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……不自然だ。あまりにも不自然だ。
なんで俺の部屋に杉川さんがいるんだろう。まぁ、山根と森さんもいるんだけど、杉川さんがここにいるってのがなんか物凄く違和感だった。
「ちょっとー。椎名くんまたボーッとしてたでしょー?」
ぼーっと杉川さんを見てしまっていた俺の視界に森さんが割り込んできた。俺はハッとして手を横に振る。同時に首も横に振る。
「いやいや! ちゃんと聞いてたよ! どこに行こうか?」
と言ったは良いものの、話なんか全く聞いていなかった為、一体どこまで話が進んだのか全然わからない。
そう。海での話から二日後。今日は「四人で次は何しようか会議」がまさかの俺の家で開催されていた。
とりあえず俺はボロが出ないようにみんなの会話に集中しながら、コップに半分くらい残っていた麦茶をチョビチョビ飲んだ。
「いやー。しかし七不思議がパンチある企画だっただけに、ただどっか行くっていうだけじゃなんか物足んねーなぁ」
山根は両手を頭の後ろで組んで壁に寄り掛かる。
「あれは確かに一生の思い出になりそうなレベルだったなぁ」
杉川さんはそう言いながら俺に、ねっ? と笑いかけた。
「あ、あぁ」
俺は照れて少し視線をずらしながらと笑う。
「おいおーい! お前らなんか怪しいなぁ。夜の学校で二人で一体何やってたんだか」
それを見て山根が容赦なく茶化してくる。こうなるともう止まらない。杉川さんも俺も何も言わないので、山根は森さんに攻撃を仕掛ける。
「夜の学校って表現ってなんかエロいな」
ニヤニヤ笑う山根を笑いもせずバシンと引っ張たいた森さん。
「なんかいいアイディアないかなぁ小春」
頭を押さえて意気消沈する山根を放っといて、森さんは杉川さんと話し始めた。
あの無敵モードの山根を一発で沈めるなんて。森さん凄い。
感心しながら俺はふと窓の外に目を投げる。窓から見える景色。見慣れた風景の中、一つの山が俺の過去を掘り起こした。
そう言えば昔、親父があの山にある穴場スポットに一回だけ連れてってくれた事があったな。そうだ小学生の時だ。
「キャンプしたんだ」
俺は山を見ながら無意識に声を出してしまった。
「キャンプ?」
みんなが一斉に声を揃えて、お互いに笑う。山根が笑いながら俺に麦茶のコップを向けた。
「何? お前キャンプしたいの?」
「いや、違うよ。まぁ昔の話なんだけど……」
俺はそう前置きして、親父が昔キャンプに連れて行ってくれた事を話した。魚を釣って、それをさばいて食べた事や、バーベキューしたけど食べきれないくらいの量を買ってきてしまい失敗した事。そして、誰もいないすごく綺麗な場所だった事を。
話している内に、三人の目がみるみる輝いてきた。
「ってか決定じゃね?!」
山根はキャンプという言葉に何を想像したのか、目がキラキラを通り越してギラギラしている。
「うん! 行きたい! 行ってみたい!」
「うんうん! もうこれに決定でしょ!」
山根の目が見えていないのか、女の子達も賛成のようだ。
「わかった。行こうか」
「決定!」
俺が頷くと、三人は両手を上げてまた声を揃えた。俺は笑って同じ様に両手を上げながら、内心、場所を覚えているか不安で仕方なかった。どんどん進む話に相槌を打ちながら必死に道を思い出していると山根は盛り上がっている二人に気付かれないように耳打ちしてくる。
「場所。うろ覚えなんだろ? 明日、下見に行こうぜ!」
まったく変な所で気が利く奴だ。俺はフッと笑って山根に麦茶を注ぎ、お願いします。と頭を下げた。
なんで俺の部屋に杉川さんがいるんだろう。まぁ、山根と森さんもいるんだけど、杉川さんがここにいるってのがなんか物凄く違和感だった。
「ちょっとー。椎名くんまたボーッとしてたでしょー?」
ぼーっと杉川さんを見てしまっていた俺の視界に森さんが割り込んできた。俺はハッとして手を横に振る。同時に首も横に振る。
「いやいや! ちゃんと聞いてたよ! どこに行こうか?」
と言ったは良いものの、話なんか全く聞いていなかった為、一体どこまで話が進んだのか全然わからない。
そう。海での話から二日後。今日は「四人で次は何しようか会議」がまさかの俺の家で開催されていた。
とりあえず俺はボロが出ないようにみんなの会話に集中しながら、コップに半分くらい残っていた麦茶をチョビチョビ飲んだ。
「いやー。しかし七不思議がパンチある企画だっただけに、ただどっか行くっていうだけじゃなんか物足んねーなぁ」
山根は両手を頭の後ろで組んで壁に寄り掛かる。
「あれは確かに一生の思い出になりそうなレベルだったなぁ」
杉川さんはそう言いながら俺に、ねっ? と笑いかけた。
「あ、あぁ」
俺は照れて少し視線をずらしながらと笑う。
「おいおーい! お前らなんか怪しいなぁ。夜の学校で二人で一体何やってたんだか」
それを見て山根が容赦なく茶化してくる。こうなるともう止まらない。杉川さんも俺も何も言わないので、山根は森さんに攻撃を仕掛ける。
「夜の学校って表現ってなんかエロいな」
ニヤニヤ笑う山根を笑いもせずバシンと引っ張たいた森さん。
「なんかいいアイディアないかなぁ小春」
頭を押さえて意気消沈する山根を放っといて、森さんは杉川さんと話し始めた。
あの無敵モードの山根を一発で沈めるなんて。森さん凄い。
感心しながら俺はふと窓の外に目を投げる。窓から見える景色。見慣れた風景の中、一つの山が俺の過去を掘り起こした。
そう言えば昔、親父があの山にある穴場スポットに一回だけ連れてってくれた事があったな。そうだ小学生の時だ。
「キャンプしたんだ」
俺は山を見ながら無意識に声を出してしまった。
「キャンプ?」
みんなが一斉に声を揃えて、お互いに笑う。山根が笑いながら俺に麦茶のコップを向けた。
「何? お前キャンプしたいの?」
「いや、違うよ。まぁ昔の話なんだけど……」
俺はそう前置きして、親父が昔キャンプに連れて行ってくれた事を話した。魚を釣って、それをさばいて食べた事や、バーベキューしたけど食べきれないくらいの量を買ってきてしまい失敗した事。そして、誰もいないすごく綺麗な場所だった事を。
話している内に、三人の目がみるみる輝いてきた。
「ってか決定じゃね?!」
山根はキャンプという言葉に何を想像したのか、目がキラキラを通り越してギラギラしている。
「うん! 行きたい! 行ってみたい!」
「うんうん! もうこれに決定でしょ!」
山根の目が見えていないのか、女の子達も賛成のようだ。
「わかった。行こうか」
「決定!」
俺が頷くと、三人は両手を上げてまた声を揃えた。俺は笑って同じ様に両手を上げながら、内心、場所を覚えているか不安で仕方なかった。どんどん進む話に相槌を打ちながら必死に道を思い出していると山根は盛り上がっている二人に気付かれないように耳打ちしてくる。
「場所。うろ覚えなんだろ? 明日、下見に行こうぜ!」
まったく変な所で気が利く奴だ。俺はフッと笑って山根に麦茶を注ぎ、お願いします。と頭を下げた。
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