とりあえず、夏

浅羽ふゆ

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 帰りのスピードは行きの半分くらい。のんびりのんびり。夕方の田んぼ道は少し風が吹いて涼しかった。

「いやー! 楽しかった! あの場所は俺たちの秘密の場所だな!」
 山根のスタミナは底をついてない。誰よりもテンションが高かいまま。
「またやろうねー!」
 女の子二人もテンションは高め。
 俺も疲労感が心地よく、何故かテンションは下がらなかった。
 のらりくらり自転車を漕ぐ。
 四人で学校の話や昔話なんかが尽きなくて終始みんなで笑ってた。
 横山商店の前で女子と別れて、器具を下ろしに山根の家へ向かう。
 上り坂でなんだかどっと疲れが出てしまい、二人で自転車を押しながら話し合う。
「お前さ、そろそろ杉川さんと二人で遊びに行ってみたら?」
「え!」
 山根の一言に俺は声を張る。
「いや、今日の感じ見てるといい感じに見えるんだけどなぁ。他の男といるところ見たことないからわかんないけど」
 山根は薄暗くなり始めた空を見ながら言った。
「そっかぁ……」
 俺は思い浮かべてみる。でもやっぱり杉川さんとデートなんて想像もできなかった。
「まぁまぁ急がなくてもいいんだけどさ、あんまり待ちすぎてもし誰かに持ってかれたら立ち直れなくね?」
「うわー! 想像もしたくない!」
 頭をブンブン振る。山根はケラケラと笑った。
「まぁタイミングは間違えないように頑張ろうぜ!」
 俺の肩を叩く山根。何とも頼もしい味方だなと思いながら、しばらく無言で山根の家に向かった。気付けば空には星が見え始めていた。

 山根の家に着いて機材を片づけると、いよいよもって疲労が襲ってきた。
 山根が見透かしたように声をかける。
「今日は泊まってくだろ?」
 遠慮はせず、しっかり甘えて泊めてもらう事にした。
 部屋に入るなりベッドに倒れ込む俺。遠慮はしない。
「おい! バカ! お前はそっちじゃない! てか風呂くらい入れ! ちょっ! 起きろ! マジで! おい椎名! おーい!」
 山根がどかそうとする声が遠のいていく。心地いい。俺はそのまま眠った。
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