変わらず燃えるようにギラギラとしていた。
「人を助けるためにあんたの力を使う。ダメか?」
「ダメか? 半契約とはいえ、あんたとは契約者と使われる側の関係だ。だったら言うことはわかるだろう、クソガキ」
そうだ、自分にはもう迷いはない。彼ら精霊を使うことに対する恐れも、使い方も。これは自分が正しいと思う道だからと、そう思えるからこそ力を振るうのだ。
それは、今だ。
「サラマンダー、俺に力を貸せ」
「了解」
パレットソードを引き抜く。剣を引き抜いた瞬間に溢れ出る炎、真っ赤に染まった視界を斬りはらい、炎の渦を断ち切る。
すらりと伸びた日本刀、その先に宿る炎は怒り。
なぜ、生まれた色の差で人生が決まらなくてはならないのか。
あんなにも一生懸命生きているのに、悲しみも痛みも共有できる一人の人間であるはずなのに、
ならば、こんな人の人生を決めつけるような木はなければいい。
腰を低く構え、右手に持った『炎下統一』を引きしぼる。
『炎下統一 弐の型 炎牙』
先端に炎が集まり渦を形成する。
そして、周囲に風を起こし溜め込んだ力を一気に前方へと叩き出す。
『今一色流 剣術 翡翠』
刀の先端は、渦巻いた炎と一緒に木の中にへと突き刺さり爆発を引き起こす。
はずだった。
「....嘘だろ」
先端に集まった炎はみるみる収束して行き、さらには体から何かが抜け出すような虚脱感が襲いかかる。
『....っ、このバケモン魔力を吸ってんのか。気張れっ、クソガキ』
「ッア....」
そのあまりの急激な体の変化に耐え切れず、その場に膝をついてしまう。全身から汗がにじみ出て、手の震えが止まらない。レギナが駆け寄り、必死になって剣と自分を離そうと背中を抱え引っ張るがビクともしない。
まるで『炎下統一』と自分の手がくっついたかのような感覚だ。
そんな中、ふと頭の上に何かが乗った。
消し飛びそうな意識の中、上を見上げるとそこには葉が一面真っ赤に染まった状態になり、ハラハラと葉っぱが散っているのである。
そうだ、これはあの時。リーフェさんと一緒に見た....
「ショウっ、しっかりしろっ」
「....っ」
消えかけそうだった意識が、レギナに脇腹を殴られたことによって一気に目が覚める。
そうだ、自分は何をしにここにきたのか忘れるところだった。
全ては無色の人間におとずれる未来を回避するためではないのか。
生まれてすぐにできる人生の差というものに対する怒りではなかったのか。
そんなのは間違っている、人は生まれながらにして平等ではないのかもしれない。だが、それを否定しながら生きるのが人生なんじゃないか。
自分の生きる意味を探すのが、人生なんじゃないのか。
それを、たかがこんな木に選ばれてたまるか。
たまるか....っ!
「はぁ....ぁああああっ」
体に力を込める。
負けじと、この力に耐えられるだけの力を全身に込める。立ち上がり、刀を持つ手に力をこめ、一気に押し込む。
その瞬間、大量の木の葉が風に舞いとぶ。未だに木から炎は出てこない、しかし差し込んだ木の割れ目から徐々に炎が噴き出してくる。
それは、赤い炎ではない。
ふと、後ろでレギナが囁いた。
「青い....炎....?」
フードを被った二人組が何かから追われるように街を駆けてゆく。
しかし、街の酔っ払いから見たらそれは一瞬だ通り過ぎた、そよ風程度にしか思えないだろう。
そこには何も映っていないからである。
そこには何もないからである。
空だったその色に、よく似合う姿だと思った。
「確かこっちですよね」
「そうだ」
進んでいるのは街の中央、徐々に背の高い建物が多くなってゆくなかで、なかなかその姿を現さない。
探しているのは木だ。
魔力測定を行うための木、それを探している。
「そもそも何で木が魔力測定を行えるんですかね....」
「聖典にもあるが、この世界に色を与えた巫女の一人が流した涙から生えたのがその木なんだと書いてあるが」
「メルヘンな話ですね」
なんだか日本にもありそうな話と言われればありそうな話だ。確かに日本でも色々とその類の神話の内容はメルヘンを通り越して若干奇妙な物語になっている。まだこう言った話の方が可愛げがある。
中心に向かうにつれて火を灯した街灯が増えてくる。若干の不安を抱えながら疾走をする。
「見えてきましたね」
「あぁ、あれだ」
徐々に見えてきた大きな木の姿に、若干懐かしさを感じる。そういえば、リーフェさんと一緒に森に入って魔力検査を行ったのは懐かしい記憶だ。
ともあれ、今回あの木に向かうのは魔力検査を行うためではない。
話は数時間前に遡る。
『明日、ロザリーたちの通う学校で魔力検査が行われます。その時にロザリーが無色だとバレたまずい』
『だろうな、だがどうする気だ』
『極端ではありますが....あの魔力検査の木を破壊しようと思うんです』
『....もう一度言ってくれるか?』
そのあと数十分の説得が行われた。
まず、大前提として無色のロザリーをずっと『啓示を受けし者の会』から守ることはできないということがある。それは自分たちの今後というこよもあるが、かといって同じ状況にある彼女を見捨てるようなことはできない。
ならばどうするべきか。
それは、魔力検査を行わなければいい。
だが、学校行事を中止に追い込むような権力は自分たちにない上に、あまりにも時間が足りない。
そして思いついたのが、魔力検査を行う木を破壊すればいいということである。あれ自体は木だ、燃やせばどうとでもなる。
そうすれば、魔力検査を行うための木はなくなり、検査自体は中止。そして、このような木は国の中でも数本程度しか生えておらず、この街以外だとかなり遠くのところにあるそうだ。そうなると、検査を行うためには長距離を行かなくてはならない。しかし、貴族ならまだしも庶民であるロザリーが到底出せるような旅費ではない。結果、魔力検査をかなり大幅に遅らせることが可能になるわけだ。
問題は彼女がそれを認めるかどうかだ。
『ダメ....ですよね?』
『....いや、いい案ではある』
『....え? 認めてくれるんですか?』
意外だった。一瞬考えたような顔をしていたが、まさかこんな破壊行為を二度にわたってまで受け入れてくれるとは思わなかった。
『いいだろう。これで、あの子が私のような目に遭わなければ。たかだか木のひとつ燃やすくらい安いものだろう』
『では、決まりですね』
こうして決まった今回の破壊行為。
以前は次は城でも壊すのかと思っていたが、こんなにも早く次の目標が決まるとは思ってもいなかった。しかもそれが木とは。
魔力検査の木は建物のようなそれほど高くない壁に囲まれている。それもそうだ、街中に無防備に置いておけば、勝手にいろんな人が魔力検査を受けるようになるだろう。そうならないために、収入も兼ねてこのように観光名所の一部として取り扱っているのだろう。
「ショウ....」
壁のそばでレギナが待機しており、手のひらをこっちに見せてかがんでいる。それを見て軽く頷き、レギナの方に向かって走る。そして、手を踏み台に一気に壁を駆けあがり、壁の上の方へとたどり着く。先に上へと登った自分は宮殿でデモの抗議の板をくくりつけていた紐でつなげたロープを下へと垂らす。物によっては使いようだ。
それを使ってレギナがよじのぼり、上へとたどり着いた後、木の生えている中庭へと侵入する。
静かに地面へと着地するが、着地した地面は芝生で覆われていて若干濡れて月に照らされキラキラ光っていた。
「あれですね」
「そうだ」
目の前には、自分があの時初めてリーフェさんと一緒に魔力検査を受けた時と寸分違わない姿をした大きな木が目の前にあった。
「よし....」
今から、こいつを燃やす。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人々に色を与えた巫女は、地上を去り人々の姿を天から眺めていました。
しかし、人々は自分に与えられた色がわからず、間違った魔法の使い方をして多くの人を傷つけてしまいました。
そのことを知った一人の巫女は、悲しみに大粒の涙を天から落としました。
すると、その涙から七色に光るそれはそれは大きな立派な木が生えてきました。
そして、その木は人々を正しい色へと導き、正しい魔法の扱い方を教えるために各地へとその芽を伸ばしたそうな。
そして、人々はその木に『エゴ』と名前をつけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「く....っ」
「はぁ.....はぁ.....」
現在、大苦戦である。
まず燃やすためにはどうするかと考えた時、燃料が一番効率がいいと思った。しかし、燃料なんてないしどうしようかと考えた時、木に穴を開けてそこに落ち葉だのを詰めて燃やせば、中身から燃えて効率よく燃やすことが可能なのではと思った。
しかし、この木は異常だ。
斬ったところからまるでビデオの逆再生のように異常な修復力で穴がふさがってしまうのである。当初、刃こぼれするからという理由で落ち葉拾いを行っていたレギナだったが、その異常な事態に参加して木に穴をあける作業を行った。
でも結局穴は開くことなく、傷一つつかない綺麗な状態の木を前にして、今肩で息をしているところである。
「レギナさん....なんですかこれ....エイリアンの木かなんかなんですか....?」
「えいりあん? なんだそれは....」
肩で息をして、目の前の木を睨みつけるが、もし木が襲ってきたらどうしようなんて考えてしまう。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
なんとしてでもこいつをなんとか消さないと、ロザリーが危険な目にあう。
そんなことになる前に、自分たちができることを。生きていてほしいと願って死んだ彼女の父親のためにも、これから困難な道を歩く彼女の母親のためにも、
自分は今ここでしなくてはならないことがある。
「サリー、久しぶりの出番だぞ」
パレットソードの柄を回し、鞘にはまった赤い精霊石と接続する。
(なんだ、本当に久しぶりじゃねぇか? 寂しかったか?)
「別に、お前とは一生関わりたくないと思っていたさ」
「ならなんで呼んだんだ?」
いつの間にか目の前で胡座をかくサリー。彼の髪の毛は夜であるにもかかわらずよく映える赤色だった。まっすぐこちらを見ている二つの瞳は相変わらず燃えるようにギラギラとしていた。
「人を助けるためにあんたの力を使う。ダメか?」
「ダメか? 半契約とはいえ、あんたとは契約者と使われる側の関係だ。だったら言うことはわかるだろう、クソガキ」
そうだ、自分にはもう迷いはない。彼ら精霊を使うことに対する恐れも、使い方も。これは自分が正しいと思う道だからと、そう思えるからこそ力を振るうのだ。
それは、今だ。
「サラマンダー、俺に力を貸せ」
「了解」
パレットソードを引き抜く。剣を引き抜いた瞬間に溢れ出る炎、真っ赤に染まった視界を斬りはらい、炎の渦を断ち切る。
すらりと伸びた日本刀、その先に宿る炎は怒り。
なぜ、生まれた色の差で人生が決まらなくてはならないのか。
あんなにも一生懸命生きているのに、悲しみも痛みも共有できる一人の人間であるはずなのに、
ならば、こんな人の人生を決めつけるような木はなければいい。
腰を低く構え、右手に持った『炎下統一』を引きしぼる。
『炎下統一 弐の型 炎牙』
先端に炎が集まり渦を形成する。
そして、周囲に風を起こし溜め込んだ力を一気に前方へと叩き出す。
『今一色流 剣術 翡翠』
刀の先端は、渦巻いた炎と一緒に木の中にへと突き刺さり爆発を引き起こす。
はずだった。
「....嘘だろ」
先端に集まった炎はみるみる収束して行き、さらには体から何かが抜け出すような虚脱感が襲いかかる。
『....っ、このバケモン魔力を吸ってんのか。気張れっ、クソガキ』
「ッア....」
そのあまりの急激な体の変化に耐え切れず、その場に膝をついてしまう。全身から汗がにじみ出て、手の震えが止まらない。レギナが駆け寄り、必死になって剣と自分を離そうと背中を抱え引っ張るがビクともしない。
まるで『炎下統一』と自分の手がくっついたかのような感覚だ。
そんな中、ふと頭の上に何かが乗った。
消し飛びそうな意識の中、上を見上げるとそこには葉が一面真っ赤に染まった状態になり、ハラハラと葉っぱが散っているのである。
そうだ、これはあの時。リーフェさんと一緒に見た....
「ショウっ、しっかりしろっ」
「....っ」
消えかけそうだった意識が、レギナに脇腹を殴られたことによって一気に目が覚める。
そうだ、自分は何をしにここにきたのか忘れるところだった。
全ては無色の人間におとずれる未来を回避するためではないのか。
生まれてすぐにできる人生の差というものに対する怒りではなかったのか。
そんなのは間違っている、人は生まれながらにして平等ではないのかもしれない。だが、それを否定しながら生きるのが人生なんじゃないか。
自分の生きる意味を探すのが、人生なんじゃないのか。
それを、たかがこんな木に選ばれてたまるか。
たまるか....っ!
「はぁ....ぁああああっ」
体に力を込める。
負けじと、この力に耐えられるだけの力を全身に込める。立ち上がり、刀を持つ手に力をこめ、一気に押し込む。
その瞬間、大量の木の葉が風に舞いとぶ。未だに木から炎は出てこない、しかし差し込んだ木の割れ目から徐々に炎が噴き出してくる。
それは、赤い炎ではない。
ふと、後ろでレギナが囁いた。
「青い....炎....?」
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