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第1章 赤の色
第33話 殺意の色
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「・・・ひぃっ!」
「あっ、ガルシアさん大丈夫ですか?」
「もう・・・ぜったいにぜったいに怪我なんてしない・・・」
メルトさんの荒療法が終わっておよそ一時間、軽い食事をとったあと目の前で気絶して横たわっているガルシアさんを眺めていたら軽い悲鳴を上げて彼が飛び起きた。
「ショウ・・・お前は平気だったか?」
「まぁ・・・肩の脱臼だけでしたのでなんとか・・・」
全身大やけどに比べたらだいぶマシだろう。
この世界では病気や怪我をあんな治療で行っているのだろうか?だとしたら金輪際ぜったいに怪我なんてしないし下手すれば死ぬかもしれん。
そんなことを考えているとギルドのカウンタの奥のほうから足音が近づいてくる
「ガルシアさん、大丈夫・・・で・・・す・・か」
「あっ、はい・・・お・・・そ・・らく」
奥のほうから出てきたのはリーフェさんとメルトさんだった。だが、リーフェさんとガルシアさんが目を合わせた瞬間、お互い顔を真っ赤にしてたどたどしくしゃべりだしたのである。
なんだろう、面白くない。
「えっ・・・と、すみませんでした。あの時は・・・」
「い、いや・・・こっちも魔力が足りなかったし仕方のない状況だったから・・・し・・・かた・・・ない」
あの時とは・・・あの時だろう・・・
「メルトさん・・・ちょっと」
「えっ・・・あっ・・・はいっ!」
お互い終始無言で固まっている二人を置いて俺はメルトさんの手を引いて、以前俺が着替えの時に案内された小さい物置に連れてきた。
「えっと・・・なんですか?」
「すみません、仮の話なんですが魔力が底をついて誰かから魔力をもらいたいといった時にはどうすればいいんですか?」
部屋の中は魔力の光で灯ってはいるものの、物置用なので部屋全体がぼんやりと明るくなっている感じだ。
「・・・ショウさん魔力が足りないんですか?」
「えっ?いや、そういうわけでは・・・」
魔力の色が無色である俺は、基本的に魔力が底をつくことがない。
「そうですね・・・それ以外だと・・・」
しばらく考え事をしているメルトさんを見ると手を前で交差してもじもじさせているほか、頭についている猫耳がいろんな方向を向かしていて、尻尾なんかもせわしなく動いている。
「・・・キス・・・」
「えっ?」
ワンモアプリーズ
「キスですよっ!チューです!チューっ!」
なるほどね、ようやくいろんな謎が解けた
そのあとの詳しい説明を聞くと、魔力の譲渡は赤の他人であったりすると拒絶反応が起きてよりひどいことが起きるらしいが、一度でも心を通わせた仲ならば譲渡が可能となり、そのやり方というのが接吻、すなわちキスなのだという。
「うぅ・・・こんな恥ずかしいことどうして聞くんですかぁ?」
「まぁ・・・ちょっと興味本位で?」
「ショウさんはスケベですっ!」
なんともまぁ、猫耳おったてて尻尾をぴんとさせて怒られても萌え要素しか見当たらないな。
「教えてくれてありがとうございました、それでは外に・・・メルトさん?」
「ショウさん・・・」
先ほどの二人がいるところに戻ろうとしたそのとき、服の袖をつかまれたと思ったらメルトさんがうつむいて俺の袖をつまんでいた。
「私・・・先ほどの治療で・・・その・・・魔力を使ってしまって・・・」
使ってしまってって・・・まさか?
「その・・・魔力を分けてもらえませんか?」
・・・別段俺は勘が鈍いわけではない。彼女が俺に片思いをしていることもなんとなく感づいているし、なんだか・・・こんな経験をするのが初めてで自意識過剰なのかなぁなんて思っていたがこれではっきりしてしまった。
彼女は俺のことが好きなんだと。
「でしたらリーフェさんとだったらどうでしょうっ?それに僕なんかとではうまくいかないかもしれませんよっ!?」
「大丈夫です。ショウさんとならうまく行く気がするんです。それに・・・うまくいかなくても私は構いませんよ」
うつむいていた顔を上げたメルトさんの目は潤んでいて、頬もなんだかピンク色に染まって・・・なんかものすごく可愛いと思えてしまった。
「で、でもすごいことになっちゃうんですよね?」
「大丈夫です。死ぬわけではありませんから」
そして俺の服をつまみながらにじりにじりと近寄ってくるその様は獲物に近寄る猫そのものだ。だんだんと俺の背中と壁との距離が狭くなってゆく。
「ショウさんは・・・私とは嫌ですか?」
これはズルい。街で歩いていたら10人中10人が振り向きそうなくらい可愛い彼女にそんなことを言われ『嫌です』と答えたやつはおそらく頭のネジの代わりにキノコが詰まっている奴だと思う。
「別に・・・嫌というわけでは・・・」
「なら大丈夫ですよ。ショウさんが負い目を感じる必要ありません。さっきの話だと先輩とガルシアさんもしたんでしょう?ならこれは不可抗力ですよ」
不可抗力・・・この言葉は男が言い訳で使う言葉のはずではないのか?その間にもジリジリ近づいてくる彼女。
とうとう、俺の背中は倉庫の壁とご対面してしまった。
「ショウさん・・・」
服の袖からだんだんとその右手が自分の胸の方へと移る。
そして・・・
「好きです」
・・・死んだのか?俺は。人は衝撃的な場面に遭遇すると目の前が真っ白になるるというのを聞いたことがある。この世界に来てから初めての出来事があまりにも多い。
まさに今の状況がそれだ。
「・・・その・・・」
なんで、俺なんですか?
「・・・ショウさんはすごい人です。全く知らない土地で、自分の力でなんでもやろうとしていて・・・普通の人だったら辛くて諦めてしまいそうなことも笑顔でやっていて・・・そんなショウさんがたまらなくカッコいいんです」
まさか・・・自分がそう思われていたとは思わなかった。
「そんなことありませんって・・・自分なんて住むところなんかリーフェさんにおんぶ抱っこですし、それに訓練の時なんかも実際に楽しかったですしね。自分はそんなかっこいい人間じゃありませんよ。むしろみんなに支えてもらってばっかりでカッコ悪いですって」
そう、自分はこの世界の優しさに浸かりに浸かってしまっている。目の前にいるメルトさんの助けがなかったらできなかったことだってこの1ヶ月間で何度もあったりした。
「それに、自分はもうここをいずれ出る身ですから。もう戻ってこれないかもしれないんですよ?」
今回魔物騒動が終わったら、俺はこの街を出る。この世界の交通機関がどのようなものかよくわからないが戻ってこれない可能性だって十分ある。
その言葉を聞いてメルトさんは少し悲しそうな目をする。
だがそこにいつものたどたどしい彼女はいない。
「なら・・・今、ここでもう一つ・・・思い出を作りませんか?」
ショウさんが戻って来たくなるように。
「・・・っ」
言葉の裏をかかれた、もう逃げ場はない。
いや、そもそもなぜ自分は逃げているんだ?
別にいいじゃないか、女の子とキスできるチャンスだぜぇ?
いやいや悪魔さん、今喋りかけにないでほしい。天使さん、どうか助けてくださいっ!
・・・天使は死んだ。
あぁ、もうどうにでもなれっ!
だんだんと近づいてくるメルトさんの顔。もうすでに心拍数は今までにないくらいの上昇を見せている。そして潤んだ瞳が閉じられた時。
俺は覚悟を決めた。
今まさにこの瞬間、唇と唇がマジで触れ合う5秒前
「おい、ショウ。ちょっとこっちに来てくれ・・・ない・・・か?」
「「・・・へ?」」
なんというご都合的展開だろうか。いやいや別に嫌だったというわけではなかったがなんだかこう・・・助かったみたいな?
入ってきたのはガルシアだった。
「いや・・・その・・・すまんかった。ごゆっくり」
「だ、大丈夫ですっ!な、何か用事ですか?」
声はひどく裏返り、明らかに大丈夫ではない。
そしてメルトさんは恥ずかしいのか俺の胸に顔をうずめてしまった。すみません汗だらけで臭いとは思いますが・・・。
「そ、そうか?だったらちょっと来てくれ。緊急事態だ」
「あっ、はい。わかりました」
「・・・ゆっくりでも構わないぞ」
「すぐ行かせていただきます」
なんとも意地の悪い顔だ。このエロオヤジめ。
そう思いながら扉を出ようとすると、胸のところに顔をうずめていたメルトさんから何やら・・・負のオーラ?なものを感じた。
「ガルシアさん・・・今度怪我した時は覚えておくことですね・・・」
あぁ・・・ご冥福をお祈りします。
「ショウさん」
「はい・・・っ」
ふと顔を上げてきたメルトさんに
不意をつかれた。
「そっ、それじゃ行きましょうかっ!」
「・・・あは、い」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さっきの感触って・・・
「おい、ショウ。大丈夫か?」
「へ?あっ、はい。大丈夫です、はい」
「変な奴」
あんたに言われたくない。
現在、ギルドのロビーに俺とメルトさん。そしてリーフェさんとガルシアさんがいる。そして話の内容は今日、あの化け物が話していた内容のことについてだった。
「まずリーフェさん。遠見の魔術は使えるか?」
「えぇ、大丈夫です」
わかったと言うと、全員で夜の外へと移動させる。そしてしばらく、リーフェさんが屈みこんで地面に図形やら文字やらを書いた後にリーフェさんがその中心に立つ。
これは俗に言う魔法陣というやつか?
「よし発動してくれ」
「わかりました。『其は風 遠方を覗かんとす 緑の名において 我に新たなる土地を目に トゥブラート』」
リーフェさんから溢れ出る緑色のオーラが魔法陣の溝へと流れて行きやがて淡く発光したかと思うと、リーフェさんを中心に空気が膨らみ爆ぜるような感覚を覚えた。
そしてしばらく、耳をすませるかのようにじっと、目を閉じてその場に立っているとしばらくしてその目が驚きによって開かれた。
「ガルシアさんっ!大変ですっ」
「何が見えたんだ?」
「西の方から魔物の大群が近づいてきますっ!その数・・・およそ1000以上ですっ!」
魔物が1000以上っ!おそらく遠くの物体やら環境やらを見通す魔術だとは思うが、まさかそんな・・・
「リーフェさん、そいつらはいつここに来るんだっ」
「おそらく・・・明日の夕方からかもしれません」
明日の夕方・・・ここに魔物の大群が押し寄せて・・・
ふと隣を見るとメルトさんが俺の腕にしがみついて震えている。
「ショウはわからんと思うが、魔物の大群が来たなんて言ったらこんな村一つすぐに消えると思ったほうがいい」
確かに、ゴブリン程度のものだったら俺たち冒険者やこの街の兵隊とかでなんとかできると思うが、もし今日のあいつみたいなのがごちゃごちゃいるのだと思うとゾッとする。
「今すぐに、村に避難勧告を出す準備を。俺は村長に話をつけてくる」
「わかりました、メルちゃん。手伝ってちょうだい」
「あっ、はいっ!」
そして、ギルド職員メンバーがそれぞれに散らばり。街に消えてたあかりがぽつぽつとつき始めた頃。
俺の腰に巻いてある剣の鞘にはめてある石が光ったように感じた
「あっ、ガルシアさん大丈夫ですか?」
「もう・・・ぜったいにぜったいに怪我なんてしない・・・」
メルトさんの荒療法が終わっておよそ一時間、軽い食事をとったあと目の前で気絶して横たわっているガルシアさんを眺めていたら軽い悲鳴を上げて彼が飛び起きた。
「ショウ・・・お前は平気だったか?」
「まぁ・・・肩の脱臼だけでしたのでなんとか・・・」
全身大やけどに比べたらだいぶマシだろう。
この世界では病気や怪我をあんな治療で行っているのだろうか?だとしたら金輪際ぜったいに怪我なんてしないし下手すれば死ぬかもしれん。
そんなことを考えているとギルドのカウンタの奥のほうから足音が近づいてくる
「ガルシアさん、大丈夫・・・で・・・す・・か」
「あっ、はい・・・お・・・そ・・らく」
奥のほうから出てきたのはリーフェさんとメルトさんだった。だが、リーフェさんとガルシアさんが目を合わせた瞬間、お互い顔を真っ赤にしてたどたどしくしゃべりだしたのである。
なんだろう、面白くない。
「えっ・・・と、すみませんでした。あの時は・・・」
「い、いや・・・こっちも魔力が足りなかったし仕方のない状況だったから・・・し・・・かた・・・ない」
あの時とは・・・あの時だろう・・・
「メルトさん・・・ちょっと」
「えっ・・・あっ・・・はいっ!」
お互い終始無言で固まっている二人を置いて俺はメルトさんの手を引いて、以前俺が着替えの時に案内された小さい物置に連れてきた。
「えっと・・・なんですか?」
「すみません、仮の話なんですが魔力が底をついて誰かから魔力をもらいたいといった時にはどうすればいいんですか?」
部屋の中は魔力の光で灯ってはいるものの、物置用なので部屋全体がぼんやりと明るくなっている感じだ。
「・・・ショウさん魔力が足りないんですか?」
「えっ?いや、そういうわけでは・・・」
魔力の色が無色である俺は、基本的に魔力が底をつくことがない。
「そうですね・・・それ以外だと・・・」
しばらく考え事をしているメルトさんを見ると手を前で交差してもじもじさせているほか、頭についている猫耳がいろんな方向を向かしていて、尻尾なんかもせわしなく動いている。
「・・・キス・・・」
「えっ?」
ワンモアプリーズ
「キスですよっ!チューです!チューっ!」
なるほどね、ようやくいろんな謎が解けた
そのあとの詳しい説明を聞くと、魔力の譲渡は赤の他人であったりすると拒絶反応が起きてよりひどいことが起きるらしいが、一度でも心を通わせた仲ならば譲渡が可能となり、そのやり方というのが接吻、すなわちキスなのだという。
「うぅ・・・こんな恥ずかしいことどうして聞くんですかぁ?」
「まぁ・・・ちょっと興味本位で?」
「ショウさんはスケベですっ!」
なんともまぁ、猫耳おったてて尻尾をぴんとさせて怒られても萌え要素しか見当たらないな。
「教えてくれてありがとうございました、それでは外に・・・メルトさん?」
「ショウさん・・・」
先ほどの二人がいるところに戻ろうとしたそのとき、服の袖をつかまれたと思ったらメルトさんがうつむいて俺の袖をつまんでいた。
「私・・・先ほどの治療で・・・その・・・魔力を使ってしまって・・・」
使ってしまってって・・・まさか?
「その・・・魔力を分けてもらえませんか?」
・・・別段俺は勘が鈍いわけではない。彼女が俺に片思いをしていることもなんとなく感づいているし、なんだか・・・こんな経験をするのが初めてで自意識過剰なのかなぁなんて思っていたがこれではっきりしてしまった。
彼女は俺のことが好きなんだと。
「でしたらリーフェさんとだったらどうでしょうっ?それに僕なんかとではうまくいかないかもしれませんよっ!?」
「大丈夫です。ショウさんとならうまく行く気がするんです。それに・・・うまくいかなくても私は構いませんよ」
うつむいていた顔を上げたメルトさんの目は潤んでいて、頬もなんだかピンク色に染まって・・・なんかものすごく可愛いと思えてしまった。
「で、でもすごいことになっちゃうんですよね?」
「大丈夫です。死ぬわけではありませんから」
そして俺の服をつまみながらにじりにじりと近寄ってくるその様は獲物に近寄る猫そのものだ。だんだんと俺の背中と壁との距離が狭くなってゆく。
「ショウさんは・・・私とは嫌ですか?」
これはズルい。街で歩いていたら10人中10人が振り向きそうなくらい可愛い彼女にそんなことを言われ『嫌です』と答えたやつはおそらく頭のネジの代わりにキノコが詰まっている奴だと思う。
「別に・・・嫌というわけでは・・・」
「なら大丈夫ですよ。ショウさんが負い目を感じる必要ありません。さっきの話だと先輩とガルシアさんもしたんでしょう?ならこれは不可抗力ですよ」
不可抗力・・・この言葉は男が言い訳で使う言葉のはずではないのか?その間にもジリジリ近づいてくる彼女。
とうとう、俺の背中は倉庫の壁とご対面してしまった。
「ショウさん・・・」
服の袖からだんだんとその右手が自分の胸の方へと移る。
そして・・・
「好きです」
・・・死んだのか?俺は。人は衝撃的な場面に遭遇すると目の前が真っ白になるるというのを聞いたことがある。この世界に来てから初めての出来事があまりにも多い。
まさに今の状況がそれだ。
「・・・その・・・」
なんで、俺なんですか?
「・・・ショウさんはすごい人です。全く知らない土地で、自分の力でなんでもやろうとしていて・・・普通の人だったら辛くて諦めてしまいそうなことも笑顔でやっていて・・・そんなショウさんがたまらなくカッコいいんです」
まさか・・・自分がそう思われていたとは思わなかった。
「そんなことありませんって・・・自分なんて住むところなんかリーフェさんにおんぶ抱っこですし、それに訓練の時なんかも実際に楽しかったですしね。自分はそんなかっこいい人間じゃありませんよ。むしろみんなに支えてもらってばっかりでカッコ悪いですって」
そう、自分はこの世界の優しさに浸かりに浸かってしまっている。目の前にいるメルトさんの助けがなかったらできなかったことだってこの1ヶ月間で何度もあったりした。
「それに、自分はもうここをいずれ出る身ですから。もう戻ってこれないかもしれないんですよ?」
今回魔物騒動が終わったら、俺はこの街を出る。この世界の交通機関がどのようなものかよくわからないが戻ってこれない可能性だって十分ある。
その言葉を聞いてメルトさんは少し悲しそうな目をする。
だがそこにいつものたどたどしい彼女はいない。
「なら・・・今、ここでもう一つ・・・思い出を作りませんか?」
ショウさんが戻って来たくなるように。
「・・・っ」
言葉の裏をかかれた、もう逃げ場はない。
いや、そもそもなぜ自分は逃げているんだ?
別にいいじゃないか、女の子とキスできるチャンスだぜぇ?
いやいや悪魔さん、今喋りかけにないでほしい。天使さん、どうか助けてくださいっ!
・・・天使は死んだ。
あぁ、もうどうにでもなれっ!
だんだんと近づいてくるメルトさんの顔。もうすでに心拍数は今までにないくらいの上昇を見せている。そして潤んだ瞳が閉じられた時。
俺は覚悟を決めた。
今まさにこの瞬間、唇と唇がマジで触れ合う5秒前
「おい、ショウ。ちょっとこっちに来てくれ・・・ない・・・か?」
「「・・・へ?」」
なんというご都合的展開だろうか。いやいや別に嫌だったというわけではなかったがなんだかこう・・・助かったみたいな?
入ってきたのはガルシアだった。
「いや・・・その・・・すまんかった。ごゆっくり」
「だ、大丈夫ですっ!な、何か用事ですか?」
声はひどく裏返り、明らかに大丈夫ではない。
そしてメルトさんは恥ずかしいのか俺の胸に顔をうずめてしまった。すみません汗だらけで臭いとは思いますが・・・。
「そ、そうか?だったらちょっと来てくれ。緊急事態だ」
「あっ、はい。わかりました」
「・・・ゆっくりでも構わないぞ」
「すぐ行かせていただきます」
なんとも意地の悪い顔だ。このエロオヤジめ。
そう思いながら扉を出ようとすると、胸のところに顔をうずめていたメルトさんから何やら・・・負のオーラ?なものを感じた。
「ガルシアさん・・・今度怪我した時は覚えておくことですね・・・」
あぁ・・・ご冥福をお祈りします。
「ショウさん」
「はい・・・っ」
ふと顔を上げてきたメルトさんに
不意をつかれた。
「そっ、それじゃ行きましょうかっ!」
「・・・あは、い」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さっきの感触って・・・
「おい、ショウ。大丈夫か?」
「へ?あっ、はい。大丈夫です、はい」
「変な奴」
あんたに言われたくない。
現在、ギルドのロビーに俺とメルトさん。そしてリーフェさんとガルシアさんがいる。そして話の内容は今日、あの化け物が話していた内容のことについてだった。
「まずリーフェさん。遠見の魔術は使えるか?」
「えぇ、大丈夫です」
わかったと言うと、全員で夜の外へと移動させる。そしてしばらく、リーフェさんが屈みこんで地面に図形やら文字やらを書いた後にリーフェさんがその中心に立つ。
これは俗に言う魔法陣というやつか?
「よし発動してくれ」
「わかりました。『其は風 遠方を覗かんとす 緑の名において 我に新たなる土地を目に トゥブラート』」
リーフェさんから溢れ出る緑色のオーラが魔法陣の溝へと流れて行きやがて淡く発光したかと思うと、リーフェさんを中心に空気が膨らみ爆ぜるような感覚を覚えた。
そしてしばらく、耳をすませるかのようにじっと、目を閉じてその場に立っているとしばらくしてその目が驚きによって開かれた。
「ガルシアさんっ!大変ですっ」
「何が見えたんだ?」
「西の方から魔物の大群が近づいてきますっ!その数・・・およそ1000以上ですっ!」
魔物が1000以上っ!おそらく遠くの物体やら環境やらを見通す魔術だとは思うが、まさかそんな・・・
「リーフェさん、そいつらはいつここに来るんだっ」
「おそらく・・・明日の夕方からかもしれません」
明日の夕方・・・ここに魔物の大群が押し寄せて・・・
ふと隣を見るとメルトさんが俺の腕にしがみついて震えている。
「ショウはわからんと思うが、魔物の大群が来たなんて言ったらこんな村一つすぐに消えると思ったほうがいい」
確かに、ゴブリン程度のものだったら俺たち冒険者やこの街の兵隊とかでなんとかできると思うが、もし今日のあいつみたいなのがごちゃごちゃいるのだと思うとゾッとする。
「今すぐに、村に避難勧告を出す準備を。俺は村長に話をつけてくる」
「わかりました、メルちゃん。手伝ってちょうだい」
「あっ、はいっ!」
そして、ギルド職員メンバーがそれぞれに散らばり。街に消えてたあかりがぽつぽつとつき始めた頃。
俺の腰に巻いてある剣の鞘にはめてある石が光ったように感じた
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