8 / 35
8
しおりを挟む
七不思議その一。
俺達の学校の音楽室は一階だ。確かにそれも珍しいのだが、それよりも珍しいのは外から入れるドアが付いている事。窓ではなくドアだ。
そこは音楽準備室と言って吹奏楽部などの器材が置いてある場所なのだが、そこから音楽室につながるドアは内側からなら直ぐに開けられる。(ちなみに両ドアとも同じ鍵で開く)つまり、ここの鍵を持っていれば簡単に校舎へと入れてしまうのだ。何で外側にもドアがあるのかは謎だが。
そして、音楽室にまつわる七不思議。七不思議と言えば十中八九、この音楽室が入るだろう。しかし、ここでは別に夜な夜なベートーベンの目が動くわけでもなく、誰かがピアノを弾いてるわけでもない。
むしろその逆。
夜になるとピアノの音が出なくなるという不思議があるのだ。だが、そこにまつわるエピソードも無く、確かめた者がいるわけでもない。何がどうしてそうなっているのかさっぱりわからないが、この話は随分昔から受け継がれているらしい。正しく七不思議。
「よし! ピアノ弾ける人!」
難なく音楽室に忍び込み、山根が小声で挙手を求めた。
「はい! 私弾ける!」
杉川さんが手を挙げた。そしてそのままピアノの前に座り、ゆっくりとピアノの鍵盤蓋を開く。
「リ、リクエストは?」
杉川さんもさすがに緊張しているのか、何故か俺達にリクエストを求めた。
「そうだなぁ。運命でいいんじゃない?」
山根は緊張している素振りも無く冷静に、そして上手い選曲をした。
「思いっきりいっちゃいなよ! 小春!」
森さんはまた変なテンションになりつつある。
俺は生唾を飲み込んで杉川さんの手をジッと見ていた。
「いきます!」
そう言って杉川さんが鍵盤を思いっきり叩いた瞬間!
「バーン!」
「うわぁ!」
音は思いっきり出た。
逆に俺達はびっくりして悲鳴をあげた。そして俺だけ尻餅をついた。
「ふざけんなよ! 普通に出るじゃんかよ!」
山根はピアノの足を蹴りながら言った。俺はバクバクと凄い早さ鳴る心臓を落ち着かせようと尻餅をついたまま何度も深呼吸した。
「次行こ! 次!!」
森さんは何故かテンションがまた上がっている。さっき一緒になって悲鳴を上げたばかりだと言うのにこの違いは何だ?
「行こ!」
尻餅をついたまま呆然としていた俺に杉川さんが手を差し伸べてくれた。
俺はその手を取りつつも、杉川さんに体重をかけず、もう片方の手を使って立ち上がる。
「普通に音出ちゃったね」
杉川さんは笑っていたが、俺にはあと六つの恐怖が待っていた為、上手に笑い返す事が出来なかった。
「おい! 早く行くぞー!」
山根が音楽室の戸を開けて手招く。はしゃぎながら音楽室を出る女子二人に置いていかれない様に俺は早歩きで後に続いた。
俺達の学校の音楽室は一階だ。確かにそれも珍しいのだが、それよりも珍しいのは外から入れるドアが付いている事。窓ではなくドアだ。
そこは音楽準備室と言って吹奏楽部などの器材が置いてある場所なのだが、そこから音楽室につながるドアは内側からなら直ぐに開けられる。(ちなみに両ドアとも同じ鍵で開く)つまり、ここの鍵を持っていれば簡単に校舎へと入れてしまうのだ。何で外側にもドアがあるのかは謎だが。
そして、音楽室にまつわる七不思議。七不思議と言えば十中八九、この音楽室が入るだろう。しかし、ここでは別に夜な夜なベートーベンの目が動くわけでもなく、誰かがピアノを弾いてるわけでもない。
むしろその逆。
夜になるとピアノの音が出なくなるという不思議があるのだ。だが、そこにまつわるエピソードも無く、確かめた者がいるわけでもない。何がどうしてそうなっているのかさっぱりわからないが、この話は随分昔から受け継がれているらしい。正しく七不思議。
「よし! ピアノ弾ける人!」
難なく音楽室に忍び込み、山根が小声で挙手を求めた。
「はい! 私弾ける!」
杉川さんが手を挙げた。そしてそのままピアノの前に座り、ゆっくりとピアノの鍵盤蓋を開く。
「リ、リクエストは?」
杉川さんもさすがに緊張しているのか、何故か俺達にリクエストを求めた。
「そうだなぁ。運命でいいんじゃない?」
山根は緊張している素振りも無く冷静に、そして上手い選曲をした。
「思いっきりいっちゃいなよ! 小春!」
森さんはまた変なテンションになりつつある。
俺は生唾を飲み込んで杉川さんの手をジッと見ていた。
「いきます!」
そう言って杉川さんが鍵盤を思いっきり叩いた瞬間!
「バーン!」
「うわぁ!」
音は思いっきり出た。
逆に俺達はびっくりして悲鳴をあげた。そして俺だけ尻餅をついた。
「ふざけんなよ! 普通に出るじゃんかよ!」
山根はピアノの足を蹴りながら言った。俺はバクバクと凄い早さ鳴る心臓を落ち着かせようと尻餅をついたまま何度も深呼吸した。
「次行こ! 次!!」
森さんは何故かテンションがまた上がっている。さっき一緒になって悲鳴を上げたばかりだと言うのにこの違いは何だ?
「行こ!」
尻餅をついたまま呆然としていた俺に杉川さんが手を差し伸べてくれた。
俺はその手を取りつつも、杉川さんに体重をかけず、もう片方の手を使って立ち上がる。
「普通に音出ちゃったね」
杉川さんは笑っていたが、俺にはあと六つの恐怖が待っていた為、上手に笑い返す事が出来なかった。
「おい! 早く行くぞー!」
山根が音楽室の戸を開けて手招く。はしゃぎながら音楽室を出る女子二人に置いていかれない様に俺は早歩きで後に続いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜
八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」
「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」
「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」
「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」
「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」
「だって、貴方を愛しているのですから」
四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。
華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。
一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。
彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。
しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。
だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。
「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」
「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」
一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。
彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる