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第3章 緑の色
第109話 意地の色
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「さて、レギナ=スペルビアさん。お仲間は、どこにいらっしゃいますか?」
「....『啓示を受けし者の会』、エルフもいるのか」
狭い小屋の中で、十数人の兵士が固まり、小屋の入り口に立つ監獄長と『啓示を受けし者の会』を名乗る一人の男。その男の姿を再確認すると、後ろでまとめた長い翡翠色の髪の間から覗く長い耳がエルフであるということを証明している。王都もエルフと戦争をしているようなものなのに、よくエルフを内政に参加させていると思った。
「えぇ、信仰に種族は関係ありませんから。さぁ、答えてください。お仲間はどこにいますか?」
「仲間などはいない、私を捕らえたいのなら好きにすればいい。だが、処刑はよせ。重要な参考人だ、私としても是非彼女の証言を聞きたい」
「すでに貴方には、その権限は存在しないと自覚していらっしゃいますか?」
涼しい顔でそう切り返される。
自然と左手が腰の剣へと向かう。
互いが睨みあう。
兵士は押し黙っている。
「私と来てください。最初は貴方を探すことが目的で故郷を訪れたのですが、その手間が省けたのも、すべては聖典の思し召しでしょう。貴方は、私と共に王都へと向かうべきなのです」
「断る。私を捕らえようとして街を一つ焼き払うような輩を信用する神経を持ち合わせていない」
そう、この『啓示を受けし者の会』の一人。確か『赤の収集師』を名乗っていたが、その男は私という人間を捕らえようとして一般市民を危険にさらした挙句、街を一つ焼き払ったのだ。そんな輩の言うことを信用する方がどうかしている。
しかし
そう言い放った途端、小屋のなかの空気が変わる。
全身が徐々に締め付けられてゆく感覚、これは殺気にも似た、いやこれは精神的感覚以外にも、この肌に張り付く衣服の感覚の、外気の重さは明らかに物理的なもの。
「貴様....聖典の信者である私を愚弄するかっ! 無色の分際でっ!」
「....っ」
次の瞬間、その男を中心に発せられた緑色のオーラが爆発的に広がり、そこを中心に突風が吹き荒れる。狭い小屋の中で、急激な風が巻き起こるが、中にいる兵士は誰一人として、この目の前で発せられている殺気のせいで動くことができない。
「許せない、許せない許せないっ! 監獄兵っ! 今すぐこの女を捕らえろっ! 手足を引きちぎってでもだっ! おいっ! さっさと火を打ち込めっ!」
「は、はいっ!」
突如、口調も、そしてその表情も醜く歪んだ男。だが、彼の怒号、もしくは悲鳴にも似た命令により、兵士たちは意識をこちらへと集中させる。
ここまでか。
剣を引き抜き、目の前の兵士と正面に向かい合う。
開戦。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「三方向来るわっ!」
「チィ....っ!」
背中に背負った彼女を左腕で抱え、その左手で握られた鞘にパレットソードを収める。
『今一色流 抜刀術 円月斬<地>』
体勢を低くし、近づいてきたオークの膝に抜刀術を叩き込む。振り抜いた剣をそのまま、ふるって脳天を叩き確実に命を刈り取ってゆく。
しかし、
「避けてっ!」
「やべ....っ!」
すかさず、その場を飛び足元に飛んできた斧をスレスレでかわす。斧は明後日の方向へと飛んで行き、奥の方でゴブリンをなぎ倒して、壁に刺さって停止した。
「ねぇっ! その女捨てて早く逃げましょっ! こんなに相手がいたら死ぬわよっ!」
「それが出来たら苦労してませんって....っ」
ウィーネが髪の毛を引っ張って必死に講義をしているが、確かに彼女を捨ててこの場を去ればどうということはない。だが、一度助けようとした命だ。
簡単に捨てろと言われて捨てられるものではない。
そう思いながら向き直っているのは、先ほど斧をぶん投げたミノタウロス。背中に刺してあるもう一本の斧を手に取り臨戦態勢だ。そしてその背後にも二匹、赤い目を爛々と輝かせてこっちを覗いている。
「ウィーネさん、もうあれは使えないんですか?」
「無理に決まってるじゃないっ! 精霊石が近くにあるならまだしも、具現化させてるだけで限界っ!」
だとしたら無理だ。彼女を庇いながらの戦闘は何かと気が散る。レーダー代わりになっている彼女が具現化していなければ、今頃自分は死んでいる。
「....サリーを呼ぶしかないわ....」
「....却下です」
ウィーネがそうつぶやくが、その考えを却下する。理由は二つ、一つは油で覆われている地面で火を扱う魔術を行使するなんて、自殺行為甚だしい。そしてもう一つ。単純にあいつの能力を使いたくない。
自分は、あの男の能力を使ってはいけない。
「あんた死ぬ気なのっ!? 火のことで気になってるのなら多少は融通きくわよっ! 油への引火も最小限に抑えられるわっ!」
「ダメです。だとしても、僕はあいつの力を使いたくありません」
そんな言い合いを繰り返しているうちに、ミノタウルスの一人が動く。横一閃、それをギリギリに躱し、洞窟の柱に隠れるも今度は二匹のミノタウルスが両側から斧を振るい柱を破壊する。
もう無茶苦茶だ。
降りかかる柱の残骸を払いのけながら出口へと急ぐ。もしこのまま逃げることができるのならば、逃げたい。
しかし。
出口へと向かおうとした刹那、頭上を大きな影がまたぐ。
次の瞬間、目の前に落ちてきた何かが地下を揺らした。
「ニガサナイ」
「くそが.....っ」
目の前にそびえ立つ、斧を二本持ったミノタウルス。完全に出口をふさがれ逃げる手段を失う。そして、背後にはミノタウルス二匹の他に愉快な魔物たち。
「ねぇ....一か八か本当にサラマンダーを使わない?」
「....」
一瞬であるが、頭の中で本気でサリーを使うかどうかを悩んでしまった。もう一つの選択肢、後ろで背負っている彼女を起こすということも考えたが、戦力としては期待しないほうがいいだろう。少なからず、自分の力で歩いてもらえるだけでもだいぶ違うのだが、この過激な戦闘状況において未だに気絶していることを考えると簡単に目を覚ましそうにない。
「ねぇっ!」
「....くっ」
パレットソードを鞘に戻し、持ち手を左に回す。次の瞬間、鞘にはまったルビーの精霊石が赤く光り始める。
「死にたくなかったら迷っちゃダメよっ! プライドなんて捨てなさいっ!」
「ハァアアアアアアッッッッ!」
パレットソードを引き抜こうとした。その瞬間だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「早....っ」
「遅い」
素早く剣を振るい、兵士の腕を切りつけ剣を持てないようにしてゆく。
「貴様らっ! 相手は一人だぞっ、何をやっているっ!」
監獄長が叫び兵士に喝を入れているが、そんな程度で士気が上がるわけでもなく、次々と捕らえようと構えた兵士が地面へと転がる結果を生むことになる。外からも自分を捕まえようとして、兵士が集まる。しかし、戦況は狭い小屋で大量の兵士が集まり一方的に壊滅させられるという結果に終わった。
「私を捕らえたいというなら千を超える兵を連れてこい」
剣の先を監獄長に突きつけ宣言をする。だが、問題はその隣に立っているエルフの男だ。前回の赤色の魔術師同様、同じく厄介な魔術を使ってくることだろう。そして、未だに歪んだ表情を浮かべているこの男。基本エルフは美形が多いが、あそこまで歪んだ表情を浮かべることができることに関心すら覚える。
「ハァ....使えないものばかりだ....」
だが、歪んだその表情を若干下に向ける。そしてその顔を上げた瞬間、最初の頃に見せた涼しい表情へと戻ったのである。
そして、次の瞬間。
最近、切っておらず、伸びかけていた髪がかすかに揺れる。
そして、それが合図になったかのようにして、狭い小屋の壁に鋭い亀裂が走り一気に倒壊を始める。
「!?」
突如内側に向けて崩れ落ちてきた壁から身を守るようにして、剣の腹を盾代わりにして身を守る。
しばらく、
小屋の壁が倒壊を終え土埃が晴れると、瓦礫の下には先ほど倒した兵士たちが埋まっており、明らかに生きているようには感じることはできない。
「貴様....一体何をっ!」
「ハァ....悲しいですね....貴方が投降しないから、余計な人を殺すことになってしまった。実に悲しい」
「っ!」
悲しそうな表情でこちらを向いて訴えかけてくる。だが、その目は悲しそうな顔などしていない。むしろ、このあと自分がどう出るかを伺っているような、邪悪な気配を感じる。
「そんなことを言って、私が投稿すると思っているのか。この人殺し」
「それは貴方にも言えるでしょう。多くを救うために、いったいどれだけの少数を見捨てたのですか? 貴方は」
「私は間違っていない」
盾代わりに使っていた剣を下ろし、近くの瓦礫に叩きつける。次の瞬間、縦に二つに割れた剣を両手に構え臨戦態勢に入る。
「少なからず。他人の命を利用するような下衆の貴様に言われたくない」
「貴様....無色の分際で私を下衆呼ばわりするか、この尼が....っ」
再び表情が歪み、殺気が膨らむ。
この男の魔術。さっきの攻撃は、明らかに魔術の発動によるもの。しかし、詠唱もなければ、魔力で風を編み出した時にできる緑色のオーラが見えなかった。つまり、この男の扱う魔術の特徴は、
視認することのできない、緑色魔術。
そうなるとかなり厄介だ。攻撃が見えないということはすなわち、それに対する防衛手段もないということ、その気になれば軍隊を一つ壊滅することのできるほどの魔力の持ち主であることには間違いない。
そしてだ....
「全員、火矢を構えろっ!」
監獄長の声が響く。監獄の高台、そこには火のついた矢を構えた兵士がずらりと並んでいる。そしてその矢の向けられている場所は、井戸の入り口だ。
「貴様は聖典の名の下に、緑の収集師。ローレン=フォーサイスが罰を下す」
「レギナ=スペルビア。何があってもここは死守させてもらうぞ」
「....『啓示を受けし者の会』、エルフもいるのか」
狭い小屋の中で、十数人の兵士が固まり、小屋の入り口に立つ監獄長と『啓示を受けし者の会』を名乗る一人の男。その男の姿を再確認すると、後ろでまとめた長い翡翠色の髪の間から覗く長い耳がエルフであるということを証明している。王都もエルフと戦争をしているようなものなのに、よくエルフを内政に参加させていると思った。
「えぇ、信仰に種族は関係ありませんから。さぁ、答えてください。お仲間はどこにいますか?」
「仲間などはいない、私を捕らえたいのなら好きにすればいい。だが、処刑はよせ。重要な参考人だ、私としても是非彼女の証言を聞きたい」
「すでに貴方には、その権限は存在しないと自覚していらっしゃいますか?」
涼しい顔でそう切り返される。
自然と左手が腰の剣へと向かう。
互いが睨みあう。
兵士は押し黙っている。
「私と来てください。最初は貴方を探すことが目的で故郷を訪れたのですが、その手間が省けたのも、すべては聖典の思し召しでしょう。貴方は、私と共に王都へと向かうべきなのです」
「断る。私を捕らえようとして街を一つ焼き払うような輩を信用する神経を持ち合わせていない」
そう、この『啓示を受けし者の会』の一人。確か『赤の収集師』を名乗っていたが、その男は私という人間を捕らえようとして一般市民を危険にさらした挙句、街を一つ焼き払ったのだ。そんな輩の言うことを信用する方がどうかしている。
しかし
そう言い放った途端、小屋のなかの空気が変わる。
全身が徐々に締め付けられてゆく感覚、これは殺気にも似た、いやこれは精神的感覚以外にも、この肌に張り付く衣服の感覚の、外気の重さは明らかに物理的なもの。
「貴様....聖典の信者である私を愚弄するかっ! 無色の分際でっ!」
「....っ」
次の瞬間、その男を中心に発せられた緑色のオーラが爆発的に広がり、そこを中心に突風が吹き荒れる。狭い小屋の中で、急激な風が巻き起こるが、中にいる兵士は誰一人として、この目の前で発せられている殺気のせいで動くことができない。
「許せない、許せない許せないっ! 監獄兵っ! 今すぐこの女を捕らえろっ! 手足を引きちぎってでもだっ! おいっ! さっさと火を打ち込めっ!」
「は、はいっ!」
突如、口調も、そしてその表情も醜く歪んだ男。だが、彼の怒号、もしくは悲鳴にも似た命令により、兵士たちは意識をこちらへと集中させる。
ここまでか。
剣を引き抜き、目の前の兵士と正面に向かい合う。
開戦。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「三方向来るわっ!」
「チィ....っ!」
背中に背負った彼女を左腕で抱え、その左手で握られた鞘にパレットソードを収める。
『今一色流 抜刀術 円月斬<地>』
体勢を低くし、近づいてきたオークの膝に抜刀術を叩き込む。振り抜いた剣をそのまま、ふるって脳天を叩き確実に命を刈り取ってゆく。
しかし、
「避けてっ!」
「やべ....っ!」
すかさず、その場を飛び足元に飛んできた斧をスレスレでかわす。斧は明後日の方向へと飛んで行き、奥の方でゴブリンをなぎ倒して、壁に刺さって停止した。
「ねぇっ! その女捨てて早く逃げましょっ! こんなに相手がいたら死ぬわよっ!」
「それが出来たら苦労してませんって....っ」
ウィーネが髪の毛を引っ張って必死に講義をしているが、確かに彼女を捨ててこの場を去ればどうということはない。だが、一度助けようとした命だ。
簡単に捨てろと言われて捨てられるものではない。
そう思いながら向き直っているのは、先ほど斧をぶん投げたミノタウロス。背中に刺してあるもう一本の斧を手に取り臨戦態勢だ。そしてその背後にも二匹、赤い目を爛々と輝かせてこっちを覗いている。
「ウィーネさん、もうあれは使えないんですか?」
「無理に決まってるじゃないっ! 精霊石が近くにあるならまだしも、具現化させてるだけで限界っ!」
だとしたら無理だ。彼女を庇いながらの戦闘は何かと気が散る。レーダー代わりになっている彼女が具現化していなければ、今頃自分は死んでいる。
「....サリーを呼ぶしかないわ....」
「....却下です」
ウィーネがそうつぶやくが、その考えを却下する。理由は二つ、一つは油で覆われている地面で火を扱う魔術を行使するなんて、自殺行為甚だしい。そしてもう一つ。単純にあいつの能力を使いたくない。
自分は、あの男の能力を使ってはいけない。
「あんた死ぬ気なのっ!? 火のことで気になってるのなら多少は融通きくわよっ! 油への引火も最小限に抑えられるわっ!」
「ダメです。だとしても、僕はあいつの力を使いたくありません」
そんな言い合いを繰り返しているうちに、ミノタウルスの一人が動く。横一閃、それをギリギリに躱し、洞窟の柱に隠れるも今度は二匹のミノタウルスが両側から斧を振るい柱を破壊する。
もう無茶苦茶だ。
降りかかる柱の残骸を払いのけながら出口へと急ぐ。もしこのまま逃げることができるのならば、逃げたい。
しかし。
出口へと向かおうとした刹那、頭上を大きな影がまたぐ。
次の瞬間、目の前に落ちてきた何かが地下を揺らした。
「ニガサナイ」
「くそが.....っ」
目の前にそびえ立つ、斧を二本持ったミノタウルス。完全に出口をふさがれ逃げる手段を失う。そして、背後にはミノタウルス二匹の他に愉快な魔物たち。
「ねぇ....一か八か本当にサラマンダーを使わない?」
「....」
一瞬であるが、頭の中で本気でサリーを使うかどうかを悩んでしまった。もう一つの選択肢、後ろで背負っている彼女を起こすということも考えたが、戦力としては期待しないほうがいいだろう。少なからず、自分の力で歩いてもらえるだけでもだいぶ違うのだが、この過激な戦闘状況において未だに気絶していることを考えると簡単に目を覚ましそうにない。
「ねぇっ!」
「....くっ」
パレットソードを鞘に戻し、持ち手を左に回す。次の瞬間、鞘にはまったルビーの精霊石が赤く光り始める。
「死にたくなかったら迷っちゃダメよっ! プライドなんて捨てなさいっ!」
「ハァアアアアアアッッッッ!」
パレットソードを引き抜こうとした。その瞬間だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「早....っ」
「遅い」
素早く剣を振るい、兵士の腕を切りつけ剣を持てないようにしてゆく。
「貴様らっ! 相手は一人だぞっ、何をやっているっ!」
監獄長が叫び兵士に喝を入れているが、そんな程度で士気が上がるわけでもなく、次々と捕らえようと構えた兵士が地面へと転がる結果を生むことになる。外からも自分を捕まえようとして、兵士が集まる。しかし、戦況は狭い小屋で大量の兵士が集まり一方的に壊滅させられるという結果に終わった。
「私を捕らえたいというなら千を超える兵を連れてこい」
剣の先を監獄長に突きつけ宣言をする。だが、問題はその隣に立っているエルフの男だ。前回の赤色の魔術師同様、同じく厄介な魔術を使ってくることだろう。そして、未だに歪んだ表情を浮かべているこの男。基本エルフは美形が多いが、あそこまで歪んだ表情を浮かべることができることに関心すら覚える。
「ハァ....使えないものばかりだ....」
だが、歪んだその表情を若干下に向ける。そしてその顔を上げた瞬間、最初の頃に見せた涼しい表情へと戻ったのである。
そして、次の瞬間。
最近、切っておらず、伸びかけていた髪がかすかに揺れる。
そして、それが合図になったかのようにして、狭い小屋の壁に鋭い亀裂が走り一気に倒壊を始める。
「!?」
突如内側に向けて崩れ落ちてきた壁から身を守るようにして、剣の腹を盾代わりにして身を守る。
しばらく、
小屋の壁が倒壊を終え土埃が晴れると、瓦礫の下には先ほど倒した兵士たちが埋まっており、明らかに生きているようには感じることはできない。
「貴様....一体何をっ!」
「ハァ....悲しいですね....貴方が投降しないから、余計な人を殺すことになってしまった。実に悲しい」
「っ!」
悲しそうな表情でこちらを向いて訴えかけてくる。だが、その目は悲しそうな顔などしていない。むしろ、このあと自分がどう出るかを伺っているような、邪悪な気配を感じる。
「そんなことを言って、私が投稿すると思っているのか。この人殺し」
「それは貴方にも言えるでしょう。多くを救うために、いったいどれだけの少数を見捨てたのですか? 貴方は」
「私は間違っていない」
盾代わりに使っていた剣を下ろし、近くの瓦礫に叩きつける。次の瞬間、縦に二つに割れた剣を両手に構え臨戦態勢に入る。
「少なからず。他人の命を利用するような下衆の貴様に言われたくない」
「貴様....無色の分際で私を下衆呼ばわりするか、この尼が....っ」
再び表情が歪み、殺気が膨らむ。
この男の魔術。さっきの攻撃は、明らかに魔術の発動によるもの。しかし、詠唱もなければ、魔力で風を編み出した時にできる緑色のオーラが見えなかった。つまり、この男の扱う魔術の特徴は、
視認することのできない、緑色魔術。
そうなるとかなり厄介だ。攻撃が見えないということはすなわち、それに対する防衛手段もないということ、その気になれば軍隊を一つ壊滅することのできるほどの魔力の持ち主であることには間違いない。
そしてだ....
「全員、火矢を構えろっ!」
監獄長の声が響く。監獄の高台、そこには火のついた矢を構えた兵士がずらりと並んでいる。そしてその矢の向けられている場所は、井戸の入り口だ。
「貴様は聖典の名の下に、緑の収集師。ローレン=フォーサイスが罰を下す」
「レギナ=スペルビア。何があってもここは死守させてもらうぞ」
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