異世界探求者の色探し

西木 草成

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序章の色

第3話 正直の色

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「探究者....今一色 翔です」

「タンキュウシャ?」

「はい」

 女性は混乱している、まあ無理もないか。

「挨拶はちゃんとしましたので・・・」

「あ、そうでしたね、私はリーフェ=アルステインです、見てのとおりエルフです」

 oh....やっぱり....

「....どうしたんですかそんな惚けた顔して」

「あっ! いや....その....エルフって初めて見たもので....」

「?」

 ん~、この世界ではエルフは珍しいものではないのだろうか。不思議そうな表情をしながら長くとがった両耳がぴょこぴょこ動いていることから考えて、まぎれもなく本物の耳なのだろう

「それよりもあなた! いきなり来てわけのわからないこと言って一体なんなんですか! しかも女性に対しての礼儀がなってません! そんなだから冒険者になってしまうんですよ!」

 前者はともかく、なんだその冒険者になってしまうって....冒険者が悪い呼ばわりされてしまっているが。

「とにかくあなたの素性を知りたいのですが、ショウ? なんて名前はここら辺では聞きませんね....どこから来たとか、素性を話してもらえますか」

 答は決まっている。

「いえ、まったくわかりません!」

「あの....それは記憶がないのですか?」

「いや、その....なんというか....」

 何て説明したらいいんだろうか....もう正直に言っちまえ!

「僕はこの世界の人間じゃないんです!」

「はい?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 たいていこのような展開だと、ラノベやマンガではよく主人公がごまかしをかけるだろうが....そんなもんはしない! だって分かんねぇんだもん! そんな何ひとつ情報がない中でこの世界生きてけとか無理です!

「あのその住む地域が違うとか、そういう類では・・・」

「はい! ないです!」

 こうなりゃ、やけくそだ。

「あの....まずどのような経緯でここにきたか説明してもらってもよろしいですか?」

「はい、えぇ~と」

 手短に説明をした、自分の住んでいた世界とこの世界は全く別だということ、全く気づかないうちにこの世界に来てしまったこと。にわかに信じがたいような話を彼女は頷きながら、そして質問を交えながら聞いている。そして、全てを話し終え一呼吸おいたところで、リーフェが口を開いた。

「話はわかりました、ですが....ちょっと信じられないですね」

「えぇ、僕でもこんな話を聞いたら信じませんよ」

「ですがなんであなたは剣をお持ちだったんですか?」

 ....剣?

「だってあなたが仮にその....チキュウというところからやってきたとして、その世界に剣やそういった武器の類がないとしたら、あなたが剣を持っていた辻褄が合いません」

「ちょ、ちょっと待ってください、僕が剣を持っていた?」

「? えぇ持っていましたよ、銀装飾の付いた剣を腰からぶら下げていたので。ですから冒険者なのかなぁ、と」

「あの、それって今どこにありますか?」

「あ、ちょっと待ってください」

 そういって彼女は部屋を出て行き、すぐに戻ってくるとその手には....

「これですけど....」

「なんでこれがここに....?」

 それは確かにあの荒野でポイしたはずの剣だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あの....どうかしました?」

「いや。それって確か僕が話した、あの荒野にポイしたはずの剣ですよ」

「でも....現にここにあります」

 そうだ、確かにここにある。捨てたものが持ち主のところに帰ってくるとか、もはやホラーだ。

「ちょっと、それ見せていただけますか?」

「えぇと、いいですよ」

 あれ、以外とすんなり渡したな。

「僕に渡していいんですか?」

「ええ、先ほどの話に未だ信じられない点はありますが、嘘偽りがないと思われます。それにこの剣抜けないんで」

 そういって彼女の手から剣を受け取る。そして改めて見てもこれはあの荒野でポイした剣だと再認識した。にしても抜けないって。

「本当に抜けないんですか?」

「えぇ、あなたが気絶させられた後に、何人かの人が試しましたが誰も抜くことができませんでした」

 多少古さを感じるものの剣自体特に損傷があるといったわけでもないし、まだまだ使えそうな感じがする。ん、抜こうとしたってことは....いや、やめよう。いきなり異世界きて首切りされそうになったなんて事実は認めたくもない。

「これ抜いてみてもいいですか?」

「別に構いませんけど....ちょ、ちょっとまってくださいっ!」

 そういって彼女は小走りで部屋を出て行くと、また部屋に戻ってきたが....

「あの....それなんですか?」

「何って、もしものための武器です!」

 そういって彼女の手に握られているのは向こうの世界でもよく見たフライパンと呼ぶ代物だ。はたしてこの世界でもそう呼ぶのだろうか。

「もしもって....そんなことはしませんよ」

「いえっ! わかりません!」

 はぁ~、信用ないな。

 とにかく、剣に手をかけてみる。

「まさかな....」

 よくありがちな展開だが、ここで剣が抜けて君は選ばしものだ! っていうのが定番だろうが、そんなテンプレが起きるわけ....

 あった。

「....へ?」
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