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序章の色
第13話 無色の色
しおりを挟むナイフから垂らされた血は、幹へ吸い込まれるように消えてゆく。
「ショウさん、上の方を見てくださいっ!」
「はい、ってうおっ!」
そこには普段目にしている緑であるはずの葉が一面まるでプリズムで透かしたかのような光景が広がっており、それが太陽の光を通してキラキラして様々な色へと変化させる。
「この中で色の付いた葉が自分に落ちてきます、それがあなたの持つ魔力の色で、その色の濃さもわかります」
「ほぉ~」
にしても幻想的な風景だ、地球では絶対にお目にかかることはないだろう、そんなこと考えているうちにだんだんと変化が落ち着いてきた。
「そろそろですよ、両手出してください」
「はい、こうですか?」
そう言って両手をお椀のようにして差し出す、それ見て彼女は『そうです』と微笑む、ヤベェ、マジで惚れそうだ。
「あ、終わりましたよ」
「葉が一枚あなたのところに自然と降りてきますので、落ちてきたら見せてください」
「はい」
そう言って上を見て待っているとカサッ、と何かが落ちてくる音が聞こえた、そしてその何かは俺の手の上で確実に乗るのを感じた・・・が。
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「ん?」
「?、どうしましたガルシアさん?」
「いや、あの二人の帰ってくる気配を感じてね」
「へぇ~、すごいですね。年を取ってから前より感覚が鋭くなったんじゃないんですかぁ?」
「そうだなぁ~、でもなんか少し様子が・・・・」
「?」
ガタン
ガルシアがそう言った後にギルドの扉が開き、傾き始めた日の光が部屋の中に入り込む、逆光のためか二人がどのような表情をしているかはわからない、しかし・・・
「ガルシアさん・・・」
「どうしたんだリーフェさん?」
そのシルエットからただならぬ事態が起きたのはひしひしと伝わった、やっぱり私の予想が当たったか・・・
「あのショウさんの魔力が・・・」
「ああ、常人よりはるかに多いということだろ、大丈夫だ予想してた」
そうだ、あの剣の強力な魔力吸収に耐えられてるんだ、魔力量が常人よりはるかに凌いでいる量と推測するのはバカでもある程度予想できる。
「ええ、それもそうなんですが・・・」
「ん?それ以外になんかあるのか?」
「・・・まずはこれを見てください」
そう言って彼女が手を広げて見せたのは、普通に見れば何ものっていないように見えるしかし
「!?・・・これは!!」
「そうです、数千年ぶりかもしれませんそれが現れたのは」
「しかしこれは、とっくに途絶えたはずの魔力じゃあねぇのか!」
「そうです、でも今目の前にいる人物がまさにその魔力の持ち主です」
生唾を無意識のうちに飲むのを感じた、こいつはとんでもないもんを持ったやつだと思った、彼女の手の上に乗っているものそれは・・・
「・・・無色の葉ということは・・」
「えぇ、彼は魔力濃度無限の無色の持ち主です」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ん~、なんかめんどくさそうな話になってるけどこれは一体どういうことなんだろうか、確かあの世界樹の前で自分に乗ってきた葉っぱについて聞こうと思ったら急に血相変えてリーフェに連れて行かれたわけだが。
「ショウ、こっちに来い」
「はっ、はい」
うわ~、なんだろうなんか悪いことしちまったかな、あれそういえばあの葉っぱなんも色ついてなかったよな、ということは俺、定番の無属性っていうスキルなのか?
「単刀直入に言うが、お前の魔力はどこにも属さない無色という種類のものだ」
「はぁ・・・」
「どういうことか教えてやるとだな、まず、お前は全く魔術が使えない」
「はぁ・・・」
まぁなんとなく予想はしていたが、せっかくの異世界なのに魔術が使えないのはちょっと残念だな。
その後にじっくり無色とはどのようなものなのかということを聞いたが、要約すると無色というのは持っている魔力量は基本、人の何千倍の量を持ってはいるがそれを外に放出しようものならば形にならず結局魔力は霧散して消えるというだけだ、つまりいうところの宝の持ち腐れってやつですな。
「理解できたか、ショウ?」
「はい・・・ある程度は」
「まぁ、こういう結果になったのは、もしかしたらお前が違う世界から来たからということもあるんだろうけどな」
「?」
あっ、そういえばメルトさんには話してなかったっけ、すげぇ、きょとんとしてる
「メルちゃん、向こうで資料の片付けがあるから手伝ってくれる?」
「えぇ、かまいませんけどあの新人さんになんかあったんですか?」
「まぁ・・・ね」
ん?なんか妙な雰囲気だな、こいつはなんかあるのか?
「すみません、ガルシアさん」
「ん?なんだ」
「僕、以外に無色の人間っていたんですか?」
「ああ、いたよ数千年前にな」
「数千年・・・その人は何をした人なんですか」
「・・・あまり知らない方がいい」
「はぁ・・・」
「とにかく今日は休め、明日からその力の使い方を教える」
「あ、ありがとうございます」
そうだ帰るんだったら。
「リーフェさん、あのこれから帰るんですけど一緒に・・・」
「すみません、この後色々とあって・・・先に帰ってもらいますか?」
「はい、わかりました・・・」
なんなんだ一体、無色であることがなんか悪いことなのか、そんな疑問を持ちつつすっかり暗くなった外に向かって扉を開け帰路に着いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なぁ、リーフェさん」
「なんですか?」
「本当にあいつの言っていることは本当だと思うか?」
「・・・彼が泊まって二日は経ちますけど、何かを企んでいるとは思えません」
「そうか、しかし・・・」
「あの・・・本当に何があったんですか?教えて下さい!」
今まで蚊帳の外だったメルトがこちらを見て、今日起こったことに聞いてくる。
「メルちゃん・・・」
言おうか言わまいかリーフェが迷っているとガルシアがメルトの肩を掴んでまっすぐと見て。
「メルト、いいか?今からいうことは他の人にはもちろん、絶対に彼には言ってはならないよ」
「大丈夫ですよ!ギルド職員として守秘義務は絶対ですから!」
「そうか・・・実はな・・・」
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はぁ~、なんか眠れなかったなぁ、昨日のあったことが何度も頭をよぎる、この世界にとっての無色というのはどういう存在なのか色々聞き出さないといけないことは多いな、とにかくギルドに行くことにしよう話はまずそこからだ。
「さ~って朝飯はどうすっかなっと、ん?」
リビングに出て昨日の残り物を食べようと思ったが台所を動かした後がない、昨日は軽く炒め物を作ってリーフェが帰ってきたときにと思いテーブルの上に食器類を置いといたのだがそれが全く手がつけられておらずそのまんまになっていた。
(昨日は帰ってこなかったのか、リーフェさん・・・)
「なんかなぁ、申し訳ないな・・・あっそうだ!」
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