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「マジかよ……聞きたくなかったなぁ」
エミルのトンデモ発言に俺の憶測がどんどん固まってくる。
こりゃ「人身売買」がキーワードになってんじゃねーか?
なんか呪術っていかにも生贄とか必要そうじゃん? 大体、なんの代償もなくあんな力が使えるってありえねーだろ。なんかしらの犠牲が必要なはずなんだ。
……なんかやべーもんと関わっちまったんじゃねーかこれ?
……。
……いーや! 気にしない気にしない!
触らぬ神になんとやらだ。ここは全力で目を逸らして、この旅行を楽しもうじゃないか!!
「さぁさぁ話は終わりだ! みんな!」
「いや、終わりも何もアンタ今ひとりで頭抱えて唸ってただけじゃん」
うぐっ! エミルさん! 久々の冷徹な返し!
しかし、俺は気にせず歩を進めた。一刻も早く港から離れたかったのだ。
だって、なんか……嫌な予感がするんだ。こういう話が出てきた時、そんで俺が何かを確信してしまった時、それはいきなり襲って来る。
「よう! 待ちなよお嬢ちゃん!!」
――――トラブルとかいうやつはいつだって、こうして突然やってくるんだ!!
港を離れようと踵を返した俺たちを止めたダミ声。潮風に喉でもやられてんのか? そもそも潮風にそんな力があるのか?
理由は定かでないが、そのいかにもなダミ声にふり返ると、そこにはやっぱり……。
「うーわ。最悪」
ついつい声に出してしまう。
そこにはダミ声から想像した通りの汚いおっさんが立っていた。
漁師なのか、貿易商なのかはわからんが、なんだかヨレヨレのシャツにハーフパンツというラフな格好ながら、太っちょで髪がボサボサなので、それはワイルドと言うよりただのヨゴレにしか見えない。
片手に持っている酒の瓶もそれを助長していた。
「最悪とは手厳しいなぁ。おい。お前ひとりで3人相手はキツそうだからよ。俺が2人受け持ってやるよ」
なぁ? とエミル達に言うと「ガハハハ」と下品な笑い声を放つ。
どうしよう……ひとつも面白くない上に、自然と「俺は2人同時に相手できるけどな!」と上から目線で物を言われてしまった。
え? 殺っちゃっていいすか?
「なんだぁ? お次はダンマリかぁ? まったく情けねーなぁ! 嬢ちゃんたちももっとイイ男連れなきゃなぁ。せっかくの上玉なんだから、それに見合う男を連れてナンボの世界よぉ。例えば俺みたいな。なぁ」
男はグビビと酒をラッパ飲みして「ぷはーっ」と口を拭う。しかし、えらい言われようだが、コイツは気づいてるのだろうか。さっきから3人とも会話する価値もないゴミを見るような目を向けている事に。
「んじゃあよ。俺はそこの女とソイツを貰ってくわ。ガキはいらねーから、テメーが相手しろや」
あ、やっぱり気づいてないんすね。っつーか、それ言っちゃダメなやつ!
「――――だーれが子供だぁー!!!」
ドゴォ!! とエミルの飛び蹴りが男の鼻っ柱にヒットする。あまりにも速すぎたので、男はいきなり衝撃を喰らったようにしか感じなかっただろう。
それより、エミル。それは悪手だろう……。
「フン!!」
バゴォ! と死体蹴りまで放つ始末。いやいや、もうそいつ気絶してっから。最初からソイツにイラついてたのはわかってたが、どんだけだよ。
「おいおい、なんだなんだ……?」
やばい! エミルの声がデカすぎるから人が集まってきやがった!
この男が気絶してる以上、疑われるのは俺たちなのは明白。
ならば、選択は一つ!!
「ズラかれ!!」
いぇーい! 死ぬまでに一回は言ってみたかったセリフ!
……まさか本気で使うことになるとは思わなかったわ!!
俺たちはそそくさとその場を後にし、再び市街の喧騒に紛れた。
――――――――。
「あー、ムカついたー! なんなのアイツー!!」
逃げ込むように入った喫茶店でまたパフェをむさぼりながらエミルはプンスカしている。
「ででで、でも……よく、あれだけで我慢しし、しましたね……すす、すごいですエミルさん!」
ユナもまた同じようにパフェを頬張りながら意味の分からない褒め方をした。
でも、エミルは「でしょー?」とスプーンでユナを指すと胸を張り一言。
「ワタシは大人の女性ですから!」
えっへん。と豪語するが、そもそも大人だったら円満に解決を目指すんだけどな。
絶対に初手から飛び蹴りは選ばないけどな!
「でも、見るからに下品だったわね。同じ空気を吸いたくなくて出来るだけ呼吸を浅くしてしまったわ」
痛烈なアリアスさん。見た目で人を判断しちゃいけないよ、って呼び止めてきた最初の一言で品のなさは全面に出ていたけど。
しかし、まいったぞ?
これはフラグが立ってんじゃねーか?
ここから何か妙なトラブルに巻き込まれて、なんかスゲーめんどうなもんに飲み込まれる気がしてならない。
こういう時の勘って当たるんだよなぁ。
呪術、人身売買、港に居た下品な男……。
イヤーな予感がするなぁ。
と思った矢先だった――――――――。
「おい! いたぞ! あいつ等だ!!」
喫茶店の扉が乱暴に蹴り上げられて、見るからに粗暴な男たちがこっちを指さす。
ほらね?
――――――――ほらね!!!???
エミルのトンデモ発言に俺の憶測がどんどん固まってくる。
こりゃ「人身売買」がキーワードになってんじゃねーか?
なんか呪術っていかにも生贄とか必要そうじゃん? 大体、なんの代償もなくあんな力が使えるってありえねーだろ。なんかしらの犠牲が必要なはずなんだ。
……なんかやべーもんと関わっちまったんじゃねーかこれ?
……。
……いーや! 気にしない気にしない!
触らぬ神になんとやらだ。ここは全力で目を逸らして、この旅行を楽しもうじゃないか!!
「さぁさぁ話は終わりだ! みんな!」
「いや、終わりも何もアンタ今ひとりで頭抱えて唸ってただけじゃん」
うぐっ! エミルさん! 久々の冷徹な返し!
しかし、俺は気にせず歩を進めた。一刻も早く港から離れたかったのだ。
だって、なんか……嫌な予感がするんだ。こういう話が出てきた時、そんで俺が何かを確信してしまった時、それはいきなり襲って来る。
「よう! 待ちなよお嬢ちゃん!!」
――――トラブルとかいうやつはいつだって、こうして突然やってくるんだ!!
港を離れようと踵を返した俺たちを止めたダミ声。潮風に喉でもやられてんのか? そもそも潮風にそんな力があるのか?
理由は定かでないが、そのいかにもなダミ声にふり返ると、そこにはやっぱり……。
「うーわ。最悪」
ついつい声に出してしまう。
そこにはダミ声から想像した通りの汚いおっさんが立っていた。
漁師なのか、貿易商なのかはわからんが、なんだかヨレヨレのシャツにハーフパンツというラフな格好ながら、太っちょで髪がボサボサなので、それはワイルドと言うよりただのヨゴレにしか見えない。
片手に持っている酒の瓶もそれを助長していた。
「最悪とは手厳しいなぁ。おい。お前ひとりで3人相手はキツそうだからよ。俺が2人受け持ってやるよ」
なぁ? とエミル達に言うと「ガハハハ」と下品な笑い声を放つ。
どうしよう……ひとつも面白くない上に、自然と「俺は2人同時に相手できるけどな!」と上から目線で物を言われてしまった。
え? 殺っちゃっていいすか?
「なんだぁ? お次はダンマリかぁ? まったく情けねーなぁ! 嬢ちゃんたちももっとイイ男連れなきゃなぁ。せっかくの上玉なんだから、それに見合う男を連れてナンボの世界よぉ。例えば俺みたいな。なぁ」
男はグビビと酒をラッパ飲みして「ぷはーっ」と口を拭う。しかし、えらい言われようだが、コイツは気づいてるのだろうか。さっきから3人とも会話する価値もないゴミを見るような目を向けている事に。
「んじゃあよ。俺はそこの女とソイツを貰ってくわ。ガキはいらねーから、テメーが相手しろや」
あ、やっぱり気づいてないんすね。っつーか、それ言っちゃダメなやつ!
「――――だーれが子供だぁー!!!」
ドゴォ!! とエミルの飛び蹴りが男の鼻っ柱にヒットする。あまりにも速すぎたので、男はいきなり衝撃を喰らったようにしか感じなかっただろう。
それより、エミル。それは悪手だろう……。
「フン!!」
バゴォ! と死体蹴りまで放つ始末。いやいや、もうそいつ気絶してっから。最初からソイツにイラついてたのはわかってたが、どんだけだよ。
「おいおい、なんだなんだ……?」
やばい! エミルの声がデカすぎるから人が集まってきやがった!
この男が気絶してる以上、疑われるのは俺たちなのは明白。
ならば、選択は一つ!!
「ズラかれ!!」
いぇーい! 死ぬまでに一回は言ってみたかったセリフ!
……まさか本気で使うことになるとは思わなかったわ!!
俺たちはそそくさとその場を後にし、再び市街の喧騒に紛れた。
――――――――。
「あー、ムカついたー! なんなのアイツー!!」
逃げ込むように入った喫茶店でまたパフェをむさぼりながらエミルはプンスカしている。
「ででで、でも……よく、あれだけで我慢しし、しましたね……すす、すごいですエミルさん!」
ユナもまた同じようにパフェを頬張りながら意味の分からない褒め方をした。
でも、エミルは「でしょー?」とスプーンでユナを指すと胸を張り一言。
「ワタシは大人の女性ですから!」
えっへん。と豪語するが、そもそも大人だったら円満に解決を目指すんだけどな。
絶対に初手から飛び蹴りは選ばないけどな!
「でも、見るからに下品だったわね。同じ空気を吸いたくなくて出来るだけ呼吸を浅くしてしまったわ」
痛烈なアリアスさん。見た目で人を判断しちゃいけないよ、って呼び止めてきた最初の一言で品のなさは全面に出ていたけど。
しかし、まいったぞ?
これはフラグが立ってんじゃねーか?
ここから何か妙なトラブルに巻き込まれて、なんかスゲーめんどうなもんに飲み込まれる気がしてならない。
こういう時の勘って当たるんだよなぁ。
呪術、人身売買、港に居た下品な男……。
イヤーな予感がするなぁ。
と思った矢先だった――――――――。
「おい! いたぞ! あいつ等だ!!」
喫茶店の扉が乱暴に蹴り上げられて、見るからに粗暴な男たちがこっちを指さす。
ほらね?
――――――――ほらね!!!???
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