とりあえず、夏

浅羽ふゆ

文字の大きさ
上 下
17 / 35

17

しおりを挟む

「お出ましか…蛇竜サラマンダー。」

 スッと自然な流れで構えをとった。そして改めてサラマンダーを観察する。

 デカイ……剥製にされていた子どものサラマンダーとは比べ物にならない。

 そして一番特徴的なのはだ。あの剥製には腕なんて生えていなかった。
 だとすれば成熟した大人のサラマンダーにしか生えていないものなのだろう。あれで掴まれたら握り潰されてしまうだろうな。

「さて、ラン…俺が何とか近接で相手をしてみるから、後ろから魔法で攻撃してくれ。アイツには普通の物理攻撃は効かないらしいからな。」

「わかったわ。」

「じゃあ頼んだぞッ!!」

 強く地面を蹴り、空中へと跳び上がる。サラマンダーの顔面を攻撃するためだ。

「シャアッ!!」

 サラマンダーは近付いてくる俺を丸呑みにしようと、大きな口を開けてこちらへ首を伸ばしてきた。

「フッ!!」

 空中で、体を捻り迫り来るサラマンダーの顎を蹴りあげた。
 衝撃で大きく仰け反ったサラマンダーをランの魔法が追撃する。

「フロストサイクロン!!」

 切れ味の鋭い無数の氷の結晶が、竜巻のように回転しサラマンダーに直撃する。
 それによって浅い傷ではあるがサラマンダーの体表に切り傷がつく。

 聞いていた通り、魔法が弱点のようだな。

 一度地面に着地し、再び距離を詰めようとしたが……。

「ッ!!」

 目の前にサラマンダーの酸がぶちまけられた。ジュウジュウと煙を上げて、目の前の地面が溶けていく。

 不味い、こっちは風下か。煙がこちらへと向かって流れてきている。
 風上へ向かって俺は即座に走り出した。俺を追ってサラマンダーは次々と酸を吐きかけてくる。

 飛んでくる酸を躱しながら、なんとか風上に着くと辺りは色んな場所が酸によって溶けジュウジュウと煙が立ち込めていた。
 風上とはいえ、なるべくあの煙は吸わないようにしないとな。

 改めてサラマンダーに向き直ると、サラマンダーは不気味な笑みを浮かべていた。
 その瞬間背筋をゾクゾクッと悪寒が襲う。

(なにかヤバイのが来るッ!! )

 警戒を強めているとサラマンダーは大きく口を開けてブレスの構えをとった。
 そして、先程辺りにばらまいていた酸に向かって炎のブレスを放ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

切り裂かれた髪、結ばれた絆

S.H.L
青春
高校の女子野球部のチームメートに嫉妬から髪を短く切られてしまう話

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜

八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」 「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」 「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」 「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」 「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」 「だって、貴方を愛しているのですから」  四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。  華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。  一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。  彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。  しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。  だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。 「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」 「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」  一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。  彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

処理中です...