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第2章 青の色
第61話 不在の色
しおりを挟む「また王都からだ。ちゃんと目を通しておけ」
「ハァ....急かすな....」
机の上には山のように積み上げられた書類、そのどれもが王都本部からの書状で、内容は9番隊隊長の不在と、死刑執行人の失踪についての報告書だ。そして隊長席に座っているのはガレア、書類を持ってきたのはアランだ。
「今は嫌でも貴様が隊長だ。しっかりと務めを果たせ」
「言われずとも。だが本当にここまで来ると神経がおかしくなりそうだ....」
「もともとおかしくなる神経もないんだから大丈夫だろう」
「....喧嘩に付き合うのも疲れる。用が済んだのなら出て行ってくれ」
「お前はどう思うんだ? イマイシキ ショウと隊長については」
するとガレアは頭を少し掻くと、目の前に立つアランの目を見て答える。
「レナがショウを相手にして逃げてこないというのは、何か事情があるということだろう」
「随分と落ち着いているものだな、捜索隊が丸1日かけて探しても見つからなかったのに」
そばにあるの捜索隊からの状況報告について書かれた資料、それには捜索した範囲と、予想される行動順路について書かれているが、そのどれもが曖昧で、不明と答えるのをごまかしているようにも感じた。
「アラン、お前はどう思うんだ。今回の件については」
「少なからず、処刑に対して何らかの違和感はあった。だが、それについてやつが気付いていたとも思えない。仮にやつが気付いていたとしてもそこで隊長をさらったのは理解できない」
要するに、理解できないとのことか。と思いガレアは大きくため息をつく。ショウは犯罪者として扱われている、理由はイニティウムでの放火の容疑者としてだ。しかし、確たる証拠はどこにもなく、王都はこの事態を急速に解決にするためにショウに罪を全部背負わせ処刑へと導いた。
「まぁ、しばらく書類の整理追われていろ。俺はしばらく部隊を1週間ほど留守にする」
「....王都本部に行くのか」
「あぁ、今回の件についての報告が欲しいと聞いている」
そう言って、隊長執務室の扉を開けアランは部屋を出て行った。
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王都、それはこの世界の中心であり、この世界の均衡を保つために存在する言うなれば中間国家ともいうべき存在の国だ。どこかの国と国の間で戦争が起ころうとした時、もしくは貿易での問題が起こった場合には中間に入り、仲裁、、もしくは裁判といった方時で制裁を与えることのできる権利を持った国だ。
故に、軍事力はどの国においても最大のものを有している。
王都騎士団第1番隊『王都防衛近衛兵団』
王都騎士団第2番隊『王都魔導兵団』
王都騎士団第3番隊『王都龍騎士兵団』
王都騎士団第4番隊『王都隠密兵団』
王都騎士団第5番隊『王都重装歩兵団』
王都騎士団第6番隊『王都前線防衛兵団』
王都騎士団第7番隊『王都救援兵団』
王都騎士団第8番隊『王都作戦実行兵団』
そして俺たちの部隊が
王都騎士団第9番隊『王都平和維持兵団』
主な役割は王都周辺の地域を回り、平和が保たれているかどうかを見回る部隊だ、しかし、裏では戦場で使えない兵士の行き着く最後がここだとも言われている。この中で最も戦力が高いのは第1部隊で正面からやりあったら確実に負けるといった人間でありながらも、化け物のような人間が多い。
以前はそこに俺もいた。
「おや? これはこれはアランではないですか。どうしました? 本日はどのようなご用事で?」
「チッ....いつもの謁見だ。いるな、あいつは」
目の前でニタニタした表情で立っているのは第1部隊の副隊長に当たる男。ユークリッド=アレクセイだ。剣術において言うならば、レギナと戦っても引けを取らない戦力の持ち主だ。
「えぇ、いますよ。あなたが来るのを今か今かと待っていましたからねぇ」
「早く合わせろ。こっちも忙しい」
「相変わらずせっかちですねぇ、そんなことだから9番隊に異動になるんですよ」
こいつは元俺の同僚だ。そして一番変わりたくない人間の一人でもある。
「そういえば、そろそろ動き始めるみたいですねぇ。『啓示を受けし者の会』が」
「....そうか」
「あなたの隊長さん、早く見つかるといいですねぇ」
「....あぁ」
王都騎士団の有する宮殿のとにかく広い廊下を二人の靴音がこだまする。そうか、そんなにも早く....
「それでは、毎度言っていることですが決して粗相のないよう」
「わかってる。だからさっさと消えろ」
「はいはい、それでは....」
目の前には木製の大きな扉。そしてその向こう側には第1部隊の隊長がいる。元は俺の上司なわけだが、だからこそ知っていることも多く緊張する。
『入りたまえ。アラン=アルクス』
すでに入る前から誰が来ているかわかっているらしい。
「失礼します」
扉を開け、中に入ると9番隊の隊長執務室よりもずっとものが多い、盾、剣そして多くの書物が並んでいる棚。その差は歴然だ。
「よく来た、我が旧友よ」
「お久しぶりです、サー・ペンドラゴン」
かしこまって頭を深々と下げる。そして深く息を吸い込み目の前の人物に目を向ける。純白の衣服からは司祭ともいうべき風格が備わっている、初老の男性。しかし、本性は多くの王都権力者にパイプを持ち、王都最大の戦力を持つ男だ。
「まぁ、かしこまった挨拶は良い。それより聴かせてもらおうか」
あの色落ちの隊長『レギナ=スペルビア』の所在についてを。
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