なぜかクセすご美少女たちに振り回されている俺は本の物語に出てくる武器を具現化する能力で無双する!!

浅羽ふゆ

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「ふざけんな! 手出しできないってどーいうことだ!」



 俺が机を殴りつけると、シルフィスは背もたれに身を預けた。



「そのままの意味だよ。情報はわずかだが入手できた。彼らは君の危惧した通り、組織だった。しかも裏の裏で暗躍しているね」



 その名も『真異正教会』とシルフィスはため息交じりに言う。



「ザイバラと言う国がおかしくなりはじめたのはここ数年の事だ。それまではこちらの国とも友好な関係を築けていた」



「それがどうかしたか?」



「ザイバラが狂い始めたのと、僕らが真異正教会の存在をさかのぼれた最古の時期が一致している。つまり、既にザイバラは真異正教会の手に落ちていると考えていいだろう」



「だから、言ってる意味がわからねーよ!」



 俺の怒号にシルフィスは今まで見たこともない冷徹な目を向けてきた。



「……戦争になるよ?」



 そして、たった一言そう告げた。

 その言葉に俺は言葉が出てこない。



 つまり、真異正教会とは既にザイバラであり、そこに他国が手を出すという事は国同士の争いの火種になる。もともと、それくらい関係は悪化しているのだから、それこそ奴らの思うつぼなのかも知れない。



 でも、……それでも!!



「ユナがさらわれたんだ……アイツは俺たちの仲間なんだよ……」



 ユナの顔が脳裏に浮かぶ。



 おどおどしてる顔。



 美味しいものを食べて喜んでる顔。



 恥ずかしくって顔を赤らめてる顔。



 星空を見つめてる横顔。



 思えば色んな表情を見てきた。サイコパスでネガティブですっげーめんどくさいけど、可愛くて、優しくて、フォローが下手で、人情深く、意外にオシャレで、良い匂いがして……。



「頼むシルフィス! あいつを助けに行かせてくれ! じゃねーと俺は! 俺は!」



 と机に手をついた俺の肩にそっと手が置かれる。



「ケイタ。もーいーよ。だったらここをぶっ潰せばいい。ユナを助ける邪魔をする奴は全員敵だよ!」



 振り向くと、エミルが涙目になりながら拳にファイアボールをため込んでいた。



「ちょっと何考えてるのよ!」



「止めんなよアローナ! ルカも邪魔するんならぶっ飛ばす! シルフィスもクロウもみんなぶっ飛ばす!」



 激昂するエミルにアローナは伸ばしかけた手を下ろした。その横でアリアスがスッと剣を抜く。

 そして、一歩、また一歩と近づいて、シルフィスの机の前に立った。



「シルフィス様。これが私の覚悟です」



 そっと細剣を机の上に置く。それは剣の返上、つまり騎士として生きるのを辞める意志を表すものだった。



「騎士道精神に背くことは出来ません。騎士として国の為に戦った父の理念に反することも出来ません。だから、私は騎士を辞め、一人の友人として、彼女を助けに行きます。今まで自分を支えていたもの全てを捨ててでも彼女を助けたい。それが、私……いえ、私たちの決意です!」



 アリアスの言葉に俺たちは互いに見あって頷き合う。

 そうだ。俺たちは失いたくないものがわかってる。たとえ地位や財産を剥奪されようとも、国を追われようとも、仲間だけは失いたくない!



「シルフィス。わりぃが俺たちパーティーの意見は全員一致だ。もうこの国にも宮廷魔導士団にも用はねぇ。好きにさせてもらうぜ」



 言い捨てて、踵を返す。



 ――――――――その時だった。



「負けたよ君たちには」



 諦め交じりに放たれた声にふり返ると、いつもの微笑みを浮かべたシルフィスがいた。



「国は関係ない。そして宮廷魔導士団の網もかいくぐられた。なんて言い訳も通用するはずがないからねぇ。こちらも全力でいかせてもらおう。決してバレずに秘密裏に事を終えるんだ」



「なんだよ。最初からそう言ってくれや。んで、バレちまったらどーすんだ?」



 俺が笑って肩をすくめるとシルフィスは表情も変えずに自身の首元を手刀で切った。



「死んでもらう。いわゆる処刑だね。それで事は上手く治められそうだから」



「うへぇ。そりゃ、絶対にバレるわけにいかねーな」



 俺たちは不敵に笑い合う。いいねぇ、そのプレッシャー。それくらいリスクがなきゃな。

 俺たちが今からやる事はそういう事なんだ。それをちゃんと忘れるな。って事か。



「ふむ。まぁ、とは言え君たちは国にとっても貴重な人材だ。ユナくんの穴埋めじゃないが、こちらからも人をつけよう。クロウ、行ってくれるかい?」



「え? えぇ!? 僕ですかぁ!?」



 え……クロウかよ。と思ったのは俺だけじゃないはずだ。せめてアローナ、いやルカだろう。と。



「いやぁ、ルカやアローナは仕事たくさんあるし。クロウだったら数日居なくてもきっとバレないからねぇ。今回はそういう意味でも適任だ」



「あ、あははは……ですよねぇ」



 シルフィスの歯に衣着せぬ言い方に思わずクロウは苦笑いで頭を掻く。

 確かにそういう理由なら最適だろうな。うん、バレないのが先決だもんな。



「まぁ、でも色んな意味でも君が適任だ。しっかり彼らのサポートを頼むよ。じゃないと」



「じゃないと……?」



 小首を傾げるクロウにシルフィスはニコニコしながら首を手刀で切った。



「――――――――君も処刑だ」





 ――――――――。





 ひとまず移動の準備という事で俺たちは家に戻った。

 大体の居場所もシルフィスが掴んでくれたので、後は向かうだけ。なのだが……。



「いーかげん泣き止みなさいよクロウ! 死なばもろとも! ワタシと死ねんだから光栄に思え!」



 部屋の隅で膝を抱えながらシクシク泣いているクロウにエミルがたまらず怒鳴りつける。いやいや、それもまたおかしいだろう。そこは「絶対に死なせない!」とかじゃないとダメじゃないか?



「僕なんか……僕なんか死んでいい人間なんだぁ……」



 ほら、やっぱり泣き止まないじゃん。

 そこへ速やかに準備を終えたアリアスが目の前にしゃがんで声をかける。



「大丈夫よ。全力でやるから。絶対に死なせたりなんかしない」



 おーっと男前! アリアスさん、まさかの男前発言だー!

 おや? クロウもようやく顔を上げたぞ? そこへ? そこへ、すかさず頭ナデナデ来たー!



「あ、アリアスさぁん……」



 そしてまた泣いたー!



「めんどくさいわね! 早く泣き止みなさいよ!」



 そんでアリアスさんも我慢できず引っぱたいたー!!



 そしたらクロウもっと泣きはじめたー!





 俺たちはそんなこんなで準備を整えたが、出発前にこれじゃマジで先が思いやられる。

 でも、そんなことは言ってられない。事は急を要するのだ。

 いざ、真異正教会のアジトへ! 出発!!



 あ、クロウは放っといたらいつの間にか泣き止んでました。

 どうやら諦めがついたみたいです。今はヘラヘラしながらエミルにからんでます。





 ……だからロリコンはキライなんだ!!
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