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ひとしきり川で遊び終わって、早速バーベキューの準備に取りかかる。
「んじゃ火をおこす係と魚釣ってくる係決めようぜ!」
山根と俺は自動的に釣り係と火をおこす係に別れるので、あとは女の子がどちらに別れるかだった。
「んじゃ男と女で別れてグーパーで決めようぜ!」
山根は事前の打ち合わせ通りに言う。女子二人は何の疑いも無くそれに応じた。
「決まった? 聡美ちゃんグー? よっしゃ! 俺と一緒だ! んじゃ早速、火をおこしますか!」
山根は手際よく森さんとペアを組んだ。
そうだ。もちろん俺達はグーパーなどしていない。した「振り」だけで済ました。
そして打合せ通り、山根が森さんにグーかパーか聞いてそれに山根が合わせるという手法を取った。簡単な作戦だが、何重にも仕掛けを張り巡らすより時にはこのような作戦の方がバレにくいのだ。
「よし! じゃあ椎名くんジャンジャン釣っちゃおう!」
杉川さんは何気なくスッと俺の手を引いて川の方へ向かう。
まさかの行動で俺は掴まれた腕に意識が集中してしまい、返事もままならないまま引かれる方へ歩いた。
魚が一番多くいるスポットが、山根たちの準備をしている所から少し離れた場所にあったので、釣り場から山根達が何をして何を話しているかわからない。と言う事はこちらにも同じ事が言えるので、ここは完璧に二人だけの世界だった。
「うわー結構いるねー!」
杉川さんは魚に気づかれないようにしているのか小声で喋りかけてくる。
「まぁこんだけいれば何匹か釣れるっしょ!」
自分では釣りにかなりの自信を持っていたけど、そこは謙虚にいった。このギャップが後々、功を奏すのだ。今日の俺はカッコいいぞ!
早速、竿に仕掛けを作り、釣りの準備を手早くすまして釣りにかかる。竿は二本あったが、恐らく俺一人で十分釣れてしまうから人数分釣ったら教えて楽しく釣りを楽しむ作戦を取る。
釣り糸をたらし十分。
二十分……
……三十分。
おかしい。面白いほど釣れない。
昔はかなり釣れたはずなのに、どれだけ時間が経ってもアタリすらない。一向に釣れる気配がない。
「釣れないねー。やっぱり釣りって難しいんだね」
杉川さんはジッと川を眺めている。まずいまずい。
俺は、退屈させよりは。と思い、どうせ釣れないとはわかっていながらも杉川さんに釣り方を簡単に教えて、とりあえず暇にはさせない方向にした。
が、しかし。
「すごーい! すごい!」
杉川さんは俺とは打って変わってバシバシ魚を釣り上げた。
「これ面白い!」
杉川さんはどんどん魚を釣り上げる。そして釣った魚を恐がって俺に渡して針をとってもらうでもなく、ガンガン魚に触っていく。餌も気持ち悪がらずバンバン自分でつけていく。
そして結局、一人で十匹も釣り上げた。
「釣りやった事あるの?」
「ううん。今日が初めてだよ!」
俺の問いに彼女は笑いながら答える。あえなく崩れ去る俺のプライド。そしてプラン。
これ以上釣られてしまったら立ち直れないと思い、ちょっと休憩しようと言って竿を置かせた。
ちょうど真後ろに座りやすそうな大きめの石があったので、そこに腰を下ろしホッと一息ついた。
「いやー本当に釣り上手いね! マジでビックリしたよ!」
俺は自分が釣れなかったことには触れずに杉川さんを褒めまくった。そして褒める度に心が斬りつけられた。
「ただのビギナーズラックだよー!」
杉川さんは照れた顔をする。
「いや、でもホントにすごいよ!」
俺が言うと杉川さんは、ありがと。とだけ言って空を見上げた。
「それにしてもすごい景色だね! まるでここだけポッカリ穴が開いてるみたい!」
杉川さんはここがすごい気に入ったと俺に言ってくれた。
「ここの星空もヤバいよ! まるで天然のプラネタリウムみたい!」
俺が少し大げさに言うと彼女はみるみる目を輝かせて、ホントに? と俺のシャツの袖をつまんだ。
俺はドキッとしながらも今度は目をそらさずに彼女の方を見る。
「ホントに!」
それを聞いて杉川さんは嬉しそうに笑った。
「なんか椎名くんとは綺麗な景色ばっか見てる気がするなぁ。夜の学校の屋上とかすごかったよね! あれは忘れられないなぁ」
ねぇ?と問いかけられた俺は、もちろん。と相槌を打つと杉川さんも、だよね。と微笑んで話を続けた。
「今年の夏はなんかいつもより楽しいなぁ。面白い椎名くんと山根くんとも知り合えたし! なんか本当に退屈って言葉が出てこない! あの日のお疲れ会からね! 覚えてる? 初めて喋ったあのお疲れ会! 椎名くん見てても喋っててもすごい面白かったよ!」
嬉しそうに。そして楽しそうに喋りかけてくれる杉川さんを見て、このまま時が止まってしまえばいいと俺は思っていた。
お疲れ会の話を一通り喋り終えた杉川さんはまた空に顔を向ける。
「今年の夏はもっともっと面白い事いっぱいしようね」
空を見ながら笑う杉川さんは綺麗だった。
「んじゃ火をおこす係と魚釣ってくる係決めようぜ!」
山根と俺は自動的に釣り係と火をおこす係に別れるので、あとは女の子がどちらに別れるかだった。
「んじゃ男と女で別れてグーパーで決めようぜ!」
山根は事前の打ち合わせ通りに言う。女子二人は何の疑いも無くそれに応じた。
「決まった? 聡美ちゃんグー? よっしゃ! 俺と一緒だ! んじゃ早速、火をおこしますか!」
山根は手際よく森さんとペアを組んだ。
そうだ。もちろん俺達はグーパーなどしていない。した「振り」だけで済ました。
そして打合せ通り、山根が森さんにグーかパーか聞いてそれに山根が合わせるという手法を取った。簡単な作戦だが、何重にも仕掛けを張り巡らすより時にはこのような作戦の方がバレにくいのだ。
「よし! じゃあ椎名くんジャンジャン釣っちゃおう!」
杉川さんは何気なくスッと俺の手を引いて川の方へ向かう。
まさかの行動で俺は掴まれた腕に意識が集中してしまい、返事もままならないまま引かれる方へ歩いた。
魚が一番多くいるスポットが、山根たちの準備をしている所から少し離れた場所にあったので、釣り場から山根達が何をして何を話しているかわからない。と言う事はこちらにも同じ事が言えるので、ここは完璧に二人だけの世界だった。
「うわー結構いるねー!」
杉川さんは魚に気づかれないようにしているのか小声で喋りかけてくる。
「まぁこんだけいれば何匹か釣れるっしょ!」
自分では釣りにかなりの自信を持っていたけど、そこは謙虚にいった。このギャップが後々、功を奏すのだ。今日の俺はカッコいいぞ!
早速、竿に仕掛けを作り、釣りの準備を手早くすまして釣りにかかる。竿は二本あったが、恐らく俺一人で十分釣れてしまうから人数分釣ったら教えて楽しく釣りを楽しむ作戦を取る。
釣り糸をたらし十分。
二十分……
……三十分。
おかしい。面白いほど釣れない。
昔はかなり釣れたはずなのに、どれだけ時間が経ってもアタリすらない。一向に釣れる気配がない。
「釣れないねー。やっぱり釣りって難しいんだね」
杉川さんはジッと川を眺めている。まずいまずい。
俺は、退屈させよりは。と思い、どうせ釣れないとはわかっていながらも杉川さんに釣り方を簡単に教えて、とりあえず暇にはさせない方向にした。
が、しかし。
「すごーい! すごい!」
杉川さんは俺とは打って変わってバシバシ魚を釣り上げた。
「これ面白い!」
杉川さんはどんどん魚を釣り上げる。そして釣った魚を恐がって俺に渡して針をとってもらうでもなく、ガンガン魚に触っていく。餌も気持ち悪がらずバンバン自分でつけていく。
そして結局、一人で十匹も釣り上げた。
「釣りやった事あるの?」
「ううん。今日が初めてだよ!」
俺の問いに彼女は笑いながら答える。あえなく崩れ去る俺のプライド。そしてプラン。
これ以上釣られてしまったら立ち直れないと思い、ちょっと休憩しようと言って竿を置かせた。
ちょうど真後ろに座りやすそうな大きめの石があったので、そこに腰を下ろしホッと一息ついた。
「いやー本当に釣り上手いね! マジでビックリしたよ!」
俺は自分が釣れなかったことには触れずに杉川さんを褒めまくった。そして褒める度に心が斬りつけられた。
「ただのビギナーズラックだよー!」
杉川さんは照れた顔をする。
「いや、でもホントにすごいよ!」
俺が言うと杉川さんは、ありがと。とだけ言って空を見上げた。
「それにしてもすごい景色だね! まるでここだけポッカリ穴が開いてるみたい!」
杉川さんはここがすごい気に入ったと俺に言ってくれた。
「ここの星空もヤバいよ! まるで天然のプラネタリウムみたい!」
俺が少し大げさに言うと彼女はみるみる目を輝かせて、ホントに? と俺のシャツの袖をつまんだ。
俺はドキッとしながらも今度は目をそらさずに彼女の方を見る。
「ホントに!」
それを聞いて杉川さんは嬉しそうに笑った。
「なんか椎名くんとは綺麗な景色ばっか見てる気がするなぁ。夜の学校の屋上とかすごかったよね! あれは忘れられないなぁ」
ねぇ?と問いかけられた俺は、もちろん。と相槌を打つと杉川さんも、だよね。と微笑んで話を続けた。
「今年の夏はなんかいつもより楽しいなぁ。面白い椎名くんと山根くんとも知り合えたし! なんか本当に退屈って言葉が出てこない! あの日のお疲れ会からね! 覚えてる? 初めて喋ったあのお疲れ会! 椎名くん見てても喋っててもすごい面白かったよ!」
嬉しそうに。そして楽しそうに喋りかけてくれる杉川さんを見て、このまま時が止まってしまえばいいと俺は思っていた。
お疲れ会の話を一通り喋り終えた杉川さんはまた空に顔を向ける。
「今年の夏はもっともっと面白い事いっぱいしようね」
空を見ながら笑う杉川さんは綺麗だった。
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