異世界探求者の色探し

西木 草成

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第3章 緑の色

第115話 女子会の色

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 さて、ここから先は音声のみになります。女子の生々しい会話の一部始終をどうぞお楽しみにください。ちなみに、描写とかは一切書かないため、話す順番はカルディア、レギナとなります。

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カ「それで、ショウさんとはどうなんですか?」

レ「別にどうもない、それにだ。話を聞くとは言ったが、質問に答えるとは言ってない」

カ「まぁまぁ、そんな堅いこと言わないでくださいよぉ~。お茶もありますから」

レ「ハァ....別に、どうも思ってない。あいつは犯罪者で、私は誘拐された身だ」

カ「ま、まさか。自分は彼の虜とか、そういう?」

レ「違う。言葉のまんまだ」

カ「え....? ということは、ショウさんは犯罪者なんですか?」

レ「そういうことになるな」

カ「でも、そんな人に見えませんでしたよ? 何をしたんですか?」

レ「さぁな、まぁ。街を一つ燃やし尽くした、ということで処刑になるはずだったんだ」

カ「えっ!? 処刑っ!?」

レ「そうだ、そこであいつは逃げ出して。私を誘拐したんだ」

カ「それってどこから....?」

レ「アエストゥスからだ。ここには密入国だ」

カ「....なんか、思った以上に壮絶ですね....」

レ「勝手に壮絶にしているのはあの男だ。どうして自分でもここまで付いてきているのかわからん」

カ「まぁ....お菓子、食べますか?」

レ「あぁ、いただこう。それで、そっちは? 何を話してくれる?」

カ「いや....なんか、そんな話を聞いた後に私の話だなんて....」

レ「そうか、なら私はこれで....」

カ「話しますからぁっ! 立たないで、出て行こうとしないでぇ~」

レ「わかったから、服を引っ張るな。それで、何を話すんだ?」

カ「ウゥ....なんか私が思っている恋バナと違う....。いや、エルフって寿命が長いじゃないですか?」

レ「そうだな」

カ「しかも、妊娠する確率が低いから同じ世代の人っていないんですよ」

レ「なるほどな」

カ「ですから、必然として歳の差でカップルとか、結婚とかするわけですよ」

レ「まぁ、そうなるだろうな」

カ「となると年上か、年下かになるんですよね。歳の差最低50歳以上」

レ「それで?」

カ「レギナさんだったら、年上、年下。どっちがいいですか?」

レ「....あまり考えたことがないな....。自分の周りには男が多かったが....そんな目で見た記憶もないし、自分が女として当たり前の人生を送るとか考えたことがないしな....」

カ「私のお父さんとお母さんは500歳差ですからね、もう1000年以上生きているというだけでもびっくりなのに」

レ「元気でなによりじゃないか」

カ「もう人間で言えば90歳超えているというのに、もう元気で。私がこんなところに住んでるのも、夜がうるさかったからですからね」

レ「....元気なのはいいことだ」

カ「私だって、結婚してもいい歳なのに。いい人いないんですよねぇ....あっ、お茶淹れなおしますね」

レ「あ、あぁ。頼む」

カ「治癒師なんかも、エルフで基本的に緑色の魔術しか持たない種族ですから、猛反対されたんですけど、おかげでこの村で一番の治癒師なんですよ」

レ「いいことじゃないか。誰にでもできることではない」

カ「一人や二人くらい、言い寄ってくれる人がいてくれてもいいと思うんですよ」

レ「....私は恋愛なんかは得意ではないが」

カ「はい」

レ「戦術においては攻められる前に攻めろ、というのがある。攻められるのを待つよりかは、攻めていった方がいいじゃないか?」

カ「....そうですよねぇ、でも自信とかないですし」

レ「自信がないのなら磨くことだ。体格差は埋められずとも、技術でカバーをする。世界は全く別だが、一つの意見として提示しておこう」

カ「そうね....ありがとう。やっぱりレギナさん、恋バナできるじゃん」

レ「となると、私は戦術会議でいつも恋バナをしているということだな」

カ「....ぷっ! なにそれ」

レ「全く、まさか戦術と恋愛がこんなにも似通っているとは思わなかったな。まぁ、女としての幸せなんて捨てたものと思っていたし」

カ「レギナさん、確か王都騎士団の人だったんでしょ? ねぇねぇ、どう? かっこいい人とかいた?」

レ「....いや、そんな目で部下を見たことがなかったしな。だが、街の遠征先で毎回女に囲まれていた男はいたぞ」

カ「へぇ~、人?」

レ「あぁ、人間だ。アランというやつでな、弓兵の分隊長をしている。確かに、あの金髪に、王都の人間特有の気品のある佇まいがあれば、それなりにモテていただろう」

カ「ふぅん、レギナさんはその人のことどう思ってたの?」

レ「いや、常に弓兵で中心になる奴だったから、特に信頼はしていたが、それ以上は特に何も」

カ「でもレギナさんもモテたんじゃない? 王都騎士団の人たちって男の人ばっかでしょ? そんな中で女の人がいたんだから、それにレギナさんって綺麗だし」

レ「騎士団の中では女というのをあまり言いふらさなかったからな、今でも男と思っている奴だっているだろうさ」

カ「それで? 告白とかされた?」

レ「たまに私を女だと気づいて、言い寄ってくる男はいたな」

カ「ほぉ~、それで~」

レ「『付き合ってくれ』というから、全員に対して首を縦に振ったさ」

カ「えっ!? まさか言い寄った男全員相手にしたのっ!?」

レ「あぁ、『剣術訓練』に全員『付き合って』やったさ。足腰が立たなくなるくらいみっちりとな」

カ「あぁ....なんとなく想像ついた....」

レ「とまぁ、浮いた話なんかは一つもなかったな。そのおかげで近寄ってくる男は減ったし」

カ「でもレギナさん、ショウさんと一緒にいてどのくらい経つんですか?」

レ「さぁ....少なからず、2ヶ月は経ってるんじゃないか?」

カ「その道中何もなかったんですか?」

レ「いや、何も」

カ「....本当ですか?」

レ「何かあった、というのが男と女の関係ならば、答えは『NO』だな。道中、確かにいろんなことがあったが、それでもそんな親密な関係になった覚えはない」

カ「例えば....お風呂とかどうしているんですか?」

レ「風呂? そんなのなかなか入る機会がないからな。体を拭いたりしているだけで、もし入浴の機会があったら面倒くさいから一緒にも入るな」

カ「十分何か起きてるじゃないっ!」

レ「そうか? あの男は何も手を出してこないぞ。まぁ、出してきた時点で八つ裂きにしてやるがな」

カ「よく2ヶ月も一緒に旅できましたね....」

レ「本当....自分でも不思議だ。なぁ、カルディア。どうしてだと思う、自分にもよく分からない。どうして私があの男と一緒に旅ができる、その理由が」

カ「レギナさん....自分はどう思っているんです?」

レ「わかったら苦労しない....だが、なんとも離れがたい、魅力? いや、渇望というのか、これは」

カ「....」

レ「あの男の行く末が見てみたい」

カ「....どうして?」

レ「それは....なんというか、心配というのだろうか、なんだろうか。知りたいんだ、何故私は彼に誘拐されなくてはいけなかったのか、あの男は一体私に何を見せたいのか。それが知りたい」

カ「レギナさん、私からの意見を言わせてもらうね」

レ「あぁ」

カ「それはね。愛よ」

レ「愛?」

カ「そう、決して恋には至れないけどね。それは、そばにいてあげたい。というなんていうんだろうね、一種の愛着かな?」

レ「愛....いや、あの男にそんな感情があるわけではない。ましてや、あの男は私を誘拐した人間だぞ、自分の罪を償わずに」

カ「レギナさん、本当は気づいているんでしょ? ショウさんがそんなことをする人間じゃないって」

レ「それは....」

カ「レギナさん、私180年以上生きてるから、人の感情のそれとかはもうわかるようになってきているわ。少なからず、あなたはもう、彼のことを疑っていないのはわかる」

レ「....」

カ「それに、レギナさんの負った傷を見てわかったことっていっぱいあるのよ。誰かをかばおうとして負った傷、そして何かを守ろうとして必死になって戦った傷。全部、誰かのために負った傷っていうのはよくわかった」

レ「....」

カ「もうわかるでしょ」

レ「....今日は、話せてよかった。ありがとう」

カ「エェ、よかった。出口まで送るよ」

レ「ありがとう」

 そう、わかっていたんだ。

 彼には、幸せになって欲しいのだということを。
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