上 下
45 / 89

45

しおりを挟む
「なーんーでー! わたしなのよー!」



 俺がガーゴイルの相手を指示した途端にコレ。ジタバタと駄々っ子地団駄ダンダンダン。

 なんとなく川柳っぽくなってしまったが、これもんである。



「よくよく考えてみろよ。物理攻撃は無理っぽいだろ? って事はユナもアリアスも無理だろ?」



「すすす、……すみま、せん……」



「いやいや、謝らなくていい。むしろお前はジッとしていてくれ。その方が俺も安心だ」



 ほえ? と首をかしげるユナ。流石サイコパス。こっちの意図をまるで理解していない。

 お前がやる気だすと面倒事が増えるんだよ!!



「確かにここは私とユナじゃどうにもならないわね。でも、そんな相談してる時間も無いわよ?」



「あん? どこ指さして……うわ!」



 アリアスが指さした方向へ振り返ると、今まさにガーゴイルが俺を打ん殴ろうと飛び掛かる所だった。いやいやいや、お前。ここはじっと待つ所でしょう。何を勇んでんだよ。

 と、恨み言を言っても仕方がない。相手は石像。つまりは石なのである。



 でも、マジで危なかったー!



 しかし、慌てる俺をよそに他のみんなは難なく散って距離を取ってるところを見ると俺以外みんな気づいてたんだな。もっと早く教えてよ……。普通気づくでしょとかそういうのいらないから。



 ともかく、こいつはセオリーも守れない乱雑な奴だから早めに倒した方が良さそうだ。よし!



「エミル! 頼んだ!」



「だからー! なんでわたしー!」



 この期に及んで他力本願な俺。いいから早く動けロりっ子魔女。

 と、考えているとガーゴイルさんやっと空気を読んでくれたようで、まんまとエミルに向かって行ってくれた。



「もー! めんどくせー!」



 こらこら口が悪いですよお嬢ちゃん。そうそう、その玩具みたいなショートステッキ出して。

 そう、そのまま魔法を唱えましょうね。はい、ファイアボール、ファイアボール、ファイアボール……ちょっちょちょちょ!!!



「エミルそれはいかんぞー!」



 慌てて俺はダッシュ。ナレッジを取りだして、肉体強化をしてさらにエスタードでオーラを吸収してマジで猛ダッシュした。

 おかげでガーゴイルをやすやすと抜かすことが出来ました。



「ちょっと! 何すんのよ!」



 ファイアボールが濃縮されたエミルの右手からエスタードのオーラでショートステッキを奪い取る。

 そして俺は――――。



 有無を言わさずガーゴイルにぶつけてやった!!



「よっしゃ! やっぱり吸収された!」



 予想通り。小さな火球はそのままガーゴイルの体内に入り、音沙汰も無くなった。

 爆発音すら聞こえない。って事はまじで干渉系の高等魔法っぽいな。



「ほらよ。これは返してやるから」



 ポイっとショートステッキを投げ渡すと、エミルはあからさまに不機嫌な顔をした。



「そんな顔すんな。俺が止めなかったら、この神殿ごと破壊されてたぞ」



「そしたらアイツも倒せたかもじゃん」



「かも。じゃだめなの。あのね? まず初めに俺たちの命も危うかったの。わかる?」



「知らんし」



「知れ! 知っていてくれ! 常に頭の片隅に置いとけ!」



 最終的に起こってしまう俺。でも仕方がない。ユナといい、コイツといい、意識が低いんだよマジで。後先考えずに行動すると周りがどんだけ苦労するか知っていてほしい。

 なので、今回は仕方がない。



「お前のしりぬぐいの方がめんどくさそうだから共闘するぞ」



「なんでわたしがあんたにケツふいてもらわなきゃなんないのよ? そーいう趣味?」



「言葉のまんま受けとんじゃねーよ! ちげーよ!」



 尻ぬぐいって、分かれよ! もう!



「とにかく。まずはファイアボールで牽制してくれ」



 言いながら俺はガーゴイルに斬りかかる。が、俺の剣は斜めにするっとすり抜けてしまった。



「そんで魔法も……?」



 後ろから飛んできたファイアボールの行方を確認する。

 やはり、体に吸収されていった。



「んで、こいつからの攻撃は?」



 ガキン! と固く鈍い音を響かせて俺は奴の拳を剣で防ぐ。

 うーん。やっぱり当たるんだよなぁ。



 って事は、さっきの魔法が使えそうだな。



「試してみるか。違ったら別の方法考えようっと!」



 なんとなく答えが出ると、戦いがグッと楽しくなってくる。

 そりゃ独り言もつぶやいちまうっつーの!



 俺はワクワクしながらナレッジを出して、ガーゴイルの体ギリギリに手のひらをかざした。

 淡く光る枠がその中に入っていく。



 よし、完了。



「いいぞー! エミル! ファイアボール撃ってみろ!」



「はぁー? どーせムダじゃーん!」



「無駄じゃねーから! 多分効くから! ……あっぶね!」



 まったくマジで空気読めないのねガーゴイルさん。でも、そんなスピードじゃ俺に攻撃なんて当てらんないぜ?



「って、早く撃てよロりっ子!」



「ロりっ子言うなし! もー! わかったよ!」



 投げやりに火球が放たれる。マジで大きさも早さもやる気がない。



 が、しかし。



「……グガァアアア!!」



 一瞬、吸収されたと思った火球だったが、刹那にガーゴイルの内側から炎が現れた。



「えー? どういう事? 効いてんの?」



「効いてるんだよ! もう魔法効くから適当に倒そうぜ」



 俺はナレッジを消して、エスタードで斬りかかる。



 ――――――――。



 って、あれ? 何かスゲー効いてない?





 っつーか、真っ二つになっちった。





 ……ガン。とガーゴイルは上半身を地面に落とし、下半身も倒れていく。



 あ、終わった。マジかよ。実際の耐久力の無さを魔法でカバーしてたの? 石なのに固くないの?



 って、何か結局全然喋らなかったのは何? 結構必死だったの?



 しかし、もうガーゴイルはウンともスンとも言わないただの破壊された石像になっていた。



「んでー? 結局なんだったのこれ」



 コツンとショートステッキで石像をつつくエミル。大丈夫、もう死んでるよ。

 俺はエスタードを消して一息ついた。



「まぁ結局は異空間魔法の一種だったんだよ。要は方向性が鍵だったんだ」



「よくわかんない」



 でしょうね!



「まぁ簡単に言うと、外からの受ける干渉は異空間に飛ばされて、内からの干渉はそのままって訳だ。だから俺は魔法の入り口をもう一つ作ったんだよ。いや、出口と言った方が良いか」



 要は外から入った干渉をもう一度外から内に出てくるように道を作ったわけだな。



 はい、エミルちゃんチンプンカンプン。



 ユナもチンプンカンプン。



「そういう事だったのね。意外に便利な魔法ねそれ」



 アリアスさんは理解力ありますねー! 流石です! 喋っていてめっちゃ楽!



 と言うわけで第一関門は突破できたが……?



「あああ、ななな、なんか、階段! あああ、ありますよ!」



 ユナが奥の床を指さす。そこにはさっきまでなかったはずの地下へと降りる階段が姿を現していた。

 まー、そうなるよね。っつーか、これ何関門まであるんだろ?



 なんか、何とか遊戯みたいになってませんかね!!??



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...