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「と、まぁこんな感じでして」
俺と山根が話し終わると二人は高らかに笑った。
「あの騒ぎ、そんな事があったんだ!」
杉川さんは笑いながらやっぱり二人は面白いねー! と森さんと顔を合わせる。
まぁもうここまで杉川さんを笑わせられるなら良い経験したなと思う事にしておこう。
「聡美ちゃんたちは何作ったの?」
山根も笑いながら自然に会話の流れを変える。
「んー、何作ったっけ?」
森さんは杉川さんに顔を向ける。
「カレーじゃなかった? あれ? 違ったっけ?」
杉川さんもあまり思い出せないようで、結局なんか無難なものを作った気がするという所に落ち着いた。
ひとしきり食べ終わって一息ついていると、タイミングよく山根が森さんを誘って川の方へ行ったのでそれを見ていたら、杉川さんが、元気だねー二人とも。と微笑みながら言った
ラムネでも飲みますか。と言って俺が渡すと杉川さんはその微笑みを俺に向ける。
「ありがとう。椎名君ってさ、気が利くよね」
ラムネのビー玉を下に落として杉川さんが言う。
「そうかな? 初めて言われたよ」
ラムネを一口飲んで首を傾げる。
「それを言うなら杉川さんじゃない?」
「初めて言われた」
俺が笑って指差すと杉川さんは笑い返した。
この笑顔に飽きることは一生ないと断言できる。独り占めするのが悪いくらいだ。
俺は照れくさくて、山根の方を向く。
「あの二人ってなんか雰囲気似てるよなぁ」
肩をトントンとされて振り向く。杉川さんは俺と自分を交互に指差した。
「じゃあきっと似たもの同士だね」
なるほど。と思った。確かにそういう考えもありえるな。と考えてみると気になった事があったので聞いてみる。
「杉川さんはよく森さんといるの?」
杉川さんは、きっと山根君と椎名君ほどじゃないと思うけどね。と笑う。
「聡美とは確かに特別仲がいいのかな? 一緒にいると楽しいし、何より性格が真っ直ぐで好きだなー!」
褒めすぎかな? とはにかむ。
俺は笑って答える。
「いや、わかる気がする」
相槌でもなんでもなくわかる気が本当にしたからだ。
ただ山根は真っ直ぐではないが。
少し離れた所から山根と森さんの楽しそうな声が聞こえてくる。何とも心地よい時間だった。
「でもね」
杉川さんはちょっと照れくさそうに顔を赤らめる。
「椎名君と山根君に出会ってからもっと楽しくなってるよ?」
杉川さん! 何て言う事を! 俺はその言葉が頭を何度も駆け巡り、相槌すらうてなかった。
杉川さんは山根たちに視線を移す。
「釣りの時にも言ったけど。今年の夏はもう、すごく楽しいし何よりさっきのバーベキューの話」
俺が笑いながら、面白かった? と聞くと杉川さんは、もちろん! と笑う。
「でもそれだけじゃなくて、椎名君たちはハッキリ覚えてるのに、私たちは何を作ったかもハッキリ思い出せなかったじゃない? それに気付いて、確かになって思ったの。だって七不思議もこのバーベキューも絶対に一生忘れないと思えるから。きっと椎名君達は一つ一つの出来事を全力で楽しんでるんだろうなって。だからちょっと羨ましいなって思ったんだ」
噛み締める様に話す杉川さんの言葉はとても優しくて俺の心を温めた。
「俺と山根も杉川さんたちと出会えて同じ事を思ってるよ」
俺は頭で考えるより先に口から言葉が出た。でも本心だ。
思い出とは呼べそうにもないダラダラした毎日が、おかげさまで一日一日がとてつもなく大事になっているんだ。
「またまたー!」
杉川さんはそう言いながら凄く嬉しそうだった。
ラムネをくいっと飲み干す。
「川行こうか!」
杉川さんもラムネを飲み干した。
「行きますか!」
おーい! と俺達に手を振る山根と森さんの声に向かって手を振り返しながら走った。
俺と山根が話し終わると二人は高らかに笑った。
「あの騒ぎ、そんな事があったんだ!」
杉川さんは笑いながらやっぱり二人は面白いねー! と森さんと顔を合わせる。
まぁもうここまで杉川さんを笑わせられるなら良い経験したなと思う事にしておこう。
「聡美ちゃんたちは何作ったの?」
山根も笑いながら自然に会話の流れを変える。
「んー、何作ったっけ?」
森さんは杉川さんに顔を向ける。
「カレーじゃなかった? あれ? 違ったっけ?」
杉川さんもあまり思い出せないようで、結局なんか無難なものを作った気がするという所に落ち着いた。
ひとしきり食べ終わって一息ついていると、タイミングよく山根が森さんを誘って川の方へ行ったのでそれを見ていたら、杉川さんが、元気だねー二人とも。と微笑みながら言った
ラムネでも飲みますか。と言って俺が渡すと杉川さんはその微笑みを俺に向ける。
「ありがとう。椎名君ってさ、気が利くよね」
ラムネのビー玉を下に落として杉川さんが言う。
「そうかな? 初めて言われたよ」
ラムネを一口飲んで首を傾げる。
「それを言うなら杉川さんじゃない?」
「初めて言われた」
俺が笑って指差すと杉川さんは笑い返した。
この笑顔に飽きることは一生ないと断言できる。独り占めするのが悪いくらいだ。
俺は照れくさくて、山根の方を向く。
「あの二人ってなんか雰囲気似てるよなぁ」
肩をトントンとされて振り向く。杉川さんは俺と自分を交互に指差した。
「じゃあきっと似たもの同士だね」
なるほど。と思った。確かにそういう考えもありえるな。と考えてみると気になった事があったので聞いてみる。
「杉川さんはよく森さんといるの?」
杉川さんは、きっと山根君と椎名君ほどじゃないと思うけどね。と笑う。
「聡美とは確かに特別仲がいいのかな? 一緒にいると楽しいし、何より性格が真っ直ぐで好きだなー!」
褒めすぎかな? とはにかむ。
俺は笑って答える。
「いや、わかる気がする」
相槌でもなんでもなくわかる気が本当にしたからだ。
ただ山根は真っ直ぐではないが。
少し離れた所から山根と森さんの楽しそうな声が聞こえてくる。何とも心地よい時間だった。
「でもね」
杉川さんはちょっと照れくさそうに顔を赤らめる。
「椎名君と山根君に出会ってからもっと楽しくなってるよ?」
杉川さん! 何て言う事を! 俺はその言葉が頭を何度も駆け巡り、相槌すらうてなかった。
杉川さんは山根たちに視線を移す。
「釣りの時にも言ったけど。今年の夏はもう、すごく楽しいし何よりさっきのバーベキューの話」
俺が笑いながら、面白かった? と聞くと杉川さんは、もちろん! と笑う。
「でもそれだけじゃなくて、椎名君たちはハッキリ覚えてるのに、私たちは何を作ったかもハッキリ思い出せなかったじゃない? それに気付いて、確かになって思ったの。だって七不思議もこのバーベキューも絶対に一生忘れないと思えるから。きっと椎名君達は一つ一つの出来事を全力で楽しんでるんだろうなって。だからちょっと羨ましいなって思ったんだ」
噛み締める様に話す杉川さんの言葉はとても優しくて俺の心を温めた。
「俺と山根も杉川さんたちと出会えて同じ事を思ってるよ」
俺は頭で考えるより先に口から言葉が出た。でも本心だ。
思い出とは呼べそうにもないダラダラした毎日が、おかげさまで一日一日がとてつもなく大事になっているんだ。
「またまたー!」
杉川さんはそう言いながら凄く嬉しそうだった。
ラムネをくいっと飲み干す。
「川行こうか!」
杉川さんもラムネを飲み干した。
「行きますか!」
おーい! と俺達に手を振る山根と森さんの声に向かって手を振り返しながら走った。
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